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自称薬師と全裸騎士団長

騎士団長、どうか全裸を隠してください。

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 アリエルを必死で探して数か月が経った。

 幼馴染のオデットは何処かの貴族と結婚すると言って結婚をした。どうやら子供が出来たらしい。最後まで結婚させてやると言われたがウィンは無視をした。

「これじゃ、何のために隣国に来たのか分からないじゃない!」
「また、訳の分からないこと言っているねオデット。一人の身体じゃないのだから」

 結婚相手の子爵の男がオデットのお腹を撫でると目立つ大きさになっていて、悔しそうな言葉を何度も言った後腕に抱えられて帰っていった。
 オデットの言葉が気になったので彼女のことを確認することにした。

 副団長に聞いてみたところ既に確認は住んでいて、極稀にいる自分が意識した相手に憑依が出来る魂の持ち主だったらしい。

 隣国の騒動にも関わっていた魂は跡をつけられていると知らずにオデットに憑依。オデットはウィンに媚薬か毒を飲ませるつもりだったらしく憑依させたのだった。中身の人が変わっても気がつかない親も親だ。

 もう二度と魂が抜け出せないようにオデットと魂は結びついていて、定期的に子供を妊娠する事で肉体と魂が馴染むように誓約紋を入れられている。

「ニホンって世界でもやっていたみたいで、特定の人に執着していたみたいだよ」
「どうしてだろうな」
「男になって妊娠させたけれど、つまんないから捨てたって言っていたなぁ。魂は死んだ後は消滅するようにしたし、子爵家は沢山子供が欲しいみたいだ。」

 子爵家の男の家はすでに知らされていて一生外に出られないように屋敷に宮廷魔法士たちが魔法をほどこしてくれたので安心だ。

 ♢

「やっと見つけた」

 犯人は現場に戻って来ると言われるがアリエルは最初に住んでいた家の方に戻っていた。うたた寝しているところを起こされて不機嫌なアリエルはウィンに怒るとベットに向かって歩き出した。

「最近凄く眠いのよね。看板を閉まってくれる?」
「話を聞いてくれ、どれほど心配して君を探したと思う」
「どれほど、私たちセフレだからね」

 ふらふら歩いているアリエルが危なっかしいのでベットまで連れて行き、お腹の大きさが気になった。

(前と違っている気がする……。)

 何気なくテーブルを見た時だった。妊娠検査薬がない世界で、妊娠を確認する方法は薬師が販売している妊娠検査石を持って魔力を注ぐことだった。

 色が真っ赤に染まっていれば妊娠している事が確認できる。
 その石が真っ赤に染まっていた。

 眠っているアリエルを見て、そっとお腹に触れると自分の子供がいるのだと思うと嬉しくて仕方がなかった。

 ♢

「妊娠してない」

 ウィンがお腹を撫でている手を一瞬止めるとアリエルはため息をついていた。

「薬師が仕事を放棄したせいで、こっちに仕事が回ってきて太っただけ。騎士団の人とかよく来ているから知らなかった?久しぶりに連絡したくても仕事が忙しくて出来なかったのよ。今触っているのは脂肪だよ」
「でも、そこにあるのは」
「妊娠した人から石を貰うと幸せになるジンクスがあるから飾っているだけ。相性がいい人と交尾をすると石が半分に割れるって言われているのよ。そうだ、久しぶりにする?」

 呑気に擦り寄ってくるアリエルを見てウィンは長く一緒にいるならこんな子がいいなと思って口にする。

「セフレくらいでいいと思うけれど」
「ずっと一緒にいないとダメだ。3か月も会えないだけで胸が苦しくて生きていけなかった」

 黙っているアリエルを見てウィンは服を脱ぎ始めた。剣で鍛えた肉体美は彫刻のように美しかった。黙ってアリエルは見ているとそのまま外に出て行こうとした。

「待って、何をする気」
「君が返事をしてくれないから、このまま外に出ていく。」

 泣きそうな顔をしながらドアに手をかけているウィンに抱き着くとアリエルは皮を剥いて手のひらでこねくり回していた。

「だめ、こんなに可愛い身体を見せつけられたらすぐに犯されちゃう。ウィンが他の人に馬鹿にされたりセックスするのは凄く嫌」
「それは独占したいってこと?」
「分からないけれど多分そう」
「アリエル、それは好きってことだよね?」
「…………」

 口にするのも嫌がっているアリエルの手を身体から離して外に出て行こうとした。

「ダメ!好きなの、騎士団長、どうか全裸を隠してください」
「もう一回」
「あ、全裸を」
「違う」

 俯いていたアリエルが顔を上げて目を見つめると初めて好きだと口にした。身体から始まった二人は初めてお互いを好きと言った瞬間、赤く染まった石は粉々に砕け散った。

「私たち最高に相性がいいのかもね」

 粉々に散った石を見てウィンは一瞬何かを考えて小さな袋に粉々になった石を入れた。すぐにアリエルを抱きしめて浴室に行き身体を綺麗にすると実家に挨拶に向かってしまった。

 そこから物凄い速さで婚約をすっ飛ばして結婚することになり周囲は驚いた。
 堅物の騎士団長が女性と付き合っていたことが知らなかった人が多く、アリエルもひっそり暮らしていたことから全く知らなかったらしい。

 周囲を納得させるためウィンは粉々に散った石を神官に渡して、アリエルの自称薬師も神殿の鑑定で詳しく調べることにした。

「癒しと浄化の加護がついていたなんて知らなかった。聖女も目指せたのかな」
「もう処女じゃないから無理だが、早くバレていたら神殿に保護されていたよ」
「セックス出来ない生活なんてありえないよね」

 詳しい話はウィンが司祭と話して異例であるが結婚は親の許可なく許されることになった。
 今まで幼馴染を勧めていた両親に挨拶することなく、アリエルは結婚することになった。ウィンは騎士爵を持っているので問題はないみたいだ。

 ♢


「そういえば最初の頃異世界?と言っていたけれど前世の記憶なら結構あるよ」

 アリエルはウィンが見ている資料を横目で見ると抄訳をその場で初めてしまった。昔の資料で言葉を照らし合わせている最中だった。

「前世とはどういうことだ?」

「死んだら普通記憶が消えるけれど、私はそれを持っている。日本で生まれ育ったことも、こっちの世界で何回も生まれ変わったことも。全部幼馴染の女に恋人を奪われて一人ぼっちで死んじゃう。最後は貴族だったのに婚約者の子供を結婚する前に妊娠したのに、幼馴染に奪われた。家から追い出されて未婚の母になって子供に捨てられちゃった。だから、今回は手に職をつけて未婚の母になっても育てられるように頑張った。もう、お金がないせいで文句を言われたくないから」

「…………たまに前世を思い出したら辛いことも楽しい事も話して欲しい」

「辛い事は消化出来ているから美味しい料理の作り方を教えますよ。子供たちに引き継いでほしいから」

 2人は結婚式を挙げた後、毎日飽きることなく交尾をした。避妊薬を飲まなくなったアリエルは以前よりも感度が良くなり、仕事も順調だった。
 妊娠したことが分かると人々はとても喜んでいた。

 自称薬師たちも便乗して媚薬や潤滑剤の販売をして売り上げを上げることにした。

「男の子なら割礼をするの?」

「その子の意志に任せる。父が感度が下がるからさせていなかったと言われるまで憎んでいたからな。」

「私の前世の国では8割は仮性包茎だったよ。でも清潔さを保つために手術してもいいと思う。そこは何故か魔法がないのか不思議だけれど、ずる剥けになったおちんちんも大好きだから」

 今度ウィンは手術を受けることになった。前世で出産時の痛みを知っているアリエルに対して、

「何度も経験しているから余裕だろう」

 と言ってしまったからだ。子供が産まれれば忙しくなり皮を剥いている暇すらない。アリエルは妊娠してから浄化の力が遠距離まで効果が出ているので騎士団も遠征の回数が減っている。

「皆やったから余裕だよね。出産って痛いよ。しかもこの体で出産したことないですよ。そうだ、前世知識で男の人を妊娠させる方法も知っているんですがやりますか?」

「すまない、だからもうやめてくれ」

 妊娠半年のアリエルのお腹を撫でながら二人は赤ちゃんの誕生を楽しみにしている。
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