最凶聖女の地獄指導で覚醒した冴えない社畜、勇者パーティーに放り込まれダンジョン無双し魔王軍に挑む

ワスレナ

文字の大きさ
17 / 46
本編

第13話 国軍再編成の陰で【国王・聖女エレノーラ視点】

しおりを挟む
 王城の奥深く、重い扉に守られた国王クラヴェール五世の私室。
 燭台の炎が低く揺れ、葡萄ぶどう酒の香りがただよっていた。
 廊下に見張りはなく、室内には国王と聖女エレノーラだけが向かい合っている。

「来たか、エレノーラ」

 クラヴェール五世は椅子に身を預け、手にしたワインをゆっくり回した。

 エレノーラは一礼し、定められた距離を保ったまま立つ。

「単刀直入に言おう。……わしの愛人にならぬか?」

 エレノーラは眉ひとつ動かさず冷ややかな目で返す。
 
「お戯れを……ご冗談はよしてください」
 
 国王の目にわずかに邪悪な光が差す。

「ククク……、冗談か……悪くないな」
 
 国王は口元に笑みを残し、杯を卓に置く。
 指先が肘掛けを軽く叩いた。
 二度、三度、間を計るように。

「最近のそなたは、随分と忙しいようだな。……いや、周囲にいる者がか……」
 
 視線は笑みをたたえたまま、じわりと鋭さを帯びる。
 
「私事にまで関心を持たれるとは、わしも幸せ者だ」

 エレノーラは表情を変えず、声だけが柔らかい。
 
「噂というものは、放っておけば形を変えて広がるものです」

「物は言い様だな……ただ、好奇心は時に身を損なう。覚えておくといい」

 言葉は穏やかだが、その響きには冷たい刃が潜んでいた。
 国王は姿勢を正し、別の調子で言葉を続けた。
 
「本題だ。国軍の再編にあたり、そなたの力を借りたい。聖女の存在があれば兵の士気は格段に高まる。――第一陣から遠征にも同行してもらう」

 国王の眼光に一瞬影が差す。
 エレノーラは少し間を置いてから答える。
 
「……承知しました。ただし、指揮権は持ちません」

「それで構わぬ。我が国に勝利をもたらすよう働いてくれ」

 エレノーラはひざまずいて胸に手をやる。

「――御身のままに」
 
 国王は手を軽く振って密会を終わらせた。

 扉が閉まり、室内には国王だけが残る。
 彼は窓辺に歩み寄り、王都の灯を見下ろした。

 杯を傾けながら、わずかに口角を上げる。
 
「……駒は、近くに置くほど扱いやすい」
 
 赤い液面が炎の光を反射し、血のように輝いた。
 
「だが――底の見えぬ水に手を入れる時は、慎重にな」

 
◇ ◇ ◇


 聖女エレノーラは自室に戻ると、扉を閉ざして結界を張った。
 光の膜が壁と床を巡り、外界の気配を遮断する。

「……用心に越したことはありませんわ」

 エレノーラは椅子にゆっくり腰を下ろし、肘掛けを指で軽く叩く。
  
「……思った以上に耳と目が利くのね、クラヴェール五世」
 
 ふと、前にタクトへ告げた言葉が脳裏をよぎる。

 ――国王陛下にはくれぐれも気をつけなさい――。

「……フッ、この件はタクトには伏せましょう。できる限り私が引き受けます」
 
 声は低く、結界の中に吸い込まれていく。
 
「彼の成長のためには、余計な火種は遠ざけるしかない……」

 窓の外、厚い雲が月明かりをおおい隠した。
 室内は闇に沈み、その中でエレノーラは次の手を思案していたのだった――。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...