転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第4章 入学試験編

第4章ー⑭

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 「…は?」

 「ミ、ミオ? 貴方まで急に何を言っているの?」

 自分は目を丸くし、エリカさんは開いた口が塞がらないままミオの方に視線を向けていた。自分が土下座までしてようやく承諾して貰ったのに、それに乗じるかのようなタイミングで彼女も魔法学園を受験したいと言いだしたのだ。彼女は一体この状況をどう見たら許可を貰えると思ったのだろうか。

 「本気かい? 今の話、ちゃんと聞いてただろ? サダメはそれなりに鍛えているからまだ可能性はあるとして、君はちょっと…」

 流石の神父も困り顔で彼女を説得していた。ミオの魔法の才能もあるにはあるだろうが、彼女の魔法は治癒系統の魔法が基本。風魔法もある程度使いこなせるようになってはいるが、物を浮かせれる程度。普段鍛えている様子もないし、仮に試験に受かったとしても今後の事を考えると不安でしかない。そもそも、なんで急にこんなことを言いだしたのだろうか。

 「…私も、もっと魔法の勉強して、立派な治癒師になりたいの!」

 「…ミオ」

 治癒師。前世でいう所の医者に近しい職業である。ただ、現代の医者とは違い、複雑な医療器械や施設等はほとんど使用せず、必要なのは医療の知識と魔法の素質。あとは資格ぐらいなものか。たしかに、彼女の治癒魔法は鍛えれば凄い治癒師になれると思う。勇者にも褒められていたしな。

 「もっと凄い治癒魔法を使えるようになったら、沢山の人を助けられる。風魔法だって攻撃出来なくても、重い物運んだり瓦礫どかしたり、色んな方法で人の役に立てると思うの。だから私も学園に行って魔法の勉強がしたい! もう、あんな思いしたくないから」

 「…」

 涙混じりに語られるミオの気持ち。そうか。自分と同じで、あの時から彼女も彼女なりに色々考えていたようだ。悔しかったのは自分だけじゃないのだと、今ここで初めて知った。ひょっとしたら、彼女も言いだすタイミングを伺っていたのかもしれない。

 「…神父様、俺からもお願いします。ミオも一緒に試験を受けさせてくれませんか」

 「ッ!? サダメ?」

 ミオの気持ちを知れた自分は、神父に再び頭を下げた。彼女も自分と同じような気持ちを抱いていたのなら、仲間外れなんかに出来ない。試験がどういうものか知らないけど、自分に出来る事があればサポートし合えばいい。流石に魔法学園で筆記試験はあるまい。

 「うーん。まあ、サダメも一回きりだし、ミオにもチャンスぐらいは与えてもいいか」

 「神父様!?」

 「ッ!?」

 神父も少々困惑しつつ、思いのほかあっさりと受験を承認してくれた。まあ、自分をオッケーした手前、彼女だけは絶対にダメだとは言い切れなかったのだろう。エリカさんはあまり納得していないようだが。




 こうして、なんとか自分とミオは受験の承諾を貰うことが出来たのだった。その後、それとは別件でエリカさんにお叱りを受けたのはまた別の話である。

 ―転生勇者が死ぬまで、残り4144日
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