BLOOD HERO'S

慶名 安

文字の大きさ
22 / 120
episode3 「風神の豪鬼」

episode3 #8「過去の自分と今の自分」

しおりを挟む
 足に重りを付けた炎美はもう既に疲れきっていた。

 「どうした、兄ちゃん! まだ始まってすらいないでー! ガッハハハハハ!!」

 豪鬼の大笑いが響く中炎美はゼエハアしながら足を一生懸命動かさそうとしていた。

 「す、すいません! これはちょっと…流石…に…」

 息切れしながら受け答えする炎美。足には20キロの重りを付けているせいで歩くのもシンドイ。

 「うだうだ言うてても何も始まらんでー! この街一周するのに50キロはあるんやで!」

 「ご、50キロ!!」

 サラッと言われた衝撃の発言に驚愕の顔を隠し切れなかった炎美。

 「せや! 中途半端な距離測るよりもそっちの方が分かりやすくてええやろ! ガッハハハハハ!!」

 (最早、笑いどころじやない…)

 炎美の心の中ではそう思っていた。

 「ホラ、ボサッとしとらんで早よ走りーや! 時間は待ってくれへんでー!!」

 どうやら豪鬼は本気でやらせようという腹積もりの様だ!

 (…やるしかないのか…)

 炎美は諦めた様子で走り出そうとしたが…

 「ハア…ハア…ハア!」

 重りが重過ぎて少し走っただけで息切れしてしまった。

 「何や、早過ぎやろ! 兄ちゃん、どんだけ体力無いねん!!」

 豪鬼は炎美の体力のなさに逆に驚いていた。

 「流石にイキナリこのトレーニングはちょっとキツイんじゃないかと…」

 「だらしないのー、こんなモン気合いで何とかせいや!」

 「…えー!」

 適当なアドバイスを送る豪鬼。

 (気合いで何とかなるものではないけど…っていうか俺ってこんなに体力無かったの! 一体(記憶のある)前の俺ってどんだけ…)

 そう思って時だった。

 「…また記憶が無い事を言い訳にするんか?」

 「え?」

 不意に問われた炎美は豪鬼の方に振り向くと豪鬼は真剣な面持ちで炎美を見ていた。

 「お前さん、柑菜と戦ってた時もそんなこと考えっとたやろ! だから、最初は逃げはってた」

 「あ、あの…」

 豪鬼は真顔で語り出し炎美の言葉も聞かず話続けた。

 「ええか。今の自分は今の自分や! 分かるか?」

 「?」

 豪鬼の質問の意味が分からず首を傾げる炎美。

 「過去の自分に戻る事は出来ん! なら今の自分がどうしたいかが大事なんやろ!! 今の自分の気持ちはどうや! 本当にココで終わりたいんか?」

 豪鬼は炎美に近づき熱く語った。

 炎美はいつも過去の自分がどんな人間だったのか? そんな事をいつも考えているうちにやがて出来ない事を記憶喪失のせいにしていた。

 「俺の今の気持ちを言えばいいんですか?」

 炎美は豪鬼の目を真っ直ぐ見つめて問いかけた。豪鬼は黙って小さく頷いた。

 「---お願いします! 俺を強くして下さい!!」

 炎美は豪鬼に深々と頭を下げた。

 ---そして炎美の地獄の強化月間を再開したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

生贄の少女と異世界ぐらしwith 持ち物一つ

青樹春夜
ファンタジー
俺の部屋にあるもので異世界生活?高校生の俺の部屋にはマンガ・ゲーム・趣味の物プラス学用品・服・ベッド…。生贄の金髪碧眼少女と一緒に村を立て直すとこから始まる救世主生活!だけど特にスキルがついている気がしない⁈あっ…転生じゃないから? 1話1話は短いです。ぜひどうぞ! このお話の中には生活用品で魔物と戦うシーンが含まれますが、その行為を推奨するものではありません。良い子も悪い子も真似しないようお願い致します。 主人公ヒロキ……17才。 現実世界でつまづき、ある理由によって異世界に呼ばれたヒロキは、その世界で優しさと強さを手に入れる——。 ※数字の表記について——一から九までを漢字表記。それ以上は見やすくアラビア数字で表記しています。 ※他サイトでも公開中。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

陰陽師と結ばれた縁

サクサク
ファンタジー
2本に古くから続く一族の直系に生まれた女の子、安倍咲月は一族の中では霊力と神力が少なく、使用人や分家の親族からは“役たたず”と呼ばれていた。 だが、現当主である成親は彼女に最大限の愛情を注いでいる。 そして、そんな彼女の傍には強い力を持たないのその姿を見る事すっらできない、守護神である十二神将が控えていた。 18歳の誕生日に他の兄妹と同じように、一族内での成人式裳儀に挑むことになるのだが・・・・・。 ※なろう、カクヨムでも同じ小説を掲載中です。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...