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22 あさがおの種
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「自由研究の中から千尋くんの『ミドリガメの好物』と、亜香里ちゃんの『子馬の育て方』と、勝男くんの『あさがおの花の数と天気』は大阪府の賞を貰いました。よく、研究しましたね」
泥亀のハーフの千尋くんは、ペットショップを経営している両親から、ミドリガメを誕生日にプレゼントされたので、その好物をあれこれ調査してまとめた。
青午の孫の亜香里ちゃんは、競馬のジョッキーをしているお父ちゃんと、厩務員をしているお母ちゃんがいるのだ。その上、お祖父ちゃんは青午なので、夏休みは馬に囲まれて過ごした。子馬の成長記録はとてもよくできていた。
壁ねずみの血を引いた勝男の両親は、真面目な公務員だ。几帳面な勝男は、夏休みも毎日学校に通って、あさがおに水をやり、花の数を記録したのだ。
鈴子先生に名前を呼ばれた三人は立ち上がり、前に出て、賞状を貰う。クラスの全員が拍手する。しかし、1組には天の邪鬼の孫がいるのだ。
「泥亀の千尋くんがミドリガメの自由研究しても、なんも不思議は無いよなぁ。それに、亜香里ちゃんのお祖父ちゃんは青午なんやもん。子馬だろうが、なんだろうが、手なずけるのはお手のものやんか。あさがおの花の数なんか、誰だって数えられる!」
ぶつぶつ文句を呟いていたが、ねずみ男の忠吉くんに「もしかして、賞状が欲しかったの?」とストレートに尋ねられてヘソを曲げる。
「ふん! 別にそんな物欲しくもないや」
鈴子先生は、天の邪鬼の孫の良くんや、三羽烏の孫の旭くんの自由研究もとても優れていただけに、自分の説明が悪かったのだと反省する。
「2年の夏休みにも自由研究はあります。でも、普通の人間の子ども達にもできるテーマを選ばないと府には提出できないのです」
良くんは、自分の『天の邪鬼の操作方法』では、大阪府に出せなかったのだと悔しい。しかし、悔しいからこそ平気な振りをする。
「ふん! そんな紙切れ欲しくもない! 2年の自由研究は、適当にパソコンで調べて書いたろ」
鈴子先生は、良くんの自由研究をする芽を摘んでしまった気がして、悲しくなる。賢い子だし、とても観察力もある。天の邪鬼の血のせいか、素直になれない良くんだが、物の見方は独創的でとても優れているのだ。
「俺は、2年になったら米の作り方を書くつもりだぁ~だから、今から稲刈りの仕方も書いておくんだぁ」
だいだらぼっちは、本来は田舎でのんびり暮らしている。しかし、お父ちゃんは大介くんを人間と一緒に育てたいと考えて、大阪に出てきた。今は、大介くんのお母ちゃんは、田舎でだいだらぼっちの家族と暮らしている。都会暮らしは無理だったのだ。
良くんは、週末にしかお母ちゃんと会えない大介くんに同情していた。良くんのお母ちゃんも弁護士をしていて、家でも忙しそうにしているから、少し寂しく感じる時もあるからだ。その大介くんが、明るく来年の自由研究の為に、この秋から記録をつけると言うのを聞くと、自分が本当に馬鹿に思えてきた。
「大介くんの『米の作り方』に敗けへんで! こうなったら、全国一をとってやる!」
鈴子先生は、ホッとして微笑んだ。生徒のやる気ほど、先生にとって嬉しいものは無いのだ。
この日の一時間目は、生活科で、あさがおの種をとり、梅雨前にネットに入れて陰で干しておいたチューリップの球根を植える。ぽんぽこ狸の田畑校長も、麦ワラ帽子を被って、子ども達と一緒にあさがおの種をとる。
「なぁ、鈴子先生? この青いあさがおの花の種からは、青いあさがおの花が咲くんやでなぁ」
良くんの育てたあさがおは、青い花だった。鈴子先生は、そうですよと答える。
「なら、赤のあさがおの種からは、赤のあさがおの花が咲くんやろ? そしたら、赤と青のあさがおを混ぜたらどうなるんやろ?」
ぶつぶつ呟きながら、良くんはあさがおの種を丁寧に採っていく。来年の自由研究を考えていたのだ。
良くんは知らなかったが、江戸時代には変種の朝顔がとても高価に取り引きされていたことがある。そして、天の邪鬼のお祖父ちゃんは、その変種の朝顔を栽培するのが天才的に上手かったのだ。
1年生でした『天の邪鬼の操作方法』という自由研究は、無駄にはならない。2年生の夏休み、とても役に立つことになる。天の邪鬼のお祖父ちゃんに協力して貰った『あさがおの種』という良くんの自由研究は、言葉通りに日本一に選ばれるのだ。
皆は、驚くと同時に、天の邪鬼なのに反対の言葉を言わなかったと笑うことになるが、それは一年先の話だ。
「この球根が、春に新しい1年生を迎えるのね!」
女の子達は丁寧にチューリップの球根を植える。男の子達もぽんぽこ狸と一緒に球根を植えたり、朝顔の茎を引っこ抜いたりと頑張っている。鈴子先生は、もう半年も過ぎたのだと感傷的になった。
「この子達もしっかりしてきたわ」
梅雨前にチューリップを引っこ抜いた時は、茎を振り回したり、土をスコップで掛け合ったりしていたのに、今回は自分から動いている。
しかし、気を緩めたら駄目なのだ。朝顔の引っこ抜いた茎に残っていた種を取り合ったり、あちこちにばら蒔いたりしているのを注意する。
「なんで、あかんのや? 今からまいてたら、はよう咲くんと違うん?」
忠吉くんや九助くんは、早くあさがおの種を撒けば、早く花が咲くと思っていたのだ。
「残っていた種は集めて皆で分けましょう。来年の春に家で鉢植えに撒きましょうね。今から寒い冬がきます。朝顔の種を撒いても、寒さで弱ってしまうだけですよ」
少ししっかりしたと思ったら、また注意しなくてはいけないのだ。ぽんぽこ狸の田畑校長は、新米の鈴子先生も、少ししっかりしてきたと思って笑う。
泥亀のハーフの千尋くんは、ペットショップを経営している両親から、ミドリガメを誕生日にプレゼントされたので、その好物をあれこれ調査してまとめた。
青午の孫の亜香里ちゃんは、競馬のジョッキーをしているお父ちゃんと、厩務員をしているお母ちゃんがいるのだ。その上、お祖父ちゃんは青午なので、夏休みは馬に囲まれて過ごした。子馬の成長記録はとてもよくできていた。
壁ねずみの血を引いた勝男の両親は、真面目な公務員だ。几帳面な勝男は、夏休みも毎日学校に通って、あさがおに水をやり、花の数を記録したのだ。
鈴子先生に名前を呼ばれた三人は立ち上がり、前に出て、賞状を貰う。クラスの全員が拍手する。しかし、1組には天の邪鬼の孫がいるのだ。
「泥亀の千尋くんがミドリガメの自由研究しても、なんも不思議は無いよなぁ。それに、亜香里ちゃんのお祖父ちゃんは青午なんやもん。子馬だろうが、なんだろうが、手なずけるのはお手のものやんか。あさがおの花の数なんか、誰だって数えられる!」
ぶつぶつ文句を呟いていたが、ねずみ男の忠吉くんに「もしかして、賞状が欲しかったの?」とストレートに尋ねられてヘソを曲げる。
「ふん! 別にそんな物欲しくもないや」
鈴子先生は、天の邪鬼の孫の良くんや、三羽烏の孫の旭くんの自由研究もとても優れていただけに、自分の説明が悪かったのだと反省する。
「2年の夏休みにも自由研究はあります。でも、普通の人間の子ども達にもできるテーマを選ばないと府には提出できないのです」
良くんは、自分の『天の邪鬼の操作方法』では、大阪府に出せなかったのだと悔しい。しかし、悔しいからこそ平気な振りをする。
「ふん! そんな紙切れ欲しくもない! 2年の自由研究は、適当にパソコンで調べて書いたろ」
鈴子先生は、良くんの自由研究をする芽を摘んでしまった気がして、悲しくなる。賢い子だし、とても観察力もある。天の邪鬼の血のせいか、素直になれない良くんだが、物の見方は独創的でとても優れているのだ。
「俺は、2年になったら米の作り方を書くつもりだぁ~だから、今から稲刈りの仕方も書いておくんだぁ」
だいだらぼっちは、本来は田舎でのんびり暮らしている。しかし、お父ちゃんは大介くんを人間と一緒に育てたいと考えて、大阪に出てきた。今は、大介くんのお母ちゃんは、田舎でだいだらぼっちの家族と暮らしている。都会暮らしは無理だったのだ。
良くんは、週末にしかお母ちゃんと会えない大介くんに同情していた。良くんのお母ちゃんも弁護士をしていて、家でも忙しそうにしているから、少し寂しく感じる時もあるからだ。その大介くんが、明るく来年の自由研究の為に、この秋から記録をつけると言うのを聞くと、自分が本当に馬鹿に思えてきた。
「大介くんの『米の作り方』に敗けへんで! こうなったら、全国一をとってやる!」
鈴子先生は、ホッとして微笑んだ。生徒のやる気ほど、先生にとって嬉しいものは無いのだ。
この日の一時間目は、生活科で、あさがおの種をとり、梅雨前にネットに入れて陰で干しておいたチューリップの球根を植える。ぽんぽこ狸の田畑校長も、麦ワラ帽子を被って、子ども達と一緒にあさがおの種をとる。
「なぁ、鈴子先生? この青いあさがおの花の種からは、青いあさがおの花が咲くんやでなぁ」
良くんの育てたあさがおは、青い花だった。鈴子先生は、そうですよと答える。
「なら、赤のあさがおの種からは、赤のあさがおの花が咲くんやろ? そしたら、赤と青のあさがおを混ぜたらどうなるんやろ?」
ぶつぶつ呟きながら、良くんはあさがおの種を丁寧に採っていく。来年の自由研究を考えていたのだ。
良くんは知らなかったが、江戸時代には変種の朝顔がとても高価に取り引きされていたことがある。そして、天の邪鬼のお祖父ちゃんは、その変種の朝顔を栽培するのが天才的に上手かったのだ。
1年生でした『天の邪鬼の操作方法』という自由研究は、無駄にはならない。2年生の夏休み、とても役に立つことになる。天の邪鬼のお祖父ちゃんに協力して貰った『あさがおの種』という良くんの自由研究は、言葉通りに日本一に選ばれるのだ。
皆は、驚くと同時に、天の邪鬼なのに反対の言葉を言わなかったと笑うことになるが、それは一年先の話だ。
「この球根が、春に新しい1年生を迎えるのね!」
女の子達は丁寧にチューリップの球根を植える。男の子達もぽんぽこ狸と一緒に球根を植えたり、朝顔の茎を引っこ抜いたりと頑張っている。鈴子先生は、もう半年も過ぎたのだと感傷的になった。
「この子達もしっかりしてきたわ」
梅雨前にチューリップを引っこ抜いた時は、茎を振り回したり、土をスコップで掛け合ったりしていたのに、今回は自分から動いている。
しかし、気を緩めたら駄目なのだ。朝顔の引っこ抜いた茎に残っていた種を取り合ったり、あちこちにばら蒔いたりしているのを注意する。
「なんで、あかんのや? 今からまいてたら、はよう咲くんと違うん?」
忠吉くんや九助くんは、早くあさがおの種を撒けば、早く花が咲くと思っていたのだ。
「残っていた種は集めて皆で分けましょう。来年の春に家で鉢植えに撒きましょうね。今から寒い冬がきます。朝顔の種を撒いても、寒さで弱ってしまうだけですよ」
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