夏風はショートカットを撫でるように

あ゙あ゙あ゙あ゙(仮)

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第6話 日焼け跡とスポブラ、あるいは放課後の不文律 ⑥

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 いや、腰が抜けて力が入らないのか、それともこの状況に頭がパンクして動けないのか。 

 彼女の熱い視線が、俺の瞳に吸い寄せられたまま離れない。

 重なる身体。

 混ざり合う汗の匂い。

 下半身に感じる、彼女の体重と体温。

 そして、目の前にある、無防備に開かれたシャツの奥の、健康的な谷間。

 みんなが知っている小麦色の肌。
 俺しか知らない白い肌。

 引かれた境界線(ライン)

「……なんか、もう……ダメだ」

 俺が自暴自棄気味に呟き、腕を引っ張り、薫を引き寄せる。

 抵抗もせずに、再び、彼女の身体が俺の上に重なる。

 今度は顔を隠すように、俺の胸に額を押し付けて。

「……バカ」

 俺の胸で薫が囁く。

「……ちょっとだけ、このまま」

 俺が薫の肩に手を回す。

「……汗、つくぞ」

「もう手遅れだし」

「……バカバカ」

 俺を罵倒してるくせに、薫の腕は、俺の背中に回る。

「バーカ」

 ぎゅっ、と俺を抱きしめる。

 野球部のエースとしての力強さはどこへやら、その腕は微かに震えていて、まるで雷に怯える子供のようだ。

 俺も恐る恐る、彼女の背中に手を置く。

 ユニフォームの生地越しではない、制服越しに触れる彼女の背中。

 掌に吸い付くような汗の湿り気と、驚くほど華奢な肩甲骨の感触に、喉がカラカラに乾く。

「……ん」

 背中を撫でると、薫がくすぐったそうに、でも気持ちよさそうに喉を鳴らした。

 まるで甘える猫だ。

 学園の女子たちが憧れる『王子様』が、今は俺の腕の中で、こんなにも無防備に蕩けている。その優越感と背徳感が、俺の理性をさらに削り取っていく。

「……なぁ、薫」

「……なに」

「このままじゃ、俺、本当に……」

 理性が持たない、と言おうとした時だった。

 薫が俺の胸に顔を埋めたまま、ぐりぐりと頭を押し付けてきた。

「……いいよ」

「え?」

「涼になら……変なことされても、いい」

 蚊の鳴くような、消え入りそうな声。

 けれど、その言葉は俺の理性や道徳をぶっ飛ばす程の威力を持っていた。

 ドクンッ!!

 俺の心臓が破裂しそうな音を立てる。

 薫も自分の言ったことの重大さに気づいたのか、カッと身体を硬直させた。

 沈黙。

 エアコンの風が当たる肌は涼しいのに、密着した部分は溶けそうなほど熱い。

 数秒の硬直の後。

 限界を超えた羞恥心が、二人を同時に境界線の向こうへ連れて行く。
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