転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第2章 脱出編

第2章ー㉑

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 木箱の中身が空なもの、逆にパンパンに詰まっていたり、かと思えばちょっとだけ残っているものとバラバラ。

 「…」

 一見普通に見えるかもしれない。それでも私には違和感を感じた。けど、これだけだとまだ確証が得られない。

 「そうだ! 一個ずつ降ろしてみれば…」

 そう思った瞬間、私は他の検証方法を思いつき試してみることにした。別の列を選んだあと、上から一個ずつ中身を確認してみれば違和感の正体がはっきりするはず。





 「…やっぱり」

 私の検証は思い通りの結果をもたらした。三段ある木箱の一番上は全く減っている様子はなかった。けど、真ん中の木箱は上のやつよりかなり減っていて、一番下の木箱は空になっていた。

 明らかに木箱の中身と置かれている順序がおかしい。普通獲るなら上から取るに決まっている。その方が楽だし。もっというなら、入り口近くにある木箱から取った方が早い。にも関わらず、中央付近に置いてるかつ、下の方の木箱からわざわざ移動させて取ったりするかな。

 「そういえば、儀式って供物とか生贄とかを捧げたりしないのかな?」

 木箱の謎について色々と考えているうち、一つの疑問が生まれた。絵本や漫画では悪い儀式に女性の生贄や生き血を捧げている場面がよく出てきていた。サダメは儀式が成功すれば半永久的に結界を張れると言っていたけど、それだけすごい儀式をするにはものすごいなにかを捧げる必要があるのではないか。

 「はっ!? そういうことね!!」

 そこで気が付いてしまった。魔造種《マド・シード》にはものすごい魔力が含まれている。この儀式に必要なのは大量の魔力。魔力のコストが掛からないからとサダメが言っていたけど、実際は違った。魔造種の魔力を捧げることでこの儀式は成立してるんだ。

 「ということは、方陣はこの倉庫そのもの!」

 この事実に気が付いた瞬間、全てを理解した。方陣は倉庫全体で、魔造種が減ったのは方陣が起動した際に魔造種を少しずつ消費しているからだ。

 「方陣を止めるには壊さなきゃいけないはずだけど、この倉庫自体が方陣ってことは…」

 しかし、その事実に辿り着いたとき、新たな問題が発生してしまった。方陣を壊さなきゃいけないんだけど、方陣を壊すということはこの倉庫を壊さなければいけなくなってきた。

 「まいったなー。私一人でここを壊すなんて出来るわけないよー!」

 私はサダメと違って攻撃魔法なんて習ってない。今の私に出来ることは軽い治療と風を吹かせて物を浮かせる程度。倉庫《ここ》を壊すにはサダメの力が必要になってくる。けど、彼は今囮役として頑張っている最中。呼び出すなんて出来ない。

 「ダメダメ! 弱気になったらダメ!! 私でも出来る方法を考えないと!」

 サダメに頼れない状況とはいえ、皆の頑張りを無駄にするわけにはいかない。だから私一人でも出来る方法を考えなければと自分のほっぺたを叩いて気合を入れた。

 「けど、あんまり時間もないし、どうしよう」

 しかし、現実は厳しい。こうして考えている間にも時間が進んでいく。サダメが強いといってもあれだけの魔物を引き付けていたら体力がいつ尽きてもおかしくない。そうなったらこの作戦はおしまい。そうならないためにも急がないと。

 「そうだ! ここの魔造種を全部外に出しちゃえば…」

 一ついい案は思いついたものの、ここにある魔造種を全て出すにはかなり時間が掛かる。窓も見つからないし、さっき来た入り口からぐらいしか外に運び出せない。風魔法で木箱を浮かせれるけど、今の私じゃ5,6個が限界。何十個あるかわからない木箱を全て運び出すには時間がかかりすぎる。おまけに暗いから余計にかかる。

 「うーん、やっぱ壊さないとダメかー」

 そこまで時間の掛かることは出来ない。やっぱりこの倉庫を壊す方法を考えた方がよさそうだ。

 「私の風魔法なんかで壊せるかわからないけど、一か八かやってみよう!」

 そう思った私は、前にサダメから魔法のことで少し教えて貰ったことを思い出していた。魔法で大事なのはイメージ。魔力を別の物質に変換するイメージを持つことが重要なんだって。

 彼は詠唱もなしに炎を出せる。あれは魔力を炎に変えるイメージが出来てるからこそ出来る芸当。私だっていちおう治療魔法だって使えるし風魔法だって出せる。嵐のような荒々しい風をイメージ出来ればこの倉庫だって壊せるかもしれない。

 「…嵐が吹き荒れるイメージを」

 まずは目を閉じ、手のひらでさっき木箱を浮かせる程度の風を作り出す。ここまでは余裕。ここから嵐のような風を生み出すんだ。
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