運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと

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第3話 遭遇の怪物

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 顔の真横を通り過ぎた剣。
 俺の背後で、何か肉が裂けるような鈍い音が聞こえてきた。

 ドサリと地面に倒れる音に次いで振り返る俺が見たのは……。

「なっ!? ぁ……!」

 絶句とはこういう事だろう。そこに居たのは爪を尖らせた巨大な熊のような生き物。
 脳天に剣が突き刺さり、絶命していた姿だった。

「……へ?」

 後ろを見て初めてわかる事とはこういう事を言うのだ。
 こいつの投げた剣によって、俺は死なずに済んだという訳か。

「はは、は……っ!」

 無意識に乾いた笑いが零れる。助かった? いや、違うな。棚見が居なければ俺は死んでいた。

「香月くーん、だいじょぶー? なんかでっかい熊みたいなんいたからさー」

「お、あぁ……」

「ほんと大丈夫? これ何本? ぶんぶんぶんって、揺らしたらわかんないか。あははは!」

 目の前までやって来て指を三本立てた棚見が手を揺らしていた。
 この謎行動のおかげか、俺も正気を取り戻して来たような気がする。

 少なくともさっきよりはまともな頭だ。自分の中に冷静さを感じる。

「んしょっと。……なかなか抜けないな。よいしょっ……と!」

 棚見が熊の化け物の脳天に突き刺さってる剣の柄を握り、四苦八苦しながら抜いていた。
 切り抜かれた剣には新鮮な血が滴っており、これだけでリアルが売りのスプラッター映画のワンシーンを彷彿とさせていた。

「うわグロぉ……。まあいいや」

 少し引き気味の表情を浮かべながら、その辺に落ちていた大き目の葉っぱを拾い上げ剣に付着した血液を拭い取っていく。

 これが意外と様になっているのだから、まるで殺害現場を目撃したような気分になってくる。
 いや実際殺害現場といえばそうなんだけれど……。

「う~ん、これでいい感じかな。じゃあ……ほい!」

 刀身を覗き込んでいた棚見は、ふき取った出来栄えに満足して……それをどういうわけか俺の前に差し出してきた。

「こっ……れはな」

「何って、これあげるよ。この森だって危ないしさ、どんなオンボロでもないよりはマシでしょ?」

 何を言っているんだというような不思議な顔で俺を見る奴にこそ、俺は不思議な感覚を覚えずにいられなかった。

 刃がこぼれているとはいえ、折角自分で見つけた武器を何故渡す? こんなコンビニで買った駄菓子かのように、ポンと渡せる代物じゃないはずなんだが?

 一体何が目的だ? まだ把握出来ていない俺の能力に対して投資してるとでもいうのか?

「まあま、もらえるものはもらっときなって。ほら、余り物には福があるってあれ? なんか違うなぁ。まあそんな感じのあれな感じでさ。ここ危ないし、損じゃないっしょ」

「お、おぅ……」

 こいつの真意は読めないが、護身用に持っておいて損は確かにない。
 こいつを振り回せる筋力が俺にあるわけじゃないが、お守り程度には役立つだろう。

 借りを作りたくはないが、ここまで見てきたこいつの性格から断り切れるものじゃない。
 素直に受け取ることにした。

「ほい! ……じゃあしゅっぱーつ! 再開ってね!」

 そう言うとやつはまた先頭を歩き始めた。

 しかし剣なんていうものは初めて持ったが、思ったより重いな。

 鉄パイプより取り回しは良くなさそうだ。キッチリと筋トレした人間なら初めてでもまっすぐ振り下ろしたりは出来るんだろうが、俺には精々勢いつけて横薙ぎするか、下段突きくらいが関の山だろう。

 少なくともさっきの化け物みたいなのを相手出来たりは……ん?


 そういや何で棚見はこいつを勢いよくぶん投げられたんだ? それもあんなガタイのある熊の化け物の脳天に突き刺さるくらいに。刃こぼれだってしてるのに……。


「おーい遅れてるぞ~。一人じゃ危ないからさ、はぐれないようについてきて~」

 前方から聞こえてくる引率気分の声に考えを中断し、俺も再び歩き始めた。


 ◇◇◇


 何が楽しいのか周りを見ながらはしゃいでる棚見の声を無視しながら、歩き続けること約三十分。
 スマホでどれだけ時間が経ったかを確認した後は、その電源を落とす。

 こっちじゃ何の役にも立たない電子の板だ。
 充電も出来ない以上、こいつの出番はもう無さそうだ。

 懐に収める。名残惜しいが、仕方ない。
 ずっと遊んでいたソシャゲも出来ないのは辛いが、生きる方が何倍も価値のある行為なのは考えるまでも無い。

「はぁ……」

 それでもまだこぼれるため息。現代人の生活の一部、いや、最早肉体の一部だと言っても過言ではない代物を自分から切り離さなきゃならないのは……。

「う~ん、ちょっとまずいかなこれ」

 不意に棚見が静かな声でつぶやいた。
 さっきまでのテンションが鳴りを潜め、足まで止めていた。

 今度は何だ?

「なんだかな~。やっぱり簡単には抜けさせて貰えそうにない感じ」

「ど、どういう……?」

「来たぜ……!」

 来たとは何か?
 その疑問を深く考える間もなく、突如として森の奥の茂みから何かが飛び出してきた。

「っ!?」

 思わず身が竦み上がった。

 茂みから飛び出した何かは、猪のような生き物だった。ただしそのサイズが桁違いだ。
 体高が俺の身長くらいはあるんじゃないだろうか? 全長は……考えたくもない。

 そんな化け物がいきなり現れたのだ。驚かない方がおかしいだろう。

「うげぇ、でっかぁ……何なんこいつ?」

 対して棚見はそんなリアクションをしつつ心底嫌そうな声を出していた。
 溢れ出す殺気とでも言うんだろうか? 熊の化け物とは比べ物にならないほどの迫力を感じる。ゲームに例えるならダンジョンのボスのような風格と言えるかもしれない。

(これはまずい……! どう考えても今の俺達の手に負えるもんじゃないぞ!)

 頬を冷汗が伝って落ちる。
 あの化け物熊の比じゃない! ただの学生だったのに、こんなのとまともにやりあえる訳無い。

 獲物の品定めでもしてるのか、睨んでくるだけでまだ襲っては来ていない。が、それも時間の問題だろう。

「香月くん――時間稼ぎくらいはしとくから」

「え?」

 俺が返事をする間も無く、棚見は化け猪に向かって走り出していた。
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