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11 魔法使いの弟子
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アシュレイはベケットの弟子になった。本来は弟子は師匠の側から離れないのが普通だけど、高齢な祖父母を心配するアシュレイのたっての希望で、週末はマディソン村に帰っても良い事になった。
「アシュレイ、身体に気をつけるんだよ」
祖母に言われるけど、身体に気をつけて欲しいのはそちらだとアシュレイは思う。
「週末には帰って来るからね」
行きは祖父に馬車で送ってもらうが、帰りは歩いて帰って来るつもりだ。マディソン村からイルマの住んでいるフローラ村を越えて、少し馬車で走ればマクドガルの町だ。
今日はベケットの弟子になる為に来たのだ。アシュレイも少し緊張している。祖父母と別れるのは、両親が亡くなって引き取られてから初めてだからだ。
『竜の卵を孵さないといけないんだ!』と考えて、祖父との別れに涙を流さないようにしようと頑張る。
「ベケット様の弟子になる孫を連れて来ました」
前は通してくれなかった門番だけど、今回はベケットから聞いていたようだ。
「ああ、その子か。通りなさい」
門番が通る許可を与えてくれたが、アシュレイは祖父に抱きついて泣いてしまった。
「アシュレイ、泣かないでくれ」
マシューもまだ幼さの残る孫との別れは辛い。でも、マディソン村では孫の才能を潰してしまうのだ。ひとしきり泣くと、アシュレイは祖父から離れた。竜の卵を孵さなくてはいけないと心を強くする。
「お爺ちゃん、週末には帰るよ」
涙を袖で乱暴に拭くと、大きな荷物を背負い直して、門を通る。で、通った所でアシュレイは立ち止まる。目の前には大きなお館が建っている。真正面の階段を上がって立派な扉から入って良いものか悩んだのだ。
マディソン村の村長の家はこんなに立派では無かった。それにガキ大将のアンガスとは友だちになったので、自分の家とは違うけど、玄関から気楽に入っていた。
「うん、分からないことは聞こう!」
くるりと向きを変えて門番に話しかける。
「ねぇ、あの玄関から入っても良いの?」
門番は難しい顔をする。魔法使いのベケット様は玄関からいつも出入りしている。使用人は裏の勝手口からだ。ベケット様の弟子はどうなるのか? ややこしいので、自分の仕事ではないといい加減な返事をする。
「玄関から入って執事のバーモスさんに叱られたら、裏の勝手口に回りな」
アシュレイは叱られるのは嫌なので、初めから勝手口に回ることにした。門番はアシュレイが自分の話を聞いて、勝手に判断したのだから、後は知らないと前を向いて見張りを続ける。
大きなお館なので、重い荷物を背負って勝手口に行くのはアシュレイには大変だった。いつものように納屋の軒先に薪を放り投げるみたいに荷物も飛ばしたいと内心で愚痴る。やっと勝手口に着いた。
「この扉から入れば良いのかな?」と戸惑う。階段を下がった所にある勝手口の扉は村長の家の扉より立派だったからだ。
ええい! とアシュレイは勢いよくノックする。
「なんだい?」勝手口は台所に続いているようだ。料理人らしき女の人が出てきた。
「今日からベケット師匠の弟子になるアシュレイです」
女の人は驚いて、アシュレイを中に入れてくれた。
「あんた勝手口から入らなくても良いんだよ。ベケット様の弟子って事は魔法使いになるんだろ?」
どうやら玄関から入る方が正解だったようだ。女の人はメイドを呼んで「この子をベケット様の所に連れて行っておあげ」と頼んでくれた。
メイドはまだ若く見える。メイドは13歳ぐらいかな? とアシュレイは思う。
「ねぇ、名前は?」別にナンパした訳ではなく、単に名前を聞きたかったのだ。
「私はユリアよ。今年からお館で働いているの」
ここら辺の子どもは12、3歳から働きに出るから、そこまで歳は離れていない。
「そっか、俺はアシュレイ。ベケット様の弟子になるんだ」
ユリアはチビのアシュレイには興味がなさそうだ。
「あそこがベケット様の部屋よ」
ユリアは召使い達のいる半地下から階段を上がり、廊下を少し歩き、かなり手前で案内を止めて、女中部屋に帰った。
アシュレイは町の子は冷たいなと思って、廊下をとぼとぼ歩く。誰も知らない町に来て、同じ年頃の子がいたのに冷たくされて何となく落ち込んだ。
「ベケット師匠、アシュレイです」
ノックすると「お入り」と返事があったので、アシュレイは部屋に入る。窓の前に机が置いてあり、そこにベケット師匠が座っていた。
壁にはズラっと本が並んでいた。アシュレイはこんなにいっぱいの本を見た事が無かった。きょろきょろしているアシュレイにベケットは椅子に座るようにと言う。
「アシュレイ、これからお前は私の弟子になる。つまり、私がお仕えしているサイモン・マクドガル様にお前も間接的にだが仕える事になるのだ」
アシュレイは竜の卵の孵し方を教えてもらう為にベケット師匠の弟子になったのに、いきなり主人持ちになって驚く。
「あのう、俺はまだ10歳なんだけど、マクドガル様は領主なんでしょう? 大丈夫なのかな?」
ベケットは笑って手を横に振る。一応、自分の弟子に立場を説明しただけで、マクドガル様も子供に奉公を期待していない。
「いや、アシュレイはまだマクドガル様に直接お仕えするわけではない。マクドガル様に仕えている私に仕えるということだ。これから魔法使いの修行と共に私の雑用もして貰う。良いかね」
なるほど! アシュレイは納得した。祖父が入門料が要らないとベケット師匠に言われてもずっと心配していたのだが、雑用をしたりするのだと分かってホッとする。週末に帰った時に説明しようと思う。
「俺は馬も扱えるよ」チビだけどちゃんと働けるとアピールするアシュレイだ。
「それは良いな。殆どは館の中で仕事をしているが、時にはマクドガルの町の外に行く事もあるからな。馬車に馬を付けられるか?」
「うん!」とアシュレイは元気よく答える。
ベケットは田舎育ちのアシュレイを領主様に仕える魔法使いにするには、魔法の修行もだが、教養も身につけさせなくてはいけないと溜め息をついた。でも、まだ初日だ。一つずつ教えていくしかない。
「アシュレイ、返事は『うん』ではなく『はい』だ」
アシュレイは「はい」と返事をする。なかなか覚えは良さそうだとベケットは安堵した。
「アシュレイ、身体に気をつけるんだよ」
祖母に言われるけど、身体に気をつけて欲しいのはそちらだとアシュレイは思う。
「週末には帰って来るからね」
行きは祖父に馬車で送ってもらうが、帰りは歩いて帰って来るつもりだ。マディソン村からイルマの住んでいるフローラ村を越えて、少し馬車で走ればマクドガルの町だ。
今日はベケットの弟子になる為に来たのだ。アシュレイも少し緊張している。祖父母と別れるのは、両親が亡くなって引き取られてから初めてだからだ。
『竜の卵を孵さないといけないんだ!』と考えて、祖父との別れに涙を流さないようにしようと頑張る。
「ベケット様の弟子になる孫を連れて来ました」
前は通してくれなかった門番だけど、今回はベケットから聞いていたようだ。
「ああ、その子か。通りなさい」
門番が通る許可を与えてくれたが、アシュレイは祖父に抱きついて泣いてしまった。
「アシュレイ、泣かないでくれ」
マシューもまだ幼さの残る孫との別れは辛い。でも、マディソン村では孫の才能を潰してしまうのだ。ひとしきり泣くと、アシュレイは祖父から離れた。竜の卵を孵さなくてはいけないと心を強くする。
「お爺ちゃん、週末には帰るよ」
涙を袖で乱暴に拭くと、大きな荷物を背負い直して、門を通る。で、通った所でアシュレイは立ち止まる。目の前には大きなお館が建っている。真正面の階段を上がって立派な扉から入って良いものか悩んだのだ。
マディソン村の村長の家はこんなに立派では無かった。それにガキ大将のアンガスとは友だちになったので、自分の家とは違うけど、玄関から気楽に入っていた。
「うん、分からないことは聞こう!」
くるりと向きを変えて門番に話しかける。
「ねぇ、あの玄関から入っても良いの?」
門番は難しい顔をする。魔法使いのベケット様は玄関からいつも出入りしている。使用人は裏の勝手口からだ。ベケット様の弟子はどうなるのか? ややこしいので、自分の仕事ではないといい加減な返事をする。
「玄関から入って執事のバーモスさんに叱られたら、裏の勝手口に回りな」
アシュレイは叱られるのは嫌なので、初めから勝手口に回ることにした。門番はアシュレイが自分の話を聞いて、勝手に判断したのだから、後は知らないと前を向いて見張りを続ける。
大きなお館なので、重い荷物を背負って勝手口に行くのはアシュレイには大変だった。いつものように納屋の軒先に薪を放り投げるみたいに荷物も飛ばしたいと内心で愚痴る。やっと勝手口に着いた。
「この扉から入れば良いのかな?」と戸惑う。階段を下がった所にある勝手口の扉は村長の家の扉より立派だったからだ。
ええい! とアシュレイは勢いよくノックする。
「なんだい?」勝手口は台所に続いているようだ。料理人らしき女の人が出てきた。
「今日からベケット師匠の弟子になるアシュレイです」
女の人は驚いて、アシュレイを中に入れてくれた。
「あんた勝手口から入らなくても良いんだよ。ベケット様の弟子って事は魔法使いになるんだろ?」
どうやら玄関から入る方が正解だったようだ。女の人はメイドを呼んで「この子をベケット様の所に連れて行っておあげ」と頼んでくれた。
メイドはまだ若く見える。メイドは13歳ぐらいかな? とアシュレイは思う。
「ねぇ、名前は?」別にナンパした訳ではなく、単に名前を聞きたかったのだ。
「私はユリアよ。今年からお館で働いているの」
ここら辺の子どもは12、3歳から働きに出るから、そこまで歳は離れていない。
「そっか、俺はアシュレイ。ベケット様の弟子になるんだ」
ユリアはチビのアシュレイには興味がなさそうだ。
「あそこがベケット様の部屋よ」
ユリアは召使い達のいる半地下から階段を上がり、廊下を少し歩き、かなり手前で案内を止めて、女中部屋に帰った。
アシュレイは町の子は冷たいなと思って、廊下をとぼとぼ歩く。誰も知らない町に来て、同じ年頃の子がいたのに冷たくされて何となく落ち込んだ。
「ベケット師匠、アシュレイです」
ノックすると「お入り」と返事があったので、アシュレイは部屋に入る。窓の前に机が置いてあり、そこにベケット師匠が座っていた。
壁にはズラっと本が並んでいた。アシュレイはこんなにいっぱいの本を見た事が無かった。きょろきょろしているアシュレイにベケットは椅子に座るようにと言う。
「アシュレイ、これからお前は私の弟子になる。つまり、私がお仕えしているサイモン・マクドガル様にお前も間接的にだが仕える事になるのだ」
アシュレイは竜の卵の孵し方を教えてもらう為にベケット師匠の弟子になったのに、いきなり主人持ちになって驚く。
「あのう、俺はまだ10歳なんだけど、マクドガル様は領主なんでしょう? 大丈夫なのかな?」
ベケットは笑って手を横に振る。一応、自分の弟子に立場を説明しただけで、マクドガル様も子供に奉公を期待していない。
「いや、アシュレイはまだマクドガル様に直接お仕えするわけではない。マクドガル様に仕えている私に仕えるということだ。これから魔法使いの修行と共に私の雑用もして貰う。良いかね」
なるほど! アシュレイは納得した。祖父が入門料が要らないとベケット師匠に言われてもずっと心配していたのだが、雑用をしたりするのだと分かってホッとする。週末に帰った時に説明しようと思う。
「俺は馬も扱えるよ」チビだけどちゃんと働けるとアピールするアシュレイだ。
「それは良いな。殆どは館の中で仕事をしているが、時にはマクドガルの町の外に行く事もあるからな。馬車に馬を付けられるか?」
「うん!」とアシュレイは元気よく答える。
ベケットは田舎育ちのアシュレイを領主様に仕える魔法使いにするには、魔法の修行もだが、教養も身につけさせなくてはいけないと溜め息をついた。でも、まだ初日だ。一つずつ教えていくしかない。
「アシュレイ、返事は『うん』ではなく『はい』だ」
アシュレイは「はい」と返事をする。なかなか覚えは良さそうだとベケットは安堵した。
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