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18 ヨーク伯爵
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アシュレイはマクドガル卿との面会の後も眠れなかった。
ベケット師匠に竜の卵を貰った時の話を詳しく聞かれたからだ。
「そうか、竜のリュリューは卵を孵す為にお前に自分の魔力を渡したのだな」
アシュレイの人間離れした魔力は竜の物なのだと、ベケットは少し納得する。
「今度、その竜がいた崖に連れて行ってくれ」
探求熱心な師匠に「良いよ」と答えたが、アシュレイはもう限界だ。うとうとしてしまう。
ベケットはもっと訊きたい事があったが「寝なさい」と許可を出す。
アシュレイがベッドに入った途端に眠った頃、2人の兵士はやっとヨーク伯爵に会っていた。
ヨークドシャーには閉門前に着いたのだが、そこからヨーク伯爵に会うまで時間が掛かった。
ヨーク伯爵はマクドガル卿からの手紙だと家令から聞いてはいたが、年に数回の会合に遅れた言い訳だと考えて、城に集まった寄子の貴族達の接待を優先していたのだ。
晩餐会が終わって、やっとヨーク伯爵はマクドガル卿からの手紙を思い出し、兵士を呼び出す。
「ヨーク伯爵、これがマクドガル卿からの手紙です」
差し出された手紙をその場で読む。
そして内容に驚き、その場に控えていた兵士に質問する。
「サリンジャー伯爵はご無事なのか?」
「ええ、ですがあの高さから馬車ごと落ちたのですから、かなり損傷を受けておられます。なので、無理をしてヨークドシャーに来るのを諦めて、手前のダンベルトの町で今夜は泊まる事になったのです」
兵士達の集会に遅れた言い訳など、ヨーク伯爵には興味が無かった。
「損傷とはどの程度なのか? まさか命に別状がある訳では……ええい、カスパルを呼べ!」
呼ばれたのはヨーク伯爵に仕える魔法使いのマーク・カスパルだ。
マクドガル卿の兵士達は、年寄りのベケットに慣れていたので、若い魔法使いに驚く。
「伯爵、何の御用でしょう?」
カスパルは、こんな夜に突然御前に呼び出され、少し不機嫌そうに見えた。
「ダンベルトの町にサリンジャー伯爵がいるのだ。昨夜の嵐で崖から馬車ごと落ちたのを、マクドガル卿の魔法使いに救出されたと聞いた。だが、かなりの重傷では無いかと心配だ。お前にサリンジャー伯爵の治療を頼む為に呼んだのだ」
カスパルもサリンジャー伯爵の名前は知っていた。
その著名な伯爵があの嵐の中を馬車を急がせたのだ。何か理由がある筈だと察した。
「承知いたしました。でも、マクドガル卿に仕えている魔法使いのベケットは、治療師としては私より優れています。出来うる限りを尽くしているでしょうから、ご安心下さいませ」
カスパルの言葉でヨーク伯爵も少し息が整った。それまでは心配のあまり、鼻息も荒かったのだ。
「そうか……マクドガル卿に仕えるベケットは優れた治療師なのか、だが、やはりお前に行って貰いたい」
夜も更けていたが、お仕えする貴族の命には従うしか無い。
「お前達、案内を頼むぞ」
兵士達2人を先導にして馬車で2つ先の町まで急ぐ。
馬車の中でカスパルはベケットについて考えていた。
ベケットはあの上級魔法使いマリオン様の弟子になる。基本はしっかりと学んでいるが、こんな地方の騎士爵に仕えているのは、世渡りが下手だからだ。
少しでも上昇志向を持っているなら、ヨーク伯爵に仕えていた魔法使いのバーナビーが老た時に主を変える事も可能だった筈だ。
それとも、マクドガル卿とはそれほど仕えがいのある主人だとでも言うのだろうか?
カスパルは王都サリヴァンでマリオンに並び称される上級魔法使いヒューゴ様に学んだ魔法使いだ。ヨーク伯爵の魔法使いのバーナビーが老た時に、ヒューゴの推薦で職を得て未だ1年にならない。ベケットとは数度顔を合わせただけだし、あまり個人的に知っているとは言えない。今回もしゃしゃり出たように思われないか心配している。
『カルパス、お前の才能、そして能力には絶対の信頼を持ってヨーク伯爵に推薦した。だが、マクドガル卿に仕えるベケットに偉そうな態度をしてはならないぞ。仕える主人が上位者だからといって、それに仕える魔法使いが上位として振る舞って良い物では無い。お前は未だ若いから、その点を気をつければ心配は無い』
厳しく優しかったヒューゴ師匠を思い出し、近頃の自分の態度はヨーク伯爵の擁護を傘に着ていなかったか省みて、大丈夫だと笑う。
基本的にカスパルは自信家で楽天家だった。その点はヨーク伯爵にとても気に入られている。
ヒューゴは弟子の中で能力も優れている上に、ヨーク伯爵と相性の良いカスパルを推薦したのだ。
ヨーク伯爵はお仕えしやすい主人だ。
それに分かりやすい性格だし、カスパルはついさっきまでヒューゴ師匠の言葉を忘れていた。
ヨーク伯爵の寄子の貴族の中には魔法使いを配下にしている者も多い。
わざわざ、マクドガル卿に仕えているベケットを例に出したのは、上級魔法使いマリオン様の弟子だからだけなのか? カスパルは、数回会った時の落ち着いたベケットの態度しか覚えてなかったので、首を捻る。
「ヒューゴ様は時々不思議な事を言われる。その時は聞き流してしまうのだが、後でとても重要だと分かって驚く。今回も同じなのか? ベケットは優れた治療師だが、魔法の力は平凡だと思ったのだが……」
カスパルは中級魔法使いとしては上位にあたる。
師匠のヒューゴみたいな上級魔法使いとの格差は大きいと分かる程度には優れていた。
そして、どう見ても自分より下位だと思えるベケットを何故ヒューゴを気にしていたのか興味を持ってダンベルトの町に着いた。
ベケット師匠に竜の卵を貰った時の話を詳しく聞かれたからだ。
「そうか、竜のリュリューは卵を孵す為にお前に自分の魔力を渡したのだな」
アシュレイの人間離れした魔力は竜の物なのだと、ベケットは少し納得する。
「今度、その竜がいた崖に連れて行ってくれ」
探求熱心な師匠に「良いよ」と答えたが、アシュレイはもう限界だ。うとうとしてしまう。
ベケットはもっと訊きたい事があったが「寝なさい」と許可を出す。
アシュレイがベッドに入った途端に眠った頃、2人の兵士はやっとヨーク伯爵に会っていた。
ヨークドシャーには閉門前に着いたのだが、そこからヨーク伯爵に会うまで時間が掛かった。
ヨーク伯爵はマクドガル卿からの手紙だと家令から聞いてはいたが、年に数回の会合に遅れた言い訳だと考えて、城に集まった寄子の貴族達の接待を優先していたのだ。
晩餐会が終わって、やっとヨーク伯爵はマクドガル卿からの手紙を思い出し、兵士を呼び出す。
「ヨーク伯爵、これがマクドガル卿からの手紙です」
差し出された手紙をその場で読む。
そして内容に驚き、その場に控えていた兵士に質問する。
「サリンジャー伯爵はご無事なのか?」
「ええ、ですがあの高さから馬車ごと落ちたのですから、かなり損傷を受けておられます。なので、無理をしてヨークドシャーに来るのを諦めて、手前のダンベルトの町で今夜は泊まる事になったのです」
兵士達の集会に遅れた言い訳など、ヨーク伯爵には興味が無かった。
「損傷とはどの程度なのか? まさか命に別状がある訳では……ええい、カスパルを呼べ!」
呼ばれたのはヨーク伯爵に仕える魔法使いのマーク・カスパルだ。
マクドガル卿の兵士達は、年寄りのベケットに慣れていたので、若い魔法使いに驚く。
「伯爵、何の御用でしょう?」
カスパルは、こんな夜に突然御前に呼び出され、少し不機嫌そうに見えた。
「ダンベルトの町にサリンジャー伯爵がいるのだ。昨夜の嵐で崖から馬車ごと落ちたのを、マクドガル卿の魔法使いに救出されたと聞いた。だが、かなりの重傷では無いかと心配だ。お前にサリンジャー伯爵の治療を頼む為に呼んだのだ」
カスパルもサリンジャー伯爵の名前は知っていた。
その著名な伯爵があの嵐の中を馬車を急がせたのだ。何か理由がある筈だと察した。
「承知いたしました。でも、マクドガル卿に仕えている魔法使いのベケットは、治療師としては私より優れています。出来うる限りを尽くしているでしょうから、ご安心下さいませ」
カスパルの言葉でヨーク伯爵も少し息が整った。それまでは心配のあまり、鼻息も荒かったのだ。
「そうか……マクドガル卿に仕えるベケットは優れた治療師なのか、だが、やはりお前に行って貰いたい」
夜も更けていたが、お仕えする貴族の命には従うしか無い。
「お前達、案内を頼むぞ」
兵士達2人を先導にして馬車で2つ先の町まで急ぐ。
馬車の中でカスパルはベケットについて考えていた。
ベケットはあの上級魔法使いマリオン様の弟子になる。基本はしっかりと学んでいるが、こんな地方の騎士爵に仕えているのは、世渡りが下手だからだ。
少しでも上昇志向を持っているなら、ヨーク伯爵に仕えていた魔法使いのバーナビーが老た時に主を変える事も可能だった筈だ。
それとも、マクドガル卿とはそれほど仕えがいのある主人だとでも言うのだろうか?
カスパルは王都サリヴァンでマリオンに並び称される上級魔法使いヒューゴ様に学んだ魔法使いだ。ヨーク伯爵の魔法使いのバーナビーが老た時に、ヒューゴの推薦で職を得て未だ1年にならない。ベケットとは数度顔を合わせただけだし、あまり個人的に知っているとは言えない。今回もしゃしゃり出たように思われないか心配している。
『カルパス、お前の才能、そして能力には絶対の信頼を持ってヨーク伯爵に推薦した。だが、マクドガル卿に仕えるベケットに偉そうな態度をしてはならないぞ。仕える主人が上位者だからといって、それに仕える魔法使いが上位として振る舞って良い物では無い。お前は未だ若いから、その点を気をつければ心配は無い』
厳しく優しかったヒューゴ師匠を思い出し、近頃の自分の態度はヨーク伯爵の擁護を傘に着ていなかったか省みて、大丈夫だと笑う。
基本的にカスパルは自信家で楽天家だった。その点はヨーク伯爵にとても気に入られている。
ヒューゴは弟子の中で能力も優れている上に、ヨーク伯爵と相性の良いカスパルを推薦したのだ。
ヨーク伯爵はお仕えしやすい主人だ。
それに分かりやすい性格だし、カスパルはついさっきまでヒューゴ師匠の言葉を忘れていた。
ヨーク伯爵の寄子の貴族の中には魔法使いを配下にしている者も多い。
わざわざ、マクドガル卿に仕えているベケットを例に出したのは、上級魔法使いマリオン様の弟子だからだけなのか? カスパルは、数回会った時の落ち着いたベケットの態度しか覚えてなかったので、首を捻る。
「ヒューゴ様は時々不思議な事を言われる。その時は聞き流してしまうのだが、後でとても重要だと分かって驚く。今回も同じなのか? ベケットは優れた治療師だが、魔法の力は平凡だと思ったのだが……」
カスパルは中級魔法使いとしては上位にあたる。
師匠のヒューゴみたいな上級魔法使いとの格差は大きいと分かる程度には優れていた。
そして、どう見ても自分より下位だと思えるベケットを何故ヒューゴを気にしていたのか興味を持ってダンベルトの町に着いた。
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