冴えない社畜、異世界で最凶聖女に地獄指導されて魔王軍に挑む

ワスレナ

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第16話 聖女の蘇生術

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「タクト、私達はこちらへ」

「え? はい」

 エレノーラ様に先導され私はとある部屋に入る。ベッドと医療道具があるが無人だ。

「この処置室を少しお借りいたします。今から蘇生に入ります。よく見ていてください」

「わ、わかりました」

 どうやらエレノーラ様は先ほどのイグノールとの約束を果たすようだ。彼女は錫杖しゃくじょうを出現させ、目を閉じて集中する。

「偉大なる神の力をって彷徨さまよえる清き魂をここに蘇らせん……」

 錫杖しゃくじょうの先端に魔力の塊が集中している。エレノーラ様の目が見開かれる。

究極の蘇生術アルティメット・リザレクション!」

 錫杖しゃくじょうから魔力があふれ魔法が発動する。青緑色の光が目の前のベッドに収束し、徐々に人のシルエットが形成されていく。

「おお!」

 私は思わず声を上げてしまう。まさに神の御業みわざの当たりにしているのだ。

 光の中からやがて衣服を着た女性が出現する。身体に異常はなく、安らかな寝顔だ。

「エレノーラ様!」

「無事成功したようですね」

 エレノーラ様がほっと息をつく。女性を包んでいた光が消えるとすぐ、両目がゆっくりと開かれる。

「…… ここは?」

 女性は視界のまぶしさを手でさえぎりながらつぶやく。ゆっくりと首を動かして辺りを確認している。

「ここは冒険者ギルド本部の医療室です。もう大丈夫ですよ」

 エレノーラ様が聖女の微笑ほほえみで答える。

「貴女は聖女様……ですね? 私は一体なぜここに……」

「イグノール様の依頼で貴女を蘇生しました。異常はすべて治しました」

「まさか!? そうだ。私はあの化け物に……! あれ、覚えているのに恐怖を感じない」

「精神の処置もほどこしております。ただ、しばらくは安静が必要ですわ」

 ミレーヌは自分の身に起こったことが信じられないようだ。だが気持ちはすごくわかる。私もまだ信じられずにいる。

「師匠、これってとてつもない奇跡ではないですか!」

「え?」

 私の言葉にエレノーラ様が不思議そうな顔をする。

「私はこれでもれっきとした聖女です。いずれ貴方にもやってもらいますから」

「ということは、この世界では聖女ならこの術が使えると?」

「そ、それはそうとは限りませんね。素質と修練が必要ですわ……」

 エレノーラ様が少し焦り気味に返す。いや、責めてはいないのですが。

「あ、私が医療スタッフの人を探しに行ってきます」

「ああ、お願いしますね」

 気まずいと思い私は部屋を飛び出しスタッフを呼びに行く。幸いすぐにそれらしき人に出会い、処置室へ連れていく。

「おお、早かったですね。あとは私が説明しますので、タクトは先に戻っていてください」

「わかりました」

 私はテレポートを発動させ、一足先に修道院の自室に転移する。珍しく疲れていたのか、ベッドで横になるとそのまま寝てしまった。

 
◆◆◆


 私が目覚めたのは、昼過ぎにクララが起こしに来てくれてからである。私は眠い頭を揺り起こし、クララに連れられて食堂へ向かう。

「クララ、タクト、こちらです」

 エレノーラ様が私達を見つけて手を振っている。

「ししょ…… エレノーラ様、すみません」

 公の場で危うく「師匠」と言うところだった。あまりにもれしいと思われてしまう。気をつけねば。

「あら、師匠と呼んでくださって構いませんよ」

 エレノーラ様は気にしないようだ。気恥ずかしいが公認がもらえたしいいか。

「失礼します」

 一礼し彼女の隣の席に着く。クララは私の隣の席に座る。

「タクト、体調がよくないのですか?」

「ああ、初めての深層で魔物と戦ったので、疲れが出てしまったみたいです」

 私の返答にエレノーラ様は目を丸くする。

「あ! そう言われればそうでしたね。私としたことがうっかりしておりましたわ」

「私の方こそへばってしまいお恥ずかしいです」

「いいえ、タクトはよくやってくれました。疲れていて当然ですわ」

 エレノーラ様からねぎらって頂いた。気が少し軽くなる。

「タクト、食べ終えたら話があります。いつもの場所に来てください」

「はい、わかりました」

 三人で談笑しながら食事をませた後、特に用事もなかったのでエレノーラ様とともに中広間へと向かう。部屋に入ると彼女から勇者達について告げられる。

「イグノール達は皆目を覚ましました。ミレーヌとも再会し帰還を喜んでいましたわ。皆惜しみなく感謝しておりました。お礼として貴重な魔鉱石をたくさん頂きました」

「絶対再会できない人と会えたのですから、さぞ喜んだでしょうね」

「そうですね。ただし彼らが水晶に閉じ込められたこともあってすぐには復帰できません。陛下直属の機関に申告いたしました」

「そうですか。全員危険な状態でしたからね」

「彼らは戻ってきましたが、戦争にのぞむことは出来ないでしょう。タクト、覚悟しておいてくださいね」

 エレノーラ様の目は真剣そのものだ。もう決まっているのかもしれない。

「わかりました」

「良い返事で安心いたしました。話はこれで終わりです。よろしくお願いしますね」

 エレノーラ様がにっこり微笑ほほえむ。戦闘の疲労を取るため今日の修練は中止となり、その日は休息に時間をてた。
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