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「人間に免許制度を設けます」
そんなニュースを見たのは僕が中学生の頃だ。
道徳法とやらが施行されると同時にそれは始まった。
免許と言えば普通は車やバイクといった乗り物が真っ先に思い浮かぶ。
はたまたフグを捌くのにだって免許は要る。
突然人間に免許が必要です!なんて言われても誰もピンと来なかっただろう。
施行当初は説明を求めるような声ばかりだった。
だがそれは瞬く間に批判の嵐へと形を変えた。
それもそうだ、試験に合格しなければあなたは人間じゃありません!
そんなこと言われたら誰だって反発するだろう。
人権侵害だの何だのと駅前で毎日のように拡声器を持って騒いでる連中がいたのをよく覚えている。
しかし物事は往々にして陰と陽に分かれるもので、否定の声ばかりではなかった。
一度賛成の声が上がると次から次へと賛成派が増え、形勢が逆転するのに時間はかからなかった。
民族性を利用した政府の策略だとか何とか、週刊誌もワイドショーも大賑わいだった。
結局は試行期間として様子見、というのが最終的な落とし所となった。
それから約5年、本格的に始まったと言う事は効果があったと証明されたのだ。
道端に唾を吐くオッサン
夜中にバカ騒ぎするパリピヤンキー
コンビニに車で突撃するジイサン
都心で刃物を振り回すキチガイ
非常識なヤツ、犯罪者、その他諸々…
免許制度によって乗り物よろしく減点、そして免許を取消されどんどん行き場を失ったのだ。
要するに人として減点され、最後はその存在すら取り消される、ということだ。
詳しくは知らないがその後は厳しい教育を収容所のような施設で徹底的に受けるらしい。
幸い、自分の周りにそんな非常識な人はいないしそんなに興味もなかった。
今住んでいる地域も昔はかなり治安が悪かったらしいが、この制度によってどんどん住みやすくなったと親から聞かされた。
そう、実際に恩恵はかなり大きくあるのだ。
まるで確証があったかのようにすんなりと効果を発揮し、たった数年で新しい社会を築き上げ、今となっては革命だと持て囃されている。
今年20歳を迎えた僕は、遂にその新社会の枠組みの中へと取り込まれる。
成人…文字通り「人に成る」ための試験というわけだ。
「はあ…」
深いため息をついて机の上に置かれた案内に目を通す。
20歳の人間に課せられているのは学力テスト、道徳テスト、適性検査の3項目だけだ。
学力テストは、これまで学校で習ってきたような内容のもので高校卒業程度の学力があれば問題ない。
道徳テストは一般常識や社会常識の問題、昔はビジネス検定だの何だの細々と分かれていたらしいが要はそれらを統合したものらしい。
適性検査はIQテストのようなもので、これをやるだけで自分にどんな性質や傾向があるのかが分かる。
どんな職業に向いているか、どんな犯罪を起こす傾向にあるか、そういったことが曝け出される。
当然と言えば当然だが、どれも人間性に大きく関わる要素だ。
学力に関しては苦手教科はあるもののそんなに苦労したことはない。
道徳テストと適性検査はその人の生い立ちや育った環境、交友関係などによって結果が大きく異なる。
両親揃って違反も減点も無し、住んでいる街の治安も良く友人にも恵まれていると自負している。
「まあ問題なく受かるだろ…」
椅子の背もたれに寄りかかり天井を仰ぎ、再び深いため息をついた。
と、同時に机の脇に置いてあるスマホが一瞬震える音がした。
「誰だ…?」
視線を画面に移すとメッセージの通知が届いていた。
そんなニュースを見たのは僕が中学生の頃だ。
道徳法とやらが施行されると同時にそれは始まった。
免許と言えば普通は車やバイクといった乗り物が真っ先に思い浮かぶ。
はたまたフグを捌くのにだって免許は要る。
突然人間に免許が必要です!なんて言われても誰もピンと来なかっただろう。
施行当初は説明を求めるような声ばかりだった。
だがそれは瞬く間に批判の嵐へと形を変えた。
それもそうだ、試験に合格しなければあなたは人間じゃありません!
そんなこと言われたら誰だって反発するだろう。
人権侵害だの何だのと駅前で毎日のように拡声器を持って騒いでる連中がいたのをよく覚えている。
しかし物事は往々にして陰と陽に分かれるもので、否定の声ばかりではなかった。
一度賛成の声が上がると次から次へと賛成派が増え、形勢が逆転するのに時間はかからなかった。
民族性を利用した政府の策略だとか何とか、週刊誌もワイドショーも大賑わいだった。
結局は試行期間として様子見、というのが最終的な落とし所となった。
それから約5年、本格的に始まったと言う事は効果があったと証明されたのだ。
道端に唾を吐くオッサン
夜中にバカ騒ぎするパリピヤンキー
コンビニに車で突撃するジイサン
都心で刃物を振り回すキチガイ
非常識なヤツ、犯罪者、その他諸々…
免許制度によって乗り物よろしく減点、そして免許を取消されどんどん行き場を失ったのだ。
要するに人として減点され、最後はその存在すら取り消される、ということだ。
詳しくは知らないがその後は厳しい教育を収容所のような施設で徹底的に受けるらしい。
幸い、自分の周りにそんな非常識な人はいないしそんなに興味もなかった。
今住んでいる地域も昔はかなり治安が悪かったらしいが、この制度によってどんどん住みやすくなったと親から聞かされた。
そう、実際に恩恵はかなり大きくあるのだ。
まるで確証があったかのようにすんなりと効果を発揮し、たった数年で新しい社会を築き上げ、今となっては革命だと持て囃されている。
今年20歳を迎えた僕は、遂にその新社会の枠組みの中へと取り込まれる。
成人…文字通り「人に成る」ための試験というわけだ。
「はあ…」
深いため息をついて机の上に置かれた案内に目を通す。
20歳の人間に課せられているのは学力テスト、道徳テスト、適性検査の3項目だけだ。
学力テストは、これまで学校で習ってきたような内容のもので高校卒業程度の学力があれば問題ない。
道徳テストは一般常識や社会常識の問題、昔はビジネス検定だの何だの細々と分かれていたらしいが要はそれらを統合したものらしい。
適性検査はIQテストのようなもので、これをやるだけで自分にどんな性質や傾向があるのかが分かる。
どんな職業に向いているか、どんな犯罪を起こす傾向にあるか、そういったことが曝け出される。
当然と言えば当然だが、どれも人間性に大きく関わる要素だ。
学力に関しては苦手教科はあるもののそんなに苦労したことはない。
道徳テストと適性検査はその人の生い立ちや育った環境、交友関係などによって結果が大きく異なる。
両親揃って違反も減点も無し、住んでいる街の治安も良く友人にも恵まれていると自負している。
「まあ問題なく受かるだろ…」
椅子の背もたれに寄りかかり天井を仰ぎ、再び深いため息をついた。
と、同時に机の脇に置いてあるスマホが一瞬震える音がした。
「誰だ…?」
視線を画面に移すとメッセージの通知が届いていた。
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