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第三章 悪魔、魔境を知る
135泊目 悪魔な少女の秘密
夕食が振る舞われる頃のことだった。眠っていたはずのアサーナは既に目を覚ましていた。時間にしてみればそんなに長くはない。だけど、その短時間でアサーナはしっかりと元気になっていた。
「赤髪、もう大丈夫なのか?」
「平気よ。ソラも悪魔なら分かるわよね?」
「ん~、私はそこまでの回復力はないなぁ……」
どうやらソラは、アサーナの言うことがいまいち信じられないような感じだった。これも、魔境で生まれた悪魔かそうでないかという違いなのかもしれない。
さすがにアサーナの回復の速さには、アークたちもびっくりである。
「驚きましたか、アークさん」
「ああ」
「私たち悪魔って、瘴気の濃いところであればあるほど回復力が高まるんです。それこそ不眠不休ということも可能なんですよ」
「そ、そうなのか?!」
ミリナの説明を聞いて、アークたちは驚いている。
「そうなんです。だから、魔境から少し離れたここでは、私たちは少し弱体化してるんですよね。それでもこれだけ回復が早いのは、瘴気を含んだ食品や水があることと、あの墓場のおかげなんです。そうでなければ、アサーナちゃんの回復はもっとかかっていると思いますよ」
ミリナは説明しながら笑っていた。
だが、その話を聞いて、アークたちはなんとか理解しているようである。
「ところで、それだったらソラなんかはどうなるのかしら」
テレサがふと疑問に思って、質問を投げかけている。
その質問を聞いたミリナは、もしかしたらという仮説を話し始める。
「おそらくですが、私たちの年齢が関係していると思います」
ミリナが立てた仮説というのは、悪魔として誕生してからの年齢というものだった。
アサーナとミリナは誕生からまだ十一年少々だ。この時期の悪魔は、普通はまだ自我が芽生えておらず、そのあたりを適当にうろついて過ごしている時期にあたる。
それに比べて、ソラは五十年、リーフィやハナは百年以上、フォスやロックに至っては五百年以上も生きている。
しっかりと瘴気を吸収して成長の完成した悪魔たちと比べると、アサーナとミリナの二人は未熟すぎるのだ。それゆえ、瘴気をうまくコントロールできずに疲れやすくなるのではないかというのがミリナの立てた仮説である。
「アサーナちゃんは能力を使うばかりですからね。私は浄化の魔法で瘴気を吸収しますので、アサーナちゃんに比べれば疲れにくいんですよ」
「そういうことなのか……」
「はい。仮説ではありますけれど、この説明が一番しっくりくると思います」
話を終えたミリナは、とてもまじめな表情をしていた。
つまり成長途中の不安定な時期にあるというわけだ。こういうところは人間と似たようなところがあるなと感じたアークたちである。
ミリナとの話が終わった頃だった。アークたちのところにアサーナがやって来る。
「アークさんたち。明日、魔境まで付き合ってもらってもいいかしら」
「どうしたの、アサーナちゃん」
アサーナが話し掛けると、なぜかミリナが真っ先に反応していた。
「試作品だけど、瘴気を吸い取る装置ができたのよ。ただ、まだ理論上の完成だから、実際に動くかどうかを試してみたいの。頼まれてくれないかしら」
ミリナに一度視線を向けたアサーナだったが、改めてアークたちにこのようなお願いをしていた。
その顔は子どもらしく上目遣いであり、様子から察するに絶対付き合ってくれと言わんばかりの様子だった。
だが、それが分かっていても、アークたちは断るつもりはない感じである。
最初にやって来た時には助けてもらったということもあるし、その後も妹のセミルの面倒を見てもらっている。アークたちからすれば、二人は妹みたいな感じなのだ。
「分かった。そこまで言うのなら協力するよ」
「ほんと? よかったわ」
断られると思っていたのか、アサーナはほっとした表情を浮かべている。この反応にはミリナも含めてちょっと驚いた感じである。
「それじゃ、明日の朝、ロビーで披露をさせてもらうわ。私の持つ魔道具技術と、ハナさんの持つ錬金術の知識、その融合による新しい技術のお披露目よ」
にんまりと笑顔を浮かべたアサーナは、そのまま事務所の方へと引っ込んでいっていた。
実に楽しそうなアサーナの姿を見て、アークたちはつい笑ってしまう。
「相変わらず妙に自信がある感じよね」
「だな。あれがあいつのいいところではあるんだが、今回ばかりはなんか不安だぜ」
「あの悪魔なら大抵は解決してしまうんだろうが、俺もアークと同意見だ」
アサーナのことは信じたいのだが、なぜか妙な不安を感じるアークたちである。
とはいえ、散々世話になっているので信じてやりたい。なんともいえないジレンマのような感覚に陥っているようだった。
「ご、ご無事をお祈りしてますね。それでは、私も仕事がありますので、一度失礼致します」
アークたちの不安を目の当たりにして、ミリナはなんともいたたまれない気持ちで仕事へと戻っていった。
「大変だな、ミリナも」
「ぐいぐいと引っ張っていくアサーナちゃんだもの。引っ込み思案なミリナちゃんも大変だと思うわよ」
「うむ。苦労していそうだな」
ミリナの様子を見て、つい同情をしてしまうアークたちである。
なんにしても、アサーナの実験に付き合うと決めた以上は、三人も覚悟を決める。
アサーナが作り出した装置とはどのようなものなのか。それを楽しみにしながら、食事を終えた三人は部屋へと移動していったのだった。
「赤髪、もう大丈夫なのか?」
「平気よ。ソラも悪魔なら分かるわよね?」
「ん~、私はそこまでの回復力はないなぁ……」
どうやらソラは、アサーナの言うことがいまいち信じられないような感じだった。これも、魔境で生まれた悪魔かそうでないかという違いなのかもしれない。
さすがにアサーナの回復の速さには、アークたちもびっくりである。
「驚きましたか、アークさん」
「ああ」
「私たち悪魔って、瘴気の濃いところであればあるほど回復力が高まるんです。それこそ不眠不休ということも可能なんですよ」
「そ、そうなのか?!」
ミリナの説明を聞いて、アークたちは驚いている。
「そうなんです。だから、魔境から少し離れたここでは、私たちは少し弱体化してるんですよね。それでもこれだけ回復が早いのは、瘴気を含んだ食品や水があることと、あの墓場のおかげなんです。そうでなければ、アサーナちゃんの回復はもっとかかっていると思いますよ」
ミリナは説明しながら笑っていた。
だが、その話を聞いて、アークたちはなんとか理解しているようである。
「ところで、それだったらソラなんかはどうなるのかしら」
テレサがふと疑問に思って、質問を投げかけている。
その質問を聞いたミリナは、もしかしたらという仮説を話し始める。
「おそらくですが、私たちの年齢が関係していると思います」
ミリナが立てた仮説というのは、悪魔として誕生してからの年齢というものだった。
アサーナとミリナは誕生からまだ十一年少々だ。この時期の悪魔は、普通はまだ自我が芽生えておらず、そのあたりを適当にうろついて過ごしている時期にあたる。
それに比べて、ソラは五十年、リーフィやハナは百年以上、フォスやロックに至っては五百年以上も生きている。
しっかりと瘴気を吸収して成長の完成した悪魔たちと比べると、アサーナとミリナの二人は未熟すぎるのだ。それゆえ、瘴気をうまくコントロールできずに疲れやすくなるのではないかというのがミリナの立てた仮説である。
「アサーナちゃんは能力を使うばかりですからね。私は浄化の魔法で瘴気を吸収しますので、アサーナちゃんに比べれば疲れにくいんですよ」
「そういうことなのか……」
「はい。仮説ではありますけれど、この説明が一番しっくりくると思います」
話を終えたミリナは、とてもまじめな表情をしていた。
つまり成長途中の不安定な時期にあるというわけだ。こういうところは人間と似たようなところがあるなと感じたアークたちである。
ミリナとの話が終わった頃だった。アークたちのところにアサーナがやって来る。
「アークさんたち。明日、魔境まで付き合ってもらってもいいかしら」
「どうしたの、アサーナちゃん」
アサーナが話し掛けると、なぜかミリナが真っ先に反応していた。
「試作品だけど、瘴気を吸い取る装置ができたのよ。ただ、まだ理論上の完成だから、実際に動くかどうかを試してみたいの。頼まれてくれないかしら」
ミリナに一度視線を向けたアサーナだったが、改めてアークたちにこのようなお願いをしていた。
その顔は子どもらしく上目遣いであり、様子から察するに絶対付き合ってくれと言わんばかりの様子だった。
だが、それが分かっていても、アークたちは断るつもりはない感じである。
最初にやって来た時には助けてもらったということもあるし、その後も妹のセミルの面倒を見てもらっている。アークたちからすれば、二人は妹みたいな感じなのだ。
「分かった。そこまで言うのなら協力するよ」
「ほんと? よかったわ」
断られると思っていたのか、アサーナはほっとした表情を浮かべている。この反応にはミリナも含めてちょっと驚いた感じである。
「それじゃ、明日の朝、ロビーで披露をさせてもらうわ。私の持つ魔道具技術と、ハナさんの持つ錬金術の知識、その融合による新しい技術のお披露目よ」
にんまりと笑顔を浮かべたアサーナは、そのまま事務所の方へと引っ込んでいっていた。
実に楽しそうなアサーナの姿を見て、アークたちはつい笑ってしまう。
「相変わらず妙に自信がある感じよね」
「だな。あれがあいつのいいところではあるんだが、今回ばかりはなんか不安だぜ」
「あの悪魔なら大抵は解決してしまうんだろうが、俺もアークと同意見だ」
アサーナのことは信じたいのだが、なぜか妙な不安を感じるアークたちである。
とはいえ、散々世話になっているので信じてやりたい。なんともいえないジレンマのような感覚に陥っているようだった。
「ご、ご無事をお祈りしてますね。それでは、私も仕事がありますので、一度失礼致します」
アークたちの不安を目の当たりにして、ミリナはなんともいたたまれない気持ちで仕事へと戻っていった。
「大変だな、ミリナも」
「ぐいぐいと引っ張っていくアサーナちゃんだもの。引っ込み思案なミリナちゃんも大変だと思うわよ」
「うむ。苦労していそうだな」
ミリナの様子を見て、つい同情をしてしまうアークたちである。
なんにしても、アサーナの実験に付き合うと決めた以上は、三人も覚悟を決める。
アサーナが作り出した装置とはどのようなものなのか。それを楽しみにしながら、食事を終えた三人は部屋へと移動していったのだった。
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