【転生先が四天王の中でも最弱!の息子とか聞いてない】ハズレ転生先かと思いきや世界で唯一の氷魔法使いだった俺・・・いっちょ頑張ってみますか

他仲 波瑠都

文字の大きさ
66 / 72
第三章

決闘

しおりを挟む
 空は雲一つない快晴だ。

 天から俺を見下ろした時に遮る障害物が無いのは良い事だと思う。

「これなら俺の勇姿を見やすいよな・・・父さん」

 天から見守っているはずの今は亡き父さんに向かって呟く。

 本当の戦いはこれからだ。

 足を肩幅に開き背を大きく仰け反らすと、闘技場内の空気をありったけ吸い込んだ。

 嫌な記憶を腹の底に押し込むように。

 五年前のあの日、父さんを失ってから二度と後悔しない力を得る為、自分なりに修行は積んできた。

 運良く最高の師匠に巡り会え、一緒に苦楽を共にした修行仲間も二人いた。

 幾度となく死を覚悟した過酷な修行は嘘をつかなかった。

 世界中で恐れられている犯罪者組織リターンズの幹部であるデスラー・ハウンドを撃破した俺は王宮にその功績を認められ、めでたく昇進を果たしたのである。

 しかし一部では未だに俺の功績にケチをつけ、昇進に反対する声もあるらしい。

 先輩曰く学院内でも相当な嫌われっぷりとのこと。

 昔の俺ならこの事実を聞き次第、即引きこもって一日かけて枕をびしょ濡れにしていただろう。

 想像に容易いその姿を思い浮かべ、思わず苦笑する。

 だがそれも昔の俺の話であって、今の俺には有り得ない話なのだ。

 俺には尊敬する師匠がいる。

 父さんに託された思いと、先祖が守ってきた村とその村に住む温かい村人がいる。

 軽口を叩き合えるクラスメイトもできた。

 そして俺のハーレム人生を彩ってくれる(予定)の美女四人がいるし────ついでに元女神もいる!

 応援してくれる人たちの顔を思い浮かべながら、闘技場の中央で一刻も早く俺をぶちのめしたくて、待ちくたびれているであろうモーガンの元へ向かう。

「待たせたな」

「逃げずに出てきたのは褒めてやる」

 何様だ、と言ってやりたくなるが安易にそれを口にする精神はとっくの昔に卒業した。

「そりゃどうも」

「この俺様が褒めてやってんだぞ?もっと嬉しそうにしろや」

「嬉しくないもんをどうやって喜べと?」

 忌々しそうにモーガンは舌打ちをする。

 やれやれ、人気と実力トップに君臨する会長なら様になる発言をこいつが言ってもお笑いだろ。

「ふん!試合の前に一つ言っておくことがある。エルバイスよ、お前は一つ重大な過ちを犯した」

 モーガンは俺が握る木刀を指差し、睨むと一言。

「俺様を舐めてんのか?」

 苛立ちの混じる声で俺を威圧した。

「試合してきた相手全員に言われたな」

 武器なんて壊れず相手を倒せれば何使っても個人と自由だろ。

 実際俺は木刀で先輩方に勝ってるし、木刀にも傷一つ見当たらず、充分に武器の性能を発揮して勝利に貢献しくれている。

 こいつは今日限りの俺の相棒だ。

 思ったよりもやれる相棒に段々愛着が湧いてきたというのに、初っ端からもう聞き飽きたそれを言わないで欲しかった。

「木刀を使って何が悪い。俺に負けた時の言い訳作りか?」

「へぇ、言うじゃねぇか。リターンズとかいう胡散臭い組織の幹部を、まぐれで倒したくれぇで調子乗ってんだろ?」

 以前のモーガンならキレ散らかしていた煽りを軽く受け流された。

「ああ、乗ってるさ。俺はデスラーを倒して、それなりの地位と実績を手にした。大切な物を失って無様に泣くだけの俺じゃない。暗い部屋に閉じ籠って、テレビ画面に文句を言ってる過去の俺じゃないんだ!」

 モーガンは特に何も言い返さなかった。

 熱く語ったが後半の部分は「何言ってんだこいつ?」みたいな顔をされ、無性に恥ずかしくなってしまった。うん、これも全てモーガンのせいにしておこう。

 俺はモーガンが両手に握り締める彼の武器に注目した。

「第一お前こそ鉄の棒二本て、人の事をとやかく言う権利ないだろ」

「はっ!浅ぇな」

 バカにした様子でモーガンは言う。

「これはなぁ、数々の試行錯誤を繰り返して辿り着いた俺様が使うのに最適な武器なんだよ。お前なんかの木刀と一緒にすんじゃねぇ!」

 短気な性格は変わってなくて安心したよ。 

「両者、雑談もそのくらいにしなさい」

 審判が咳払いをした。

「だってさ、みんなを待たせるのも悪いしさっさと始めよう」

「つくづく気に食わねぇ野郎だぜ。今更泣いて詫びようが、もう遅いからな!」

 審判が試合の開始を告げる。

「始めっ!!」

 開始と同時にモーガンは後ろへ飛び退いた。

 モーガン自慢の雷魔法にものを言わせて、初手からぶっ込んでくると思っていたので肩透かしを食らった気分だ。

 ここで俺が選ぶ行動は一旦様子見である。

 今までの先輩方と違ってモーガンは普通に強い。

 あいつが持つ二本の棒も何かしらの仕組みが施されているのだろう。てか絶対何かあるはず、じゃなきゃ棒を二つ持って威張るモーガンはただの馬鹿になってしまう。

 俺は木刀を構えると、魔力を練り備えた。

 すると、モーガンにも動きがあった。

「目ん玉かっぽじって見とけ!雷属性に精通するウルガンド家秘伝の技を!!!」 

武雷装ぶらいそう

 魔力の性質が変化し、二本の鉄棒にはバチバチと雷がまとわりつく。

 なおも雷は勢力を増し続け、周りに漏れ出す電磁波が闘技場内の魔法障壁と衝突し火花を散らした。

 モーガンが鉄棒に流す魔力の濃度が何十倍にも膨れ上がった。

 凝縮されて行く雷は徐々にその形を変えると、黄金色の巨大なハンマーと斧に成型したのであった。

「なるほど、鉄棒は持ち手用ってことね」

「その通りだ。俺様に喧嘩を売った自分の愚かさをあの世で後悔しろ!」

 今度は大きく踏み込んでくるモーガン。

 こうなっては迂闊に斬り合いに持ち込めないな。

「会長用に取っておきたかったけど、負けるのも癪だし・・・使っちゃうか」

 俺はバックステップで距離を保ちながら右ポケットに手を入れた。

「ほざけ!俺とお前の格の違いを見せてやる!」

 適当に振り回すだけで、凄まじい威力を誇るハンマーが地面を抉り、鋭い切れ味の斧が空気を切り裂いた。

 俺は右ポケットから手を抜いた。

「あれ、どこに入れたっけか?」
 
 既視感を覚えながら左ポケットに手を突っ込むと、ようやく目当ての物が見つかった。

 目を血走らせて向かってくるモーガンを見て、俺はニヤリと頬を釣りあげたのであった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...