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(ピンイン、媚薬が原因の病気。私しか治せないーーー)
ピタリと動きを止めた椿にエマは嫌な予感がした。
「つばきちゃん、行きましょう」
「・・・・エマ。」
「ダメよ。行きましょう」
「エマ。」
グイッと腕を引っ張るも、動こうとしない椿にエマは低い声で話す。
「つばき、だめだ。よく考えろ」
真剣な表情で椿を見るが、椿はふるふると首を振った。
その瞳は真っ直ぐエマを見る。
「どうなるか分かるだろ?」
「うん、でも…見過ごすなんて出来ないよ」
はっきりと意思を伝えると、エマはぎゅうっと椿を抱きしめながら耳元で囁いた。
「私がそばにいる。絶対に無理はしないって誓うか?」
「うん。誓う。ありがとう、エマ」
心配するエマの背中に手を回し、ポンとする。
椿の頭を撫でると「頑張れ」と言って、抱きしめていた腕を離す。
椿は、痩せこけた修道女に体を向き直しお辞儀をする。
修道女は突然抱き合った2人を見てはいけないものを見てしまったと目を泳がせていたが、椿の言葉に耳を疑った。
「今からピンインを治します。」
「えっ・・・?」
突然、難病だと言われたピンインを治すと言うのだ。ピンインと言う病名もこの国の者しか知らない筈、それも極一部だ。
聞き間違いかと思い、おずおずと聞き返してしまう、
「今、私の聞き間違いでしょうか?治す。と聞こえたのですが?」
「はい。治してみせます」
「うそよ、嘘嘘!誰も治せた事がないのよ!この病気は、クリュス様だって治せなかったのよ!」
取り乱す修道女に椿は冷静だった。
「大丈夫、あなたもピンインにかかっているんでしょう?右腕を見せて」
ビクッと体が跳ねる修道女。誰にも気付かれないようにしていたのに、目の前の女性は言い当てたのだ。
「痛くないゎ。すぐ終わるからね」
右腕をぎゅっと掴み、動かない修道女に椿は優しく声をかけながら近づく。
椿が服の上から右腕に触れると、修道女はガクガク震えだした。
この青紫を見ると皆んな憐れな目で見る。その目が怖くてひたすら隠していたのだ。自分は、ここを任されているのに自分も病気になっていると知られたらーー考えただけで恐ろしい。
ここの人達を守るのは私しかいないのにーーー。
「大丈夫。すぐに治るよ、痛い痛いの飛んでけー」
椿が右腕をさすりながら呪文の様に繰り返すと、修道女の右腕から濃いピンク色の煙が出てきた。その煙がドンドン小さく消えていくと「もう治ったわ」と椿が手を離す。
恐る恐る腕の服を捲る。
「ーーーー無い、えっ?!無い!!」
青紫だった肌は消え、元の肌になっていた。治らないと言われていたのが嘘の様だと涙をポロポロ流し、椿にお礼を言う。
「あっありがっっありがとうっっ!」
泣きじゃくりながらお礼を言う姿に、椿は嬉しくなる。
「これは、おまけだよ。」
修道女の顔を優しく触れ「たくさん食べて、健康になりますように。お肌も綺麗になりますように。おまじない」
すると、痩せこけていた顔が少しずつ赤みがさし、ふっくらとしてきた。ペタペタと顔を触ると骨ばっていた顔がプルンと指を弾く。
涙が止まらなく、溢れ出て修道女は膝をつきながら椿にしがみ付きながらお礼を言う。
「これで、よかったんだよね?」
「えぇ。そうね」
エマに話すと頭を撫でなでしてくれた。
(よかった、治せた。私でも出来たよーー)
不安と緊張があった椿は、エマにもたれるようにして目を閉じた。久々に魔力を使ったので、体力の限界だったのだ。
「つばきちゃん?ちょっと、どうしたの?!」
意識が無い事に気付いたエマは、泣いて喜んでいる修道女に空いている部屋を貸してと言うと、異変に気付いた修道女が慌てて部屋へと案内した。
ベッドに降ろされるとスースー寝息を立てている椿を見て、エマは一安心する。
オロオロしている修道女に、「この事は決して口外しないと誓え。病気を治した事を誰かに話したらタダじゃ済まないからな。」と低い声で言う。
「はぃぃ!!誰にも言いません。神に誓います。」
その言葉を聞くと、しばらくは誰も入れるなと言い部屋から出てってもらう。
スヤスヤ寝ている椿の髪に触れながら
「まったく、ヒヤヒヤしたわよ。魔力が無くなってるじゃない。こんなになるまで人助けをするなんて。ったく、本当お人好しなんだから。」
エマは椿の唇を人差し指でなぞると優しくキスをした。
チュゥゥーーー
枯渇している椿に自分の魔力を上げているのだ。
「っは、このくらいなら大丈夫かしら?無茶ばっかりして。ーーーそれにしても、柔らかい唇ね。後引くわ」
もう一度キスをしようとしたら、影からウルがグルルッと唸っているのが聞こえた。
「冗談よ、冗談。」チッと心の中で舌打ちしながら、エマは椿の寝顔を眺めるのだった。
◇◇◇◇◇
『君は本当に優し過ぎるよ。でも、そこが良いところでもあるけどね。』
「えっーーー誰?」
目を開けると心配そうに覗き混んでいるエマの顔が見えた。
「エマ?ーーわたし?」
(誰かと話していたような?あれ?誰だっけ?)椿は頭に靄があるような感覚だった。
体が重く、怠い。この感覚は前にもある、王子を治した時だ。
「ぁあ、また枯渇したのね」
「つばきちゃん!目が覚めた?大丈夫?」
「エマ、うん。心配かけちゃったねーー」
「もう!魔力も無いのに、無茶して!一歩間違えたら、あなたが危なかったのよ!!」
「ごめん」
エマにぎゅーっと抱きしめられながら、心配させてしまったと反省する。
「ごめん、でも。これで治せるって分かったよ。」
「ーーーつばきちゃん?」
椿の発言にエマは嫌な予感が頭を過る。
「わたし。ここの人達を治したい。」
ピタリと動きを止めた椿にエマは嫌な予感がした。
「つばきちゃん、行きましょう」
「・・・・エマ。」
「ダメよ。行きましょう」
「エマ。」
グイッと腕を引っ張るも、動こうとしない椿にエマは低い声で話す。
「つばき、だめだ。よく考えろ」
真剣な表情で椿を見るが、椿はふるふると首を振った。
その瞳は真っ直ぐエマを見る。
「どうなるか分かるだろ?」
「うん、でも…見過ごすなんて出来ないよ」
はっきりと意思を伝えると、エマはぎゅうっと椿を抱きしめながら耳元で囁いた。
「私がそばにいる。絶対に無理はしないって誓うか?」
「うん。誓う。ありがとう、エマ」
心配するエマの背中に手を回し、ポンとする。
椿の頭を撫でると「頑張れ」と言って、抱きしめていた腕を離す。
椿は、痩せこけた修道女に体を向き直しお辞儀をする。
修道女は突然抱き合った2人を見てはいけないものを見てしまったと目を泳がせていたが、椿の言葉に耳を疑った。
「今からピンインを治します。」
「えっ・・・?」
突然、難病だと言われたピンインを治すと言うのだ。ピンインと言う病名もこの国の者しか知らない筈、それも極一部だ。
聞き間違いかと思い、おずおずと聞き返してしまう、
「今、私の聞き間違いでしょうか?治す。と聞こえたのですが?」
「はい。治してみせます」
「うそよ、嘘嘘!誰も治せた事がないのよ!この病気は、クリュス様だって治せなかったのよ!」
取り乱す修道女に椿は冷静だった。
「大丈夫、あなたもピンインにかかっているんでしょう?右腕を見せて」
ビクッと体が跳ねる修道女。誰にも気付かれないようにしていたのに、目の前の女性は言い当てたのだ。
「痛くないゎ。すぐ終わるからね」
右腕をぎゅっと掴み、動かない修道女に椿は優しく声をかけながら近づく。
椿が服の上から右腕に触れると、修道女はガクガク震えだした。
この青紫を見ると皆んな憐れな目で見る。その目が怖くてひたすら隠していたのだ。自分は、ここを任されているのに自分も病気になっていると知られたらーー考えただけで恐ろしい。
ここの人達を守るのは私しかいないのにーーー。
「大丈夫。すぐに治るよ、痛い痛いの飛んでけー」
椿が右腕をさすりながら呪文の様に繰り返すと、修道女の右腕から濃いピンク色の煙が出てきた。その煙がドンドン小さく消えていくと「もう治ったわ」と椿が手を離す。
恐る恐る腕の服を捲る。
「ーーーー無い、えっ?!無い!!」
青紫だった肌は消え、元の肌になっていた。治らないと言われていたのが嘘の様だと涙をポロポロ流し、椿にお礼を言う。
「あっありがっっありがとうっっ!」
泣きじゃくりながらお礼を言う姿に、椿は嬉しくなる。
「これは、おまけだよ。」
修道女の顔を優しく触れ「たくさん食べて、健康になりますように。お肌も綺麗になりますように。おまじない」
すると、痩せこけていた顔が少しずつ赤みがさし、ふっくらとしてきた。ペタペタと顔を触ると骨ばっていた顔がプルンと指を弾く。
涙が止まらなく、溢れ出て修道女は膝をつきながら椿にしがみ付きながらお礼を言う。
「これで、よかったんだよね?」
「えぇ。そうね」
エマに話すと頭を撫でなでしてくれた。
(よかった、治せた。私でも出来たよーー)
不安と緊張があった椿は、エマにもたれるようにして目を閉じた。久々に魔力を使ったので、体力の限界だったのだ。
「つばきちゃん?ちょっと、どうしたの?!」
意識が無い事に気付いたエマは、泣いて喜んでいる修道女に空いている部屋を貸してと言うと、異変に気付いた修道女が慌てて部屋へと案内した。
ベッドに降ろされるとスースー寝息を立てている椿を見て、エマは一安心する。
オロオロしている修道女に、「この事は決して口外しないと誓え。病気を治した事を誰かに話したらタダじゃ済まないからな。」と低い声で言う。
「はぃぃ!!誰にも言いません。神に誓います。」
その言葉を聞くと、しばらくは誰も入れるなと言い部屋から出てってもらう。
スヤスヤ寝ている椿の髪に触れながら
「まったく、ヒヤヒヤしたわよ。魔力が無くなってるじゃない。こんなになるまで人助けをするなんて。ったく、本当お人好しなんだから。」
エマは椿の唇を人差し指でなぞると優しくキスをした。
チュゥゥーーー
枯渇している椿に自分の魔力を上げているのだ。
「っは、このくらいなら大丈夫かしら?無茶ばっかりして。ーーーそれにしても、柔らかい唇ね。後引くわ」
もう一度キスをしようとしたら、影からウルがグルルッと唸っているのが聞こえた。
「冗談よ、冗談。」チッと心の中で舌打ちしながら、エマは椿の寝顔を眺めるのだった。
◇◇◇◇◇
『君は本当に優し過ぎるよ。でも、そこが良いところでもあるけどね。』
「えっーーー誰?」
目を開けると心配そうに覗き混んでいるエマの顔が見えた。
「エマ?ーーわたし?」
(誰かと話していたような?あれ?誰だっけ?)椿は頭に靄があるような感覚だった。
体が重く、怠い。この感覚は前にもある、王子を治した時だ。
「ぁあ、また枯渇したのね」
「つばきちゃん!目が覚めた?大丈夫?」
「エマ、うん。心配かけちゃったねーー」
「もう!魔力も無いのに、無茶して!一歩間違えたら、あなたが危なかったのよ!!」
「ごめん」
エマにぎゅーっと抱きしめられながら、心配させてしまったと反省する。
「ごめん、でも。これで治せるって分かったよ。」
「ーーーつばきちゃん?」
椿の発言にエマは嫌な予感が頭を過る。
「わたし。ここの人達を治したい。」
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