転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第8章 魔海の大行進編

第8章ー9

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 リーヴ村を出て二日後、目的のシッター村に近づいていた。

 「私、海って初めてだから楽しみだなー」

 「ああ。そうだな」

 近づくにつれ、ミオが妙にそわそわしている。言われてみればこの世界の海を見るのは自分も初めてだったな。前世の頃は海が見える所に暮らしてたから割と身近に感じていたものだが、この国は土地が広い上に大半は山や森等の緑に囲まれている。それ故に、自ら行こうとしない限りは見る機会はあまりないだろうな。

 「見てみてサダメ! 海が見えて来たよー!!」

 いつもよりテンションの高いミオは馬車の中から海が見えるのを確認するや否や海に向かって指を指し、自分にも見るように促してきた。ここまでテンション爆上がりの彼女は初めて見た気がする。よっぽど楽しみにしていたのだろう。

 「どれどれ…おー!」

 しかし、促されながら海の方を見ると、不思議と彼女に共感する自分が居た。

 何十年ぶりに間の当たりにする広大な青。太陽が差しているいる事もあってか、水面がキラキラ輝いており、距離的にまだ何キロも先の筈なのに、それでも眩しく感じた。まるで宝石のようだ。

 「あっ! シッター村ってあそこじゃない?」

 久方ぶりに見た海に感動していると、ミオは海の手前に見える街並みを指差す。彼女の言う通り、あそこがシッター村で間違いないだろう。

 「わあぁ! 本当にここまで来ちゃったんだー!? 皆、もう着いてるかなー? うふふふ!」

 村が見えてきて更にテンションが上がるミオ。普段あまり見せない彼女の無邪気な笑顔を見ると、なんだか我が子と一緒に遊びに来たかのような気分だ。まあ、結婚した事ないから実際どうなのかはわからんけども。子供連れの親ってこんな気持ちなのかな。

 「お客さん、シッター村は初めてかい?」

 「は、はい。そうですけど?」

 ミオがテンションを上げていると、御者の男性が話しかけてきた。流石にこのテンションの上がりようを見て気づいかれたみたいだな。なんかちょっとだけ恥ずかしいな。

 「この時期は海水浴シーズンだから、初めて海に行く人が最近よく乗車するんだよね」

 「へー。そうなんですか」

 「今頃観光客で多いからきっと楽しいと思うよ」

 「やっぱ皆考えてる事はおんなじなんですね」

 「ははは。そうかもな。けど、客が多い分、宿取りは早いもん勝ちだからまずはそっちから確保した方がいいだろうね」

 「なるほど。分かりました、そうします。教えてくれてありがとうございます」

 「どういたしまして。思う存分楽しんで」

 その後、御者の人から色々話を聞きながらシッター村に近づいて行くのだった。
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