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プロローグ

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偶然だったのか、必然だったのか、今となってはもう分からない。


ただあの時、あの場所であの少女と出会った時、運命の歯車はもう動き出していたのだ。





この巨大な大陸の約半分を占める国、アスカリア。その国の端にある魔の森の中に彼女はいた。
まだ人間の年齢でいうと3歳くらいであろう。何処から来たのか分からないが、彼女の色彩は銀色だった。私と同じ色彩を持つものを見たのは初めてだと思いつつ、彼女に近づいた。
気配を殺して近づいたに関わらず、彼女は私の存在に気がついた。どうやら唯の死にかけの子供の様では無さそうだ。隠していたのか、警戒態勢に入ると、体から魔力が溢れてくる。



「あなたも、私を殺しに来たの?」
少女の体の周りから溢れる魔力。少女の感情によって肥大化しているようだ。
近くに親もなく、死にかけた姿でいたという事は、おそらく親からはその力ゆえに捨てられたのかなにかしたのだろう。
所々ある体の傷は、どれも致命傷という訳ではないが、出血が多かったのか貧血症状が出ているようだ。
それでも生きようとしているのか、彼女の瞳からの強い眼差しはきえない。




面白い。




私は思わず彼女をそう思った。


そして欲しいとも。





恐らくこのままにしておくと、彼女は遅かれ早かれ魔物に食べられるか、良くても出血死だ。

ならば、私の人生をかけて彼女を守ろう。
幼きものが持つ魔力は、その器には大きすぎる。契約をすれば、少女の魔力の調整をすることが可能になる。
だから私は少女にいった。





『生きたいか?ならば私と契約しろ』







そう、これは契約だ。






少女から莫大な魔力を貰う替わりに、少女の命を死ぬまで守るという、魂をかけた契約だ。
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