転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

文字の大きさ
139 / 500
第5章 入学編

第5章ー②

しおりを挟む
 「年頃の男の子は素直になれない時期もあるんだ。察してあげなさい」

 「す、すいません」

 神父様がエリカさんに説教を施すと、自分の肩から手を離し謝罪して申し訳なさそうに俯いていた。

 「サダメもごめんなさい。ちょっと押し付けがすぎたわね。けどね、サダメの事を本当に愛してるから。だからね、私の事嫌いにならないでね?」

 「う、うん。大丈夫。気にしてないから」

 「ホント!? ああ、サダメ大好きー!!」

 「…」

 自分にも謝罪をするエリカさんだが、自分が気にしてないと言うとさっきの反省はどこへやらと言わんばかりに熱い抱擁に頬ずり、頬にキスまでしてくる始末。ここまで感情剥き出しのエリカさんは初めて見た。もしかしたら何か良からぬものが憑りついているのではとさえ思ってしまった。なんか重たい彼女の霊でも憑りついてしまったのではないか?

 「すまないな、サダメ」

 「神父様」

 冗談はさておき、暫しエリカさんの愛を棒立ちで受け止めていると、今度は神父様の方から謝罪される。出来れば謝罪よりこの状況を止めて欲しい気持ちもあるのだが。

 「シスターはな、お前達が試験に行ってる間、ずっとお前達の無事を祈っていたんだぞ。それだけじゃない。ここ数日のご馳走はシスターが自分の財産を叩いてまで作ってくれたんだぞ」

 「えっ?」

 しかし、神父様から意外な話を聞かされた。思い返せば、いつもスープとパンで飢えを満たしていた食事だったが、ここ数日は肉メインの食事が多かった気がする。そのついでに思い出したが、最近のエリカさんの様子は普段と違っていた気がする。やたら三人で寝たがってたし、なんなら風呂にも何度か誘われてたな。風呂に関しては思春期真っ盛りの身体を見せる事に抵抗があったので断りはしたが。ミオも嫌がってたし。エリカさんの様子が変だったのはその時からなのかもしれない。

 「シスターはお前達の事を人一倍愛しているのだ。かく言う私も、お前達を我が子のように愛してる」

 「…」

 「いいかいサダメ。どんなことがあろうとも私達のその気持ちは変わらないし、いつどこに居ようともお前達の事を思い続けている。それだけは忘れないでおくれ」

 「…はい!」

 神父様は笑顔で語りかけながら自分の頭に優しくポンっと手を当てる。大きくて逞しい手に温もりを感じる。この人に頭を撫でられると不思議とホッとする。まるで魔法の手だ。

 話す言葉もどことなく優しさを感じる。聖職者だからというのもあるだろうが、嘘偽りのない本音が心に響く。

 「そろそろ迎えの時間のようだな」

 神父様の手にホッとさせられていると、村の入り口付近で馬車の音が聞こえてきた。時間的に学園行きの馬車だろう。

 「サダメ、ミオ。行ってらっしゃい」

 「「行ってきます!」」

 二人に最後の挨拶を済ませ、自分とミオはリーヴ村を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

処理中です...