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「俺の物になるか?」
エマの男らしい声が聞こえるけど、頭がボーッてしているから何て言っているんだろ?
分からない、早くこの苦しみから逃れたいーーー
椿は、ふっと意識を手放した。
カクンと力なくエマにもたれる、エマもやれやれといった表情をしながらベッドに横に寝かせる。
「ふふ、冗談だったんだけど刺激が強すぎたかしら?」
椿の髪を優しく触れる。
《エマ殿。つばき様の了承を得ずに乱暴な事をするなら、私は見過ごせません。》
「分かってるわよ、私だってそんな事したくないわ。まぁ、今回はコップ一杯だから、このくらいで済んだけど…危なかっしくて目が離せないわね」
《つばき様は見るもの全てが新鮮に感じるんです。エマ殿、つばき様をよろしくお願いします》
「言われなくても大丈夫よ~あんたもゆっくり休んでなさい」
《御意》
影から頭を出したウルにエマは答えると、ウルは影の中へと戻っていく。
息苦しそうに寝息を立てる椿の顔を見ながらエマも横になる。
「ほんと、つばきちゃんってば無防備なんだから。私がケダモノだったらすぐ襲われてるわよ?んもう、可愛い寝息を立てちゃって~これだからいじめたくなるのよね~」
ほっぺをツンツンとしながら、ぐっすり眠る椿を見ている内にエマも寝る事にした。
部屋の灯りを消して、静まり返った室内。
外も暗くなってきてステンドグラスからは月の光が差し込み、カラフルな色合いが部屋に映し出される。椿が起きていたら喜んでいたに違いない。
2人の寝息が聞こえる頃、どこかで鈴の音が聞こえる。
チリーン
チリーン
2人しかいない部屋に人影がゆらゆらと月明かりに照らされ動いている。
人影はゆっくりと椿の方へ近づいていくと、寝ている椿の額に触れる。すると、椿の体から淡いピンク色した煙が影の中へと消えていった。
『これで大丈夫…媚薬は取り除けた』
ポツリと話すと、人影はゆらゆらと月明かりの中に消えていった。
先程まで息苦しそうにしていたが、それが嘘のようにスースー寝息をする椿だった。
◇◇◇◇◇
朝日が差し込み、ステンドグラスからキラキラと明るく照らされる室内に椿は目を覚ます。
「ふぁ~~よく寝た。ん?いつの間に寝ちゃったんだ?って、えっ?何処ここ!?」
「ん~~?起きたの~~?」
食事をした所までは覚えているけど、その後の記憶が無い。
って言うより、この部屋凄くない!?ステンドグラスだよ?普通の窓にはないでしょ!
「おはようつばきちゃん、調子はどう?」
髪の毛を触りながらエマが声をかけてきた。「おはよう!この部屋凄いね!ステンドグラスがあるよ!」と、元気の良い姿を見てエマはもう大丈夫ね。と思った。
部屋を喜んでいるようで、歩き回りながら色々見ている姿を見つめながらエマも背伸びをしながらベットから起きだす。
「ふふ、あんなに喜んじゃって。同じベットで寝てたのに気付いてないわね。まぁ、その方が怒られなくて済むからいいけどね。」
「エマー!この部屋、シャワーの所にも内窓がステンドグラスだよー!」
「はいはい、良かったわね~」
きゃっきゃと見て回っている椿に「子供みたいにはしゃいじゃって~」と呆れながらも可愛いと感じていた。
「ほら、早く着替えて食事に行きましょう?」
「うん!」
準備が終わると部屋を出て、受付に行く。部屋の鍵を預けるためだ。
食事は外でする仕組み。なので、近くのお店を聞くとすぐ隣だと言う。建物を出ると、確かに隣にご飯屋さんがあり既に人だかりが出来ていた。
「あっ!あそこだね!エマ、行こ~」
「ちょっと待って、ーーーはい。つばきちゃんにはこれを持ってね」
「これは?」
エマは行こうとする椿を引き止め、自分の鞄から筒を渡す。
木で加工したものだ。
「お水よ。つばきちゃんはこれを飲んでね」
「えっ?なんで?」
「なんで?あなた、昨日何があったか覚えてないの?」
「昨日?ーーーご飯食べて、起きたら部屋にいた・・?」
頭にはてなマークをしながらコテンと首をかしげると、「このおバカ!」とエマに怒られてしまった。
「あれほど言ったのに、普通に飲んでたでしょ?媚薬入りって話したの忘れたの?」
「あっ・・・・・」
しまった、と言わんばかりの表情をすると深いため息をされてしまった。
もしかして、記憶が無いのはーーーっとチロっとエマを見る。
そして、自分の体を見る。
ジーってエマを見つめると「私に何かしませんよね?」と疑惑の目を向けるとエマがプンプンしながら怒りだした。
「あんたねー、私がいなかったらあのお店でケダモノ達に襲われてたわよ!?急いでここに来なかったらどうなってたか…私を疑ってるの?失礼しちゃうわね、そこらのケダモノと一緒にしないでくれる?!」
「ふーーーん」
「あら?!まだ疑ってるの!?私は何もしてないわよ!ーーーそう。襲って欲しかったのね、それは失礼な事しちゃったわ~はい、じゃぁこれは飲まなくていいから、出されたのを飲みなさい~そうすればお望み通りにしてあげる」
椿から、筒を取りあげながらスタスタ歩いて行ってしまった。
慌てて駆け寄り「ごめーん!嘘嘘!信じてるよ!うん、エマはそんな事しないもんね!」必死に弁解する。
ツーンと怒るエマに謝ると、フハッと笑われてしまった。
「冗談よ、はい。間違えてもこの水以外は飲んだらだめよ?」
「うん!わかった!」
「では、いきましょうか」
無事、飲み物を返してもらいご飯屋さんへ向かう。
いい匂いがしてきて、お腹がグーっとなる。
エマの男らしい声が聞こえるけど、頭がボーッてしているから何て言っているんだろ?
分からない、早くこの苦しみから逃れたいーーー
椿は、ふっと意識を手放した。
カクンと力なくエマにもたれる、エマもやれやれといった表情をしながらベッドに横に寝かせる。
「ふふ、冗談だったんだけど刺激が強すぎたかしら?」
椿の髪を優しく触れる。
《エマ殿。つばき様の了承を得ずに乱暴な事をするなら、私は見過ごせません。》
「分かってるわよ、私だってそんな事したくないわ。まぁ、今回はコップ一杯だから、このくらいで済んだけど…危なかっしくて目が離せないわね」
《つばき様は見るもの全てが新鮮に感じるんです。エマ殿、つばき様をよろしくお願いします》
「言われなくても大丈夫よ~あんたもゆっくり休んでなさい」
《御意》
影から頭を出したウルにエマは答えると、ウルは影の中へと戻っていく。
息苦しそうに寝息を立てる椿の顔を見ながらエマも横になる。
「ほんと、つばきちゃんってば無防備なんだから。私がケダモノだったらすぐ襲われてるわよ?んもう、可愛い寝息を立てちゃって~これだからいじめたくなるのよね~」
ほっぺをツンツンとしながら、ぐっすり眠る椿を見ている内にエマも寝る事にした。
部屋の灯りを消して、静まり返った室内。
外も暗くなってきてステンドグラスからは月の光が差し込み、カラフルな色合いが部屋に映し出される。椿が起きていたら喜んでいたに違いない。
2人の寝息が聞こえる頃、どこかで鈴の音が聞こえる。
チリーン
チリーン
2人しかいない部屋に人影がゆらゆらと月明かりに照らされ動いている。
人影はゆっくりと椿の方へ近づいていくと、寝ている椿の額に触れる。すると、椿の体から淡いピンク色した煙が影の中へと消えていった。
『これで大丈夫…媚薬は取り除けた』
ポツリと話すと、人影はゆらゆらと月明かりの中に消えていった。
先程まで息苦しそうにしていたが、それが嘘のようにスースー寝息をする椿だった。
◇◇◇◇◇
朝日が差し込み、ステンドグラスからキラキラと明るく照らされる室内に椿は目を覚ます。
「ふぁ~~よく寝た。ん?いつの間に寝ちゃったんだ?って、えっ?何処ここ!?」
「ん~~?起きたの~~?」
食事をした所までは覚えているけど、その後の記憶が無い。
って言うより、この部屋凄くない!?ステンドグラスだよ?普通の窓にはないでしょ!
「おはようつばきちゃん、調子はどう?」
髪の毛を触りながらエマが声をかけてきた。「おはよう!この部屋凄いね!ステンドグラスがあるよ!」と、元気の良い姿を見てエマはもう大丈夫ね。と思った。
部屋を喜んでいるようで、歩き回りながら色々見ている姿を見つめながらエマも背伸びをしながらベットから起きだす。
「ふふ、あんなに喜んじゃって。同じベットで寝てたのに気付いてないわね。まぁ、その方が怒られなくて済むからいいけどね。」
「エマー!この部屋、シャワーの所にも内窓がステンドグラスだよー!」
「はいはい、良かったわね~」
きゃっきゃと見て回っている椿に「子供みたいにはしゃいじゃって~」と呆れながらも可愛いと感じていた。
「ほら、早く着替えて食事に行きましょう?」
「うん!」
準備が終わると部屋を出て、受付に行く。部屋の鍵を預けるためだ。
食事は外でする仕組み。なので、近くのお店を聞くとすぐ隣だと言う。建物を出ると、確かに隣にご飯屋さんがあり既に人だかりが出来ていた。
「あっ!あそこだね!エマ、行こ~」
「ちょっと待って、ーーーはい。つばきちゃんにはこれを持ってね」
「これは?」
エマは行こうとする椿を引き止め、自分の鞄から筒を渡す。
木で加工したものだ。
「お水よ。つばきちゃんはこれを飲んでね」
「えっ?なんで?」
「なんで?あなた、昨日何があったか覚えてないの?」
「昨日?ーーーご飯食べて、起きたら部屋にいた・・?」
頭にはてなマークをしながらコテンと首をかしげると、「このおバカ!」とエマに怒られてしまった。
「あれほど言ったのに、普通に飲んでたでしょ?媚薬入りって話したの忘れたの?」
「あっ・・・・・」
しまった、と言わんばかりの表情をすると深いため息をされてしまった。
もしかして、記憶が無いのはーーーっとチロっとエマを見る。
そして、自分の体を見る。
ジーってエマを見つめると「私に何かしませんよね?」と疑惑の目を向けるとエマがプンプンしながら怒りだした。
「あんたねー、私がいなかったらあのお店でケダモノ達に襲われてたわよ!?急いでここに来なかったらどうなってたか…私を疑ってるの?失礼しちゃうわね、そこらのケダモノと一緒にしないでくれる?!」
「ふーーーん」
「あら?!まだ疑ってるの!?私は何もしてないわよ!ーーーそう。襲って欲しかったのね、それは失礼な事しちゃったわ~はい、じゃぁこれは飲まなくていいから、出されたのを飲みなさい~そうすればお望み通りにしてあげる」
椿から、筒を取りあげながらスタスタ歩いて行ってしまった。
慌てて駆け寄り「ごめーん!嘘嘘!信じてるよ!うん、エマはそんな事しないもんね!」必死に弁解する。
ツーンと怒るエマに謝ると、フハッと笑われてしまった。
「冗談よ、はい。間違えてもこの水以外は飲んだらだめよ?」
「うん!わかった!」
「では、いきましょうか」
無事、飲み物を返してもらいご飯屋さんへ向かう。
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