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第一章 王様と暗殺者
-10- ダイヤモンド・ハイド・オーバーチュア①
しおりを挟む少年には何も無かった。
少年は何をしても何の意味も無いように感じた。
剣術も弓も、勉学も技芸も、落ちこぼれているわけではなかったが、飛び抜けて秀でていたわけではなかった。
誰かが彼を叱ることは無かったが、誰かが彼を誉めることは無かった。
誰も彼を否定しなかったが、誰も彼を肯定しなかった。
誰も彼を邪険にしなかったが、誰も彼を見なかった。
少年は誰かが肯定してくれると信じていた。少年は誰かが見てくれると信じていた。そんなことは無かった。可もなく不可もなかった彼は、誰の目にも留まらなかった。
少年は諦めていた。何をしても無駄で、何の意味も為さないのだと思った。
「……僕は何の為に生きてるんだろう、ずっと、このまま」
少年はふと、鈍色の曇り空に呟いた。
少年には何も無かった。
♦♦♦♦
部屋には香ばしい香りが満ちている。ポットの中に湯を注ぎながら、アレキサンドラは大きく息を吸ってうっとりと目を細めた。
「ボク、コーヒーを淹れてる時間好きだなあ。いい匂いで、なんだかワクワクする」
白いティーカップに黒い液体が注がれる。差し出されたカップから沸き立つ香りの良い湯気を吸い込む。アレキサンドラは気怠い朝の眠気を覚ます時を思い出し、アルマは眩い昼間の忙しなさを横目にゆっくりと時間が流れる喫茶店を思い出した。
角砂糖二つとミルクを少々、アルマはコーヒーに入れて口に運ぶ。喫茶店で飲むそれとはまた違った味……程よい苦みとまろやかなコクが口腔に広がって、甘い香りが喉から鼻腔まで支配するようだ。アルマは一口味わって、溜息を吐いた。
「……アレキ、お前砂糖もミルクも入れないのか」
「んん……なんかその方が大人でしょ?」
ふと、隣に座る少女に目を遣ると、彼女はコーヒーカップを両手に渋い顔をしていた。一口飲んでは苦みに目を細め、すっかり口角を下げて顔を強張らせている。
「用意しておいてアレだけど、ボク、コーヒー好きじゃないんだよね……何が美味しいのか分からない」
「じゃあ何で用意したんだ……」
「好きな人と一緒に食べるものって美味しく感じられるって言うから、アルマと一緒に飲んでみたらどうだろうって。でも、別に美味しくならないや……苦いし……」
困ったように眉を下げながら、アレキサンドラは苦笑した。そしてまたカップに口を付けては、眉間に皺を寄せながらきゅっと目を瞑る。小さく舌を出して背中を丸めている様子は、ソファに座る二人の間で丸まっている子猫に似ている。
それを呆れた顔で眺めながら、アルマは徐に瓶から取り出した角砂糖を三つ、彼女のカップに放り込んだ。
「わー! ちょっと! なに?」
「俺ばっかり美味しいのはなんか……気に食わないんだよ……お前も飲むなら美味しく飲め」
「……それもそうか! じゃあボクもミルクたっぷり!」
ぶっきらぼうなのに、温かくて柔らかい表情。胸がどきどきと高鳴るのが分かった。思わず昂ったアレキサンドラの頬はふんわりと紅潮し、うきうきしてミルクを注いだカップの中はキャメル色に変わっていった。
漸く美味しいコーヒーの香りを楽しんで、彼女は嬉しそうにアルマに凭れかかる。太腿にすりすりと顔を押し付けてくる黒猫の頭を指で擦りながら、もう一口。好きな人と一緒に飲むコーヒーがいつもより美味しいかは分からないけど、好きな人と一緒だと楽しい。
「それで……あんまりにも可哀想で、そのカラスに襲われてるカケスの雛を助けて……夜眠れないくらい後悔した」
「ええ、別にいいじゃん、雛助かったんでしょ?」
「良くないんだよ……自然のものに人間が手を出すのは不自然だろ……」
「そういうものなの?」
「そういうものなんだよ……自分のそういうところ、本当に嫌いだった」
頬杖をつきながら、青年の眉間には皺が寄っている。庭の木に作られた巣から地面へ落ちた小鳥の映像が、確かな輪郭を持って脳裏に焼付いていた。胸の中でじくじくと疼く不快感に、それが自分の記憶であると理解させられる。
「なんか、昔のアルマって結構気にするタイプっていうか……卑屈だったんだね」
「その言葉、そっくりそのままお前にお返しするよ」
「むむ……何も言い返せない……」
アレキサンドラの配慮のない――良く言えば裏表のない素直な言葉を、彼は不愛想に切り返す。痛いところを突かれて、少女は小さな口を横に引いてもごもごと俯いた。
嫌な思い出なのに、ロクな記憶じゃないのに、彼女は興味深そうに赤い瞳を爛々とさせる。たいして面白くもない話なのに、彼女は嬉しそうにもっと聞きたいとせがんでくる。
「でも、なんか楽しいな。昔のアルマを知る度に、どんどんアルマのことを知っていってるんだって感じる!」
「何が楽しいんだか……」
「楽しいよ! だんだん本物のアルマに近づいていってるって感じ」
「……それじゃあ今の俺は偽物ってことなのか」
ちょこんと頭をくっ付けてくる彼女に、アルマは溜息を吐いて皿に乗ったカステラにフォークを入れた。口に出した言葉と相反して、心臓が堪らなく嬉しいのだと主張してくる。
本当、嫌になるな。認めたくない痛みに目を眇めながら、口に運んだ甘いカステラを咀嚼した。視界の端で、ぴょこんと飛び出たブロンドの髪が、ご機嫌に揺れている。
「……言っておくが、昔の俺がまともな人間だったとは限らないからな。もし、とんでもないクズだったらどうするんだ。記憶が戻った途端、お前のことを襲うかもしれない」
「……小鳥一羽見殺しにできない人が?」
「……」
ふと、挑発するような目で見つめると、困ったようなアレキサンドラの苦笑で反撃された。あえなく撃沈したアルマが黙り込んでしまったので、彼女はすかさず彼によく効く追撃を撃ち込む。
「だいたい、初めて会ったとき殺そうとしてきたし、もう襲われ済みなのに何を今更……」
「それも……そう……」
「……むふふっ」
覗き込んだ赤い瞳がキラキラと輝く。余裕ぶった表情が思わず綻ぶ。隠しきれない愉悦が溢れて、にんまりと目を細めて口角を上がってしまう。堪らず、アレキサンドラは身体を寄せてアルマの腕に抱きついた。
「ねえねえアルマ、ボクに嫌われるのが怖いってこと? ね、ボクがアルマのこと好きで嬉しい?」
「……」
「えへへー、心配しないでも、ボクはアルマのこと、アルマがどんな人でも大好きだよ!」
「……うるさい……というか離れろ……」
寄りかかって纏わりついてくる少女を厭わしそうに引き剥がしながら、彼は逃げるように顔を背けた。これは悪手であった。見なくても分かる――少女の眩しい笑顔が、視線が、背けた頬に刺さって痛い。
「……そんなことより、やるんじゃなかったのか、この間の続き……時間無くなっても知らないから」
「あっ、そうだった! チェス盤持って来よ!」
はっとして跳ねて、ちょこまかと駆けていく少女の後ろ姿を見つめて、アルマは口に手を当てた。口元が情けなく緩んでしまう。何とか抑え込んでいた感情が口の端から零れるのを隠しながら、彼は渋い顔をした。
いそいそと運んできた盤の上に、コトコトと音を立てて駒が並べられていく。前回までの盤上の情勢はアレキサンドラが優勢だ。手元のメモをじっと見つめる少女を無意識に眺めていると、ふと見上げた彼女と目が合った。
「ん? どうかした?」
いつだって少女の笑顔は変わらない。少女が自分に向ける視線はいつだって、恥ずかしいくらいの好きで溢れている。青年はいつもの通り、表情を変えずに目を逸らした。
「……貸して、自分の分は自分で置く」
「ほんと? じゃあ、アルマの分これね」
「間違えたところに並べられて負けたら、堪ったもんじゃないからな」
「むう、それはちゃんと確認するよっ」
アレキサンドラが不服そうに睨み付けてくる。こんなやり取りを、いつもしているような気がした。言いたいことを言えば良いものを、素直な言葉が喉につっかえて、結局意地悪をしてしまう。それが青年は少し嫌だった。
いつか、『本当の自分』の『本当の気持ち』を言えるようになれたら――彼は穏やかに目を細めて、カップのコーヒーの最後の一口を飲み干した。
♦♦♦♦
桜の花があまり好きではなかった。何も変わらぬまま、また新しい季節が訪れてしまったと感じるから。
薄紅の小さな花は、お前はまた変わることが出来なかったのだ、臆病で何もできないからだと責め立ててきた。早く、早く変わらなければと急かしてきた。
庭の桜の木を描いたことがある。どっしりとした幹と繊細に伸びた枝、その先で健やかに咲き誇る数多の淡く色づいた花々。こんなものを描いて何になる? 大した出来でもないくせに。桜の木は少年を冷笑した。
桜の花が咲かなければいいと思った。どうか固い蕾のまま、ずっと眠っていて欲しいと願った。そんな少年を嘲りながら、桜はその瑞々しい花を存分に開かせた。
「この桜の樹の下って死体が埋まってるんですよ! だから、人の血を吸った花がこんなに美しく咲いてるんです」
桜の花が嫌いという訳ではなかった。はらはらと散る花弁の中、雛。雛�の笑顔が余りにも綺麗だから。
豊かな幹に手を着きながら、鄙。鄙�は悪戯っぽく微笑んだ。目が離せないくらいに可憐だったので、少年はどきどきと胸が高鳴るのを抑えて眉を顰めた。
「……こんな時に怖いこと言わないでよ……」
「えへへ、冗談ですよう。それよりほら、踊りの練習しないと」
「……こんなの、どうせやったってなにも意味ない。兄上が一番目立つしすごく綺麗なんだ。去年もそうだった。僕なんか誰も見てないし、気にしないよ」
「そんなことないですよ! なんならこの私は♦♦♦様の踊りを見たいですもん。ほら、踊って見せてください」
袴をぎゅっと握り締めて項垂れる少年の顔を、鄙。鄙�は覗き込むようにして見つめる
。顔が熱くなるのが分かって、少年は彼女に背を向けた。顔の熱が冷めなくて、居ても立っても居られず少年は扇子を持った右手を伸ばした。
足は地面に摺って、重心を落としたままくるりくるりと円を描く。ひらりと袖を翻して目線を下げる。立膝になって身体を傾けて、ゆっくりと腕を伸ばして、柔らかく艶めかしく。
くるくる回る視界の中で、黒橡色の髪が楽しそうに揺れていた。鄙。鄙�の竹箒は白い花弁を集めるのを止めて、彼女の体重を受け止めてしなっている。ぐるりと回る度に視界を横切るその人の笑顔は優しくて温かい。胸の中がじんわりとした温度で沁みた。
「上手! ♦♦♦様の踊りは上手なんです! 自信を持ってください、こんなに頑張って練習してるんだから。ふふ、いつも偉いですね」
「……うん……ありがとう」
細い手が頭を撫でる。黒橡色の綺麗な髪に、薄紅の花弁が一枚付いていた。頭に触れる優しい温もりを受け入れて、少年はぎこちなく微笑んだ。顔を上げた先の鄙。鄙�は歯を見せ縺ヲ隨代▲ていて、真夏の蜷第律闡オ縺悟調縺�ているみたいだった。
鄙。鄙�はいつだって、少年が欲しい言葉をくれた。少年が欲しいことを与えてくれた。だから、彼女に褒めてほしかった。その為に少年はいくらだって努力が出来た。
彼女だけが見てくれたら、認めてくれたらそれで良かった。その温もりは、何も変わらない少年を変わらず肯定してくれた。それだけで嬉しくて、全てのことに意味があると感じた。それだけが、少年の心を支えていた。
蟆大ケエ縺ッ鄙。鄙�縺ョ縺薙→縺悟・ス縺阪□縺」縺溘�。
♦♦♦♦
桜の木を描き終えて、アルマはふう、と溜息を吐きながら筆をバケツ代わりのコップに浸けた。画帳の上の大木はどっしりとした幹で枝が繊細に伸びていて、その先に淡く色づいた数多の花々が健やかに咲き誇っている。
絵を描けば思い出すかも、というアレキサンドラの言葉を思い出して描いてみたものの、やはり霞の掛かった記憶は鮮明にはできなかった。数枚の画用紙を眺めながら、彼は疲れ切った身体を横にする。安宿の床はギィ、と小さく声を上げた。
「……はあ」
焦げ茶色の髪の女性が描かれた画用紙を見ながら、アルマは深く溜息を吐く。その女性は顔の部分がぽっかりと空いたまま――思い出せないのだ。ぼやけていて捉えどころがなく、深く考えようとするとそれ以上思考できなくなってしまう。
彼女は確かに記憶の中にいた。それは夢ではなく嘗ての記憶なのだと、それははっきりと分かっている、のに。この焼けるような焦げるような息苦しさが、それを証明しているのに。彼は画用紙を置いて、年季の入った床に身体を預ける。
逸る焦燥感。それは嘗ての記憶が蘇る度に彼を責め立ててくる。このままではいけない、変わらなければ――何をどう変えればいいかも分からないのに。真綿で首を絞められているみたいに、じわじわと追い詰められている。
「……ああ、レンゲ。起きたのか」
よろよろと歩きながら、黒猫はアルマの足に頭をぐりぐりと押し付けてくる。大きな手に撫でられて、レンゲはにゃあと返事をして再び横になった。
こんなこと、ただただ自分を不安に追い込むだけなのに。思い出したところで何になる、何の意味もないことなのに。どうして思い出そうとするんだろう。
隣で楽しそうに微笑む少女の顔が頭に浮かぶのだ。
「……ダメだな、俺は、また」
胸の中がざわざわして――それが不快でないことに、アルマは頭を抱えて溜息を吐いた。目を閉じても、真っ暗な視界の中にアレキサンドラがいて消えてくれない。掻き消せないどころか表情が緩んでしまう。
彼女が自分の昔話を嬉々として聞いているのが、自分のことを知ろうと手を伸ばすのが嬉しい。そんなくだらない、愚かな理由で記憶を掘り起こそうとしていることが嫌だった。
「……レンゲ、どうしてアレ……キ、の話はやめておこう……なんかお前、本人にバラしそうだよな……猫なのに」
額を撫でながら、アルマは思わず出かかった言葉を飲み込んだ。傍の猫は何のことやらと呑気に身体を伸ばしている。自己嫌悪と罪悪感に苛まれ、何度目かの気鬱な溜息は静寂に溶けて重く沈んでいく。
もっと考えるべきことは沢山あるのに、ふと気がつけばいつも彼女の事ばかり考えている。そしてこんなにも嫌悪感で頭の中が一杯なのに、その不快さこそが認めたくない感情を証明していた。
たまらなく苦しくて――たまらなく愛しい。
考える程に霧に阻まれ、そしてやがてとろんとした睡魔に飲み込まれる。瞼が鉛みたいに重い。気を抜いたら意識を失ってしまいそうだ。
(……まあ、いいか……余計な事考えるくらいなら、このまま)
微睡みの中、遠くからこちらを見つけて走ってくるアレキサンドラを見て、やがて彼の思考は深淵に溶けていった。
♦♦♦♦
爪先まで凍りそうな寒い日だった。
呼吸をすると鼻から口から白い息が出て、肺が凍ってしまいそうな気がした。
大粒の雪が降っていた。分厚い雲に覆われた空を見上げると、ぼたぼたと落ちてくる重たい雪は灰色に見えて、なんだか大きな埃が降り注いでいるように見えた。
庭先が真白になっていたので、徐に少年は紙と筆を手に取っていた。白い景色の中、凍り付いた池や雪を被った灯篭を写生した後、庭の桜の木を眺めていた。
枝たちに雪が降り積もって、白い花を咲かせているように見えた。少年は桜の木があまり好きではなかったが、そうは言ってもその光景は風情があったので、近頃の陰鬱な心持から逃れたくて画用紙に向かっていた。
桜の木と手元の画用紙に交互に目を遣りながら筆を動かす。その瞬間は無心になれた。余計な情念が消えて、何も聴こえなくなる――白銀の景色の中に吸い込まれるのだ。
「あ」
重たい雪に軋んでいた枝が、メキメキと音を立ててしなって、どさりと雪の中に落ちた。糸が切れたように引き戻され、少年は冷たい風に身を震わせた。
紙と筆を置いて、雪の中に足を踏み入れた。足元からさくさく、ぎゅっ、と鳴く声が聞こえる。やっとの事で桜の木へ辿り着くと、折れた枝が雪の中に突き刺さっていた。
近くで見るとそこそこ太くて、折れた部分は腐っているようだった。少年はそれを見下ろしながら、まるで自分の様だと思った。
硬く膨らんでいない蕾のまま、腐り落ちてもう花を咲かせられないのだ。ずっとこのまま、もうどうにもなれないまま、朽ち果てるのを待つだけなのだ。
少年が大きく息を吐くと、口から白い息が出て、真白な世界へ溶けていった。
♦♦♦♦
廊下に響く靴音。ドレスの裾が揺れ、白いレースがふわりと靡く。
グラツィアーニ男爵邸から戻ったナターシャは、小さく溜息を吐いた。伏し目がちに足を止めると、彼女は先刻の事を回想した。
「へぇ、王家の人間って、こんな簡単なことも分からないのか……」
目の前の男が、呆れたように呟く。ナターシャは手元の法律書を見つめながら、俯いて黙り込んだ。冷たい、嘲るような視線が頭に注がれているのが分かる。
相変わらず、カッツェの言葉は彼女を傷つけるために発されていた――にもかかわらず、彼女がめげずに何度も足を運ぶことがいい加減疎ましいようで、その声色は一段と鋭く聞こえた。
こんなこと、彼の父親が聞いたら真っ青になるだろう。王家の人間であることをものともしない青年の言葉に、ナターシャはきゅっと口を結んだ。
数日前、コルニから言われた言葉を思い出した。
『次に持って行くお茶菓子を、一回地面に落としたものにするとか』
テーブルの上に置かれたケーキに視線を移す。アールグレイの紅茶の風味が鼻を抜けて、爽やかさとクリームの甘さがふんわりと広がる。以前食べてあまりにも美味しかったので、今日の勉強会の為に用意したのである。
小休憩に、カッツェはケーキの乗った皿を手元に寄せると、一口分、銀色のフォークを入れて口へ運んだ。が、二口食べたところで口元をナプキンで拭い、皿をテーブルの端へ除けた。
「口に合わない。おい、給仕。これもう下げてくれる? あと、お茶が冷めたから淹れ直して」
はあ、と彼が溜息を吐くのを、ナターシャは何とも言えない表情で眺めていた。それに気づいたのか、カッツェは厭わしそうに目を細めて、新たに淹れ直したアップルティーの熱いカップに口を付けた。
「……言っておくけど、僕は君が王家の人間であろうがなかろうが、どうでもいいから。所詮その辺の雌と変わりない」
ナターシャは俯いた。
まったくもってその通りである。
但し、貴方の目の前にいるその雌は、その辺の雌とは違って、今下着を履いていないのですが!
ナターシャは俯き、口角が上がってしまいそうになるのを必死に堪えた。思わずにやけてしまいそうになり、彼女は手元のケーキにフォークを入れて口に入れる。勿論ケーキは一度も地面に落としていない、綺麗なケーキである。
何か彼に気づかれないよう、悪いことをしようと考えてみたが、食べ物を粗末にするのはいけないし、あまり悪意を持って行うと彼に見透かされ、逆に嫌味を言われてしまうだろう。頭の中で策を巡らせていたその時、ふと思い出したのである。
こっそりと取り寄せた官能小説の一幕に、野外で情事にふける男女の姿。素肌が曝け出された部分に冷たい風を受ける、ひんやりとした背徳感、万が一他者に見つかれば変態と一生指を指されるであろう危うさ――
それは即ち、悪いことではないだろうか……。
(カッツェ様――貴方は先程からぐちぐちと嫌味を言っておられるのです、下着を履いていない雌に向かって)
高揚感に胸が躍った。湧き上がるのはどうしてか、勝利の歓びの様であった。何か嫌なことを言われているのだろうが、全く頭に入ってこなかった。
風が吹くとドレスのスカートの中、通常そこに冷たさを感じることが無い所がひんやりとする。万が一風で捲れてしまいなどすれば、もう恥ずかしいという事では済まない。王家の人間が、下着を履かずに殿方と二人きり、そんなところを晒してしまったら――
(カッツェ様――自分は何もかも理解しているおつもりなのでしょうが、重大なことに気づいていらっしゃいません。貴方の目の前の女は、下着を履いておりませんのよ)
彼は何も知らないで嫌味ったらしく言葉を吐いている――目の前の、下着を履いていない変態に。ナターシャはそれがおかしくて、顔が緩んでしまいそうなのを何とか抑えた。
それはカッツェには気丈にふるまっているように見えたらしく、彼は吐き捨てるように呟いた。
「……何も気にしてないみたいな顔……そういうのムカつくね」
なんだか強くなったような心地で、彼女は何を言われても平気だった。
「……んふ」
思わず小さく笑い声が漏れてしまった。にやにやと緩んでしまう顔を手で覆いながら、ナターシャは壁に凭れかかった。
実際は、何を言われても平気になっただけで、何の進展もないのだが――今ならあの男の事を、好きなようにできる気がする。気持ち悪い笑い声が止まらない。
「……え……どうしたんですか、姉上……」
「ひぃあやあっ⁉ あっあ、アレキ……」
一人だと思っていた廊下から聞き慣れた声が聞こえてきて、素っ頓狂な叫び声が響き渡った。壁に凭れたままずりずりと歩いていた姉に、背後から声を掛けたアレキサンドラは唖然とした表情である。
「あ、ああ……今、男爵邸から戻ったのよ」
「……もしかして、あの……一回落としたお茶菓子……コルニの言ったやつを……⁉」
「なっ、そ、そそんなことする訳ないわ! もったいないでしょう、お菓子が!」
アレキサンドラが一瞬で青ざめた顔になったので、ナターシャはそれを全力で否定した。ほっとして胸を撫で下ろす少女を見ながら、彼女はスカートの中がひんやりするのを感じた。
「じゃあ、何か進展があったんですか?」
「ええと……いや、進展は無いわね。相変わらず酷いことを言われたし……でも、前よりは気にならなくなったわ」
「……何はともあれ、姉上が元気そうでよかったです」
「ふふ、何だか余裕が出てきたし、カッツェ様の弱点でも探っていこうかしら」
いきなり声を掛けられた時は動揺してしまったが、今のナターシャは無敵であった。平静に振舞うと、色々と困惑する部分はあるのだろうが、アレキサンドラは納得した様子である。
「じゃあ……目標とかもあると良いかもしれませんね。中長期的な」
「目標ねえ……うーん、あ、八月の霊魂祭! それまでにカッツェ様のハートをゲットするわ」
「結構急務ですね」
「厳しいくらいの方がやる気が出るものよ、腕が鳴るわ~」
姉の清々しい笑顔に、アレキサンドラも嬉しそうに微笑みを返す。
晴れ晴れとした心地だった。足取りは軽かった。軽くスキップをすると、ドレスのスカートがふわりと浮いて、羽ばたいているみたいに感じた。
ドレスのスカートの中は涼やかで、ひんやりとした風が心地良かった。
(そっか、八月には霊魂祭があったなあ)
机の上の書物に目を通しながら、アレキサンドラは頬杖をついた。目を閉じると、数多の花火が夜空を埋め尽くす光景を思い出す。
夜なら、アルマとあれを一緒に観れないだろうか。公務中だが、一瞬抜け出して何とか――ぼんやりと考えながら、アレキサンドラはにまにまと笑みを浮かべた。
(そういえば、四月にはスヴェートの川沿いのライラックが綺麗に咲くはずだから、アルマと見に行きたいな)
ペンを置くと、アレキサンドラは机に積み上げている本の山から崩れないよう一冊を引っ張り出す。城下町の観光案内の書物をぺらぺらと捲り、目的のページに折り目を付けた。
そのまま幾つかページに目を通す。少女は目をぱちくりとさせた。今まで何とも思わなかったはずのもそれらがきらきらして見えるのだ。
三月の流星群、六月の紙船の川流し、夏には郊外の向日葵畑が満開になる。アルマと一緒に見に行きたい。十一月には収穫祭があるし、一月の聖夜は――ああいっそ、今年は公務を入れないでおこうかな。
アルマと行きたいところ、アルマと見たいものが沢山ある。アレキサンドラはページの端に折り目を付けた。アルマとやりたいことが山ほどある。全部やろうと思ったら、時間がいくらあっても足りないだろう。
(――あ、――)
そういえば、いつまでアルマと一緒に居られるんだろう。
いつまで、アルマとのこの関係を続けられるんだろう。
そもそも、アルマはこれからもずっとボクと居続けてくれるんだろうか。
「……怖いこと考えちゃった。はぁ、やめよやめよ」
本を閉じて山のてっぺんに乗せると、アレキサンドラは立ち上がり、陶器のポットを手に取った。もうすぐアルマが来る時間だ。
急に頭に過った冷たい感覚を振り払う。深く息を吸い込んで吐いて、紅茶の準備に取り掛かった。今日は葡萄のフレーバーティーだ。ティーバッグに顔を寄せると、瑞々しい葡萄の香りが鼻を抜ける。
お茶請けのクッキーを準備して、今日は時間に余裕があるようだ。アレキサンドラは窓を開け顔を出すと、真っ暗な森を眺めながら、揺れる木々の中から青年の姿を見つけようと目を凝らした。
「アルマってさ……結構弱いね」
「……歴が浅いんだよ……あと、俺が弱いんじゃなく、アレキが強いんだろ」
「それは当然だよ! だってボク、大抵負けたことないもん」
「じゃあ俺が勝てないのは仕方ないだろ」
青年は白のポーンを動かす。盤面とアルマの顔を交互に眺めながら、アレキサンドラがぽつりと呟くので、アルマは溜息を吐きながらチェス盤の傍に置いている砂時計をひっくり返した。
膝の上がずっしりと温かい。先程までテーブルの上を興味深そうに眺めていた子猫は、すっかり飽きて彼の膝の上で丸くなっている。大きな欠伸をする黒猫を撫でながら、彼はティーカップに口を付けた。
「でもやろうって言ってきたのアルマだよね。やったことあったの?」
「いや……なんか、やったことないけど、やったことあるような気がして……」
「ふーん」
それだけ返すと、アレキサンドラは黙り込んだ。沈黙の中に、砂時計の砂がさらさらと落ちる音が聞こえる。
アレキサンドラが深く息をするのに合わせて、少女の後れ毛がゆらゆらと揺れている。盤を隅々まで見渡して、赤い瞳は忙しなく動いている。長い睫毛が瞬いて、ぱたぱたと上下する。
目を奪われる。見惚れるくらいに綺麗で、思わずじっと見つめていたことに気づき、彼は苦い顔で目を逸らした。当の彼女は気付いていない様子で、無意識に下唇をぷにぷにと摘まんでいる。
アレキサンドラは随分長考する方だ。声を掛けないとあまりにも時間が掛かっていつまでも終わらないので、今日は砂時計を用意することになったくらいだ。
だから彼は手持ち無沙汰になって、気が付いたら少女の一挙手一投足を目で追ってしまう。本当、自分で自分が気持ち悪い。前は、こんなことなかったのに、彼女はいつも、すぐに指してしまうから――
『ふふ、♦♦♦様、良い手を指しますね』
ぱちん、と音がした。朗らかな声がした。息が詰まる、胸がきつく締め付けられる心地がした。俯いていた綺麗な顔をすぐに上げて、彼女はこちらに笑顔を向けてきた。
『……そんなの、お世辞はやめてよ。いつもヒ鄙�が勝ってるのに』
『♦♦♦様もお強いですよ。ま、私の方が強いのですがっ』
『たまには手加減してくれてもいいのに……』
『えー、これは勝負なんですから! 勝負は本気でなくっちゃ!』
ヒ鄙�はいつも少考だった。何も考えていないみたいな速さで指しながら、最後には彼女の策に嵌められて負けてしまう。自慢げに胸を張る彼女を、不満げにじとっと見つめた。
将棋盤に向かっている彼女の顔が綺麗で、ずっと見ていたいと思った。はらりと顔に掛かる髪をかき上げて耳に掛けると、彼女の顔がよく見えてどきどきした。その時間がすぐに終わってしまうのが名残惜しかった。
『さあ、♦♦♦様の番ですよ。指さないんです?』
淡い緑色の瞳と目が合った。襖の隙間から橙色の夕日が差し込んでいた。
(分かってる、今考えてるところだから)
心臓が焼けるような、焦げるような息苦しさが、幸せだったのだ――
「ねえアルマ、聞いてる? おーい」
「……っヒ、ス……あ、アレキ……」
「ボク終わったよ。アルマの番だけど……大丈夫?」
目を見開くと、眼前にアレキサンドラの顔があった。彼女はアルマの意識が引き戻されたのを察して顔を離したが、心配そうに眉を下げている。まだ思考がぼんやりしている。ふわふわと夢を見ているような心地だ。
「体調悪い? しんどい? 眠い? なんかぼーっとしてる」
「……いや、なんか急に……昔のことを少し、思い出して」
「えっ、どんなのどんなの?」
「ん……」
少女の表情は興味深さ半分、心配半分といった様子だ。まだ平常通りでない彼の様子に、少々身体を強張らせている。
ヒビの入った器から、中身が染み出していくようだった。思い出せないような、思い出したくないようなそれが、亀裂を広げようとしているようだった。頭がぼんやりする。
ずっと頭の中に掛かっていた霞が薄くなっていく。分かってしまう。今、「どうして」自分がここにいるのか、全て――
「……っ!」
「アルマ⁉ え、わっ、だい、大丈夫⁉」
瞬間、頭が裂けるような頭痛に襲われた。頭を抱えたまま椅子から立ち上がり、よろめくアルマに、アレキサンドラは飛び上がって駆け寄った。
溢れ出した記憶が白くなる。痛みは波のように引いては押し寄せ、彼の脳をガンガンと揺さぶる。遠くなる意識の中、青年は動転した少女が必死に自分を支えていることと、同じく動転した黒猫が辺りを駆けまわっている事だけ分かった。
「……ま、アルマ……大丈夫? ど、何処が痛い? 頭?」
生暖かい、何か濡れたものが、ひたひたと顔に当たる。暫くして、それが慣れた感覚であると気が付いた。
「あ、頭痛い時って、どうするんだっけ⁉ 冷やしたらいいっけ、温めるんだっけ? ええっと、頭痛の種類によって……ど、どうしたら」
レンゲにぺろぺろと顔を舐め回される感触で、漸くアルマは意識を取り戻した。目を開けると、見上げた先でアレキサンドラが何か本を見ながら慌てている。その様子から、どうやら倒れてからそう時間が立っていないことが分かった。
頭の痛みは随分治まったようだ。まだほんのりと痛いが。頭上の少女は、手元の本に釘付けになっていて、彼が目を覚ましたことに気が付いていない様子である。
「……アレキ、ごめん、もう大丈夫だ……」
「あーっ⁉ アルマ! まだ起きなくていいから! もう、このまま起きなかったらどうしようって……レンゲも心配して、ほらアルマの顔こんなにべとべと……」
身体を起こそうとすると、強い力で押し返された。どうやらソファに寝かされているらしく、入りきらず余った脚がはみ出ているようだ。頭には柔らかなクッションの感触がある。
「大丈夫? 何かした方が良いこととかない?」
「いや……」
「そう? じゃあ、もうちょっとこのまま横になってて! ボク、何かできそうなことないか調べてみる」
「……ふ」
小さな笑い声。空気が漏れた音のようなそれに、驚いてアレキサンドラが視線を落とすと、アルマは口元を緩めていた。只、その表情は薄暗く、物悲しく見える。
やっと落ち着いた子猫が彼の腹の上にちょこんと座る。その背中に力なく手を寄せると、彼は遠い目で天井の隅を眺めた。
「変わらないんだ、俺は……」
「……どうかしたの?」
「いや、ちょっと思い出して……昔から、こういうことがあったんだ」
いつもと雰囲気の違う彼の様子に、アレキサンドラは目が離せなかった。アルマなのに、アルマじゃないみたい。見たことのない表情だった。
「子供の時、キツネ狩りをしたんだ。狩ったキツネは当然食べるだろ、それは分かってたけど、その為に殺すのが嫌すぎて、倒れて寝込んだことがある」
「今みたいに……?」
「ああ。昔から、嫌なことがあっても、逃げることも立ち向かうこともできなくて、倒れたり吐いたり……こんなに時間が経ったのに、何も変わってない……」
掠れた声でそう言って、彼は目を伏せた。穏やかなのに苦しげで、その表情は諦めに似ている。アレキサンドラは彼の顔をじっと見つめた。
「別にそのままでよくない?」
「え」
「だって、ボク今のアルマのこと好きだし」
上から降ってきた素直な言葉に、アルマは目を開いた。彼女はいつものあっけらかんとした笑顔をこちらに向けていた。
「確かにアルマはさ、ちょっと気にし過ぎなところあるし、結構卑屈だし、自分に全然自信ないし、たまに意地悪だし、全然笑ってくれないけど……そういうところも全部、好きなんだよ」
「……」
「だからアルマ、変わらないでよ」
愛おしげな声色が、静寂の中に響く。少し細めた赤い瞳に、青年の表情が映り込んでいる。少女の細い指が彼の髪を撫で、微かに額に触れる感覚がした。
「あっでも変わってもいいよ! 変わっても、きっとそんなアルマの事も好きになるから。言ったでしょ、今のアルマも、これからのアルマも、ボクは大好きって!」
「あっ」
目の前で、光が弾けた。
嘗て見た光景が、色彩を持って溢れ出した。
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