10 / 11
10
しおりを挟む
それから少ししたら部屋に来訪者。
扉が開けるともう私服になった天華くんと…
「お久しぶりです…」
「君は…」
「本日のメニューはいかがでしたか?」
「料理長の樋浦です。」
「君が…あの子」
とても立派になってた。あの頃の気の強そうな眼差しはそのままに大人になってた。
「あのときはあいつを止めてくれてありがとうございました。」
「随分前のことなのにそんな」
「いえ…俺…あいつを止めることできなくて…あの後色々あったんですけど…良かったです。本当にありがとうございました」
「わざわざありがとうございます。今日の夕飯美味しかったです」
「お口に合って良かったです。天華のことよろしくお願いします。天華から聞いてます?俺の初恋あなただったって」
「初恋だったの?」
「あれ?一目惚れだったってお前には言ったよな」
「聞いてたけどまさか初恋なんて」
「だってすげー美人だったし。思わず見つめて固まったよ。それまでそんな綺麗な人なんて天華以外に出会ったことなかったし」
「確かに六華さんあの頃から綺麗だったからね」
「あなたの宝石みたいに綺麗な金色の瞳に釘付けだったんです。真っ黒な髪もキラキラしていて綺麗だなぁって…」
幼少期に気味が悪いと虐められていたこの瞳と髪をそう思ってくれた人がいたことを知って何だか胸の中が温かくなった気がした。
「あ。でも安心してくださいね。俺には今はもう家庭がある。だから貴方をどうこうしようなんて思ってないので。天華はお調子者でたまに抜けてたりするけど良い奴なんでよろしくお願いしますね」
爽やかに笑った彼は再度深くお辞儀をして去っていった
「すいません!遅くなっちゃって」
彼の姿が見えなくなるとガバリと頭を下げる天華くんに苦笑して
「いいよ。仕事だもんね。ありがとう。頑張ってくれて」
「…はぁ…たまんない…可愛い」
「可愛い?俺が?」
自分が何者か明かしてからなんだか天華くんは変だ
「気を悪くしたならすいません」
「言われなれないからなんかくすぐったいだけだよ」
「こんなに可愛いのに本当に彼女いなかったの?」
「いないって。天華くんはいたんでしょ?だったらわざわざ俺にしなくてもいいんじゃない?」
「…確かにいましたよ。でも言ったじゃないですか。見てくれと俺の名前にしか興味がない人しかいなかったって。告白されてすげー最低ですけど断るのも面倒で付き合ってみたりした。けど結局思ってたのと違うってふられるのが常です。」
天華くんはこの旅館の跡継ぎだ。だからきっと後世にここを繋げていかなければならない。
だから男の俺ではダメだ。だから俺を好きだと言うその時間が無駄だと思う。
そのうちこの旅館に見合ったお嫁さんをとって一緒にこの旅館を守っていかなければならない…そのうち捨てられるのならば俺の気持ちはどうしたら良いのかわからなくなる。
俺も人並みに恋できる日が来るのかもしれない。でも…これまで誰にも心をときめかせたことなんて無かった…初めて覚えたこの胸の高鳴り甘い痛みは捨てられた後どこにいくんだろう?
扉が開けるともう私服になった天華くんと…
「お久しぶりです…」
「君は…」
「本日のメニューはいかがでしたか?」
「料理長の樋浦です。」
「君が…あの子」
とても立派になってた。あの頃の気の強そうな眼差しはそのままに大人になってた。
「あのときはあいつを止めてくれてありがとうございました。」
「随分前のことなのにそんな」
「いえ…俺…あいつを止めることできなくて…あの後色々あったんですけど…良かったです。本当にありがとうございました」
「わざわざありがとうございます。今日の夕飯美味しかったです」
「お口に合って良かったです。天華のことよろしくお願いします。天華から聞いてます?俺の初恋あなただったって」
「初恋だったの?」
「あれ?一目惚れだったってお前には言ったよな」
「聞いてたけどまさか初恋なんて」
「だってすげー美人だったし。思わず見つめて固まったよ。それまでそんな綺麗な人なんて天華以外に出会ったことなかったし」
「確かに六華さんあの頃から綺麗だったからね」
「あなたの宝石みたいに綺麗な金色の瞳に釘付けだったんです。真っ黒な髪もキラキラしていて綺麗だなぁって…」
幼少期に気味が悪いと虐められていたこの瞳と髪をそう思ってくれた人がいたことを知って何だか胸の中が温かくなった気がした。
「あ。でも安心してくださいね。俺には今はもう家庭がある。だから貴方をどうこうしようなんて思ってないので。天華はお調子者でたまに抜けてたりするけど良い奴なんでよろしくお願いしますね」
爽やかに笑った彼は再度深くお辞儀をして去っていった
「すいません!遅くなっちゃって」
彼の姿が見えなくなるとガバリと頭を下げる天華くんに苦笑して
「いいよ。仕事だもんね。ありがとう。頑張ってくれて」
「…はぁ…たまんない…可愛い」
「可愛い?俺が?」
自分が何者か明かしてからなんだか天華くんは変だ
「気を悪くしたならすいません」
「言われなれないからなんかくすぐったいだけだよ」
「こんなに可愛いのに本当に彼女いなかったの?」
「いないって。天華くんはいたんでしょ?だったらわざわざ俺にしなくてもいいんじゃない?」
「…確かにいましたよ。でも言ったじゃないですか。見てくれと俺の名前にしか興味がない人しかいなかったって。告白されてすげー最低ですけど断るのも面倒で付き合ってみたりした。けど結局思ってたのと違うってふられるのが常です。」
天華くんはこの旅館の跡継ぎだ。だからきっと後世にここを繋げていかなければならない。
だから男の俺ではダメだ。だから俺を好きだと言うその時間が無駄だと思う。
そのうちこの旅館に見合ったお嫁さんをとって一緒にこの旅館を守っていかなければならない…そのうち捨てられるのならば俺の気持ちはどうしたら良いのかわからなくなる。
俺も人並みに恋できる日が来るのかもしれない。でも…これまで誰にも心をときめかせたことなんて無かった…初めて覚えたこの胸の高鳴り甘い痛みは捨てられた後どこにいくんだろう?
16
あなたにおすすめの小説
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
幸せごはんの作り方
コッシー
BL
他界した姉の娘、雫ちゃんを引き取ることになった天野宗二朗。
しかし三十七年間独り身だった天野は、子供との接し方が分からず、料理も作れず、仕事ばかりの日々で、ずさんな育て方になっていた。
そんな天野を見かねた部下の水島彰がとった行動はーー。
仕事もプライベートも完璧優秀部下×仕事中心寡黙上司が、我が儘を知らない五歳の女の子と一緒に過ごすお話し。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
聖者の愛はお前だけのもの
いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。
<あらすじ>
ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。
ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。
意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。
全年齢対象。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる