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本編
第27話 堕天の主、黒翼の主イーリス【勇者視点】
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第四十階層、奈落の修羅カルマとの戦いから四日後。
ついに俺たちのパーティーは第五十階層に戻ってきた。
あの巨大な黒曜石で造られた円形の闘技場で、再びダークナイト・アークデウスを撃破する。
今度は封印石を破壊することなく倒すことに成功した。
天井の《堕天の光穴》が、じわじわと黒に侵食されていく。
光は飲み込まれ、空気は鉛のように重く沈んだ。
低い羽音が鼓膜を震わせ、それがやがて轟きへと変わる。
闇色の羽根が雪のように舞い落ち、床に触れるたび暗い火花を散らした。
剣を握る手に力がこもる。
――来る。
裂け目の中心から、銀鎧を纏った女が静かに降り立った。
全長十メートルはある巨大な身体。
とにかくでかい。
開けば三十メートルもの背に広がる翼は夜空そのもの。
双眸は深い闇色で、封印と孤独の歳月を知る者のそれだった。
『封印を壊さずにここまで……愚かか、それとも……』
吐き捨てる声には、試すような色がわずかに混じっていた。
「重力来るぞ、踏ん張れ!」
タクトの声と同時に、体がふわりと浮き、直後に押し潰すような圧が襲う。
黒日蝕フェーズ——軽から標準、そして重へ。
呼吸を誤れば一瞬で沈む。
「羽根が来る!」
メリエラの警告が飛ぶ。
闇色の羽根が嵐のように降り注ぎ、一本触れただけで焼ける痛みと暗転が走る。
彼女の竜巻がそれを吹き飛ばし、視界が開けた瞬間!
——イーリスの影が目前まで迫っていた。
『オブシディアン・スラッシュ』
翼が刃と化し、闇の扇が迫る。
バルドスが盾で受け止め、火花と黒煙が弾ける。
「ぐっ……! 回復半減、気をつけろ!」
その声の裏で、クローディアが距離を取ろうとした刹那、重力壁が彼女を閉じ込めた。
「クローディア!」
俺が踏み込むより早く、タクトが疾走した。
重力壁を突き破り、彼女を押し出す。
——速い!
必要な時にだけ、迷わず前へ出る。
「聞け!」
俺は全員に短く指示を飛ばす。
「メリエラは羽根掃除、バルドスは盾固定。クローディアは翼狙い。タクトは救助と連携攻撃。俺は全体を見る!」
全員が頷き、それぞれの位置へ散った。
迷いのない瞳が揃っていた。
堕天の残響の効果で与えるダメージが低下しているものの、各々の連携の甲斐あって確実にダメージを与えていった。
黒日蝕の重力攻撃はタクトの魔法効果で無効化され、俺たちは力を発揮した。
『聖樹の清泌歌』
タクトの聖属性魔法がイーリスの身体を直撃した!
彼女は苦悶の表情を見せ必死に抵抗する。
やがて、イーリスの体力が半分を切った。
イーリスの翼が暗炎を纏い、《黒翼覚醒》が発動した。
動きが倍速となり、羽根の弾幕は嵐の壁のように密度を増す。
『グラビティ・ケージ』
イーリスの重力檻が我々に襲いかかる。
重圧が来る直前、タクトの声が響きわたる。
『重力場反転』
「『次元断層』発動!」
彼の連続呪文によってイーリスの攻撃が無力化される。
「大丈夫だイグノール。お前ならやれる!」
タクトの檄が後押ししてくれる。
視界を圧迫する闇に、胸の奥が熱を帯びる。
その一点に心を集中させて研ぎ澄ます。
——押し返す。
「……応えろ、【アーク・フレイム】!」
聖剣アルノールが燃えるような赤の光を放つ。
火柱が刃から迸り、熱が床を焼いた。
同時に周囲の黒羽雪が一瞬で燃え尽き、視界が開ける。
赤は闘志そのもの。
振るたび炎の軌跡が闇を裂き、翼を焼き落とす。
「今だ、右側通れ!」
タクトの声に導かれ、俺の炎が作った空間を仲間が駆け抜ける。
クローディアの矢が右の翼を貫き、バルドスが盾で押し込み、メリエラが残る羽根を風で吹き飛ばした。
「怯んだ、押せ!」
だがイーリスもオブシディアン・スラッシュを連続で叩き込んでくる。
「くそっ!」
バルドスとクローディアが必死に猛攻を防ぐ。
そして……
最も重い重力フェーズが訪れる。
全員の動きが鈍る中、タクトは何度も仲間を押し出し、死角を塞いでいた。
その姿を見て、胸の奥が強く脈打つ。
——俺は、一人で戦っているんじゃない。
剣が震え、赤の輝きの上に黄色の光が走る。
その瞬間、タクトの魔法、光の領域が広がり、重力が軽くなる。
地面を這う光紋は翼の紋章を描き、仲間の足元に柔らかな風が吹き抜けた。
「この光……封印とは違う……暖かい?」
イーリスが目を見開き、翼の羽ばたきが一瞬鈍る。
その隙をクローディアが大きな斬撃波を食らわせる。
俺は赤と黄色の二重の光を刃に重ねる。
赤が切り裂き、黄色が浄化する。
二色の輝きが闇そのものを押し返していく。
「行くぞ、合わせろ!」
背後からタクトが皆の背中に合図を送り、全員の動きが揃った。
剣閃、矢、魔法、盾突撃——全てが一点に集中する。
『……これが……仲間の力、か……』
イーリスがかすかに呟いた。
「仲間が欲しいのか?」
タクトがイーリスに問う。
『ああ。だが、我は仲間に恵まれなんだ……』
「なるほど……。じゃあ私がなるよ」
『そうか……楽しみに……している』
瞬間、爆光が闇を貫き、その姿は光に溶けた。
タクトとイーリスとの会話を、俺は複雑な気分で聞いていた……。
黒日蝕が砕け、天井から柔らかな光が降り注ぐ。
虚空回廊の入口が開き、俺は黒翼核コアを手にした。
——強さは、孤独じゃ得られない。
仲間の足音と共に光の中を進む。
振り返ったタクトが、うっすらと笑った。
……お前のおかげで、最後まで剣を振れた。
「タクト……」
俺は無意識に右手を出していた。
その手にタクトが重ねて来る。
籠手越しにほのかな温かさが伝わってくる気がした――。
そしてタクトはまた、イーリスが落とした戦利品の中から例の球体を見つけ出す。
彼は何かを思いながら、懐にしまうのだった。
【今回の勇者パーティーの成長の記録】
===============
イグノール……91⇒92
クローディア……88⇒89
バルドス……87⇒88
メリエラ……89⇒90
===============
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【まめちしき】
【黒翼の主イーリス】……ダンジョン第五十階層の漆黒の大翼を持つ裏ボスで、闇と風の複合属性を操る空の支配者。闇嵐や黒翼の羽刃を飛ばして戦場を制圧し、光属性に対して高い耐性を持つ。その存在は「堕天の象徴」とされ、50階層を越える者に精神的な試練を課す。
【ルミナスフィールド】……イーリスの必殺技の一つ。翼の刃による扇状高速斬。被弾中は回復効果半減。
【グラビティ・ケージ】……イーリスの特殊技の一つ。単体拘束+周囲に重力壁。味方の風圧・突進で破壊が可能。
【黒翼覚醒】……イーリスの特殊能力。体力が半分を切ると、回行動化+羽根弾幕強化、翼部位が破壊可能になる。
ついに俺たちのパーティーは第五十階層に戻ってきた。
あの巨大な黒曜石で造られた円形の闘技場で、再びダークナイト・アークデウスを撃破する。
今度は封印石を破壊することなく倒すことに成功した。
天井の《堕天の光穴》が、じわじわと黒に侵食されていく。
光は飲み込まれ、空気は鉛のように重く沈んだ。
低い羽音が鼓膜を震わせ、それがやがて轟きへと変わる。
闇色の羽根が雪のように舞い落ち、床に触れるたび暗い火花を散らした。
剣を握る手に力がこもる。
――来る。
裂け目の中心から、銀鎧を纏った女が静かに降り立った。
全長十メートルはある巨大な身体。
とにかくでかい。
開けば三十メートルもの背に広がる翼は夜空そのもの。
双眸は深い闇色で、封印と孤独の歳月を知る者のそれだった。
『封印を壊さずにここまで……愚かか、それとも……』
吐き捨てる声には、試すような色がわずかに混じっていた。
「重力来るぞ、踏ん張れ!」
タクトの声と同時に、体がふわりと浮き、直後に押し潰すような圧が襲う。
黒日蝕フェーズ——軽から標準、そして重へ。
呼吸を誤れば一瞬で沈む。
「羽根が来る!」
メリエラの警告が飛ぶ。
闇色の羽根が嵐のように降り注ぎ、一本触れただけで焼ける痛みと暗転が走る。
彼女の竜巻がそれを吹き飛ばし、視界が開けた瞬間!
——イーリスの影が目前まで迫っていた。
『オブシディアン・スラッシュ』
翼が刃と化し、闇の扇が迫る。
バルドスが盾で受け止め、火花と黒煙が弾ける。
「ぐっ……! 回復半減、気をつけろ!」
その声の裏で、クローディアが距離を取ろうとした刹那、重力壁が彼女を閉じ込めた。
「クローディア!」
俺が踏み込むより早く、タクトが疾走した。
重力壁を突き破り、彼女を押し出す。
——速い!
必要な時にだけ、迷わず前へ出る。
「聞け!」
俺は全員に短く指示を飛ばす。
「メリエラは羽根掃除、バルドスは盾固定。クローディアは翼狙い。タクトは救助と連携攻撃。俺は全体を見る!」
全員が頷き、それぞれの位置へ散った。
迷いのない瞳が揃っていた。
堕天の残響の効果で与えるダメージが低下しているものの、各々の連携の甲斐あって確実にダメージを与えていった。
黒日蝕の重力攻撃はタクトの魔法効果で無効化され、俺たちは力を発揮した。
『聖樹の清泌歌』
タクトの聖属性魔法がイーリスの身体を直撃した!
彼女は苦悶の表情を見せ必死に抵抗する。
やがて、イーリスの体力が半分を切った。
イーリスの翼が暗炎を纏い、《黒翼覚醒》が発動した。
動きが倍速となり、羽根の弾幕は嵐の壁のように密度を増す。
『グラビティ・ケージ』
イーリスの重力檻が我々に襲いかかる。
重圧が来る直前、タクトの声が響きわたる。
『重力場反転』
「『次元断層』発動!」
彼の連続呪文によってイーリスの攻撃が無力化される。
「大丈夫だイグノール。お前ならやれる!」
タクトの檄が後押ししてくれる。
視界を圧迫する闇に、胸の奥が熱を帯びる。
その一点に心を集中させて研ぎ澄ます。
——押し返す。
「……応えろ、【アーク・フレイム】!」
聖剣アルノールが燃えるような赤の光を放つ。
火柱が刃から迸り、熱が床を焼いた。
同時に周囲の黒羽雪が一瞬で燃え尽き、視界が開ける。
赤は闘志そのもの。
振るたび炎の軌跡が闇を裂き、翼を焼き落とす。
「今だ、右側通れ!」
タクトの声に導かれ、俺の炎が作った空間を仲間が駆け抜ける。
クローディアの矢が右の翼を貫き、バルドスが盾で押し込み、メリエラが残る羽根を風で吹き飛ばした。
「怯んだ、押せ!」
だがイーリスもオブシディアン・スラッシュを連続で叩き込んでくる。
「くそっ!」
バルドスとクローディアが必死に猛攻を防ぐ。
そして……
最も重い重力フェーズが訪れる。
全員の動きが鈍る中、タクトは何度も仲間を押し出し、死角を塞いでいた。
その姿を見て、胸の奥が強く脈打つ。
——俺は、一人で戦っているんじゃない。
剣が震え、赤の輝きの上に黄色の光が走る。
その瞬間、タクトの魔法、光の領域が広がり、重力が軽くなる。
地面を這う光紋は翼の紋章を描き、仲間の足元に柔らかな風が吹き抜けた。
「この光……封印とは違う……暖かい?」
イーリスが目を見開き、翼の羽ばたきが一瞬鈍る。
その隙をクローディアが大きな斬撃波を食らわせる。
俺は赤と黄色の二重の光を刃に重ねる。
赤が切り裂き、黄色が浄化する。
二色の輝きが闇そのものを押し返していく。
「行くぞ、合わせろ!」
背後からタクトが皆の背中に合図を送り、全員の動きが揃った。
剣閃、矢、魔法、盾突撃——全てが一点に集中する。
『……これが……仲間の力、か……』
イーリスがかすかに呟いた。
「仲間が欲しいのか?」
タクトがイーリスに問う。
『ああ。だが、我は仲間に恵まれなんだ……』
「なるほど……。じゃあ私がなるよ」
『そうか……楽しみに……している』
瞬間、爆光が闇を貫き、その姿は光に溶けた。
タクトとイーリスとの会話を、俺は複雑な気分で聞いていた……。
黒日蝕が砕け、天井から柔らかな光が降り注ぐ。
虚空回廊の入口が開き、俺は黒翼核コアを手にした。
——強さは、孤独じゃ得られない。
仲間の足音と共に光の中を進む。
振り返ったタクトが、うっすらと笑った。
……お前のおかげで、最後まで剣を振れた。
「タクト……」
俺は無意識に右手を出していた。
その手にタクトが重ねて来る。
籠手越しにほのかな温かさが伝わってくる気がした――。
そしてタクトはまた、イーリスが落とした戦利品の中から例の球体を見つけ出す。
彼は何かを思いながら、懐にしまうのだった。
【今回の勇者パーティーの成長の記録】
===============
イグノール……91⇒92
クローディア……88⇒89
バルドス……87⇒88
メリエラ……89⇒90
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【まめちしき】
【黒翼の主イーリス】……ダンジョン第五十階層の漆黒の大翼を持つ裏ボスで、闇と風の複合属性を操る空の支配者。闇嵐や黒翼の羽刃を飛ばして戦場を制圧し、光属性に対して高い耐性を持つ。その存在は「堕天の象徴」とされ、50階層を越える者に精神的な試練を課す。
【ルミナスフィールド】……イーリスの必殺技の一つ。翼の刃による扇状高速斬。被弾中は回復効果半減。
【グラビティ・ケージ】……イーリスの特殊技の一つ。単体拘束+周囲に重力壁。味方の風圧・突進で破壊が可能。
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