46 / 117
35. 呼び出し
しおりを挟む
三日ほどかけてナスタチウム地方に到着した時、ラキドだけは憔悴しきった様子であった。
それもそのはず、女子三人(特にカノンとナナ)は恋バナに花を咲かせ、その話題の中心は専らカノンとラキドのことであった。
ナナはカノンのことを気に入ったのか、お姉様と呼んで話を促し、カノンはそれに乗せられるようにペラペラと自分のことを語った。
カノンもナナも声が大きく、一緒に固まって歩く仲間達にはその会話の大半が聞こえていた。
ラキドは何度か諫めていたが、それが効かないと知ると頭を抱えながら歩くのみであった。
本当にご愁傷様としか言えない。
話の流れでナナとレンリに恋人の有無を尋ねた時には、ルゴーも含めソワソワと聞き耳を立てていた者が何人かいた。
「――ナナちゃんは? 好きな人はいるの?」
「それは……乙女の秘密ですわ」
「教えてよー。あ、レンリちゃんは? 恋人の一人か二人ぐらいいそうだけど」
「……どうでしょう」
「えーなにそれ。あ、じゃあ、この場を代表して聞くけど、好みのタイプとかは?」
「……すみません、考えたことがありません」
「もしや、レンリちゃんも乙女の秘密ってやつ? 私は赤裸々に話したのに」
記憶のないレンリに恋人の有無など分かるはずもないのでそう答えるしかなかったのだろう、とテイトは思っていたが、その返答に勝手な想像をしたのか、ルゴーは顔を顰めて歯を食いしばっていた。
どうしたのかは敢えて訊かなかったが、おそらくその判断は正解だと思う。
勿論、女子の話に耳を傾けていただけではなく、《アノニマス》と戦うことになった時の注意点の共有も事前に行っていた。
魔道士であるシンは前線で一緒に戦うが、レンリとナナは後方支援に回るとあらかじめ伝えておいた。
そして、敵と戦う時は遮蔽物がない場所で戦うようにとも。
その言葉に耳を疑うようにしていた者達も、レンリの防御魔法のことを伝えると驚きながらも納得したようであった。
いつもより賑やかな旅は、分岐点に訪れた時に終わりを告げた。
シンの予想はナスタチウム地方であるとだけで、明確に村や街の名前を挙げたわけではない。
ここから隊ごとで村や街に分かれなければいけないため、気になるものがあったら伝えてくれ、とシンはアニールに渡したような小鳥を三羽創り出し、それぞれテイトとルゴーとラキドに手渡した。
ちなみにアニールから貰った小鳥は、あれからずっとナナの肩にいる。
興味深そうに小鳥を眺めていた二人も、使い方についてはアニールに説明していた内容を聞いていたようで、了解したと小鳥を手にその場を離れた。
先日知ったばかりの魔法を早速応用していることにテイトは素直に賞賛の目を向けたが、どれだけの範囲で何日間形を保っていられるのか楽しみだな、と研究者の目で口の端を吊り上げたシンに、応用ではなく実戦で試しているだけなのだと知り、一気に不安を覚えた。
テイト達は近くの村に滞在し、周辺の町村を行き来する形で何か異常がないかを探った。
しかし、この二日間周囲に取り立てて変わった様子はなく、ルゴーやラキドから連絡がくることもなかった。
シンの予想が外れたのだろうかと危惧した時、こちらへ飛んでくる青い小鳥の姿が見えたため、鬱蒼とした空気は瞬く間に張り詰めたものへと変わった。
小鳥はシンの伸ばした手に止まると、ラキドの声音で話し出した。
「――ラキドだ。怪しい奴を見かけた。場所はヴィオレイだ」
その言葉を伝えると、小鳥は空気に溶けるように消えていった。
ヴィオレイは隣の街だ。
今から向かえばすぐに着くことができるだろう。
テイトもリゲルもピリピリとした空気を纏ったが、シンは冷静な様子でテイトの肩に乗った小鳥に手を伸ばした。
「――ヴィオレイに来てくれ」
シンはそう告げると、小鳥を空に放った。
鳥は真っ直ぐとどこかを目指して飛んでいき、その姿はすぐに見えなくなった。
「……これじゃ伝言ゲームだな。まだまだ改善の余地がありそうだ」
緊迫した空気を気にも留めず、シンは面白そうに笑った。
いつも通りのシンにテイトの緊張も解けていくようで、しっかりとした足取りでヴィオレイに向けて歩き出した。
それもそのはず、女子三人(特にカノンとナナ)は恋バナに花を咲かせ、その話題の中心は専らカノンとラキドのことであった。
ナナはカノンのことを気に入ったのか、お姉様と呼んで話を促し、カノンはそれに乗せられるようにペラペラと自分のことを語った。
カノンもナナも声が大きく、一緒に固まって歩く仲間達にはその会話の大半が聞こえていた。
ラキドは何度か諫めていたが、それが効かないと知ると頭を抱えながら歩くのみであった。
本当にご愁傷様としか言えない。
話の流れでナナとレンリに恋人の有無を尋ねた時には、ルゴーも含めソワソワと聞き耳を立てていた者が何人かいた。
「――ナナちゃんは? 好きな人はいるの?」
「それは……乙女の秘密ですわ」
「教えてよー。あ、レンリちゃんは? 恋人の一人か二人ぐらいいそうだけど」
「……どうでしょう」
「えーなにそれ。あ、じゃあ、この場を代表して聞くけど、好みのタイプとかは?」
「……すみません、考えたことがありません」
「もしや、レンリちゃんも乙女の秘密ってやつ? 私は赤裸々に話したのに」
記憶のないレンリに恋人の有無など分かるはずもないのでそう答えるしかなかったのだろう、とテイトは思っていたが、その返答に勝手な想像をしたのか、ルゴーは顔を顰めて歯を食いしばっていた。
どうしたのかは敢えて訊かなかったが、おそらくその判断は正解だと思う。
勿論、女子の話に耳を傾けていただけではなく、《アノニマス》と戦うことになった時の注意点の共有も事前に行っていた。
魔道士であるシンは前線で一緒に戦うが、レンリとナナは後方支援に回るとあらかじめ伝えておいた。
そして、敵と戦う時は遮蔽物がない場所で戦うようにとも。
その言葉に耳を疑うようにしていた者達も、レンリの防御魔法のことを伝えると驚きながらも納得したようであった。
いつもより賑やかな旅は、分岐点に訪れた時に終わりを告げた。
シンの予想はナスタチウム地方であるとだけで、明確に村や街の名前を挙げたわけではない。
ここから隊ごとで村や街に分かれなければいけないため、気になるものがあったら伝えてくれ、とシンはアニールに渡したような小鳥を三羽創り出し、それぞれテイトとルゴーとラキドに手渡した。
ちなみにアニールから貰った小鳥は、あれからずっとナナの肩にいる。
興味深そうに小鳥を眺めていた二人も、使い方についてはアニールに説明していた内容を聞いていたようで、了解したと小鳥を手にその場を離れた。
先日知ったばかりの魔法を早速応用していることにテイトは素直に賞賛の目を向けたが、どれだけの範囲で何日間形を保っていられるのか楽しみだな、と研究者の目で口の端を吊り上げたシンに、応用ではなく実戦で試しているだけなのだと知り、一気に不安を覚えた。
テイト達は近くの村に滞在し、周辺の町村を行き来する形で何か異常がないかを探った。
しかし、この二日間周囲に取り立てて変わった様子はなく、ルゴーやラキドから連絡がくることもなかった。
シンの予想が外れたのだろうかと危惧した時、こちらへ飛んでくる青い小鳥の姿が見えたため、鬱蒼とした空気は瞬く間に張り詰めたものへと変わった。
小鳥はシンの伸ばした手に止まると、ラキドの声音で話し出した。
「――ラキドだ。怪しい奴を見かけた。場所はヴィオレイだ」
その言葉を伝えると、小鳥は空気に溶けるように消えていった。
ヴィオレイは隣の街だ。
今から向かえばすぐに着くことができるだろう。
テイトもリゲルもピリピリとした空気を纏ったが、シンは冷静な様子でテイトの肩に乗った小鳥に手を伸ばした。
「――ヴィオレイに来てくれ」
シンはそう告げると、小鳥を空に放った。
鳥は真っ直ぐとどこかを目指して飛んでいき、その姿はすぐに見えなくなった。
「……これじゃ伝言ゲームだな。まだまだ改善の余地がありそうだ」
緊迫した空気を気にも留めず、シンは面白そうに笑った。
いつも通りのシンにテイトの緊張も解けていくようで、しっかりとした足取りでヴィオレイに向けて歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る
ムーン
ファンタジー
完結しました!
魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。
無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。
そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。
能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。
滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。
悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。
悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。
狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。
やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる