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本編
第12話 甦る勇者、明かされるダンジョンの主
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斥候部隊が魔王軍に敗北した日の翌日、私たち勇者一行はイグノールの家に集合している。
魔王軍への敗北により、事態を重く見た国王クラヴェール五世は、緊急閣議を招集し、国軍に聖女エレノーラと勇者一行を除くS級冒険者を編入させることを決定した。
この決定によりエレノーラ様との修練は実質今月末で終了することとなった。
また、国王は勇者一行の敗北を重く受け止め、私の提案であった「勇者たちをダンジョンで鍛えてから参戦する」ことを正式に了承してくださった。
イグノールたちは身体と精神は回復したが、憔悴しきっていた。
イグノールは拳を握り締めたまま、俯いている。
隣のクローディアとメリエラも沈黙を守っている。
普段なら大口を叩くバルドスでさえ、今日は妙に大人しい。
「……俺たちは、弱かった。情けない」
誰にともなく、イグノールが呟いた。
それに対して、私は首を横に振る。
「違うよ。イグノールたちは十分強い。ただ魔王軍に歯が立たなかっただけだ」
「それを弱いって言うんだ。気休めはよしてくれ」
イグノールが歯噛みして悔しさを滲ませる。
「結局、タクトが言っていたことが正解だったわけね……私にはちゃんと説明してくれてたのに」
クローディアが窓の外を見ながらポツリと漏らす。
「もうそんなこと言っても仕方ないよ。みんなあの時は大丈夫と思ってたんだし」
「そうだな。あの時の自分に何を言っても無駄だったさ……」
イグノールが悔しそうに振り返る。
私はそんな彼に疑問を投げかける。
「イグノールは奴らと戦って、自分が弱いと感じたのか?」
「ああ。というか、奴らの力が俺たちを凌駕していたのは間違いなかった……個の力だけでなく、戦術も、戦略もだ」
「なるほど。だが……イグノールには悪いが、今回その事をみんなが知ってくれたのは大きいと思うんだ」
「なぜそう思うの?」
クローディアが尋ねる。
「本格的な討伐でこの結果を食らったら、今度は魔王軍が人間側に攻めてくる可能性があるからだ」
「……」
私はインベントリからグラギオスの頭を取り出す。
「これを見てくれ」
それを見た瞬間、イグノールが目を丸くして私を見る。
「な!? これは……あの大将じゃないか!」
「やっぱりな。イグノールから聞いた強い奴はこいつで合ってたみたいだな」
「こいつらをタクトがやったのか?」
「ああ。魔王軍の特殊部隊らしい。奴ら、人間に対して"実験”を行おうとしていたんだ。……六人いたが、そのうち五人は絶命させた」
「すごいなタクト……でも五人?」
「ああ。もう一人は逃がした。イグノール、お前が敗北した悪魔だ」
「……逃がした? 何でタクトが知っている?」
「あいつらから直接聞きだした。レメナス=フィニスという名の女悪魔だ」
「確かに、私が負けたのは女の悪魔だった。名前までは知らないが……だが一体、何でそんなことをした?」
彼の問いに私はまっすぐ目を見て答える。
「お前に倒してもらうためだ。イグノール、強くなって今度こそあの悪魔を倒すんだ」
「……だが、今の俺にはその力はない。悔しいが……」
「だったら今から強くなればいい。強くなって魔王軍に負けない勇者になるんだ!」
「!!」
その時、イグノールの目に、再び闘志の火が灯る。
その炎は、魔王軍との戦いで消えかけていた自信の残滓を、ゆっくりと照らし始めていた。
「タクト……俺は、お前を侮っていた。お前は、ただの補助役じゃなかった。……いや、違うな。お前は――“戦士を支える者”として、俺たちのずっと先を歩いていたんだな」
「いや、支える者としてはまだ私はひよっこだ。ただ……仲間が倒れるのを、もう見たくないだけだ」
私の言葉に、クローディアがふと視線を上げる。
「……今思えば、私たちはずっと“誰かに頼られる立場”だと思い込んでいたのね」
「それは間違いじゃねえさ。だが、頼られる立場ってのはな――甘えが許されねぇ立場でもあるんだよ」
バルドスが腕を組み直し、ふてぶてしくも晴れやかな笑みを浮かべる。
「いいぜ。俺はもう一度、鍛え直されてやるよ。今度こそ、負けねえためにな」
「私も……やり直したい。負けたままじゃ、終われない」
メリエラが胸に手を当てて言った。
クローディアもまた力強く頷いて答える。
「なら、全員で強くなりましょう。あの悪魔を倒す日まで、共に歩き続けるの」
「ありがとう、みんな。昨日の今日で、そこまで立て直せるなんて……やはり君たちは、勇者なんだと思う」
私は一礼し、立ち上がった。
「それじゃあ――今後のプランについて話すよ」
みんなは私の言葉に耳を傾け、姿勢を正す。
「昨日の戦いを受けて、エレノーラ様は前線へ向かわれることになった。これにより、私への修練は予定より早く終了となる。そして……明日から、私は正式に君たちと行動を共にする」
バルドスが目を細めた。
「……つまり、いよいよ“本格的に鍛える”ってわけか」
「その通り。そして、その第一歩として――明日からダンジョン三十一階層から再攻略を始める。目標は、裏ボスの討伐だ」
「裏ボス……だと?」
イグノールが驚いたように繰り返す。
「確かに、ギルドは裏ボスの討伐を推奨していない。危険性が高すぎるからだ。でも、それは“冒険者としての常識”だろ。君たちは、どうなんだ?」
「冒険者として……? いや、俺たちは勇者として……」
そこでイグノールの目が見開かれる。
「そうか……俺たちは、勇者としてダンジョンに挑んでいたはずだったのに、いつの間にか“冒険者としての判断”をしていたのか」
私は静かに頷く。
「勇者の使命は、世界を守ること。民を、国を、未来を。ならば、“最短で踏破する”ことが目的ではないはずだ」
「……裏ボスはその道の中にある“壁”ってことか」
バルドスが閃いたとばかりに答える。
「いや、それも違う」
私は声を落とし、小さく息を吐き彼らに向き合う。
「裏ボスは――魔王の力の投影、あるいは力を認められ選ばれた存在なんだ」
みんなの目が見開かれる。
特に“魔王”という言葉に反応したのだろう。
「このダンジョンは、“力の階梯”として造られているらしいんだ。裏ボスを倒していかなければ、その先には行けない」
重い沈黙が広がる。
やがて、メリエラが呟いた。
「……じゃあ、もし私たちが裏ボスを攻略して進んでいたら?」
「魔王軍に対等以上の戦いができていたはずだ。そしてダンジョンの意図にも感づけたかもしれない」
クローディアが目を伏せ、バルドスが天井を睨むように唸った。
私はインベントリから一枚の羊皮紙を取り出し、卓上に広げた。
そこには、誰も見たことのない“ダンジョン構造図”が描かれている。
「これは……何の図だ?」
バルドスが眉をひそめて覗き込み、クローディアが鋭く見つめる。
「……これは、私が独自に調べた情報をまとめたものだ。このダンジョン――実はただの“訓練場”じゃない。ましてや自然に発生した迷宮でもない」
私の言葉に、メリエラが不安げな声を上げる。
「では……誰が?」
「このダンジョンを作り、支配している存在。……それこそが、“魔王”なんだ」
「なっ……!?」
部屋に緊張が走る。
イグノールは思わず椅子から立ち上がり、私を見据える。
「……つまり、俺たちは魔王の懐に、自ら足を踏み入れていることになるわけか?」
「そうだな。そして――あのダンジョンでの経験はすべて、“魔王の目”に監視されていると考えた方がいい」
クローディアが静かに息を飲む。
「なんでそんなことを……なぜ今まで誰も気づかなかったの?」
「その答えは、今まで冒険者の誰も魔物と意思疎通をしたことがなかったからだと思う。私がこの事実を知ったのは、仲間にした裏ボスの一人から聞いたからなんだ」
みんなが驚きの表情を見せて固まる。
私は続ける。
「召喚のため仲間にした超電の雷帝が、ダンジョンの真実の一端を語ってくれた。――このダンジョンの主は魔王クライスラインなのだと」
イグノールが私に問いかける。
「その話は本当なのか?」
「ああ。私も聞いた時はすごく驚いた。まさか魔界を統べる王自らがこのダンジョンのマスターだとは……」
「冒険者ギルドの運営がマスターをしているとばかり思っていた……」
「私もそうだと思っていたし、ギルドにも確認したが、ここのダンジョンは発見から歴史が浅く、マスターは不明だと教えてくれた」
「……そうだったんだ」
メリエラがこの事実に驚きを隠せないようだ。
「ダンジョン攻略している中で、中層に入ったばかりでの魔物の属性やフロアごとの状態異常、地図的な全体構造や配置、ボスの強さなど、周到さがあまりに絶妙だと感じたんだ……」
構造も配置も、あまりにも人間の成長を計算しすぎている。
「でも、なぜそこまで周到に準備しているのかは、私にもわからない。ただ、そう考えるとこの異常な構造に、妙に合点がいくんだよ」
私の説明に、イグノールが立ち上がり、拳を握る。
「俺達の力を測っているとでもいうのか……」
「ああ、ダンジョンに挑む人間の実力を把握したいのかもしれないな」
「なるほど。魔王側の脅威となる人間がどの程度いるのか確かめているのね。それなら納得も行くわね」
クローディアが図面を見ながら言った。
「ああ。それが目的なのかもしれない。だからこそ、魔王が敷いたこのダンジョンをすべて踏破することが、魔王討伐への一番の近道だと思ったんだ」
「なら、やるしかないな。魔王を倒すためにも、あのダンジョンのすべてを攻略してやろうじゃないか!」
イグノールの言葉にみんなが同意し、頷いた。
「その意気だよ」
私はみんなの目を見て言った。
メリエラは胸に十字を切る。
クローディアが目を輝かせて言った。
「なら……乗るしかないわね。その策に」
イグノールが一歩前に出て、拳を握った。
「やるさ。あの敗北のまま終わるつもりはない。魔王軍をぶっ倒すためなら、地獄だって踏破して強くなってやる」
イグノール達みんなの目つきが完全に変わった。
今日この時、私を含めた勇者パーティーは、生まれ変わって新たな絆を深めるのだった――。
魔王軍への敗北により、事態を重く見た国王クラヴェール五世は、緊急閣議を招集し、国軍に聖女エレノーラと勇者一行を除くS級冒険者を編入させることを決定した。
この決定によりエレノーラ様との修練は実質今月末で終了することとなった。
また、国王は勇者一行の敗北を重く受け止め、私の提案であった「勇者たちをダンジョンで鍛えてから参戦する」ことを正式に了承してくださった。
イグノールたちは身体と精神は回復したが、憔悴しきっていた。
イグノールは拳を握り締めたまま、俯いている。
隣のクローディアとメリエラも沈黙を守っている。
普段なら大口を叩くバルドスでさえ、今日は妙に大人しい。
「……俺たちは、弱かった。情けない」
誰にともなく、イグノールが呟いた。
それに対して、私は首を横に振る。
「違うよ。イグノールたちは十分強い。ただ魔王軍に歯が立たなかっただけだ」
「それを弱いって言うんだ。気休めはよしてくれ」
イグノールが歯噛みして悔しさを滲ませる。
「結局、タクトが言っていたことが正解だったわけね……私にはちゃんと説明してくれてたのに」
クローディアが窓の外を見ながらポツリと漏らす。
「もうそんなこと言っても仕方ないよ。みんなあの時は大丈夫と思ってたんだし」
「そうだな。あの時の自分に何を言っても無駄だったさ……」
イグノールが悔しそうに振り返る。
私はそんな彼に疑問を投げかける。
「イグノールは奴らと戦って、自分が弱いと感じたのか?」
「ああ。というか、奴らの力が俺たちを凌駕していたのは間違いなかった……個の力だけでなく、戦術も、戦略もだ」
「なるほど。だが……イグノールには悪いが、今回その事をみんなが知ってくれたのは大きいと思うんだ」
「なぜそう思うの?」
クローディアが尋ねる。
「本格的な討伐でこの結果を食らったら、今度は魔王軍が人間側に攻めてくる可能性があるからだ」
「……」
私はインベントリからグラギオスの頭を取り出す。
「これを見てくれ」
それを見た瞬間、イグノールが目を丸くして私を見る。
「な!? これは……あの大将じゃないか!」
「やっぱりな。イグノールから聞いた強い奴はこいつで合ってたみたいだな」
「こいつらをタクトがやったのか?」
「ああ。魔王軍の特殊部隊らしい。奴ら、人間に対して"実験”を行おうとしていたんだ。……六人いたが、そのうち五人は絶命させた」
「すごいなタクト……でも五人?」
「ああ。もう一人は逃がした。イグノール、お前が敗北した悪魔だ」
「……逃がした? 何でタクトが知っている?」
「あいつらから直接聞きだした。レメナス=フィニスという名の女悪魔だ」
「確かに、私が負けたのは女の悪魔だった。名前までは知らないが……だが一体、何でそんなことをした?」
彼の問いに私はまっすぐ目を見て答える。
「お前に倒してもらうためだ。イグノール、強くなって今度こそあの悪魔を倒すんだ」
「……だが、今の俺にはその力はない。悔しいが……」
「だったら今から強くなればいい。強くなって魔王軍に負けない勇者になるんだ!」
「!!」
その時、イグノールの目に、再び闘志の火が灯る。
その炎は、魔王軍との戦いで消えかけていた自信の残滓を、ゆっくりと照らし始めていた。
「タクト……俺は、お前を侮っていた。お前は、ただの補助役じゃなかった。……いや、違うな。お前は――“戦士を支える者”として、俺たちのずっと先を歩いていたんだな」
「いや、支える者としてはまだ私はひよっこだ。ただ……仲間が倒れるのを、もう見たくないだけだ」
私の言葉に、クローディアがふと視線を上げる。
「……今思えば、私たちはずっと“誰かに頼られる立場”だと思い込んでいたのね」
「それは間違いじゃねえさ。だが、頼られる立場ってのはな――甘えが許されねぇ立場でもあるんだよ」
バルドスが腕を組み直し、ふてぶてしくも晴れやかな笑みを浮かべる。
「いいぜ。俺はもう一度、鍛え直されてやるよ。今度こそ、負けねえためにな」
「私も……やり直したい。負けたままじゃ、終われない」
メリエラが胸に手を当てて言った。
クローディアもまた力強く頷いて答える。
「なら、全員で強くなりましょう。あの悪魔を倒す日まで、共に歩き続けるの」
「ありがとう、みんな。昨日の今日で、そこまで立て直せるなんて……やはり君たちは、勇者なんだと思う」
私は一礼し、立ち上がった。
「それじゃあ――今後のプランについて話すよ」
みんなは私の言葉に耳を傾け、姿勢を正す。
「昨日の戦いを受けて、エレノーラ様は前線へ向かわれることになった。これにより、私への修練は予定より早く終了となる。そして……明日から、私は正式に君たちと行動を共にする」
バルドスが目を細めた。
「……つまり、いよいよ“本格的に鍛える”ってわけか」
「その通り。そして、その第一歩として――明日からダンジョン三十一階層から再攻略を始める。目標は、裏ボスの討伐だ」
「裏ボス……だと?」
イグノールが驚いたように繰り返す。
「確かに、ギルドは裏ボスの討伐を推奨していない。危険性が高すぎるからだ。でも、それは“冒険者としての常識”だろ。君たちは、どうなんだ?」
「冒険者として……? いや、俺たちは勇者として……」
そこでイグノールの目が見開かれる。
「そうか……俺たちは、勇者としてダンジョンに挑んでいたはずだったのに、いつの間にか“冒険者としての判断”をしていたのか」
私は静かに頷く。
「勇者の使命は、世界を守ること。民を、国を、未来を。ならば、“最短で踏破する”ことが目的ではないはずだ」
「……裏ボスはその道の中にある“壁”ってことか」
バルドスが閃いたとばかりに答える。
「いや、それも違う」
私は声を落とし、小さく息を吐き彼らに向き合う。
「裏ボスは――魔王の力の投影、あるいは力を認められ選ばれた存在なんだ」
みんなの目が見開かれる。
特に“魔王”という言葉に反応したのだろう。
「このダンジョンは、“力の階梯”として造られているらしいんだ。裏ボスを倒していかなければ、その先には行けない」
重い沈黙が広がる。
やがて、メリエラが呟いた。
「……じゃあ、もし私たちが裏ボスを攻略して進んでいたら?」
「魔王軍に対等以上の戦いができていたはずだ。そしてダンジョンの意図にも感づけたかもしれない」
クローディアが目を伏せ、バルドスが天井を睨むように唸った。
私はインベントリから一枚の羊皮紙を取り出し、卓上に広げた。
そこには、誰も見たことのない“ダンジョン構造図”が描かれている。
「これは……何の図だ?」
バルドスが眉をひそめて覗き込み、クローディアが鋭く見つめる。
「……これは、私が独自に調べた情報をまとめたものだ。このダンジョン――実はただの“訓練場”じゃない。ましてや自然に発生した迷宮でもない」
私の言葉に、メリエラが不安げな声を上げる。
「では……誰が?」
「このダンジョンを作り、支配している存在。……それこそが、“魔王”なんだ」
「なっ……!?」
部屋に緊張が走る。
イグノールは思わず椅子から立ち上がり、私を見据える。
「……つまり、俺たちは魔王の懐に、自ら足を踏み入れていることになるわけか?」
「そうだな。そして――あのダンジョンでの経験はすべて、“魔王の目”に監視されていると考えた方がいい」
クローディアが静かに息を飲む。
「なんでそんなことを……なぜ今まで誰も気づかなかったの?」
「その答えは、今まで冒険者の誰も魔物と意思疎通をしたことがなかったからだと思う。私がこの事実を知ったのは、仲間にした裏ボスの一人から聞いたからなんだ」
みんなが驚きの表情を見せて固まる。
私は続ける。
「召喚のため仲間にした超電の雷帝が、ダンジョンの真実の一端を語ってくれた。――このダンジョンの主は魔王クライスラインなのだと」
イグノールが私に問いかける。
「その話は本当なのか?」
「ああ。私も聞いた時はすごく驚いた。まさか魔界を統べる王自らがこのダンジョンのマスターだとは……」
「冒険者ギルドの運営がマスターをしているとばかり思っていた……」
「私もそうだと思っていたし、ギルドにも確認したが、ここのダンジョンは発見から歴史が浅く、マスターは不明だと教えてくれた」
「……そうだったんだ」
メリエラがこの事実に驚きを隠せないようだ。
「ダンジョン攻略している中で、中層に入ったばかりでの魔物の属性やフロアごとの状態異常、地図的な全体構造や配置、ボスの強さなど、周到さがあまりに絶妙だと感じたんだ……」
構造も配置も、あまりにも人間の成長を計算しすぎている。
「でも、なぜそこまで周到に準備しているのかは、私にもわからない。ただ、そう考えるとこの異常な構造に、妙に合点がいくんだよ」
私の説明に、イグノールが立ち上がり、拳を握る。
「俺達の力を測っているとでもいうのか……」
「ああ、ダンジョンに挑む人間の実力を把握したいのかもしれないな」
「なるほど。魔王側の脅威となる人間がどの程度いるのか確かめているのね。それなら納得も行くわね」
クローディアが図面を見ながら言った。
「ああ。それが目的なのかもしれない。だからこそ、魔王が敷いたこのダンジョンをすべて踏破することが、魔王討伐への一番の近道だと思ったんだ」
「なら、やるしかないな。魔王を倒すためにも、あのダンジョンのすべてを攻略してやろうじゃないか!」
イグノールの言葉にみんなが同意し、頷いた。
「その意気だよ」
私はみんなの目を見て言った。
メリエラは胸に十字を切る。
クローディアが目を輝かせて言った。
「なら……乗るしかないわね。その策に」
イグノールが一歩前に出て、拳を握った。
「やるさ。あの敗北のまま終わるつもりはない。魔王軍をぶっ倒すためなら、地獄だって踏破して強くなってやる」
イグノール達みんなの目つきが完全に変わった。
今日この時、私を含めた勇者パーティーは、生まれ変わって新たな絆を深めるのだった――。
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