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オーダー・巫女の妹の命を救え
7・初めての朝
しおりを挟む「んー。アラームが鳴ってる。もう6時か……」
「おはようございます使徒様。この音は、神器から聞こえているのでしょうか」
「うん。スピーカーなんてないから半信半疑で設定しといたパソコンのアラーム、目覚ましの音だね。ドアを開けてればこっちの部屋にまで聞こえるみたい。それより体調は? ほんとに大丈夫?」
「おかげさまで。昨日までとはまるで違うくらいの調子のよさです。使徒様のお力ですね」
「僕はなにもしてないけどね。じゃあアラームを止めるついでに添い寝で正気度が回復したか見てくる。ニルちゃんは、妹さんの朝ゴハンとかのお世話もあるでしょ。パソコン部屋で待ってるから、妹さんの準備が出来たら教えて」
「ですが、まずは使徒様の朝食を」
「後でいいって。なんならいらないくらいだし」
「ならせめて豆茶を」
「昨日? さっき? 寝る前にハーブティーみたいなのとお水を持ってきたでしょ。飲み物ならそれがあるから平気だって。それより妹さんの部屋に早く」
「ありがとうございます。では、なるべく早くお迎えにまいりますので」
「ゆっくりでいいって」
そう言ったのにニルちゃんは急いで身を起こし、手櫛で髪を軽く梳いてからベッドを降りる。
ここで手か肩を捕まえておはようのキスをできないのは悔しい。
ニルちゃんはほんの少しだけ腕枕から頭を起こすのを残念そうにしていたので、初回ボーナスの事さえなければと悔やまれる。
出会ってまだたった数時間。
それなのに僕は、もしかしたら白衣を身に着けながら何度か僕を見ていたニルちゃんも、最愛の恋人との逢瀬を終えるような気分を抱えて別々のドアへ向かう。
「はいはい。もう起きたって。神器なのに音声認識もないの?」
プレイルームにしか見えない広い部屋に寝ていても聞こえるくらいの音量なので、パソコン部屋に入るとアラームがやかましくて仕方ない。
まずアラームを止め、硬い椅子に座ってモニターに視線を移す。
画面は寝る前とまったく同じ。
まず僕が、そしてそれを伝えるとニルちゃんが、思わず声を上げるほど驚いた通知は夢じゃなかったらしい。
初回ボーナス
処女状態で喉奥射精絶頂
両者に5ステータスポイント付与
初回ボーナス
ファーストキスより先に全身リップ
両者に1ステータスポイント付与
初回ボーナス
ファーストキスより先にフェラチオ
両者に1ステータスポイント付与
初回ボーナス
ファーストキスより先に口内射精
両者に1ステータスポイント付与
「これでステータスポイントは僕もニルちゃんも30か。とりあえず消費ポイント10に有用なのがないか確認していこうかな。いろいろ調べるのはそれからだ」
そういえば、洗顔と歯磨きってどうすればいいんだろう。
寝る前は僕が唾液で全身が、ニルちゃんが精液で上半身の結構な部分がベタついていたので、お風呂に浸かる時間もないしと、生活魔法の一種だというもので一瞬にして清潔にしてもらい腕枕をしながら眠った。
こちらの世界ではもしかしたら、洗顔や歯磨きもあの魔法で済ませるんだろうか。
だとしたら、男の人にとっては生きづらい世界だ。
ニルちゃんは水属性であるという属性魔法を持っている。
属性魔法を得れば、生活魔法も自動で使えるようになるらしい。
人間も亜人も、男はスキルを持って生まれてくる。
その有用さや数は人それぞれ。
1つしかない人もいれば、2つ3つと持って生まれてくる人もいるらしい。
不公平な気もするけれど、人生なんてそんなもの。
財産や生活環境を含めて、言い方は悪いけど親のアタリハズレというのは絶対にある。
先天性の病気や障害、身長や体格、顔だとかナニかの大きさだとか、僕のいた世界でもそれらに不満があって神様を恨んでいた人もたくさんいるだろう。
「でも男はスキルなのに、女の人は間違いなく1つは属性魔法を持って生まれてくるってのはちょっとなあ」
一瞬で僕達2人の体を清潔にした魔法だけじゃない。
初回ボーナスの存在を疑いながらも順番にパソコン部屋に移動してから済ませた寝る前のトイレの後だって、ニルちゃんの生活魔法で汚物を消していた。
それらが女の人にしか使えないなら、この世界の男の人は肩身が狭くって仕方ないだろう。
「んで、僕は生活魔法を使えるようになるのかなあ。消費ステータスポイント5から念入りに見ていこう」
……あった。
消費ステータスポイントは10。
これを取得してしまえば、僕も生活魔法というのを使えるようになれるらしい。
たとえばノービス水属性魔法を持って生まれればその人のレベルが5に上がると同時にノービスが初級になるらしい。
そしてそこからレベル25になって初級が中級に上がるまでにランダムで最低10個が取得できるという初級魔法、それに分類される【ウォーターボール】単体を取得するだけで10もポイントを消費。
それなのに生活魔法はそのすべてが【生活魔法】と一括りにされているのだから、破格の安値なんだろう。
取らないという選択肢はない。
「その下の、なんだこれ。【視界投影型簡易デバイス】? ……うっわ。これも欲しー」
同じく消費ステータスポイントは10。
このパソコンのモニターに映るのとほぼ同じ情報を僕の視界に自由に投影して表示できるそうだ。
ステータスポイントを使用したり、もちろん信徒をクラスチェンジをさせたりはできない。
けれどベッドだろうがどこだろうが、このパソコンの前にいなくても興奮度や快感度を見れるし、ログの出現にも気づけるとなれば是非とも欲しい。
「お待たせしました、使徒様」
そう声をかけながらニルちゃんが戻ったけれど、まだ妹さんの部屋に向かって30分も経っていない。
「ずいぶん早いけど大丈夫?」
「はい。朝食はいつも簡単なものですし、朝の身支度も魔法ですぐ終わるので。それより使徒様のお体や口腔内を清潔にするのを忘れていました。申し訳ありません」
「へーきへーき。んで、その手に持ってるのは僕の服だったりする?」
「はい。亡くなった父のお下がりで申し訳ありませんが、夜神教の神官服となります」
「そっか、お父さんはもう。お悔やみ申し上げます」
「妹が生まれるとほぼ同時、もう12年ですので。ですがお心遣いありがとうございます」
魔法で体や口の中を清潔にしてもらい、いかにも夜を司る神様を崇める宗教らしい黒を基調とした神官服というのを身に着ける。
左胸に神様と思われる小さな肖像、背中に大きな紋章が金糸銀糸で刺繍された貫頭衣だ。
「めっちゃスカートっぽいんだねえ。まるで女物のワンピースだ。それに、上も下もスリットがすんごい。腰の横をちょっと縫ってあるだけじゃんこれ。上は乳首、下はムスコが見えちゃってそう……」
さすがの僕でも女装させられてセックスをした経験なんてないから、初めて着るワンピースみたいな服はどうにも落ち着かない。
「まだ春先ですし、夏までは肌着と黒い長ズボンを中に穿いてもいいかもしれません。後で採寸して注文してきますね」
「いやいいっていいって。お金もかかるだろうし」
僕は無一文。
それどころか今はただの居候だ。
というか、僕がこの世界でお金を稼ぐ手段なんてあるんだろうか。
「ですが」
「いやほんと大丈夫。それにこの服なら、ニルちゃんを押し倒せばすぐに致せそうで便利じゃん?」
ニルちゃんが顔を真っ赤にしてキョドる。
昨日はあんな事までしたのに、ウブでかわいいなあほんと。
「……お口に合わないとは思いますが、1階に朝食を用意してあります。まいりましょう、使徒様」
「それなんだけどさ、使徒ってこの世界でも珍しい存在なんだよね?」
「それはもう」
「じゃあやっぱり、使徒様呼びは禁止だねえ。妹さんだってムダに混乱するだろうし」
「そうでしょうか。……そうかもしれませんね。どのみち、使徒様が街に出られるようになれば隠さなければいけませんし。それでは、この地下の外では神官様とお呼びします」
「名前で、ユウキって呼び捨てでもいいんだけどなあ」
「そ、それはその、心の準備が必要といいますか、そういったものが、はい……」
「やっぱかわいいなあ」
パソコン部屋からプレイルームへ。
そしてカモフラージュのためにか繋がっている、倉庫のような部屋を抜けて、数時間前に2人で駆け上がった階段で1階へ向かう。
「そういえば、僕が街に出るのって大丈夫なの? この世界に国があるのかすら知らないけど僕は戸籍もないし、この街に入った記録だって残ってるはずないよね」
「まあそこはその、カマラ神様のお力で」
「神様の力で不法入国かあ」
「神様方のなさる事はすべて人類の法の上を行きます。お気になさらず」
「そっかあ。で、僕は自由に街に出てもいいの?」
「朝食を召し上がっていただきながら、それもご説明します」
床や壁や天井は当たり前に石造りではあるけれど、木製のテーブルと椅子が並んだダイニング。
そのテーブルの上に用意されていたのは、あまり恵まれた環境にいなかった僕から見ると、だいぶ豪勢で手間のかかった朝食だった。
湯気の上がるスープ。
生野菜のサラダ。
マンガで見るような穴の開いたチーズ。
輪切りにした茹で卵とソーセージのようなもののお皿には、豆と野菜を煮込んだような料理も載っている。
そしておそらく主食になるピタパンのような、小麦粉に水を加えて焼き上げたと思われるものが5枚も。
「僕はもっと簡単なものでいいんだけど、いつも朝ゴハンはこんな感じ?」
「はい。こちらでは一般的な朝食になります」
「一人前しかないけど、ニルちゃんのゴハンは?」
「その、朝はなにかとバタバタしていますので、私は妹の分を準備しながらこのパンの一種、ペタにすべてを挟んでそのまま。行儀が悪くて恥ずかしい話ですが」
「僕の世界じゃ珍しくない食べ方だけどな。じゃあ、ありがたくいただきます」
「はい。それで使徒様、ではなく神官様の外出ですが……」
見た目だけじゃなく味もいい朝ゴハンをいただきながらニルちゃんの説明を聞く。
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