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第20話 湿気は大敵
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さらにもう一日が経ち、久々の晴れ間が広がっている。
「う~ん、やっぱり天気がいいと気持ちいいわね」
朝の灯のチェックを終えたベニーが、バルコニーから周囲を見渡している。
どこまでも青い空と海が広がっていて、昨日までの大雨が嘘のようだ。
ただ、雨上がりである以上、遠出をするのはまだ危険だろう。街道の足場はぬかるみがあるだろうし、森の方だって嫌な思い出があるからだ。
「また服を泥だらけにされるのだけは勘弁してほしいものね」
そう、一角ウサギを捕まえた際に暴れられて服に泥を大量にぶつけられたのだ。顔や髪にも付着していて、泣きながら洗い落としていたのはつい先日のことである。
灯台守として灯台で一人暮らしを続けるベニーではあるものの、近くの港町に時折出かける状況では、年相応の感覚というものを持ち合わせている。
祖父もきれい好きだったこともあって、ベニーはもう二度と泥まみれにはなりたくない。
実に後ろ向きな気持ちが強くなったベニーは、この日の外出は諦めたのだった。
とはいえ、出かけなくてもやれることはたくさんある。
読書に薬作り、それと魚釣りだ。
嵐の過ぎ去った海は、意外と穏やかな感じに見える。
その結果、今日のベニーは朝の時間を釣りで費やすことにしたのだった。
「薬を作ろうにしても、雨上がりで湿気が多いだろうからね。暖かくなるお昼からの方が作りやすそうだわ」
こういう考えもあっての行動である。
さて、今日のベニーの釣りの結果はどうなのだろうか。
「ふんふんふ~ん。今日のお昼と夜はお魚だわ」
うきうきした気持ちで台所に向かうベニーの姿があった。
嵐だったからか、岬付近には魚がたくさん集まっていたらしく、そう時間もかからないうちに数匹の魚を釣り上げていたのだ。
おかげで、今日は一日魚料理が食べられるとあって、ここまで上機嫌になっているのだ。
今日のベニーのお昼はというと、お魚の煮込みだ。
灯台の中に置かれている土魔法で作られと思われる鍋に水を張り、そこにワタを除いた魚と森で採取した香草を投入する。
最後にふたをして、拾っておいた枯草や枯れ枝に生活魔法で火をつけてぐつぐつと煮込む。
味付けは何にもない。シンプルに香草で臭みだけを取るという簡単な水煮である。
この辺りの料理の仕方も、灯台守の知識として受け継がれている。
なぜなら、眼下は海なのだから。
そのため、釣りと同時に魚の調理法も徹底的に教え込まれたのだ。とはいえ、魚の処理の方法以外には丸焼きと水煮くらい。書庫にある書物や手記をひっくり返せば、それ以外の食べ方も載っているかも知れないが、ベニーが教わったのはそれくらいである。
ぐつぐつとしっかりと煮込まれた魚を堪能したベニーは、食器や鍋などを片付けてお昼の作業へと移る。
「うん、おいしい魚を食べた後は元気いっぱいだわ。さあ、作れるだけ頑張って作るわよ」
今日の午後は薬の調合だ。
実はこの作業も実に面倒なもの。作り方だけ聞けば簡単に思えるのだが、少しでも手順をミスればそれだけで品質は低下してしまう。
品質が低下すると、本来の効き目を十分に発揮できなくなるし、最悪まったく効果をなさなくなる。
ベニーが雨の日などで失敗するのはこのせいだ。こればかりは長年の経験による細やかな調整が必要になるのだ。
この日のお昼はすっかり天候が回復しているので、標準的に教えられる方法を実践すれば、ほぼ失敗することはない。お昼まで待ったかいがあるというものだ。
ベニーの薬作りというのは、灯台守で代々受け継がれてきた技術だ。
摘んできた薬草を軽く乾燥させて、器の中で少しずつ水を加えながらすり潰していく。
十分潰れてどろどろになった状態をこねあげて、水分を飛ばせば完成となる。
この加えていく水というのも重要で、不純物の少ない水ほど効果がよくなる。だから、この時の水はたいてい水魔法で発生させた水が使われる。
薬草に含まれる薬効と魔力を含んだ水が反応し合い、薬として完成するのだ。ちなみに普通の水を使ってもいいのではあるが、その際は練り込む際に魔力を注ぎながら作ることになる。水はただのつなぎというわけだ。
それならば湿気の量は質に関係ないように思えるが、その湿気というのが結構大敵だ。
実は、普通の水を含ませた場合、薬草と魔力の反応を阻害してしまうのだ。薬草は水と魔力なら、水の方になじみやすいという性質を持つのだ。
なので、魔力で作った水であるなら薬草は水とともに魔力を取り込んでくれるので、その薬効は十分に発揮されるというわけなのだ。
魔法が使える人なら生活魔法で水を少量作り出せる。普通はこっちの方法が使われる。
ちなみにではあるが、生活魔法で薬を作れば薬師、生活魔法を使わずに作れば錬金術師と呼ばれるらしい。
「うん、今日の品質はばっちりね」
十分な品質の薬を作り出せたベニーは、とても満足そうに笑っている。
雨のせいで昨日は薬を作れなかったとあって、今日はずいぶんと作り込んでしまったものだ。
作業が終わった時には、すでに日が傾き始めていた。
「よし、さっさと片付けて、灯の確認いきましょう」
テーブルの上を空にして夕食が取れるようにしたベニーは、今日も元気に導の灯を確認しに向かったのだった。
「う~ん、やっぱり天気がいいと気持ちいいわね」
朝の灯のチェックを終えたベニーが、バルコニーから周囲を見渡している。
どこまでも青い空と海が広がっていて、昨日までの大雨が嘘のようだ。
ただ、雨上がりである以上、遠出をするのはまだ危険だろう。街道の足場はぬかるみがあるだろうし、森の方だって嫌な思い出があるからだ。
「また服を泥だらけにされるのだけは勘弁してほしいものね」
そう、一角ウサギを捕まえた際に暴れられて服に泥を大量にぶつけられたのだ。顔や髪にも付着していて、泣きながら洗い落としていたのはつい先日のことである。
灯台守として灯台で一人暮らしを続けるベニーではあるものの、近くの港町に時折出かける状況では、年相応の感覚というものを持ち合わせている。
祖父もきれい好きだったこともあって、ベニーはもう二度と泥まみれにはなりたくない。
実に後ろ向きな気持ちが強くなったベニーは、この日の外出は諦めたのだった。
とはいえ、出かけなくてもやれることはたくさんある。
読書に薬作り、それと魚釣りだ。
嵐の過ぎ去った海は、意外と穏やかな感じに見える。
その結果、今日のベニーは朝の時間を釣りで費やすことにしたのだった。
「薬を作ろうにしても、雨上がりで湿気が多いだろうからね。暖かくなるお昼からの方が作りやすそうだわ」
こういう考えもあっての行動である。
さて、今日のベニーの釣りの結果はどうなのだろうか。
「ふんふんふ~ん。今日のお昼と夜はお魚だわ」
うきうきした気持ちで台所に向かうベニーの姿があった。
嵐だったからか、岬付近には魚がたくさん集まっていたらしく、そう時間もかからないうちに数匹の魚を釣り上げていたのだ。
おかげで、今日は一日魚料理が食べられるとあって、ここまで上機嫌になっているのだ。
今日のベニーのお昼はというと、お魚の煮込みだ。
灯台の中に置かれている土魔法で作られと思われる鍋に水を張り、そこにワタを除いた魚と森で採取した香草を投入する。
最後にふたをして、拾っておいた枯草や枯れ枝に生活魔法で火をつけてぐつぐつと煮込む。
味付けは何にもない。シンプルに香草で臭みだけを取るという簡単な水煮である。
この辺りの料理の仕方も、灯台守の知識として受け継がれている。
なぜなら、眼下は海なのだから。
そのため、釣りと同時に魚の調理法も徹底的に教え込まれたのだ。とはいえ、魚の処理の方法以外には丸焼きと水煮くらい。書庫にある書物や手記をひっくり返せば、それ以外の食べ方も載っているかも知れないが、ベニーが教わったのはそれくらいである。
ぐつぐつとしっかりと煮込まれた魚を堪能したベニーは、食器や鍋などを片付けてお昼の作業へと移る。
「うん、おいしい魚を食べた後は元気いっぱいだわ。さあ、作れるだけ頑張って作るわよ」
今日の午後は薬の調合だ。
実はこの作業も実に面倒なもの。作り方だけ聞けば簡単に思えるのだが、少しでも手順をミスればそれだけで品質は低下してしまう。
品質が低下すると、本来の効き目を十分に発揮できなくなるし、最悪まったく効果をなさなくなる。
ベニーが雨の日などで失敗するのはこのせいだ。こればかりは長年の経験による細やかな調整が必要になるのだ。
この日のお昼はすっかり天候が回復しているので、標準的に教えられる方法を実践すれば、ほぼ失敗することはない。お昼まで待ったかいがあるというものだ。
ベニーの薬作りというのは、灯台守で代々受け継がれてきた技術だ。
摘んできた薬草を軽く乾燥させて、器の中で少しずつ水を加えながらすり潰していく。
十分潰れてどろどろになった状態をこねあげて、水分を飛ばせば完成となる。
この加えていく水というのも重要で、不純物の少ない水ほど効果がよくなる。だから、この時の水はたいてい水魔法で発生させた水が使われる。
薬草に含まれる薬効と魔力を含んだ水が反応し合い、薬として完成するのだ。ちなみに普通の水を使ってもいいのではあるが、その際は練り込む際に魔力を注ぎながら作ることになる。水はただのつなぎというわけだ。
それならば湿気の量は質に関係ないように思えるが、その湿気というのが結構大敵だ。
実は、普通の水を含ませた場合、薬草と魔力の反応を阻害してしまうのだ。薬草は水と魔力なら、水の方になじみやすいという性質を持つのだ。
なので、魔力で作った水であるなら薬草は水とともに魔力を取り込んでくれるので、その薬効は十分に発揮されるというわけなのだ。
魔法が使える人なら生活魔法で水を少量作り出せる。普通はこっちの方法が使われる。
ちなみにではあるが、生活魔法で薬を作れば薬師、生活魔法を使わずに作れば錬金術師と呼ばれるらしい。
「うん、今日の品質はばっちりね」
十分な品質の薬を作り出せたベニーは、とても満足そうに笑っている。
雨のせいで昨日は薬を作れなかったとあって、今日はずいぶんと作り込んでしまったものだ。
作業が終わった時には、すでに日が傾き始めていた。
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