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第二章
第42話 休まないお姫様
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「完全復活!」
ミルフィはベッドから跳び起きて、カーテンを開けて陽の光をしっかりと浴びている。
そこへティアがやって来る。
「おはようございます、ミルフィ様」
「おはよう、ティア」
返事が聞こえてきた事で、ティアが中へと入ってくる。
そこにはすっかりと元気になったミルフィが立っており、ティアは思わず感動してしまう。
「心配かけちゃいましたね。そういえば今日はお店が休みでしたね。どうしましょうか」
「病み上がりでございますので、お休みする方がよいかと存じます。無理はよくありませんよ」
ミルフィが問い掛けると、ティアからは至極普通の回答が返ってきた。予想はしていたので、ミルフィは最初からあきらめがついていた。
「しょうがないですね。一応今日までの売上と食材の在庫のチェックはしましょう」
「畏まりました。それでは出発の手配をして参ります」
ミルフィの意見を聞き、ティアはすぐに準備のために部屋を出て行った。
「あー……。私、自分で着替えないといけませんね」
残されたミルフィは、カーテンを再び閉じるといそいそと服を着替え始めたのだった。
―――
朝食を済ませたミルフィは、ティアと一緒にカフェへと出向いていく。
今日は休みの日ということで、店の前に人は居なかった。
ちゃんと休業日という設定が周知されているという事なので、ミルフィはほっと胸を撫で下ろしている。
『本日の料理教室はお休みです』
店に到着したミルフィは、ティアにこの貼り紙を掲出させて店の中へと入っていく。そして、店の中の状態を確認して回っていた。
ここまで特に暴力事件などのトラブルは起きていないので、店内の状態はかなりきれいなままだった。それでも20日以上営業をしているので、あちこちに汚れが目立ち始めていた。
「ティア、私はピレシーと一緒に食材のチェックをしますので、店内の清掃をお願いします」
「承知致しました」
ミルフィの指示を受けて、ティアは掃除用の道具を魔法で取り出す。これはティアが使うメイド魔法なるものらしい。メイドのたしなみとしてティアが独自に編み出したそうだ。
”なかなかに面妖な魔法を使うものだな、主の侍女は”
「……そうなの?」
幼い頃から見ているミルフィは特に何の疑問も持ってなかったのだが、ピレシーには特異に見えたようだった。しかし、ミルフィがなんとも思ってないので、ピレシーもそれ以上は何も言わなかった。
店内に残る食材をチェックしていくミルフィ。
”ふむ、なかなかに売れるものに偏りがあるようだな”
「そうですね。細かい情報はプレツェが持っているので、戻ったら確認してみましょうか」
カフェとは言いながらも、冒険者もそれなりに寄っていくために、肉系の減りが速い感じなのである。甘味に関しては先行して売りに出していた事もあってか、少し鈍いようだった。
ただ、売上などの詳細な情報はその日の夜に商会の実務を担うプレツェに集められているので、ミルフィたちはそのあたりの情報を知らないのだった。
「一応、今の在庫の情報はメモに取っておきましょうか。プレツェの持つ情報とピレシーが提供した食材の量を照らし合わせて、おかしな点がないか確認しませんとね」
”うむ、お店をやる以上は気を付けねばならん事だからな。従業員を信用していないわけではないが、どんぶり勘定で運営を続けられるほど、商売というものは甘くはない”
とりあえずお店の状態をチェックしたミルフィは、掃除を終えたティアと合流して商会へと戻っていった。
―――
商会へと戻って来たミルフィたちは、プレツェの元へと向かう。
「プレツェ、ちょっと確認を頼めないかしら」
「どうぞお入り下さい、ミルフィ様」
ミルフィの声を聞いて、作業中ではあったもののプレツェは中へと招き入れる。
「どうかなさいましたでしょうか、ミルフィ様」
「カフェの売上と食材の在庫のチェックをお願いするわ」
「畏まりました」
そう返事をしたプレツェはすぐに帳簿を持ってきた。
「売上に関しましては既に帳簿にまとめてあります。売れた料理の種類と個数と照らし合わせても間違いはございませんでした」
「さすがプレツェ。きちんとまとめられてますし、計算も終わっていますのね」
「それが私の取り柄ですから」
ミルフィに褒められて照れくさそうにするプレツェである。
「それで、食材の在庫ですけれど、料理教室で使った分も記録はしてありますので、こちらも照合を願えますかね」
「畏まりました。少々時間がかかりますゆえに、お待ち頂いてもよろしいでしょうか」
「分かりました。それでは、夕食の時にでも伺いましょう。食材の新規発注は終わっていますか?」
「これからでございます。売れた量から発注量は決めてありますが……」
「それでしたら、私が代わりに出しておきましょう」
「ミルフィ様のお手を煩わせるなど、申し訳ございません」
プレツェが謝ると、ミルフィはにこりと微笑んでいる。
「このくらい、商会長として当たり前です。昨日は寝込んで迷惑を掛けましたしね」
食材の発注票を受け取ったミルフィは、そのままご機嫌そうにプレツェの執務室から出て行った。
「やれやれ、お姫様らしくない方ですよ。でも、そんなミルフィ様だからこそ、私たちはついていくのですけれどね」
穏やかな顔をしたプレツェは、照合作業のために再び机に向かったのだった。
ミルフィはベッドから跳び起きて、カーテンを開けて陽の光をしっかりと浴びている。
そこへティアがやって来る。
「おはようございます、ミルフィ様」
「おはよう、ティア」
返事が聞こえてきた事で、ティアが中へと入ってくる。
そこにはすっかりと元気になったミルフィが立っており、ティアは思わず感動してしまう。
「心配かけちゃいましたね。そういえば今日はお店が休みでしたね。どうしましょうか」
「病み上がりでございますので、お休みする方がよいかと存じます。無理はよくありませんよ」
ミルフィが問い掛けると、ティアからは至極普通の回答が返ってきた。予想はしていたので、ミルフィは最初からあきらめがついていた。
「しょうがないですね。一応今日までの売上と食材の在庫のチェックはしましょう」
「畏まりました。それでは出発の手配をして参ります」
ミルフィの意見を聞き、ティアはすぐに準備のために部屋を出て行った。
「あー……。私、自分で着替えないといけませんね」
残されたミルフィは、カーテンを再び閉じるといそいそと服を着替え始めたのだった。
―――
朝食を済ませたミルフィは、ティアと一緒にカフェへと出向いていく。
今日は休みの日ということで、店の前に人は居なかった。
ちゃんと休業日という設定が周知されているという事なので、ミルフィはほっと胸を撫で下ろしている。
『本日の料理教室はお休みです』
店に到着したミルフィは、ティアにこの貼り紙を掲出させて店の中へと入っていく。そして、店の中の状態を確認して回っていた。
ここまで特に暴力事件などのトラブルは起きていないので、店内の状態はかなりきれいなままだった。それでも20日以上営業をしているので、あちこちに汚れが目立ち始めていた。
「ティア、私はピレシーと一緒に食材のチェックをしますので、店内の清掃をお願いします」
「承知致しました」
ミルフィの指示を受けて、ティアは掃除用の道具を魔法で取り出す。これはティアが使うメイド魔法なるものらしい。メイドのたしなみとしてティアが独自に編み出したそうだ。
”なかなかに面妖な魔法を使うものだな、主の侍女は”
「……そうなの?」
幼い頃から見ているミルフィは特に何の疑問も持ってなかったのだが、ピレシーには特異に見えたようだった。しかし、ミルフィがなんとも思ってないので、ピレシーもそれ以上は何も言わなかった。
店内に残る食材をチェックしていくミルフィ。
”ふむ、なかなかに売れるものに偏りがあるようだな”
「そうですね。細かい情報はプレツェが持っているので、戻ったら確認してみましょうか」
カフェとは言いながらも、冒険者もそれなりに寄っていくために、肉系の減りが速い感じなのである。甘味に関しては先行して売りに出していた事もあってか、少し鈍いようだった。
ただ、売上などの詳細な情報はその日の夜に商会の実務を担うプレツェに集められているので、ミルフィたちはそのあたりの情報を知らないのだった。
「一応、今の在庫の情報はメモに取っておきましょうか。プレツェの持つ情報とピレシーが提供した食材の量を照らし合わせて、おかしな点がないか確認しませんとね」
”うむ、お店をやる以上は気を付けねばならん事だからな。従業員を信用していないわけではないが、どんぶり勘定で運営を続けられるほど、商売というものは甘くはない”
とりあえずお店の状態をチェックしたミルフィは、掃除を終えたティアと合流して商会へと戻っていった。
―――
商会へと戻って来たミルフィたちは、プレツェの元へと向かう。
「プレツェ、ちょっと確認を頼めないかしら」
「どうぞお入り下さい、ミルフィ様」
ミルフィの声を聞いて、作業中ではあったもののプレツェは中へと招き入れる。
「どうかなさいましたでしょうか、ミルフィ様」
「カフェの売上と食材の在庫のチェックをお願いするわ」
「畏まりました」
そう返事をしたプレツェはすぐに帳簿を持ってきた。
「売上に関しましては既に帳簿にまとめてあります。売れた料理の種類と個数と照らし合わせても間違いはございませんでした」
「さすがプレツェ。きちんとまとめられてますし、計算も終わっていますのね」
「それが私の取り柄ですから」
ミルフィに褒められて照れくさそうにするプレツェである。
「それで、食材の在庫ですけれど、料理教室で使った分も記録はしてありますので、こちらも照合を願えますかね」
「畏まりました。少々時間がかかりますゆえに、お待ち頂いてもよろしいでしょうか」
「分かりました。それでは、夕食の時にでも伺いましょう。食材の新規発注は終わっていますか?」
「これからでございます。売れた量から発注量は決めてありますが……」
「それでしたら、私が代わりに出しておきましょう」
「ミルフィ様のお手を煩わせるなど、申し訳ございません」
プレツェが謝ると、ミルフィはにこりと微笑んでいる。
「このくらい、商会長として当たり前です。昨日は寝込んで迷惑を掛けましたしね」
食材の発注票を受け取ったミルフィは、そのままご機嫌そうにプレツェの執務室から出て行った。
「やれやれ、お姫様らしくない方ですよ。でも、そんなミルフィ様だからこそ、私たちはついていくのですけれどね」
穏やかな顔をしたプレツェは、照合作業のために再び机に向かったのだった。
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