転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

文字の大きさ
117 / 500
第4章 入学試験編

第4章ー㉛

しおりを挟む
 試験が開始してから十数分は経っただろうか。まだ始まって間もないし、今は特に焦る必要もない為、歩きながら脱出口を探し回っていた。とはいえ、未だに人と遭遇しないのだが。どんだけ皆と離れた距離に配置されたのだろうか。ラッキーではあるが、風の音しか聞こえてこないとちょっと虚しくなってくるな。

 「こんな寂しい場所、とっとと脱出しちまいてーなー」

 この状況から少しでも離れたくなってきた自分は、歩くペースを若干速める。きっとこの虚しさも脱出してしまえば問題あるまい。そう自分に言い聞かせていた。

 『報告。只今、一人目の脱出を確認。残りは二十九となりました。受験者の皆様、引き続き試験頑張ってください』

 「おっ? もう一人出たのか?!」

 探索するなか、突如女の子のアナウンスが洞窟内に響き渡った。どうやら脱出する度にアナウンスされる仕組みになっているのだろう。にしても、こんなに早く脱出する者が現れるとは。自分より運の良い奴が居たようだ。

 「けど、あんまり余裕こいてる時間はなさそうだな」

 一人脱出した者が出たとなると、この流れでどんどん合格者が出てくるかもしれない。そう思うとあんまり悠長に探している余裕が無くなってきた。気が付けば早歩きしていた足が駆け足になっていた。





 『報告。只今、五人目の脱出を確認。残りは二十五となりました。受験者の皆様、引き続き試験頑張ってください』

 「はあ…はあ…」

 それから数分後、五人目の合格者が出て、少しずつ焦りが出て来ていた。付近を上下左右隈なく探したが、全く見つからない。というか、まだ人にすら会えていない。本当に自分は皆と同じ洞窟に入れられたのかと疑いたくなってきた。向こうの手違いで自分だけ別の場所に移動させてました、なんて洒落にならなそうな事態にはなっていないよな?

 「はあ…はあ…あっ?」

 色んな不安を掻き消すように走っていると、目の前に行き止まりを発見。どうやら洞窟の端の方まで来てしまったようだ。ここにも人の姿はない。ということは、反対の方に行けば人が居る…のかもしれない。

 「…念の為に確認しておくか」

 行き止まりではあるが、ここにもひょっとしたら脱出口があるかもしれないと僅かな希望を抱いて探索してみる。パッと見なさそうには見えるが、そこそこ広いから可能性はゼロではない。見落としたら最悪だし、一応隅々まで確認しておかないと。

 「ん?」

 しかし、少し歩くと洞窟の一番端の方に明らかに人工物らしきものを発見。形状は人が入れるぐらいの長方形になっており、鋼のように頑丈そうな扉に見える。

 「…マジかよ…」

 紛れもなくアレが脱出口だ。よく見ると、扉にご丁寧に『脱出口』と書かれてある。驚きのあまり数秒頭が真っ白になってしまい、心の声がボソリと漏れてしまった。まさかこんなあっさり見つかってしまうとは。やはり今日の自分はかなり運が良い。良すぎてこの後が心配になりそうだ。

 「うっし。とりあえずこれで俺も合格…」

 うっきうきで脱出口に向かう自分。この寂しさからも開放されるのかと思うと嬉しさが込み上げてきていた。





 そんな瞬間だった。










 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです

桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

処理中です...