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最終章「繋ぐ者、託される者」
追憶の妖精
しおりを挟むここはどこだろう。
レオヴィクからの言葉を聞いて、怖くなって、そして息ができなくなった。
俺は死んでしまったんだろうか。
目を開けているはずなのに、そこは真っ暗な世界で、でも俺はふわふわと浮いているようなそんな感覚がある場所だった。
もし死んでしまっていたのであれば、またレオヴィクに迷惑をかけてしまうかもしれない。
そう思うも、ここからの脱出方法も、ここから覚める方法も俺には思いつかず、ただ暗闇の中を漂う事しかできなかった。
すると、視界の端の方で一つの光が見えた。
その光は次第にこちらに近づいてきて、そして俺の周りをふよふよと回り始める。
光の正体がなんなのか俺にはわからず、ひとまず視線だけで光を追う。
そして、光は俺の傍を少し離れると、まるでこっちに来いと言っているように、また俺の傍に戻ってきては離れてを繰り返す。
ここで漂っているだけでは何もできないと、俺は重たい体を何とか動かし、光についていくことにした。
重たいと思っていた体は動き出すと、すごく軽くて、向かいたい方向にスーッと体は動いていく。
そんなことを思いながら光を追いかけていると、ある場所で止まる。
そして、再び俺の周りをうろうろし始めると、頭上にまるで太陽のような、でも優しさ感じられる明るい光が現れる。
光はだんだんと大きくなっていき、最終的には俺と小さな光を包み込んでいった。
包み込まれた光はとても暖かく感じた。
まるで琥珀の首飾りから出てくる、あの灯火たちのよう。
包まれた光のまぶしさに一瞬目をつぶる。
そして目を開くとそこは、全く知らない場所だった。
「お父様!こちらです!」
「おいおい、私はそんなに早くは走れないぞ」
「お父様!遅いですよ!」
「わかったわかった、エルドリク、先にあの子の元に行ってくれ」
「かしこまりました」
そんな話声が聞こえてくる。
あたりを見回すと、そこは俺がいた城の秘密の部屋から見えていたあの庭だった。
そこには男性が二人、そして男の子が二人と女の子が一人、少し離れたところの陰になっているところに女性が一人と、その女性の腕の中には小さな赤ん坊が一人いた。
「エルドリク!俺においつけるかな!」
「はっはっは!私を侮ってはいけませんよ、第一王子殿下!」
そう言うと、エルドリクと言われたレオヴィクに少し似ているがレオヴィクよりも年齢が幾分か上の男性が、王子殿下と呼ばれた男の子に走って追い付く。
「うわーーエルドリクはやすぎぃ!」
「王子殿下もまだまだですね」
二人は楽しそうに、その後も追いかけっこのようなものを続け、その後ろをもう一人の男の子がついていく。
「ま、まって、兄さま!まって!」
第一王子殿下と呼ばれた男の子より小さいその子は、足を懸命に動かし二人に追い付こうとするが、それでも二人には追い付けず、最終的に転んでしまう。
「いっ、いたい…あ、うぁああああああん!」
男の子は膝をすりむいてしまったのか、大きな声を上げて泣きながら膝をかばう。
「おぉおぉ、ティオルよ。男児たるもの、強くなければならんぞ!」
「でもぉお父様、膝がいたいぃ!」
男の子、ティオルは駆け寄ってきた男性に甘えながらも泣き続ける。気が付くと男性の後ろに赤ん坊を抱えた女性が立っていた。
「ティオル?あなたはマルセリナを守るといってくれたでしょう?妹を守るお兄ちゃんがそんなに泣いてたら、マルセリナも泣いちゃいますよ?」
女性は、腕に抱いている赤ん坊をティオルに見せながら諭す。
すると、ティオルははっとして、ぐしぐしと自分の洋服の袖で涙をぬぐい、そして立ち上がる。
「ぼ!ぼく強いもん!マルセリナも、セラフィナも僕が守るんだ!」
「まぁまぁ、なんてかっこいいんでしょう」
そう言って女性はティオルの頭を撫でる。
そして、女性の足元にもう一人の女の子がしがみつき「私の事も守ってくれるの?」と問いかける。
「僕はお兄ちゃんだからラシエル兄さまにだって負けないもん!」
「は!俺に勝つなんて100年早いね!」
「なんだってー!」
そうして男の子二人は、再び庭を駆け回る。
「ミリア」
先ほどまで男の子と走っていた男性が、赤ん坊を抱く女性の近くまで来る。
「セヴァリウス様」
そして、二人はお互いの名前を呼びあい、静かに口づけを交わす。
「この子たちの未来が、明るいものになりますように」
ミリアと呼ばれた女性は、アンブラリア王家三代目国王のセヴァリウスの胸元にある琥珀の首飾りにも静かに口づけをする。
『俺が、持ってるのと、同じやつだ』
そこまでの光景を見ていた俺は、琥珀の首飾りを見て口を開く。
しかし、その声はまるでこの場所ではないところから発しているような、まだ暗闇の中いるように反響していて、そして、自分の琥珀の首飾りを見ようと体を見た時、薄く透けている自分の体に驚いた。
『ここは…』
そこは、三代目アンブラリア王家、セヴァリウス王とその家族の思い出の光景だった。
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