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オーダー・巫女の妹の命を救え
8・祈り
しおりを挟む朝ゴハンを食べ終えるとコーヒー、こちらでいう豆茶を淹れると言ってもらえたけれど、これで充分と返して最初から出されていたお水を飲み干し腰を上げる。
さっきパソコンで確認したニルちゃんの正気度は50。
そしてその数値が50台に戻った事で、厄介なデバフが1つ消えていた。
「寝る前にも言ったけど、正気度が48まで下がったニルちゃんのデバフは『体力低下』と『精神力低下』だった。で、妹さんはそれプラス『免疫力低下』。そしてエッチな事とその後に添い寝をしたニルちゃんの今の正気度はちょうど50。で、『精神力低下』のデバフが消えてた。だからさ」
1階のダイニングから2階の妹さんの部屋に向かいながら、ニルちゃんに説明をしておく。
「正気度は59以下になるとデバフが付与されて、ニアの正気度は現在39。つまり1でもし、ん官様に回復していただければ、『免疫力低下』のデバフは消える可能性が高い、ですよね」
「うん。さすがの理解力と想像力だ。でもいつか人前でも使徒様って言っちゃいそうだねえ」
「次からは気をつけるので、もう大丈夫です。お任せください」
妹さんはまだ幼い。
それに年が明けてからは体調の都合で断っているけれど、去年までは幼馴染みや同級生の子が頻繁にお見舞いに訪れてくれていたらしい。
すぐにではなくとも、そんなお見舞いをまた受けられるようになった時、僕が使徒だという隠し事を病気で苦しんでいる妹さんにさせるのは精神的な負担になる。
「それと僕は神官の作法どころか、こっちの世界の常識すら知らない。妹さんの前ではニルちゃんが会話とかからなるべく誘導して。妹さんの体調を見て部屋を出るタイミングまで。終わる時は『そろそろ』とでも言ってくれればいいから」
「わかりました。必ず」
寝る前に精液をMP回復ポーションに製薬しながら話し合い、もしもこの家の家族以外と顔を合わせてしまってどこの誰だと問われたら、僕は2人のお母さんの知り合いの夜神教の神官で、この街で布教活動をしながら妹さんの治癒を祈念するため、亡くなったお父さんが管理していたこの家に併設されているという夜神教の教会をしばらく管理すると口裏を合わせる事に決めていた。
しばらくは、せめて妹さんの病気が治るまでは、その小芝居を家の中でも続けるしかない。
騙しているようで、ウソをついているようで申し訳ないけれど。
おそらくそれが妹さんのためにもなるはず。
「呼ばれるまで僕はドアの前で待ってるよ」
「わかりました。すぐにお呼びできると思います」
ノック。
返事は聞こえない。
それでもニルちゃんは気にせずドアを開け、妹さんの部屋へ姿を消した。
待つ。
かすかに聞こえるニルちゃんの声を聞きながら。
妹さんの病気は、数十万人に一人という確率でしか発症しないかなりの難病であるらしい。
発熱。
吐き気。
それらの初期症状からニルちゃんもそのお母さんも『ただの風邪だろう』と学校を休ませ様子を見ていた。
しかし妹さんの熱は下がらず、やがて絶えず冷や汗でパジャマを濡らすほどの痛みが襲い掛かってきたらしい。
薬屋さんを営みながら家を守りつつ看病を続けるニルちゃんも、2人のために危険な防壁の外へと旅立ったお母さんも、その病気に気づいてあげられなかった自分を責めているんだろう。
誰が悪いという訳ではないのに。
「だから、助けたいな。なんとしてでも。絶対に……」
ドアが開く。
ニルちゃんが僕を招き入れる。
数時間前に闇の中からそっと窺ったベッドには、痩せ細った、けれどもニルちゃんによく似た女の子が横たわっていた。
ニルちゃんの髪は鮮やかな水色で、妹さんは栗色。
目立つ違いはそれくらいだ。
妹さんがここまで痩せ細っていなければ。
「しんか、ん、さま?」
「そうだよ。ムリに話さなくていい。お祈りは、心の中でしてもカマラ神様がお聞きになっておられるからね」
女の子が頷く。
痩せ細った体にはそんな小さな動きですら辛いのか、かわいらしい顔が少しだけ歪む。
この様子じゃさっきパソコンで確認した苦痛度から推測した通り、正気度が低すぎてニルちゃんが僕の精液を調合して投与した鎮痛剤の効果なんて気休めにもなっていないんだろう。
やはり最優先で正気度を回復させなければ。
ニルちゃんの見立てでは、正気度が自分と同じ50にまで回復すればそれなりの鎮痛効果が見込まれるだろうという話だった。
なのでまずは最優先でニアちゃんの正気度50を目指す。
「じゃあニア、お姉ちゃんと神官様と一緒に朝のお祈りをしましょう」
女の子はそっと瞳を閉じる。
やはり頷くのすら大変なのに、さっきは初めて会う神官という僕に気を使って頷きを見せてくれたんだろう。
この子も優しい子だ。
祈る。
心から。
僕を使徒にしたという神様に。
祈る。
どうしても必要な痛みや苦しみならば、そんなのは僕にすべて寄越せと。
「……神官様、そろそろ」
どれほど目を閉じて祈っていたんだろう。
妹さんの体力的にここまでと判断したらしいニルちゃんが言う。
ニルちゃんはステータス上は薬師ではあるけれど、医療ギルドという組織が認可する『水属性魔法医』という医師免許のような資格を取得していて、その試験に受かるには患者のステータスを把握する魔法やスキルがないと話にもならないらしい。
その判断は信用していいはずだ。
「わかりました。それとニルさん」
「はい」
「手当て、という言葉はご存知ですよね」
「はい。それはもちろん」
「あまり世の人々に知られた話ではありませんが、その手当の語源となった故事が夜神教にはありまして。私のような神官が病気の方々の体の一部に触れていると、本当にわずかではありますが苦しさが和らぐという言い伝えがあるのです」
「そうなのですか」
「はい。ですので妹さんの体調を見て可能だと判断した際は私を呼び、手を握るなり額に手を当てるなり。本当に少しの時間だけでもよいので、それを許していただきたいのです」
「それはもちろん。ありがたいお話です」
「では、今のところは私はこれで」
「はい。ありがとうございました」
「いや、見送りは結構。ではニアさん、お大事になさってくださいね。今日からは朝も夜も、私もカマラ神様にニアさんの一日も早い治癒をお祈りしますから」
「あり、がと、です……」
振り返り、唇を噛み締めながらそっとドアを開けて閉める。
部屋を出た僕は足音を殺しながら、できるだけ急いでパソコン部屋へと向かった。
「見てらんないって、神様。一番早くあの子を救うにはどうすればいいんだよ。教えてくれっての、頼むからさあ」
独り言を呟きながら、思いつく単語を片っ端から検索ボックスに打ち込んでエンターキーを押す。
「使徒様」
そんな声が聞こえたので視線を動かしたのと、モニターの時計が08:39となったのはほぼ同時だった。
僕達が起きたのが6時。
このパソコン部屋に戻った時に何時だったのかは覚えていないけど、もうかなりの時間が過ぎていたらしい。
「おかえり。妹さんは眠ったの?」
「はい。先ほどはありがとうございました。お祈りも、手当てのお話で部屋を訪れやすくする機転も」
「3人であれだけ祈って回復した妹さんの正気度は0,5。たったそれだけだ。妹さんが起きて大丈夫そうだったら、またすぐに呼んで」
「はい。おそらく数時間は眠ったままだと思います」
「起きたらわかるようにニルちゃんは妹さんの部屋で待機?」
「いえ。母のエンチャントで、妹が起きると私が嵌めているこの指輪の魔石が小さく何度か光りますので」
「エンチャント? 僕のいた世界じゃ付与魔術って感じの言葉だけど」
「おおよそそのような感じではありますが、製薬と同じくエンチャントには対応した魔法とスキル両方が必要です。そしてそれはどちらも、薬師になるためのものより取得がとても大変なもので」
「へえ。じゃあお母さんは、かなりの実力者なのか」
「はい。冒険者としても、職人としても。今は休業中ですが、1階のエンチャント工房もかなりの人気でした」
「なるほど。それは頼りになりそうだね。ところでさ」
「はい」
「どうやら僕は、苦しんでる子供を見てるのが本当に苦手らしい」
「使徒様はお優しいですから」
「まさか。僕なんてただのクソヤロウだよ」
「そんな言い方をしてはいけません」
「本音だからねえ。で、そんな僕がニルちゃんのクラスチェンジを急ごうとすると、かなりの鬼畜プレイまですると思う。覚悟は?」
「元より。それが死でも滅びでも、使徒様が与えて下さるものでしたら笑顔を浮かべながら受け取って見せます」
「そっか。なら、まずはこうだ。そしたら、モニターの横に座って」
こうだと言いながらニルちゃんの手を取り、その右手の人差し指と中指をしゃぶるように舐めておく。
「はい」
ニルちゃんが昨日と同じようにパソコンデスクに腰掛ける。
今日のパンツは、水色か。
「僕はまだ調べ物がある。オナニーでもしてて」
「っ!? は、はい……」
息を呑んでから、意を決したような表情で大きな乳房に手を伸ばすニルちゃんではなく、さっきから対峙し続けているモニターを睨む。
僕とニルちゃんのステータスポイントをニアちゃんのページで使う事は許されないらしい。
それさえできれば、すぐにでもニアちゃんのHPを増やせるのに。
スキルはそれこそ無数に、星の数ほどある。
魔法だって属性そのものは大別した自然現象の数で足りそうなのに、ステータスポイントを使って取得や貸与するとなるとスキルと同じく途方もない数だ。
それらを1つずつ、見逃しのないように読み込み、役に立つ使い方がないか精査してゆく。
押し殺した喘ぎと、徐々に大きく、粘性を高めてゆく水音を聞くともなしに耳で拾いながら。
「……くっそ。やっぱりクラスチェンジして、ニルちゃんを『夜神教のお抱え薬師』にするしか方法はないのか」
ニルちゃんのお店で一番の人気商品だという『夜神ポーション』。
通常なら1つの効果しかないポーションに3つの効果を詰め込んだそれを中級薬師でしかないニルちゃんが調合できるのは、中級薬師という『クラス』でありながら、夜神教の巫女という『称号』をお母さんから譲り受けたからなんだそうだ。
そしてニルちゃんのクラスを『夜神教のお抱え薬師』にクラスチェンジすればその恩恵がさらに増え、『夜神エリクサー』という万能薬を調合可能になるらしい。
立ち上がる。
神官服を脱ぎ捨てる。
「し、使徒様……」
一番最初に白衣の前をはだけさせた時、視姦や露出の初回ボーナスは発生しなかった。
そして今も、オナニーやオナ見せという類の初回ボーナスは発生していない。
「じゃあこれならどうだよ、神様?」
パソコンデスクに腰掛けてM字開脚した状態で自慰を続けていたニルちゃん。
いわば準備は万端の状態だ。
意識はパソコンの操作とモニターとニアちゃんを治す方法探しに集中してたけれど、視界には自慰をするニルちゃんがずっと入っていた。
そのおかげで勃起し切った、ガマン汁をトロトロと、まるで女性器のように垂れ流す肉棒をニルちゃんの股間に寄せる。
「使徒様。んっく、熱いです。使徒様の。それにおっき、ああっ、ゴツゴツがっ、あっ、んうっ……」
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