1 / 2
出てはいけない者
しおりを挟む
―ここどこだよ…
スマホを片手に、立ちすくむ俺の前には非常口がある。ツタや苔に固定された非常口は、押し引きしても叩いても蹴っても、ビクともしない。
「誰か、誰かいませんかー!!助けてくださいッ!」
俺の声は、ただこのジメジメした空間に吸収されるだけだった。俺のいる場所には、一部に密集して生えている小さなキノコに、バチバチと音を立て点滅する蛍光灯がある。外部の光はしっかり遮断され、殺風景な壁と床が不気味で鳥肌が立つ。
俺はスマホをきつく握りしめた。スマホの画面には、友人である田中の連絡先が表示されている。トーク履歴を覗くと、昨夜に俺は田中に一言送っていた。それ以前のトーク履歴は何一つ、残っていなかった。
体力温存を優先した俺は、非常口に耳を当てる。…しばらく耳を澄ませてみたが、何も聞こえず
お前はここから出るな―
そう言われてる気がしたりしなかったり…。俺は落ち着くために、五感に意識を向けた。
俺は今、肌寒い。ヨレヨレのパーカーにスウェット、部屋着姿をしている。体は、所々が筋肉痛で特に腕が悲鳴をあげていた。あたりは今俺が、焼肉を想像して『嗅いでみろ』と言われたら、出来る気がする。
それぐらい無臭なのだ―
焼肉を通して、あることに気づく。
「俺は腹が減ってる…!」
生えているきのこに目をやったが、流石にやめといた。覚悟を決め、食料を求めに辺りを探索することにした。辺りをぶらついていると、無意識にある場所へ体が吸い寄せられてゆく。蛍光灯はただのお飾りになり、スマホのライトを頼りに俺は、肩を竦めながら歩いていた。
微かに鉄の匂いが漂い始めると、奥には小さな光が、スマホのライトに反射して漂っていた。
―「!?」
突然、生臭さに加え何かの腐敗臭が、鼻から喉の奥まできつくこびりつき、俺は即座にパーカーの首元で鼻と口を覆った。吐き気が込み上げては、何度も飲み込む。腕の痛みがやたらに強く感じ、嫌な予感を感じた俺は後退りした。
すると、何かを蹴飛ばしてしまい、スマホのライトで蹴ってしまったものを確認する。
口からは嘔吐物が流れ出てきている。歪んだ表情の猫は、スマホのライトによって黒く艶めく毛並みに,開きっぱの口の中がよく見える。
俺は既視感に苛まれ、考えを放棄した。してはいけない境界を超えてしまいそうだったから。
振り返ると同時に、スマホのライトが奇妙なものを捉えた。それは、部屋の一角に溜まっている猫の頭だった。
蹴った感覚に、こびりつく匂い。茶色く変色した血液が辺りに飛び散っている光景が思考を崩壊させる。
恐怖で頭の中がごちゃごちゃだったが、俺は真っ直ぐに非常口へ走っていた。俺の呼吸は荒く、冷え汗なのかじんわりする汗に包まれて、体は微熱時のように熱い。
勢いよく非常口に背中を押し付け、なだれるように座り込む。俺は震える手で田中へ電話をかけた。全然電話は繋がらなかった。
――
引っ掻かれた痛みで、非常口の前で目を覚ました。非常口は、誰かが苔を引っ掻いた跡に、蔦が不自然に千切れている。
―「…誰か、いるのか?おーい…」
非常口のランプはもうついていない。今にも切れそうな蛍光灯が、唯一の光源だった。
スマホが手から滑り落ちる。何故か、俺の手は黒いゴム手袋をはめ、腕には目覚めた時に感じた痛みに合う、引っ掻き傷ができていた。
ゴム手袋には、どんどん血が付着し外れない。血は服で拭いても取れず、時間だけが過ぎていく。尻のポケットに入っていたスマホに通知が来た。新着メールが届き、送り主は、俺だった。送った記憶のないメールを確認すると俺は腰が抜けた。
言われてみれば、目覚めた時から何かに見られてる気がしていた。見つめてくる瞳に対して,俺は見つめ返した。
俺と田中は目が合い、腰が抜けている俺より田中の目線は遥かに低い。
頬が笑いすぎた時のように痛い、俺は頬を揉みほぐそうと手を当てると、口角は上がっていた。
―「田中…来てくれたんだな…」
嬉しいことなのに、何故か俺の目からは大粒の涙が零れ落ちている。
気づくと、自分の手についていた血は消え、腕に残された引っ掻き傷には絆創膏が貼られていた。
突然、俺の味覚はエナジードリンクに染まりお腹に溜まる感覚がした。境界を超えた気がして、俺は夢であってほしいとひたすらに願った。
スマホを片手に、立ちすくむ俺の前には非常口がある。ツタや苔に固定された非常口は、押し引きしても叩いても蹴っても、ビクともしない。
「誰か、誰かいませんかー!!助けてくださいッ!」
俺の声は、ただこのジメジメした空間に吸収されるだけだった。俺のいる場所には、一部に密集して生えている小さなキノコに、バチバチと音を立て点滅する蛍光灯がある。外部の光はしっかり遮断され、殺風景な壁と床が不気味で鳥肌が立つ。
俺はスマホをきつく握りしめた。スマホの画面には、友人である田中の連絡先が表示されている。トーク履歴を覗くと、昨夜に俺は田中に一言送っていた。それ以前のトーク履歴は何一つ、残っていなかった。
体力温存を優先した俺は、非常口に耳を当てる。…しばらく耳を澄ませてみたが、何も聞こえず
お前はここから出るな―
そう言われてる気がしたりしなかったり…。俺は落ち着くために、五感に意識を向けた。
俺は今、肌寒い。ヨレヨレのパーカーにスウェット、部屋着姿をしている。体は、所々が筋肉痛で特に腕が悲鳴をあげていた。あたりは今俺が、焼肉を想像して『嗅いでみろ』と言われたら、出来る気がする。
それぐらい無臭なのだ―
焼肉を通して、あることに気づく。
「俺は腹が減ってる…!」
生えているきのこに目をやったが、流石にやめといた。覚悟を決め、食料を求めに辺りを探索することにした。辺りをぶらついていると、無意識にある場所へ体が吸い寄せられてゆく。蛍光灯はただのお飾りになり、スマホのライトを頼りに俺は、肩を竦めながら歩いていた。
微かに鉄の匂いが漂い始めると、奥には小さな光が、スマホのライトに反射して漂っていた。
―「!?」
突然、生臭さに加え何かの腐敗臭が、鼻から喉の奥まできつくこびりつき、俺は即座にパーカーの首元で鼻と口を覆った。吐き気が込み上げては、何度も飲み込む。腕の痛みがやたらに強く感じ、嫌な予感を感じた俺は後退りした。
すると、何かを蹴飛ばしてしまい、スマホのライトで蹴ってしまったものを確認する。
口からは嘔吐物が流れ出てきている。歪んだ表情の猫は、スマホのライトによって黒く艶めく毛並みに,開きっぱの口の中がよく見える。
俺は既視感に苛まれ、考えを放棄した。してはいけない境界を超えてしまいそうだったから。
振り返ると同時に、スマホのライトが奇妙なものを捉えた。それは、部屋の一角に溜まっている猫の頭だった。
蹴った感覚に、こびりつく匂い。茶色く変色した血液が辺りに飛び散っている光景が思考を崩壊させる。
恐怖で頭の中がごちゃごちゃだったが、俺は真っ直ぐに非常口へ走っていた。俺の呼吸は荒く、冷え汗なのかじんわりする汗に包まれて、体は微熱時のように熱い。
勢いよく非常口に背中を押し付け、なだれるように座り込む。俺は震える手で田中へ電話をかけた。全然電話は繋がらなかった。
――
引っ掻かれた痛みで、非常口の前で目を覚ました。非常口は、誰かが苔を引っ掻いた跡に、蔦が不自然に千切れている。
―「…誰か、いるのか?おーい…」
非常口のランプはもうついていない。今にも切れそうな蛍光灯が、唯一の光源だった。
スマホが手から滑り落ちる。何故か、俺の手は黒いゴム手袋をはめ、腕には目覚めた時に感じた痛みに合う、引っ掻き傷ができていた。
ゴム手袋には、どんどん血が付着し外れない。血は服で拭いても取れず、時間だけが過ぎていく。尻のポケットに入っていたスマホに通知が来た。新着メールが届き、送り主は、俺だった。送った記憶のないメールを確認すると俺は腰が抜けた。
言われてみれば、目覚めた時から何かに見られてる気がしていた。見つめてくる瞳に対して,俺は見つめ返した。
俺と田中は目が合い、腰が抜けている俺より田中の目線は遥かに低い。
頬が笑いすぎた時のように痛い、俺は頬を揉みほぐそうと手を当てると、口角は上がっていた。
―「田中…来てくれたんだな…」
嬉しいことなのに、何故か俺の目からは大粒の涙が零れ落ちている。
気づくと、自分の手についていた血は消え、腕に残された引っ掻き傷には絆創膏が貼られていた。
突然、俺の味覚はエナジードリンクに染まりお腹に溜まる感覚がした。境界を超えた気がして、俺は夢であってほしいとひたすらに願った。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる