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第16話 邪神ちゃんとモーモーパニック
さてさて、フェリスたちの行動は、基本的にフェリスとメルがセットで動き、ルディは単独で適当に過ごしている。ルディは孤高の狼を気取っているらしく、フェリスにウザ絡みする割には一人での行動が大好きなのだ。本当にうざい奴である。
それはさておき、今日のフェリスはメルの実家を訪れる。牛たちの経過観察のためだ。なにせフェリスがいっぱい愛でてあげたら極上の牛になってしまったのだから。フェリスには義務みたいなものができてしまっているのだ。
「おじさーん、居ますかー?」
「お父さん、ただいまーっ!」
フェリスとメルがそれぞれに声を掛ける。しばらくすると、奥からバタバタと走ってくる音が聞こえてきた。
「おお、これは天使様! メルも元気そうだな。ちゃんと天使様に仕えているかい?」
「うん、ちゃんとやってるよ。お父さんの方こそ大丈夫?」
メルの父親が二人に声を掛けてくる。
「おう、近所で手の空いてる連中に声を掛けて手伝ってもらってる。あの数を相手となると俺たちだけでは対処しきれんからね」
メルの父親はメルの心配ににかっと笑って答えていた。牛の世話は大変だろうに、なんでこんなに生き生きしているのだろうか。娘につらい姿は見せられないって事かも知れない。父親ってどうしてこう虚勢を張るのだろうか。
「まぁ元気そうで何よりだけど、今日は牛を見せてもらってもいいかしら」
「ええ、天使様でしたら歓迎ですとも。ささっ、どうぞお入り下さい」
フェリスが声を掛けると、メルの父親はさも当然のようにフェリスを牧場へと案内する。メルもそれについて行った。
牧場に足を踏み入れると、牛たちがぞろぞろとフェリスに近寄ってきた。相変わらずの懐かれ具合のようで、手伝いに来ていた村人たちが驚いていた。
「こらこら、くすぐったいってば」
牛にもみくちゃにされかけるフェリスだが、以前同様に牛たちは節度を持って交代しながらフェリスにじゃれついていた。牛だからといってもその辺の加減は分かるようである。
「すげえな、俺たちだと苦しいくらいにみんな寄ってくるんだがな……」
その様子に手伝いの村人は驚きを隠せなかった。
「これがフェリス様のお力なのです」
どういうわけかドヤ顔を決めるメルである。君の力じゃないでしょうが。
手伝いの村人とメルたち親子がいろいろとやり取りしている中で、フェリスは今日も牛の頭をよしよしと撫でている。フェリスに撫でられている間の牛たちの顔といったら、それはとても気持ちよさそうである。
「おー、フェリス。なんか楽しそうだな!」
そこへ突如としてルディがやって来た。いきなりの暑苦しい奴の登場に、牛が少々落ち着きを無くしている。
「こら、ルディ。いきなり魔力解放した状態で来るから、牛たちが混乱にしてるじゃないの。もう少し考えなさい!」
フェリスは牛たちを落ち着かせながら、ルディを叱っている。
「うるさいなぁ、そこまで怒る事ないだろうに……」
ルディは耳に指を突っ込んで、フェリスのお小言を聞かないにしている。
「あんたねえ……。朝飲んでるミルク、ここの牛たちから採れたものよ? そんな事言うなら、朝のミルク抜きにするからね?」
「げっ、それは困るな。あれが無いと一日始めらんなくなっちまうじゃねーか」
フェリスが罰を与えようとすると、ルディはあからさまに困った顔をする。どうやら朝食に出てくるミルクがとても気に入っているようだ。それを取り上げるというのは、ルディに対して効果的な罰になるようである。
「飲みたかったら、牛に驚かせた事を謝りなさい。彼らだって神経質なんだから、許してもらえるかは知らないけどね」
フェリスにこう言われると、ルディはぐぬぬと唸りながらも牛に泣きついていた。ミルクの魅力には勝てなかったようである。すると、牛たちはルディにも群がり、フェリスにしていたのと同じ事をルディにも行い始めた。元々が獣であるせいか、どうも通じるところがあるようである。
「おう、よく見たらこいつら可愛いな!」
表情も機嫌もころころ変わるルディである。すっかりご機嫌になってしまっていた。
「本当に単純なんですね」
牛の世話をしながら、メルはフェリスに話し掛ける。
「そうなのよ。分かりやすいんだけど気が変わりやすいし、何かと相手にするのが大変なのよね」
「フェリス様もかなり苦労されたんですね」
「……分かってくれる?」
「……はい」
ルディの様子を見ながら、フェリスとメルの間に何とも言えない連帯感が生まれた。
「なんだよ、お前たち。俺も混ぜやがれっ!」
「いやよ。あんたはしばらく牛と戯れてなさい」
本当にルディはすぐにフェリスと絡もうとする。どのみち牛に囲まれて身動きは取れない。下手な事をすれば朝のミルクが没収になるのだから、ルディも強引に動く事ができないのだ。なんとかフェリスのところに行きたいルディだが、牛も構えと言わんばかりにルディを取り囲んでいる。
「うおーっ! フェリス、俺と遊べっ!」
「やーよ。今日は牛たちの確認をするって決めたんだから。もうしばらくそうしてなさい」
唸るルディは放っておいて、この日のフェリスはメルと一緒に牛たちの状態を確認して過ごしたのだった。終わる事にはルディがボロボロになっていたのは言うまでもない事だった。
それはさておき、今日のフェリスはメルの実家を訪れる。牛たちの経過観察のためだ。なにせフェリスがいっぱい愛でてあげたら極上の牛になってしまったのだから。フェリスには義務みたいなものができてしまっているのだ。
「おじさーん、居ますかー?」
「お父さん、ただいまーっ!」
フェリスとメルがそれぞれに声を掛ける。しばらくすると、奥からバタバタと走ってくる音が聞こえてきた。
「おお、これは天使様! メルも元気そうだな。ちゃんと天使様に仕えているかい?」
「うん、ちゃんとやってるよ。お父さんの方こそ大丈夫?」
メルの父親が二人に声を掛けてくる。
「おう、近所で手の空いてる連中に声を掛けて手伝ってもらってる。あの数を相手となると俺たちだけでは対処しきれんからね」
メルの父親はメルの心配ににかっと笑って答えていた。牛の世話は大変だろうに、なんでこんなに生き生きしているのだろうか。娘につらい姿は見せられないって事かも知れない。父親ってどうしてこう虚勢を張るのだろうか。
「まぁ元気そうで何よりだけど、今日は牛を見せてもらってもいいかしら」
「ええ、天使様でしたら歓迎ですとも。ささっ、どうぞお入り下さい」
フェリスが声を掛けると、メルの父親はさも当然のようにフェリスを牧場へと案内する。メルもそれについて行った。
牧場に足を踏み入れると、牛たちがぞろぞろとフェリスに近寄ってきた。相変わらずの懐かれ具合のようで、手伝いに来ていた村人たちが驚いていた。
「こらこら、くすぐったいってば」
牛にもみくちゃにされかけるフェリスだが、以前同様に牛たちは節度を持って交代しながらフェリスにじゃれついていた。牛だからといってもその辺の加減は分かるようである。
「すげえな、俺たちだと苦しいくらいにみんな寄ってくるんだがな……」
その様子に手伝いの村人は驚きを隠せなかった。
「これがフェリス様のお力なのです」
どういうわけかドヤ顔を決めるメルである。君の力じゃないでしょうが。
手伝いの村人とメルたち親子がいろいろとやり取りしている中で、フェリスは今日も牛の頭をよしよしと撫でている。フェリスに撫でられている間の牛たちの顔といったら、それはとても気持ちよさそうである。
「おー、フェリス。なんか楽しそうだな!」
そこへ突如としてルディがやって来た。いきなりの暑苦しい奴の登場に、牛が少々落ち着きを無くしている。
「こら、ルディ。いきなり魔力解放した状態で来るから、牛たちが混乱にしてるじゃないの。もう少し考えなさい!」
フェリスは牛たちを落ち着かせながら、ルディを叱っている。
「うるさいなぁ、そこまで怒る事ないだろうに……」
ルディは耳に指を突っ込んで、フェリスのお小言を聞かないにしている。
「あんたねえ……。朝飲んでるミルク、ここの牛たちから採れたものよ? そんな事言うなら、朝のミルク抜きにするからね?」
「げっ、それは困るな。あれが無いと一日始めらんなくなっちまうじゃねーか」
フェリスが罰を与えようとすると、ルディはあからさまに困った顔をする。どうやら朝食に出てくるミルクがとても気に入っているようだ。それを取り上げるというのは、ルディに対して効果的な罰になるようである。
「飲みたかったら、牛に驚かせた事を謝りなさい。彼らだって神経質なんだから、許してもらえるかは知らないけどね」
フェリスにこう言われると、ルディはぐぬぬと唸りながらも牛に泣きついていた。ミルクの魅力には勝てなかったようである。すると、牛たちはルディにも群がり、フェリスにしていたのと同じ事をルディにも行い始めた。元々が獣であるせいか、どうも通じるところがあるようである。
「おう、よく見たらこいつら可愛いな!」
表情も機嫌もころころ変わるルディである。すっかりご機嫌になってしまっていた。
「本当に単純なんですね」
牛の世話をしながら、メルはフェリスに話し掛ける。
「そうなのよ。分かりやすいんだけど気が変わりやすいし、何かと相手にするのが大変なのよね」
「フェリス様もかなり苦労されたんですね」
「……分かってくれる?」
「……はい」
ルディの様子を見ながら、フェリスとメルの間に何とも言えない連帯感が生まれた。
「なんだよ、お前たち。俺も混ぜやがれっ!」
「いやよ。あんたはしばらく牛と戯れてなさい」
本当にルディはすぐにフェリスと絡もうとする。どのみち牛に囲まれて身動きは取れない。下手な事をすれば朝のミルクが没収になるのだから、ルディも強引に動く事ができないのだ。なんとかフェリスのところに行きたいルディだが、牛も構えと言わんばかりにルディを取り囲んでいる。
「うおーっ! フェリス、俺と遊べっ!」
「やーよ。今日は牛たちの確認をするって決めたんだから。もうしばらくそうしてなさい」
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