テディベア

倉地秋穂

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始まり・1

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私のもっとも古い記憶は、動物園で展示された蛇と対峙して泣いている記憶。


幼い私は、ガラスケースをすり抜けて蛇がこちら側に出てくるのでないかと怯えていた。

蛇が怖いと泣く私を父は抱き上げて、母が頭を撫でた。

怖いものから守られる安心感をおぼろげながら覚えている。


私は両親から愛されていた。

30代後半で結婚した両親は、子どもは諦めていた。だからこそ、私が生まれた時はとても嬉しかったと何度も聞かされた。

そんな両親の子どもだからか、祖父母もたいそう可愛がってくれた。

私がこの世界の中心で、一番優先されるべき存在だと思っていた。


私の世界を脅かす存在が現れたのは、小学一年の夏だった。


「赤ちゃんが出来たみたい」


ここしばらく体調を崩していた母は、妊娠検査薬を片手に嬉しそうに告げた。

父は一目散に駆け寄って母を抱きしめた。私は、先ほどまで父と一緒に遊んでいたトランプを手にしたまま動けずにいた。

手足が冷たくなっていくのを感じたまま、両親を見つめていた。
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