運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと

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第26話 今日を始める

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 互いに持ち寄った食料を食べ、明日に備えてテントに入る。
 果たしてあれが最後の晩餐になるのか……それが明日の結果しだい。

 倒せ無かったら逃げても死ぬ。
 生き残るにはあのドラゴンを封印するしかない。

 寝袋に包まりながらも、俺の胸にはモヤのようなものがまだ渦を巻いたままだ。
 だが……。

 隣を見れば、棚見が俺と同じように寝袋に包まりながら眠っていた。
 その顔は穏やかであり、到底明日に人生を掛けた決戦が待っているという様には見えない。

 こいつは言った、明後日からも旅がしたいと。

 俺の胸は晴れてはいない。だが、だが絶望に打ちひしがれてもいないのは……その言葉が頭の底にこびりついたからなのか。
 後ろ向きな考えに囚われやすい俺とは対照的に、棚見は前向きに希望を口にした。

(俺は……、また旅がしたいのか? こいつと。死にたくはない、けれど最悪の結果をつい考え込んでしまう。それでも、生き残れたなら。その時は――)

 ――素直に聞き入れようか、今度こそ。

 本当は、他人を信用し切れない俺の一人旅のはずだったのに。
 勝手について来たこいつを、煩わしくも思っていたのに。

 なのに不満も言わずに隣を歩くどころか、むしろ振り回してくる棚見を、今はもう無碍に扱えなくなってきている自分がいる。

 友達。
 家族以外に親しい関係を築くのも怖くなっていた俺に、新しく友人を受け入れる器量について再び考え直させる気を起こさせた。

(……あの時から他人を信じられなくなって、ずけずけと関わってこようとする奴なんて毛嫌いしていたってのに。芯の無い男だな、俺も。こいつの本心だってわかんないってのにな)

 人の心に無理矢理入り込もうとしてくる感じとは違う、自分を押し付けて来るくせに相手を蔑ろにしない。変わった男だ。

 これが全部嘘なら、俺はもう立ち直れないだろう。演技でやれる範疇を超えてる。

「……もう寝るか」

 こういう時間だからか、色々な考えが脳内に巡り巡っていた。全くバカらしい話だな。
 俺は目を閉じることにした。

 でも明日もこんな感じに一日を終えたなら……俺は自分に呆れるだろうな。
 安堵しながら。

 …………………………。

「……ん……っ……」


「…………おやすみ。頑張るから、オレ……」

 ◇◇◇

 清々しい鳥の鳴き声が聞こえてくる。
 とうとう朝が訪れた。命運を決める一日の始まりだ。

「ふぁ~……よく寝たびぃ。よーし、今日も一日元気にガンガン行こうぜ」

「朝から元気だなお前……こんな時だってのに」

 そうこんな時だってのに、いつもの感じで相変わらずの棚見が始まった。
 背中を伸ばしながらあくびをして、それでテンションが起動する。
 こいつの変わらなさが時々羨ましくなるな。

「さ、もう出ようぜ。ルシ姉さんが外で待ってるかもじゃん」

 そう言うとテントの入り口を開く棚見の動作と連動して、朝の光が舞い込んでくる。
 気持ちのいい朝だ。いつもの朝を今日は堪能したい。

 二人して外へと出ると。隣に建てたテントの入り口が開いていた。
 昨日の焚火跡の前の椅子にルシオロが座っている。

 寝起きだからか、寝る前まで着ていたローブを脱いでおり、今は薄手の白いワイシャツに黒いズボンという出で立ちだった。それでいて長い髪を今は結んでいる。
 ラフなキャリアウーマン、そういう印象を与えてくる。
 彼女も旅をしていたらしいのでパジャマの類は持っていないのかもしれない。どうでもいいかそんんなのは。

「おっはよ~姉さん。なんか印象違うねぇカッコイイじゃん」

「おはよう。そんな褒め言葉を言う余裕はあるようね。取り合えず顔でも洗ったら?」

 棚見の挨拶にそう返すと、昨日の夜焚火を消した空の桶に手を翳し、新鮮な水で満たした。

「便利だよね、それってさ。オレも覚えたら出来る?」

「それは貴女次第ね。ただそれ程難しいものじゃないから、そのうち覚えられるんじゃないかしら? そのうちがあれば、だけれど」

 発言が一々怖いな。作戦を成功させなければ俺達に明日は無いのだと警告してくる。

「じゃあ大丈夫っしょ? オレってば、これでも興味持ったら一途なんだよね。献身的? みたいな」

「はいはい。そっちの坊やは……意外と眠れたみたいね。スッキリした顔してるじゃない」

「そう、見せてるだけさ」

「それが出来るだけでも上出来でしょ。坊やのようなタイプは縮こまって何も出来なくなるっていうのが相場だもの」

「あ、香月くんってばやる時はメチャやる男なんだぜ姉さん。どんと頼っちゃってよ」

「そこまで言うなら期待させて貰うわ。あなたの船が大船である事を、ね」

 勝手に人を置いて盛り上がるなよ。余計な期待は背負い込みたくないってのに。

 言われた通りに顔を洗って気を引き締める。
 生活用の便利魔法は俺も覚えておきたい。初歩的な水魔法らしいが、これを応用すれば洗濯にも使えるだろう。
 何時でも服を洗えるのは実際助かる。旅とは衛生管理との戦いでもあるのだから。

 これからも旅を続けられるのなら、色んな事を知りたいな。

 ………………
 …………
 ……

「さて、ご飯も食べ終わったことだし………そろそろ行きましょうか」

 口元をハンカチで拭き終え、ルシオロはそう切り出してきた。

 俺も十分に休養を取り、腹も満たした。もう思い残す事は………というのはこの場合違うか。
 最終目的は作戦を無事に終えて、再び旅を始める事。むしろ心残りがあるくらいがいいかもしれないな。

 焚火の上の鍋も空になり、とうとう俺達の命運を傾ける戦いの挑む時だ。

「オレさ、姉さんの事気に入っちゃったんだよね」

 唐突に棚見が口を開いた。急にどうしたと言うんだ?

「怖い目にあったけどさ。でも、全部終わったらオレ達に魔法教えてよ。そんでどっかでまた会ったらビックリさせてやりたいんだよね」

「……そうね、約束してあげるわ。お互いに生きた先に、二人にあったものを用意してあげる。……さあもういいでしょう」

 この約束は、いつかの為の決意だとでもいうのか。
 二人に流れる独特な空気を完全に読む事は出来ないが、それでも……。
 それでもその決意に身を投じてみるのも悪くない、そう思えた。

 服装を整え、ここに居た痕跡を片づけ、俺達三人は乗り越える為の死地へと歩きだした。
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