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36. 対峙 1
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ヴィオレイに到着すると、街の入口で待っていたカノンに驚いた顔をされた。
「――え? 早くない?」
あの魔法で創られた鳥の性能については正直半信半疑だったため、テイト達の到着が想像以上に早くて驚いた、とカノンは感心混じりに語った。
「もう一つの隊にも連絡済みだ。もう少ししたら来ると思う」
「へぇー、便利だね。流石、魔法使い君」
カノンが笑いながら告げると、シンは目を細めるだけに反応を留めたようであった。
「それじゃ、私はこのままルゴーさんを待つから、皆はここをまっすぐ進んで、三つ目の曲がり角で右に行ったとこにある宿屋に入って。ラキドが待ってる」
その言葉に従って進むと、二階建ての宿屋に辿り着いた。
ロビーにラキドの姿が見えなかったため、テイトは一先ず受付で今晩の宿の手配を行った。
二部屋分の鍵を渡されたところで二階から降りてくるラキドの姿が目に入ったため、テイトは手を上げて所在を知らせた。
ラキドはカノンと同じように目を見開いて近付いてきた。
「驚いた。こんなに早く来るなんて」
「ルゴー達も直に来るかと思います」
「そうか。……情報を共有したい、俺たちの部屋に」
ラキドに誘導されるままにテイト達も二階へと上がった。
案内された部屋の中には椅子が二つしかなかったため、それぞれベッドの上に腰掛けるなどして話を聞く体制を整えた。
「――相手は二人。今は仲間が尾行中だ。一見すると他の街から来た旅人のように思えたが、旅をしているにしてはやけに軽装だった。外套を身につけていたから、その下に物を持ち合わせている可能性もあったが、観光しているとは思えない様子で街を物色していたのがどうにも気になった。俺たちとは別の場所に宿を取ったから、そこを見張ってみたら魔道士であることは分かった。アノニマスだと確定した訳ではないが、怪しいと判断した」
だから、鳥を使わせてもらったとラキドは続けた。
今の情報で疑うには不十分。
それをラキドも承知しているようだが、テイトは長く《アノニマス》と戦っている彼の勘を信じたいと思った。
訪れた無言をどう捉えたのか、ラキドは少し目を伏せた。
「白黒つけられるのは、ここが襲撃された時だ。だが、それでは遅い。事前に防げるなら防ぎたい」
「……僕も同じ気持ちです」
テイトが告げると、ラキドはふ、と笑った。
「先ずは確定を取りたいが、どうすればいいのか君たちの知恵を借りたい」
「そいつらに、訊けばいいじゃないか」
シンが簡単なこととばかりに呟いた。
ラキドは呆気にとられたようで、少し言葉を詰まらせた。
「……彼らに、アノニマスか、と?」
「そうだ」
「でも、それだと誤魔化される可能性もあるだろう」
「だとしても、本当にそいつらがアノニマスなら何かしらのアクションは取るだろう」
ラキドは困惑したように口を閉ざした。
テイトも同じ思いだったが、不意にシンの特技を思い出した。
「シンさんは、魔法で相手の嘘が見抜けるんです」
「え?」
ラキドがテイトとシンの顔を交互に見つめた。
「……別に魔法を使うことは前提としていない」
シンは憮然とした表情で小さく呟いたが、彼の凄い魔法を目にしているからか、ラキドはすんなりと納得したようであった。
「直接訊くとしても、街の中では些か不都合だ。奴らが本当にアノニマスだったとしたら、いつ住人に被害が及ぶか分からない。言い当てられて、激昂して街を破壊されては元も子もない」
一般人の可能性も捨てきれないから手荒なこともできないしと続けるラキドに、またもやシンが問題なんて存在していないかの如くに意見した。
「それなら、街の外に誘導すればいい」
「……どうやって」
「対象を指定してくれれば、空間認識阻害の魔法をかけよう」
ラキドは一度目を丸めたかと思うと、次第に笑い声を上げた。
突然笑い出したラキドは戸惑う周囲に気付いたのか、悪いと呟きながら笑みを収めた。
「いや、凄い魔道士だ。本当に心強い仲間だと思って」
「……一時的にだが」
「だとしても、だ。……テイトも、こんな規格外の魔道士をよく見つけたな」
真面目なラキドにしては珍しく笑顔を見せる様子に、テイトは肩の荷が下りた心地だった。
リーダーとして選ばれた以上、何か一つでも役に立たなければユーリに申し訳が立たないと思っていた。
テイトよりも長く《クエレブレ》に身を置くラキドにそう言われ、なんだか役目を果たせたような気持ちになったのだ。
そう思うのはまだ早い、とテイトは内心首を振りながら真っ直ぐにラキドを見つめた。
「では、その疑わしい人物がいるところに行きましょう。ラキド、案内をお願いします」
力強く頷き、ラキドは立ち上がった。
荷物になりそうな物だけ各自部屋に置いて一階に降りると、ルゴーを連れたカノンと合流した。
「あれ? 皆してどっか行くの?」
「カノン、丁度良かった。――ルゴー、事情は歩きながら説明するから、部屋を取っていらない荷物だけ置いてきて欲しい」
「お、おう?」
ラキドに言われ、ルゴー達も受付に声をかけ二階に上がった。
「え、なになに?」
「奴らに接触するんだ」
「え? ガチで言ってるの? どうやって?」
「ルゴーが来たら一緒に説明する」
疑問符をとばすカノンをあしらいながら、ラキドは言葉少なに返した。
カノンは肩を竦めながら口を閉じた。
間もなくしてルゴーが降りてくると、全員でラキドの隊に見張ってもらっているという宿屋の方へと向かった。
その道中、部屋で話した内容をラキドが説明すると、ルゴー達も唖然としていた。
しかし、カノンは突然笑い出すとシンの背中を思い切り叩いた。
「っ」
「魔法使い君、君そんなこともできるの! 凄いね!」
「……どうも」
乱暴なコミュニケーションにも関わらず、リゲルとの時みたいに特に言い争いにならなかったことから、シンは意外と女性には優しいのだとテイトは認識した。
作戦を全て話し終える頃に、一行は目的の場所へと到着した。
大人数だと目立ちすぎるため、ラキドとテイトとシンが先行してラキド隊の仲間と接触することとなり、他の者はこちらの様子が窺えるギリギリの位置まで離れてもらうことになった。
「――あ、ラキドさん」
ラキドが来たことに、見張りをしていた者達は安心したような表情を浮かべた。
「動きはあったか?」
「そろそろ外出しそうな雰囲気はあるんですけどね」
今までに得た以上の情報はないですと困ったように告げる仲間に、ラキドは声を潜めながらルゴー達にも伝えた内容を共有した。
話を聞くと、期待と不安の入り交じったような表情で顔を見合わせていたため、できたら凄いけど本当にできるのか、と言う考えが透けて見えるようであった。
「――あ、あいつらです」
対象の者が出てきたのか、小さな声で仲間の一人が視線を遠くへ遣った。
その方向を見ると、茶色い外套を羽織った人影が二人、丁度宿屋の入口から出てくるところであった。
顔の見えない二人組を視認すると、シンは羽織っていた外套のフードを深く被って顔を隠し、無言のまま男達の方へ歩み寄った。
一体何をするんだと焦る背後に何の説明もなく、シンは二人の間を肩をぶつけながら通り抜け、悪態を吐かれても振り返ることなく人混みの中へと姿を消してしまった。
この後自分達はどう行動すればいいのかと戸惑ったが、対象が歩き出したため、テイト達も距離を取りながら後を追うことにした。
二人はしっかりとした足取りで歩いているようだったが、その足は街の外へと向いているように見えた。
シンの魔法が既に効いている状態なのかも知れない、と逸る気持ちを抑え慎重についていった。
「――え? 早くない?」
あの魔法で創られた鳥の性能については正直半信半疑だったため、テイト達の到着が想像以上に早くて驚いた、とカノンは感心混じりに語った。
「もう一つの隊にも連絡済みだ。もう少ししたら来ると思う」
「へぇー、便利だね。流石、魔法使い君」
カノンが笑いながら告げると、シンは目を細めるだけに反応を留めたようであった。
「それじゃ、私はこのままルゴーさんを待つから、皆はここをまっすぐ進んで、三つ目の曲がり角で右に行ったとこにある宿屋に入って。ラキドが待ってる」
その言葉に従って進むと、二階建ての宿屋に辿り着いた。
ロビーにラキドの姿が見えなかったため、テイトは一先ず受付で今晩の宿の手配を行った。
二部屋分の鍵を渡されたところで二階から降りてくるラキドの姿が目に入ったため、テイトは手を上げて所在を知らせた。
ラキドはカノンと同じように目を見開いて近付いてきた。
「驚いた。こんなに早く来るなんて」
「ルゴー達も直に来るかと思います」
「そうか。……情報を共有したい、俺たちの部屋に」
ラキドに誘導されるままにテイト達も二階へと上がった。
案内された部屋の中には椅子が二つしかなかったため、それぞれベッドの上に腰掛けるなどして話を聞く体制を整えた。
「――相手は二人。今は仲間が尾行中だ。一見すると他の街から来た旅人のように思えたが、旅をしているにしてはやけに軽装だった。外套を身につけていたから、その下に物を持ち合わせている可能性もあったが、観光しているとは思えない様子で街を物色していたのがどうにも気になった。俺たちとは別の場所に宿を取ったから、そこを見張ってみたら魔道士であることは分かった。アノニマスだと確定した訳ではないが、怪しいと判断した」
だから、鳥を使わせてもらったとラキドは続けた。
今の情報で疑うには不十分。
それをラキドも承知しているようだが、テイトは長く《アノニマス》と戦っている彼の勘を信じたいと思った。
訪れた無言をどう捉えたのか、ラキドは少し目を伏せた。
「白黒つけられるのは、ここが襲撃された時だ。だが、それでは遅い。事前に防げるなら防ぎたい」
「……僕も同じ気持ちです」
テイトが告げると、ラキドはふ、と笑った。
「先ずは確定を取りたいが、どうすればいいのか君たちの知恵を借りたい」
「そいつらに、訊けばいいじゃないか」
シンが簡単なこととばかりに呟いた。
ラキドは呆気にとられたようで、少し言葉を詰まらせた。
「……彼らに、アノニマスか、と?」
「そうだ」
「でも、それだと誤魔化される可能性もあるだろう」
「だとしても、本当にそいつらがアノニマスなら何かしらのアクションは取るだろう」
ラキドは困惑したように口を閉ざした。
テイトも同じ思いだったが、不意にシンの特技を思い出した。
「シンさんは、魔法で相手の嘘が見抜けるんです」
「え?」
ラキドがテイトとシンの顔を交互に見つめた。
「……別に魔法を使うことは前提としていない」
シンは憮然とした表情で小さく呟いたが、彼の凄い魔法を目にしているからか、ラキドはすんなりと納得したようであった。
「直接訊くとしても、街の中では些か不都合だ。奴らが本当にアノニマスだったとしたら、いつ住人に被害が及ぶか分からない。言い当てられて、激昂して街を破壊されては元も子もない」
一般人の可能性も捨てきれないから手荒なこともできないしと続けるラキドに、またもやシンが問題なんて存在していないかの如くに意見した。
「それなら、街の外に誘導すればいい」
「……どうやって」
「対象を指定してくれれば、空間認識阻害の魔法をかけよう」
ラキドは一度目を丸めたかと思うと、次第に笑い声を上げた。
突然笑い出したラキドは戸惑う周囲に気付いたのか、悪いと呟きながら笑みを収めた。
「いや、凄い魔道士だ。本当に心強い仲間だと思って」
「……一時的にだが」
「だとしても、だ。……テイトも、こんな規格外の魔道士をよく見つけたな」
真面目なラキドにしては珍しく笑顔を見せる様子に、テイトは肩の荷が下りた心地だった。
リーダーとして選ばれた以上、何か一つでも役に立たなければユーリに申し訳が立たないと思っていた。
テイトよりも長く《クエレブレ》に身を置くラキドにそう言われ、なんだか役目を果たせたような気持ちになったのだ。
そう思うのはまだ早い、とテイトは内心首を振りながら真っ直ぐにラキドを見つめた。
「では、その疑わしい人物がいるところに行きましょう。ラキド、案内をお願いします」
力強く頷き、ラキドは立ち上がった。
荷物になりそうな物だけ各自部屋に置いて一階に降りると、ルゴーを連れたカノンと合流した。
「あれ? 皆してどっか行くの?」
「カノン、丁度良かった。――ルゴー、事情は歩きながら説明するから、部屋を取っていらない荷物だけ置いてきて欲しい」
「お、おう?」
ラキドに言われ、ルゴー達も受付に声をかけ二階に上がった。
「え、なになに?」
「奴らに接触するんだ」
「え? ガチで言ってるの? どうやって?」
「ルゴーが来たら一緒に説明する」
疑問符をとばすカノンをあしらいながら、ラキドは言葉少なに返した。
カノンは肩を竦めながら口を閉じた。
間もなくしてルゴーが降りてくると、全員でラキドの隊に見張ってもらっているという宿屋の方へと向かった。
その道中、部屋で話した内容をラキドが説明すると、ルゴー達も唖然としていた。
しかし、カノンは突然笑い出すとシンの背中を思い切り叩いた。
「っ」
「魔法使い君、君そんなこともできるの! 凄いね!」
「……どうも」
乱暴なコミュニケーションにも関わらず、リゲルとの時みたいに特に言い争いにならなかったことから、シンは意外と女性には優しいのだとテイトは認識した。
作戦を全て話し終える頃に、一行は目的の場所へと到着した。
大人数だと目立ちすぎるため、ラキドとテイトとシンが先行してラキド隊の仲間と接触することとなり、他の者はこちらの様子が窺えるギリギリの位置まで離れてもらうことになった。
「――あ、ラキドさん」
ラキドが来たことに、見張りをしていた者達は安心したような表情を浮かべた。
「動きはあったか?」
「そろそろ外出しそうな雰囲気はあるんですけどね」
今までに得た以上の情報はないですと困ったように告げる仲間に、ラキドは声を潜めながらルゴー達にも伝えた内容を共有した。
話を聞くと、期待と不安の入り交じったような表情で顔を見合わせていたため、できたら凄いけど本当にできるのか、と言う考えが透けて見えるようであった。
「――あ、あいつらです」
対象の者が出てきたのか、小さな声で仲間の一人が視線を遠くへ遣った。
その方向を見ると、茶色い外套を羽織った人影が二人、丁度宿屋の入口から出てくるところであった。
顔の見えない二人組を視認すると、シンは羽織っていた外套のフードを深く被って顔を隠し、無言のまま男達の方へ歩み寄った。
一体何をするんだと焦る背後に何の説明もなく、シンは二人の間を肩をぶつけながら通り抜け、悪態を吐かれても振り返ることなく人混みの中へと姿を消してしまった。
この後自分達はどう行動すればいいのかと戸惑ったが、対象が歩き出したため、テイト達も距離を取りながら後を追うことにした。
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