最凶聖女の地獄指導で覚醒した冴えない社畜、勇者パーティーに放り込まれダンジョン無双し魔王軍に挑む

ワスレナ

文字の大きさ
39 / 46
本編

第35話 魔王城侵攻開始

しおりを挟む
 イリシアとおぼしき者が去った後も、城門前に魔王軍の残党が集結し、死守している。
 
「メリエラ、メテオフォールは使えるか?」

 私の問いに、メリエラは杖を握りしめながら答える。

「うん。行けるよ」

「よし、同時に発動させるぞ」

 私とメリエラは呼吸を合わせ、詠唱を始める。

『メテオフォール』

 数秒後、空から大量の小隕石が魔王軍めがけて降り注いだ。

 屈強を誇る魔王軍の軍勢も、これには為す術なく下敷きとなり、焼き尽くされる。

 城門の柱だけが辛うじて原形をとどめている。

「よし、イグノール。行こう!」

「おお」

 私は全員に『飛翔フライ』をかける。

 目の前の光景に驚きつつも、イグノールは私たちを率いて先へと進んだ。

 おびただしい数の隕石跡の上を通り、魔王城の門の前までやって来た。

 十メートル以上はある重厚な造りの門だ。

 私は目の前に立ち、呪文を唱える。


 魔王城の重厚な扉が、きしむような音を立てて閉ざされた。

 直後、壁に刻まれた魔紋が赤黒く輝き、冷たい結界が張り巡らされる。

「……閉じ込められたか」

イグノールが聖剣を握り直す。

 広大な玄関ホールは、黒曜石の床と高くそびえる柱に囲まれていた。

 天井から滴る燐光りんこうが血のように赤く揺らめき、奥の影の中から唸り声が響く。


 四つ足の巨影が姿を現す。

 血染めのひげを持つ狼――ブラッディ・ウォルグが牙を剥き、群れを成して突進してきた。

「来るぞ!」

 バルドスが盾を構え、突撃の先頭を受け止める。

 巨体が激突し、衝撃がホール全体に響いた。


 その背後、壁際から鉄角のミノタウロス二体が雄叫びを上げ、角をきらめかせて突進してくる。

「私が受け持つ!」

 クローディアが横に跳び、剣を抜いた。刃にまとう聖光が暗黒の柱を照らし出す。

 同時に、奥からゴブリンの群れが現れる。鎧をまとった小鬼たちが盾を構え、一体のゴブリンキングが中央で雄叫びを上げた。

 その声とともに、群れは統率された動きで左右から襲いかかる。

「群れならまとめて焼いてやるわ!」

 メリエラが詠唱を終え、火炎の奔流を解き放つ。熱波が走り、十数体のゴブリン兵が焼け焦げ、悲鳴を上げて崩れ落ちた。

 しかしまだ数は多い。残ったゴブリンが散開し、隙を狙って勇者たちに殺到する。

 その瞬間――誰にも気づかれぬ不可視の影が、一陣の魔法を放った。

 私の目に見えぬ障壁がバルドスの背後を守り、ウォルグの牙を逸らす。

 さらに、淡い光弾が走り、ゴブリン兵の足元を撃ち抜いて体勢を崩した。

「今よ、イグノール!」

 クローディアが叫ぶ。

「――聖剣よ、導け!」

 イグノールが跳躍し、まっすぐにゴブリンキングへ斬りかかる。

 聖剣の閃光が振り下ろされ、王の首を一瞬で断ち切った。


 統率者を失った群れは混乱し、残るゴブリンたちは散り散りになって逃げ惑う。

 ウォルグは次々と仲間を斃され、最後にミノタウロスが咆哮ほうこうを上げて突進した。

 だが、バルドスの盾とクローディアの剣がこれを受け止め、メリエラの雷撃が貫いた。


 ――ひとつの戦いが終わった。

 ホールには獣の残骸と焦げた匂いだけが残り、赤黒い魔紋が消えていく。

 重い静寂の中、奥の階段が私たちを歓迎するがごとく、姿を現した。

「……ひとまず突破だな」

 バルドスが肩で息をする。

「まだ始まったばかりよ。気を抜かないで」

 メリエラが杖を収め、鋭い眼差しを階段へ向けた。

「ええ。気を引き締めましょう」

 クローディアが同意する。

 イグノールは聖剣を納め、仲間を見回す。

「次は第二階層だ。進もう」


 だが、誰も気づかない。

 ……私を除いては。

 不可視の影がその後ろを静かに歩みながら――

 胸の奥で、城門前に現れた“仮面の女”の面影を消せずにいたことを。


 認めたくはない。だが、あれは確かにイリシアだった。

 なぜ彼女が、魔王軍の中に……?


 ――答えは、まだ闇の奥に沈んだままだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...