琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

家族を守る者

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『俺、なんでこんなところに……』

そう声を出すと、先ほど周りを浮遊していた小さい光が現れる。
俺はその光を追いかけるように暗闇から少し離れ庭に出る。

すると、先ほどまで駆けていた子供たちや、ミリアと呼ばれていた女性がいなくなり、庭かと思っていた場所は、気づけばまったく違うところになっていた

「セヴァリウス王万歳!!」

大きな声に驚き振り返る。そこには多くの民衆が上を見上げていた。
俺がいる場所は地面からかなり高い場所。お城の一番目立つ塔のバルコニー付近にいた。
俺の体はなおも透けていて、そしてふわふわとした浮遊感のままバルコニーの周りを飛んでいた。

「セヴァリウス王万歳!!」

ふたたび聞こえた大きな声に、俺はセヴァリウス王を見る。
バルコニーから手を振り、その頭には王冠があった。

「我々、アンブラリア王家は!民を守り、国を守り、そして家族を守ることをここに誓う!」

「王!?家族って…」

バルコニーから手を振りながら、民衆にも負けないくらいの大きな声でセヴァリウス王が言う。
その言葉に、傍にいたセヴァリウス王の護衛騎士、エルドリクが驚いた顔でセヴァリウス王を見る。

「はっはっは!家族を守れずに民衆や国が守れようか!わが父もそうだったようにな!」

そういって尚も手を振り続ける王に、民衆の歓声も止まらない。

『すてきな王様だな…』

呟く言葉は誰かに聞かれることはないが、今傍にいる小さな光は俺の声を聞いてくれていたのか、なんだか嬉しそうに俺の周りを激しく飛びはじめた。

そして俺はその光景を見ながら、ある人物に目が留まる。

『え?アモン…?』

セヴァリウス王とエルドリクの少し後ろに立っている白いローブに白い髭と髪をした男性。
アモンにそっくりではあったが、アモン本人ではないということはなんとなくわかった。
そして、そのアモンに似た男を見た時、背筋に悪寒が走った。

その顔が、異様なまでに怒りを蓄えていたからだ。
もちろん本当に怒りを露らにしているかどうかは、本人に聞かないとわからないが、その場にいない俺ですら感じるこの雰囲気。エルドリク達も気づいていないわけではないようだが、今は関わっている場合ではないと無視を決め込んでいるようだった。

そうして気づけばまた場面が変わる。
次はいろいろな国をめぐるセヴァリウス王とエルドリクの姿だった。
会話は特に聞こえてこず、記憶のフィルムを見ているかのように映像が過ぎ去っていった。

『これは、琥珀の、記憶?』

俺は、小さく言うと正解だと言わんばかりに、また小さな光の動きが早くなる。
とても不思議な感覚に、俺はにわかには信じがたかったが、小さな光が肯定してくるのであればそうなのだろう。
もしくは長い長い夢を見ているかだ。

そのまま目の前を過ぎる映像のようなものを眺めていると、また城に戻ってきた。

「セヴァリウス王、私に考えがございます」

気付けば、赤く大きな椅子に座るセヴァリウス王の前に、アモン似た男性が片膝をつき何かを話していた。
そして、あの時は気が付かなかったが、ノーバイデン教団の首飾りを付けていた。

「申してみよ」

セヴァリウス王の声に、アモンに似た男は頭を垂れ感謝を述べる。

「ありがたき幸せ。王よ、私はその琥珀の首飾りをもっと有効的に使うべきだと思うのです」

「有効的に、だと?」

男の言葉にセヴァリウス王の顔がわかりやすく歪む。

「はい。民は貴方様と琥珀の首飾りの存在によって安心を得ております。ですので、もっと琥珀の力を使い、民により深い安心をーー」

「ならん」

男の声を、セヴァリウス王は一言で遮る。

「しかしーー」

「下がれアモン神官。そなたの戯言は聞き飽きた」

「セヴァリウス王!王よ!私の声をお聞きください!」

そう言いながらも、男は同じ部屋にいた騎士に両側から掴まれ、部屋を強制的に退出されられる。

「セヴァリウス様」

「あぁわかっている。他国から戻ってきて、この国の不穏な雰囲気は恐らく、あやつらノーバイデン教団の仕業だろう。秘密裏に調べろ」

「承知いたしました」

そう言うと、エルドリクは部屋から出ていく。

「どうしてこうなってしまったのだ」

セヴァリウス王が頭を抱える。
それから、庭で見ていた子ども達が、目の前の光景に現れることはなくなった。
次第にやつれていく王、次第に怒りを抑えられなくなっていく王、そして護衛騎士のエルドリクの姿が消え、気付けばセヴァリウス王の隣にはアモン神官と呼ばれた男が、常にいるようになった。

『レオヴィクのお爺さんの手記でよんだ、出来事だ、…』

そこで俺は察した。
この後起こる出来事を。
しかし、そこから目を背けてはいけない。
そんな気がして、俺は拳を握り、自分を叱責しながら、王たちの行く末を見続けた。


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