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15 サリンジャー伯爵
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2台の馬車は崖崩れしていた箇所を急いで通り抜けた。少し進んだ所で、馬車が止まる。
ベケットは顔を窓から出し、アシュレイを見つけて外に出た。
「アシュレイ、どうしたのだ?」
峠を抜けた所にアシュレイがポツンと1人で座っていた。
「ベケット師匠、馬は死んでいたよ。それに馬車も壊れていた。人は助かったよ」
ベケットは報告する順番が違うだろうと怒鳴りたくなったが、人は何処にいるのかとキョロキョロと探す。
「馬車が落ちた所には土砂や岩ばっかりで、平らな場所が無かったから、少し先に寝かせて置いたんだ」
「大丈夫なのか?」馬と馬車の被害を目にしたベケットは、とても無事とは思えない。
「うん、大丈夫とは言えなかったけど、今はまぁまぁな感じかな?」
ベケットはアシュレイにもっと詳しく報告をする遣り方を絶対に教えなくてはならないと思った。
「では、案内してくれ」ベケットは、馬車に乗って救助された人の所まで行くという意味で言ったのだ。
「分かったよ」
アシュレイはベケットの両手をぎゅっと握ると空へと飛び上がり、救助した人を寝かせた場所へ向かった。
「ギャァ~」と叫び声が遠くに消えて行くのをハーマンと御者のボブは呆気に取られて見ていた。
後ろの馬車から降りてきたサイモン卿は「何事だ?」と2人に尋ねたが、当分の間、返答は無かった。
「師匠、此処だよ」
草原に2人の身なりの良い男と御者らしき男の3人が寝かされていた。
だが、ベケットは怪我人を診るどころではない。
ガクガクする脚で立っている事もできない。座り込んで、横に立っているアシュレイを睨み付ける。
「アシュレイ、いきなり空を飛ぶなんてどう言うつもりだ!」
「だって、師匠が案内してくれって言うから……違ったの?」
しょんぼりしている弟子を何処から叱り、どう言い聞かせれば良いのかベケットは頭を抱え込む。
「普通、案内するとは馬車で行く事なのだ。空を飛んで行くなんて、許可も無くしてはいけない」
そんな事を言っているうちに、身なりの良い男の若い方がうめき声をあげた。
ベケットはアシュレイへの説教は後にして、寝かされている3人を診察する。
「衣服の汚れや損傷具合からしたら、骨が折れていても不思議は無いのだが……」
身体を触っても、骨折も傷も見当たらない。
「アシュレイが治したのか?」
アシュレイは足をもじもじしながら「うん」と答えた。はいと返事をしろとはベケットも注意するのを忘れていた。
「でも、3人共凄く疲れているみたいで、それに暴れるから寝かしたんだ。起こした方が良い?」
ベケットは怪我人を魔法で治療したのは良いが、空を飛ばされたらパニックになるだろうと叱った。
だが、この2人はどう見ても貴族だ。こんな田舎道を嵐の中馬車を急がせる理由がどうも気になる。
「名前を知りたいから、起こしなさい」
アシュレイは3人に「起きろ!」と唱えた。
「はっ、ここは何処だ?」
さっき、うめき声を上げた若い男が1番に目を開けて、年寄りの男を見て近寄ろうとしたが立ち上がる事はできなかった。
「無理をしてはいけません。昨日の嵐で馬車が崖から落ちたのです。私はマクドガル卿に仕える魔法使いのベケットです」
男は何とか座って、年寄りの男が薄らと目を開けたのを見て大きな溜息をついた。
「ベケット様、お助け頂きありがとうございます。私は其方のサリンジャー伯爵にお仕えするサミュエル・ボーンと申します」
サリンジャー伯爵の名前はベケットも知っていた。確か外交関係の重職についている貴族だ。
そんな貴族が夜中に嵐の中を馬車を走らしていたのだ。嫌な予感しかしない。
「馬と馬車は駄目でしたが、何か必要な荷物でも有りませんか? もう少ししましたら、マクドガル卿の乗った馬車も着きます」
未だ起き上がる力が無いサリンジャー伯爵は、ハッと目を開け、サミュエルに手を四角に動かして意識を失った。
「馬車の中に重要な書類があるのです。衣服などは何とでもなりますが、このくらいの書類鞄だけでも見つけて頂けないでしょうか?」
サリンジャーが手で示したのは書類らしい。それを察してサミュエルは頼んだのだ。
ベケットは重要書類と聞いた瞬間、背中がゾワッとした。シラス王国に危機が迫っている! 魔法使いの勘が告げる。
「アシュレイ、書類鞄を探してくれ」
アシュレイは、空を飛んだのを叱られたばかりだけど、今回は師匠が言うのだからと、頷くと空を飛んでいった。
「わぁぁ~! あれは夢では無かったのだ」
悪夢が現実だったと知ったサミュエルが気絶してしまったので、ベケットはもっと遠くに行ってから飛べば良かったのだと、少しアシュレイに腹を立てた。
「アシュレイに急に連れて来られたから、何も持っていない。気付け薬とかあれば良いのだ……馬車が着くのを待つしか無いか」
それでも未だ春の浅い時期に湿った服では寒いだろうと、ベケットは自分のマントをサリンジャー伯爵に掛ける。
サミュエルに上着を掛けてやろうかと考えたが、自分の方が数十歳は年上なのだから良いだろうと考え直す。
あのアシュレイに行儀作法と常識を叩き込まないと大変な事をしでかしそうだなのだ。それまで、おちおち風邪もひけない。
「年老いたマリオン師匠にあのままのアシュレイを指導させる訳にはいかない。心臓が止まってしまう」
アシュレイの魔力は人間とは思えない。
もう一度しっかりと竜の卵を貰った時の話を聞かなくてはいけないとベケットは考えながら、サイモン卿の馬車が着くのを待った。
ベケットは顔を窓から出し、アシュレイを見つけて外に出た。
「アシュレイ、どうしたのだ?」
峠を抜けた所にアシュレイがポツンと1人で座っていた。
「ベケット師匠、馬は死んでいたよ。それに馬車も壊れていた。人は助かったよ」
ベケットは報告する順番が違うだろうと怒鳴りたくなったが、人は何処にいるのかとキョロキョロと探す。
「馬車が落ちた所には土砂や岩ばっかりで、平らな場所が無かったから、少し先に寝かせて置いたんだ」
「大丈夫なのか?」馬と馬車の被害を目にしたベケットは、とても無事とは思えない。
「うん、大丈夫とは言えなかったけど、今はまぁまぁな感じかな?」
ベケットはアシュレイにもっと詳しく報告をする遣り方を絶対に教えなくてはならないと思った。
「では、案内してくれ」ベケットは、馬車に乗って救助された人の所まで行くという意味で言ったのだ。
「分かったよ」
アシュレイはベケットの両手をぎゅっと握ると空へと飛び上がり、救助した人を寝かせた場所へ向かった。
「ギャァ~」と叫び声が遠くに消えて行くのをハーマンと御者のボブは呆気に取られて見ていた。
後ろの馬車から降りてきたサイモン卿は「何事だ?」と2人に尋ねたが、当分の間、返答は無かった。
「師匠、此処だよ」
草原に2人の身なりの良い男と御者らしき男の3人が寝かされていた。
だが、ベケットは怪我人を診るどころではない。
ガクガクする脚で立っている事もできない。座り込んで、横に立っているアシュレイを睨み付ける。
「アシュレイ、いきなり空を飛ぶなんてどう言うつもりだ!」
「だって、師匠が案内してくれって言うから……違ったの?」
しょんぼりしている弟子を何処から叱り、どう言い聞かせれば良いのかベケットは頭を抱え込む。
「普通、案内するとは馬車で行く事なのだ。空を飛んで行くなんて、許可も無くしてはいけない」
そんな事を言っているうちに、身なりの良い男の若い方がうめき声をあげた。
ベケットはアシュレイへの説教は後にして、寝かされている3人を診察する。
「衣服の汚れや損傷具合からしたら、骨が折れていても不思議は無いのだが……」
身体を触っても、骨折も傷も見当たらない。
「アシュレイが治したのか?」
アシュレイは足をもじもじしながら「うん」と答えた。はいと返事をしろとはベケットも注意するのを忘れていた。
「でも、3人共凄く疲れているみたいで、それに暴れるから寝かしたんだ。起こした方が良い?」
ベケットは怪我人を魔法で治療したのは良いが、空を飛ばされたらパニックになるだろうと叱った。
だが、この2人はどう見ても貴族だ。こんな田舎道を嵐の中馬車を急がせる理由がどうも気になる。
「名前を知りたいから、起こしなさい」
アシュレイは3人に「起きろ!」と唱えた。
「はっ、ここは何処だ?」
さっき、うめき声を上げた若い男が1番に目を開けて、年寄りの男を見て近寄ろうとしたが立ち上がる事はできなかった。
「無理をしてはいけません。昨日の嵐で馬車が崖から落ちたのです。私はマクドガル卿に仕える魔法使いのベケットです」
男は何とか座って、年寄りの男が薄らと目を開けたのを見て大きな溜息をついた。
「ベケット様、お助け頂きありがとうございます。私は其方のサリンジャー伯爵にお仕えするサミュエル・ボーンと申します」
サリンジャー伯爵の名前はベケットも知っていた。確か外交関係の重職についている貴族だ。
そんな貴族が夜中に嵐の中を馬車を走らしていたのだ。嫌な予感しかしない。
「馬と馬車は駄目でしたが、何か必要な荷物でも有りませんか? もう少ししましたら、マクドガル卿の乗った馬車も着きます」
未だ起き上がる力が無いサリンジャー伯爵は、ハッと目を開け、サミュエルに手を四角に動かして意識を失った。
「馬車の中に重要な書類があるのです。衣服などは何とでもなりますが、このくらいの書類鞄だけでも見つけて頂けないでしょうか?」
サリンジャーが手で示したのは書類らしい。それを察してサミュエルは頼んだのだ。
ベケットは重要書類と聞いた瞬間、背中がゾワッとした。シラス王国に危機が迫っている! 魔法使いの勘が告げる。
「アシュレイ、書類鞄を探してくれ」
アシュレイは、空を飛んだのを叱られたばかりだけど、今回は師匠が言うのだからと、頷くと空を飛んでいった。
「わぁぁ~! あれは夢では無かったのだ」
悪夢が現実だったと知ったサミュエルが気絶してしまったので、ベケットはもっと遠くに行ってから飛べば良かったのだと、少しアシュレイに腹を立てた。
「アシュレイに急に連れて来られたから、何も持っていない。気付け薬とかあれば良いのだ……馬車が着くのを待つしか無いか」
それでも未だ春の浅い時期に湿った服では寒いだろうと、ベケットは自分のマントをサリンジャー伯爵に掛ける。
サミュエルに上着を掛けてやろうかと考えたが、自分の方が数十歳は年上なのだから良いだろうと考え直す。
あのアシュレイに行儀作法と常識を叩き込まないと大変な事をしでかしそうだなのだ。それまで、おちおち風邪もひけない。
「年老いたマリオン師匠にあのままのアシュレイを指導させる訳にはいかない。心臓が止まってしまう」
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