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第1章・底辺領土の少女魔王
27・魔王様、自分の城に向かう
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――エルガルム領・フィシュロンド――
フィシュロンドは元々リーティアスの領土で、昔私が両親と住んでいた魔王城がある場所だ。
ディトリアとは違って海鮮物などの特産品はない代わりにリーティアスでは一番発展していた街で、この国の流通を担っていた場所。
外に出れば緑が広がり、近くに川があって、他の国と比べても比較的綺麗な街並みだったらしい。
それが今では……
「随分悲惨な有様ね。これは」
国境の平原での一戦の後、ほとんど被害のなかった私達の軍は、アイテム袋のおかげで食料を運ぶ手間も省けていることもあってか、そのまま進軍することになった。戦いが終わってすぐの行動だったから、休みながらゆっくりと進むことになり、大体フィシュロンドについたのは七日ぐらいはかかってしまった。
あの戦いでは結局ほとんどが私の『メルトスノウ』の餌食になり、残ったのは全員戦意が失われていたようみたいだ。
それでも大なり小なり経験を積ませてあげることは出来たみたいで、ここに連れてきた兵士たちは戦いの前よりも若干凛々しい顔つきになってる。
そんな一回り成長した私達を出迎えたのはまさに瓦礫の街といった有様で、こんな街を一から復興させなければいけないのかと考えると、ため息が止まらない。
奥に行けば行くほどまともな様子で、遠くに見える門の奥の方を見ると、ある程度マシな家々が建ってる。
これは相当貧富の差が激しい状態に陥ってるようだ。よくここまで酷いことになるまで放置したものだ。
差があることが悪いとは言わないけど、ここまで酷いのはやりすぎだ。こんな有様の場所を占領したって再建するのにどれだけの月日がかかると思ってるんだか……。
建物の方もどちらかというときらびやかといえばいいのか……節操なしに建物を立ててるみたいで、結構悪趣味なように見える。
ところどころ建物の様式とか材質とかが違うものが多いから、余計に景観がおかしく感じるのだろう。
「私達、普通に歩いてますけど、全然兵士とか出てきませんね」
「あそこにいた戦力がエルガルムの全てだったんだと思うっすよ。
普通なら防衛に兵士を残しておくはずっすけど、オーガル王はそんな常識を一切無視してたってことっすね」
「リーティアスに時間をかけるのを面倒がったかもしれませんミャ。にゃーだってこんな簡単にここまで来れると思ってませんでしたミャ」
アシュルたちも一応は警戒してるようだけど全く襲撃がないせいか、どことなく緊張感が薄れているようだ。
一応敵地なんだし、こういうときこそ気を引き締めておかないといけないんだけど、ま、今回は見逃してあげようかな。
「それにしても……こんなにも静かすぎるわね」
こちらの様子を伺う視線はあるんだけど、それ以上のことは何もしてこない。
オークの姿がちらっと見えることもあるけど、オーガルは一部の者以外の……自分の役に立たないオークも、同じようにここで虐げていたようだな。
「そうですね。ちょっと不気味な感じですね」
「ここはどちらかというと、貧民を強いられた種族がいる場所だからかもね。奥の連中もここがどうなろうと知ったことではない、ということでしょう」
覚えてないとはいえ、私の住んでた場所をこんな風に変えてしまったオーガルたちに改めて憤りを感じるけど、今はそのことは忘れておこう。
「トマレ! トマレィ!」
貧民街と言ってもいいような場所の奥の方には門があり、そこを守るようにして衛兵のオークが立ち塞がる。
「ココカラハエルガルムノエラバレタモノダケガハイレルバショダ! オーガルオウノキョカガナイモノハトオサン!」
「……」
「ど、どうされたっすか? ティファリス様」
「いや、何言ってるかよく聞き取れない」
今までこんな話し方をする連中とは会話してこなかったということもあってか、訛ってるような拙《つたな》いような話し方をするオークの言葉がどうにも頭に入ってこず、内容を理解するのに時間がかかる。
「ここはエルガルムの……他の国の言葉で申せば、貴族のような位の高い者だけが入れる場所で、オーガル王の怒りを買う前にどこかにいけ……そう申しておりますよ」
私のことを見かねたオウキが助け舟を出してくれた。
というか、やっぱり他の国には貴族なんてものがいるのね。わかってはいたけど、実際いるとわかると憂鬱になる。
貴族という生き物はワガママでプライドが高く、強欲で自分の保身しか考えない連中が多い。もちろん例外も存在する。だけどあいにくとハズレばかりを引いてきた部類だからか、そういうのがいると思うだけで頭が痛くなる。
「貴族ねぇ……」
「この地域は小国ばかりですから貴族という考えがあまり浸透しておりませぬし、見知らぬのも仕方のないことでしょう。ある程度国が大きくなりますと、報奨と称して土地を与える領主制度を設け、貴族として爵位を与え、管理を任せなければ目が行き届きかず問題が起こる可能性も大きくなります。
もっとも、その制度を悪用する者も少なからずおりますがね」
ふぅ……とため息つきながら解説してくれてるところを見ると、彼もそこらへんで苦労してるみたいだ。
「詳しい解説をありがとう。……で、そこのオークに話を戻すわよ。仕事に忠実なのはいいけど、少しは頭使いなさいな」
「? アタマ? ドウイウイミダ?」
「ほらそこ。あそこの鬼が引きずってるモノ、何が見える?」
「……?」
目を凝らすようにオウキの連行してるオーガルを見て、最初は何をさしているのかよくわかってなかった様子だったけど、段々と理解が追いついてきたのか驚きの顔になってきた。
「オーガルオウ……! オマエタチガヤッタノカ……!?」
「何を当たり前のことを聞いてるのよ」
というか、それぐらい確認しないでもわかってほしい。大体こんなところにゴブリンを大量に引き連れた集団が来ること自体おかしいと認識してもらいたいものだ。
「ソウカ……」
オークの衛兵は得心がいったと何度も頷いた後、私達に道をゆずるように扉からどいて、腕を組んで『勝手に通れ』と言わんばかりの態度を取った。
「門は守らなくていいのかしら」
「……オラハアタマヨクナイカラ、ムズカシイコトハワカラン。
ダカラ、オーガルオウガツカマッタンナラ、モウコノクニノオウジャナイ。
ナラ、メイレイヲキクヒツヨウハナイ。オラノシゴトハオワリダ」
「……ええと、オウキ?」
「オーガル王が敗北したのなら、エルガルムの王ではなくなった。もうその指示に従う必要はない。そう申しております」
短い言葉ならまだなんとかなるんだけど、長くなると意味がさっぱりわからない。オークの言語能力がこれが普通なら、なんとかしないといけないかもしれない。
エルガルムを支配するということは、オークも私の陣営に迎え入れるということだからね。
そこのところは今後の課題にしておいて、あのオークのなんとも薄情……いや、自分の基準に律儀といえばいいのかな?
まあいいや。通れるのであれば遠慮なく行こうじゃないか。
「それじゃ、通らせてもらうわよ」
「スキニスルガイイ。アタラシイオウ」
いつの間にやら王として認定された私は、ゴブリンたちを引き連れてこの悪趣味は建物がそびえ立つ区画に足を踏み入れた。
「ティファリス様、これからどうするっすか?」
「そうね。アシュル・ケットシー・ウルフェンで部隊を分けて、ここで贅を貪ってる連中を片っ端から連行するわよ。
私はある程度護衛を連れて城に向かうわ」
「だ、大丈夫ですかミャ? そんなことして……他の国にコネを持ってる方がいたら結構危ないことになるかもしれませんミャ」
「他国と繋がってるやつがいたらなおさら連れてきなさい。私の創る国に、愚か者は必要ないということをその性根に叩き込んで上げるから」
「ティファさま、これ以上離れるなんて私……不安です。私もお供します!」
「アシュル、気持ちはわかるけどこういうことは効率よくやって手早く終わらせるのが一番なのよ。
貴女が仕事をきちんとこなしたら、私のところに来ればいいわ」
「……はい!」
私に少数の護衛、残りの三人で部隊を分けて、行動を開始する。ちなみにオウキは私と共に行動することになった。オーガルを引き渡したからはいさようならというわけにはいかないからね。
もうしばらくは一緒にいるとのことだ。
「それではティファリス女王、参りましょうか」
「行くのはいいんだけど……ソレ、いつまでそうしてるの?」
ちらっと引きずられてズタボロになりかけてるオーガルを、思わずゴミでも見るかのように見下ろしてしまう。
ジークロンドは死なない程度に処置しておいて、今はオウキに背負ってもらってる。最初は若干嫌そうにしてたけど、私が少し圧力をかけてあげると喜んで引き受けてくれた。
そういうことを考えるとオーガルとの扱いが随分違ってて少しおかしい。四肢の無い気絶した狼を背負って、言葉もロクに喋れないほど拘束されてる豚を見ると、なんだか狩りから帰ってきた鬼のようにしか見えない。今日の夕食は豚の丸焼きか。
「いえ、ジークロンド王はまだしもオーガル王まで担ぐのはちょっと……」
「はぁ……まあいいわ。色々手伝ってもらってるし、あんまりボロボロにしないように気をつけてちょうだい。
今はアシュルがいないから、傷が酷くても治してあげられないからね」
「はい。承知しておりまする」
光属性くらい使うのはわけないんだけど、なんで闇属性と両方使えるんだ? って話になって面倒だから、回復魔導は全てアシュルに任せてある。
あの子が光属性の魔導を覚えてくれて本当に助かってる。あの子がいれば、それを隠れ蓑に私の魔導を使ったとしてもバレることはなさそうだ。
「それじゃみんな、行きましょうか。もうちょっとだから頑張ってね」
さあて、これからはゴミ掃除の時間だ。
腐敗の温床は全て綺麗に片付けないといけない。かなり冷酷なことだとも思うけど、王にはそういう面も求められる。
ここで取りこぼしあれば、それがどういうところで私達に不利益をもたらすかわかったものじゃない。
それにこれだけわけのわからない事になってる場所の再建なんて、リーティアスの国家予算だけじゃ絶対に無理。ここは今まで私腹を肥やしていた分、こっちに還元してもらわないといけないのだ。
……問題はそれすらもなかった時だけど、流石にそれはないと思う。
…………ないよね?
フィシュロンドは元々リーティアスの領土で、昔私が両親と住んでいた魔王城がある場所だ。
ディトリアとは違って海鮮物などの特産品はない代わりにリーティアスでは一番発展していた街で、この国の流通を担っていた場所。
外に出れば緑が広がり、近くに川があって、他の国と比べても比較的綺麗な街並みだったらしい。
それが今では……
「随分悲惨な有様ね。これは」
国境の平原での一戦の後、ほとんど被害のなかった私達の軍は、アイテム袋のおかげで食料を運ぶ手間も省けていることもあってか、そのまま進軍することになった。戦いが終わってすぐの行動だったから、休みながらゆっくりと進むことになり、大体フィシュロンドについたのは七日ぐらいはかかってしまった。
あの戦いでは結局ほとんどが私の『メルトスノウ』の餌食になり、残ったのは全員戦意が失われていたようみたいだ。
それでも大なり小なり経験を積ませてあげることは出来たみたいで、ここに連れてきた兵士たちは戦いの前よりも若干凛々しい顔つきになってる。
そんな一回り成長した私達を出迎えたのはまさに瓦礫の街といった有様で、こんな街を一から復興させなければいけないのかと考えると、ため息が止まらない。
奥に行けば行くほどまともな様子で、遠くに見える門の奥の方を見ると、ある程度マシな家々が建ってる。
これは相当貧富の差が激しい状態に陥ってるようだ。よくここまで酷いことになるまで放置したものだ。
差があることが悪いとは言わないけど、ここまで酷いのはやりすぎだ。こんな有様の場所を占領したって再建するのにどれだけの月日がかかると思ってるんだか……。
建物の方もどちらかというときらびやかといえばいいのか……節操なしに建物を立ててるみたいで、結構悪趣味なように見える。
ところどころ建物の様式とか材質とかが違うものが多いから、余計に景観がおかしく感じるのだろう。
「私達、普通に歩いてますけど、全然兵士とか出てきませんね」
「あそこにいた戦力がエルガルムの全てだったんだと思うっすよ。
普通なら防衛に兵士を残しておくはずっすけど、オーガル王はそんな常識を一切無視してたってことっすね」
「リーティアスに時間をかけるのを面倒がったかもしれませんミャ。にゃーだってこんな簡単にここまで来れると思ってませんでしたミャ」
アシュルたちも一応は警戒してるようだけど全く襲撃がないせいか、どことなく緊張感が薄れているようだ。
一応敵地なんだし、こういうときこそ気を引き締めておかないといけないんだけど、ま、今回は見逃してあげようかな。
「それにしても……こんなにも静かすぎるわね」
こちらの様子を伺う視線はあるんだけど、それ以上のことは何もしてこない。
オークの姿がちらっと見えることもあるけど、オーガルは一部の者以外の……自分の役に立たないオークも、同じようにここで虐げていたようだな。
「そうですね。ちょっと不気味な感じですね」
「ここはどちらかというと、貧民を強いられた種族がいる場所だからかもね。奥の連中もここがどうなろうと知ったことではない、ということでしょう」
覚えてないとはいえ、私の住んでた場所をこんな風に変えてしまったオーガルたちに改めて憤りを感じるけど、今はそのことは忘れておこう。
「トマレ! トマレィ!」
貧民街と言ってもいいような場所の奥の方には門があり、そこを守るようにして衛兵のオークが立ち塞がる。
「ココカラハエルガルムノエラバレタモノダケガハイレルバショダ! オーガルオウノキョカガナイモノハトオサン!」
「……」
「ど、どうされたっすか? ティファリス様」
「いや、何言ってるかよく聞き取れない」
今までこんな話し方をする連中とは会話してこなかったということもあってか、訛ってるような拙《つたな》いような話し方をするオークの言葉がどうにも頭に入ってこず、内容を理解するのに時間がかかる。
「ここはエルガルムの……他の国の言葉で申せば、貴族のような位の高い者だけが入れる場所で、オーガル王の怒りを買う前にどこかにいけ……そう申しておりますよ」
私のことを見かねたオウキが助け舟を出してくれた。
というか、やっぱり他の国には貴族なんてものがいるのね。わかってはいたけど、実際いるとわかると憂鬱になる。
貴族という生き物はワガママでプライドが高く、強欲で自分の保身しか考えない連中が多い。もちろん例外も存在する。だけどあいにくとハズレばかりを引いてきた部類だからか、そういうのがいると思うだけで頭が痛くなる。
「貴族ねぇ……」
「この地域は小国ばかりですから貴族という考えがあまり浸透しておりませぬし、見知らぬのも仕方のないことでしょう。ある程度国が大きくなりますと、報奨と称して土地を与える領主制度を設け、貴族として爵位を与え、管理を任せなければ目が行き届きかず問題が起こる可能性も大きくなります。
もっとも、その制度を悪用する者も少なからずおりますがね」
ふぅ……とため息つきながら解説してくれてるところを見ると、彼もそこらへんで苦労してるみたいだ。
「詳しい解説をありがとう。……で、そこのオークに話を戻すわよ。仕事に忠実なのはいいけど、少しは頭使いなさいな」
「? アタマ? ドウイウイミダ?」
「ほらそこ。あそこの鬼が引きずってるモノ、何が見える?」
「……?」
目を凝らすようにオウキの連行してるオーガルを見て、最初は何をさしているのかよくわかってなかった様子だったけど、段々と理解が追いついてきたのか驚きの顔になってきた。
「オーガルオウ……! オマエタチガヤッタノカ……!?」
「何を当たり前のことを聞いてるのよ」
というか、それぐらい確認しないでもわかってほしい。大体こんなところにゴブリンを大量に引き連れた集団が来ること自体おかしいと認識してもらいたいものだ。
「ソウカ……」
オークの衛兵は得心がいったと何度も頷いた後、私達に道をゆずるように扉からどいて、腕を組んで『勝手に通れ』と言わんばかりの態度を取った。
「門は守らなくていいのかしら」
「……オラハアタマヨクナイカラ、ムズカシイコトハワカラン。
ダカラ、オーガルオウガツカマッタンナラ、モウコノクニノオウジャナイ。
ナラ、メイレイヲキクヒツヨウハナイ。オラノシゴトハオワリダ」
「……ええと、オウキ?」
「オーガル王が敗北したのなら、エルガルムの王ではなくなった。もうその指示に従う必要はない。そう申しております」
短い言葉ならまだなんとかなるんだけど、長くなると意味がさっぱりわからない。オークの言語能力がこれが普通なら、なんとかしないといけないかもしれない。
エルガルムを支配するということは、オークも私の陣営に迎え入れるということだからね。
そこのところは今後の課題にしておいて、あのオークのなんとも薄情……いや、自分の基準に律儀といえばいいのかな?
まあいいや。通れるのであれば遠慮なく行こうじゃないか。
「それじゃ、通らせてもらうわよ」
「スキニスルガイイ。アタラシイオウ」
いつの間にやら王として認定された私は、ゴブリンたちを引き連れてこの悪趣味は建物がそびえ立つ区画に足を踏み入れた。
「ティファリス様、これからどうするっすか?」
「そうね。アシュル・ケットシー・ウルフェンで部隊を分けて、ここで贅を貪ってる連中を片っ端から連行するわよ。
私はある程度護衛を連れて城に向かうわ」
「だ、大丈夫ですかミャ? そんなことして……他の国にコネを持ってる方がいたら結構危ないことになるかもしれませんミャ」
「他国と繋がってるやつがいたらなおさら連れてきなさい。私の創る国に、愚か者は必要ないということをその性根に叩き込んで上げるから」
「ティファさま、これ以上離れるなんて私……不安です。私もお供します!」
「アシュル、気持ちはわかるけどこういうことは効率よくやって手早く終わらせるのが一番なのよ。
貴女が仕事をきちんとこなしたら、私のところに来ればいいわ」
「……はい!」
私に少数の護衛、残りの三人で部隊を分けて、行動を開始する。ちなみにオウキは私と共に行動することになった。オーガルを引き渡したからはいさようならというわけにはいかないからね。
もうしばらくは一緒にいるとのことだ。
「それではティファリス女王、参りましょうか」
「行くのはいいんだけど……ソレ、いつまでそうしてるの?」
ちらっと引きずられてズタボロになりかけてるオーガルを、思わずゴミでも見るかのように見下ろしてしまう。
ジークロンドは死なない程度に処置しておいて、今はオウキに背負ってもらってる。最初は若干嫌そうにしてたけど、私が少し圧力をかけてあげると喜んで引き受けてくれた。
そういうことを考えるとオーガルとの扱いが随分違ってて少しおかしい。四肢の無い気絶した狼を背負って、言葉もロクに喋れないほど拘束されてる豚を見ると、なんだか狩りから帰ってきた鬼のようにしか見えない。今日の夕食は豚の丸焼きか。
「いえ、ジークロンド王はまだしもオーガル王まで担ぐのはちょっと……」
「はぁ……まあいいわ。色々手伝ってもらってるし、あんまりボロボロにしないように気をつけてちょうだい。
今はアシュルがいないから、傷が酷くても治してあげられないからね」
「はい。承知しておりまする」
光属性くらい使うのはわけないんだけど、なんで闇属性と両方使えるんだ? って話になって面倒だから、回復魔導は全てアシュルに任せてある。
あの子が光属性の魔導を覚えてくれて本当に助かってる。あの子がいれば、それを隠れ蓑に私の魔導を使ったとしてもバレることはなさそうだ。
「それじゃみんな、行きましょうか。もうちょっとだから頑張ってね」
さあて、これからはゴミ掃除の時間だ。
腐敗の温床は全て綺麗に片付けないといけない。かなり冷酷なことだとも思うけど、王にはそういう面も求められる。
ここで取りこぼしあれば、それがどういうところで私達に不利益をもたらすかわかったものじゃない。
それにこれだけわけのわからない事になってる場所の再建なんて、リーティアスの国家予算だけじゃ絶対に無理。ここは今まで私腹を肥やしていた分、こっちに還元してもらわないといけないのだ。
……問題はそれすらもなかった時だけど、流石にそれはないと思う。
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