【獣人×人間BL】いつか君の名前を呼ぶ獣声

紺色 紺ノ輔

文字の大きさ
9 / 32

8・一ヶ月で俺が思ったこと

しおりを挟む
 一ヶ月一絆君と一緒に過ごして、俺が思ったこと。
 どうやら、俺が人間である以上、獣人が一絆君に対して感じる気味の悪さを理解することはできないし、解決することはできないようだってこと。
 その扱いに、一絆君は慣れきっていること。
 俺が、その問題に足を踏み入れることは、多分無理であろうこと。
 はあ。
 難しい。とても難しい。
 苦手教科の古典よりも難しい。
 一絆君のクラスメイトで、俺の顔見知りに話しを聞いてみても、獣人は総じて彼に関わりたくないらしいし、彼自身もそれを甘んじてしまっている、らしい。
 そこなんだよなぁ……本人が全く気にしていないんだから、俺が介入する道理がない。
 だからせめて、俺がいつでも一緒にいてあげられないか、と考えて、
 最近はずっと、一絆君と昼飯を食べている。あんまり人が来ないような場所で。
 ただあそこ、窓が開かないからなぁ……夏暑くなってきたらどうすっかなぁ……

(一絆君は暑がり?)
(実は、暑いの結構得意だよ!)
(え、意外。獣人って暑がりな人が多いイメージあるよ?)
(ね。僕もよくわかんないんだけど、暑いの大丈夫で、寒いのダメ)

 ふぅむ。なら困るのは冬の方かな……
 なんて。
 なんか、ずいぶんと先のことを考えている俺がいる。
 それよりも、今は今だ。今現在のことを考えなくちゃいけない。
 まず、昼休みのとりとめのないやり取りでわかった一絆君のこと。
 好き嫌いがないのが自慢だとか、
 実は凄く頭がいいとか、
 手話での会話もできるのだけれど、使える人が少ないからあまり真剣には覚えていないんだとか、
 裕喜君の友達の獣人は僕のことを気味悪がらなくて嬉しいとか、
 裕喜君の人柄がいいからかな? って恥ずかしげもなく伝えてきたりとか……
 お、っと。
 つい、言われて嬉しかったことを思い出してしまうなぁ。
 そう。
 これが多分、部長の言っていたことなんだろうなぁ。人柄だの、性格だのっていう。
 まあ俺は、自分がしたいから獣人と仲良くしているだけだし。人種間のいざこざを減らしたいから、首を突っ込んでいるだけなんだけれども。
 それをためらいなくできること自体が凄いことなんだって、部長が言っていた。
 あ、そうだそうだ、
 元部長、ね。
 演劇部は、大会が秋から冬にかけて行われるから、受験を控えている三年生は基本参加することができない。だから、一年、二年生のときが勝負なのだ。
 だから、部長の交代も他の部よりも少しだけ早い。基本、次の大会用の劇の練習を始める辺りで引き継がれることになっている。

(そういえば、GWも終わって基礎練と簡易劇も大分できてきたし、そろそろ大会用の脚本決めを始めようと思う)
(そうなんだ! 演劇部って基礎練で結構な体力を使うから、一年生も大変そうだったけれど。なんか、やっと本番って感じがするね!)
(演劇部は想像以上に体力勝負だからね。声張るための腹筋と呼吸法。緊張の中体を動かす気合いと体力。人前でどれだけ声を張って自然な演技ができるのか。とにもかくにも、鍛えてなんぼだ)
(僕でも、かな?)

 おっと。
 失言、かな。
 俺でも、たまにこうやって言わない方がいいことを伝えてしまうことだってある。
 声、ね。
 でも、俺は必要だと思うのだけれども。
 だから、これは失言でもなんでもない。

(必要だろ? 次の脚本がどうなるかは未定だけどさ、もしかしたら一絆に台詞があるかもしれねぇぞ?)
(へ? 台詞って……でも、僕は喋れないけど)
(なにも台詞が言葉だけとは限らない。狼男の咆吼とか、番犬の鳴き声とか、あるかもしれないだろ?)
(ある、かなぁ?)
(あるある。役者したいなら、綺麗な声を出せないとな!)

 ……
 まずったか?
 俺はそう思っているけれど、もしかして単に一絆君の気にしているポイントを抉ってしまっただけかもしれない。
 だってほら、スマホを持って固まっちゃって……

「へへ……んう?」
「あ、いや……なんだ」

 なーんだ、笑ってらぁ。
 どうやら、俺の言葉になにか思うところがあったらしい。
 なら良かった、って思うし、
 なんかやっぱり、一絆君とは相性がいいような気がするんだ。
 気があう……というよりも、もっと具体的に、
 考えが似ている、みたいな。
 ああなんだか、次の大会がもう楽しみになっている。
 なにか、いい脚本を見つけたいな。一絆君が活躍できそうな……

(嬉しいな、ありがとう! でも、裕喜君は次のテスト勉強もしっかりしないとね。部活動禁止されてしまうかもよ?)
「うっ!」

 急に現実をぶつけてきた。一絆君、めちゃくちゃ頭いいからなぁ……
 うん、今度教えてもらおう、っと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

処理中です...