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483・手紙の行方
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すぐに返事が欲しい二人は熱心に私の事を見つめている。あんまりにも見てくるものだから、このままだと火が点いて燃えてしまいそうだ。安易に答えるのも簡単だけど……とかまた堂々巡りになる。そして考えた結果、ある一つの答えに行きついた。
「……この物理耐性のある兵器って、魔導への耐性はどうなってるの?」
「私達の魔導では何度か集中させてようやく……といったところですね。その間にも鉄の獣やダークエルフ族が襲い掛かってくるので、苦戦を強いられているのです」
だから魔導の得意な聖黒族にその硬い敵を排除してもらいたい……というわけか。そして猫人族はクーティノスに頭を悩まされている。逆をいえば、猫人族ならその鉄の亀みたいな兵器を倒すことも可能なはずで、鬼人族ならクーティノスに対して有利働くことが出来るだろう。つまり、互いに救援を送り合えば何とかなる状況のはずだ。
「ならばこうしましょう。鬼人族が苦戦している相手は魔導によって対処できる。つまり猫人族も十分に戦力になりうる。対して猫人族が苦戦している敵は鬼人族なら打ち倒せるでしょう。私も出来る限りはするけれど、多くの戦力を割くことは難しいでしょう。それなら互いに援軍を送り合って不利を覆えすこともたやすいはず。それでいい?」
私の条件に唖然とするように二人は互いに目を合わせていた。それもそうだろう。戦況を覆らせられる戦友がすぐ側にいたなんて思いもしなかったからだろう。こちらも欠けた戦力分を補う程度には援軍を送ってもらえるように働きかける。それがどこまで作用するかはわからない。それでも少なくとも無下にはされないだろう。私の功績を考えれば、多少は考慮してもらってもおかしくないしね。
「……こちらとしてはそれで我が祖国が救われるのであれば願ってもない事です」
「あたしもですにゃ。至急に本国に連絡して、上層部に報告し、判断を仰ぎますにゃ」
二人とも地面にめりこむんじゃないかってくらい下がっている頭を上げて欲しいけど、それはちょっと無理か。彼らにとっては自分達の国の危機なんだしね。
「よろしいのですか? 気軽に引き受けてしまって――」
心配そうな表情を浮かべているジュールの気持ちもよくわかる。確約できない事を約束して気苦労を背負う必要はない――そんな感じだ。
「大丈夫。二国とも友好的な関係を築いているから、多少は戦力を割いてくれるはず」
聖黒族というのは絶対強者でなければならない。彼らの要請に答えた結果、兵士が足りなくて落ちるような柔な国ではないという事だ。
「女王陛下なら必ず要請には答えてくれるでしょう。だから私達は今からお父様と女王陛下宛ての手紙を書くだけでいいって事」
別に私が直接行くわけじゃない。出来ればお願いしますっておねだりするというか……お願いするだけだ。それ以上の事を催促されてもそれは期待通りに応えられない。それも向こうはわかっているはずだ。
それにしても――
「せっかくの休日だけど……仕方ないか」
ようやく帰ってきたからゆっくりしたかったけれど、そんな風には言ってられない。友好国のピンチにのんびり羽を伸ばすなんて中々出来ないものだ。
「ティアちゃん、町に行くなら一緒に行くよ!」
多分私と一緒に行動したいのであろうファリスは嬉しそうに提案してきた。多分、手紙を書いたら出す為に町に行くと想像しているのだろう。彼女には残念ながら少し違う。
「今回は時間が掛かるからここで待っていてくれる?」
「え、ザインドに行くんじゃないの?」
「いいえ。目指すのはここに近い隣の領地の町よ」
ここは私達の敵である可能性が高いルーセイド領で迂闊な事はしたくない。幸い、身体強化の魔導を使って休まず走れば……休息も合わせれば二日くらいで十分だ。ここが他の領地の近くにあって良かった。そうじゃなかったらもう少し掛かっただろうしね。
「近い方が早く着くんじゃないの?」
「私からの女王様宛の手紙なんてルーセイド伯爵に検閲されてもおかしくないでしょう。出来れば他の領地で出したいの」
もちろんそれも絶対じゃない。だけどここで出すよりは可能性が下がる――はずだ。
そうとでも考えないと自分で直接持っていった方が確実だって結論に行きついてしまう。なんでも自分一人でやって失敗したら元も子もないし、あまりここを離れたくはない。使者の二人の話を聞いた後だと、一刻も早くこの拠点を攻略したい気持ちが強くなっているからだ。
クーティノスが存在する以上、鬼人族が戦っている兵器にも出くわす可能性が非常に高い。敵の本気度を考えたら聖黒族を制圧する事の方が重要だと思うからね。
手紙の内容を考えて、隣の領地まで全速力で走る為に動きやすい服に着替えて、そこから少し休んだ後引き返して――。
なんで後から後から色んな事が湧いてくるんだろう? もう少しダークエルフ族が大人しくしてくれてたら、私ものんびりする事が出来るんだけど……それは無理な話でしかない。今はひたすら戦うしかないのだろう。
……ああ、昔が恋しい。
「……この物理耐性のある兵器って、魔導への耐性はどうなってるの?」
「私達の魔導では何度か集中させてようやく……といったところですね。その間にも鉄の獣やダークエルフ族が襲い掛かってくるので、苦戦を強いられているのです」
だから魔導の得意な聖黒族にその硬い敵を排除してもらいたい……というわけか。そして猫人族はクーティノスに頭を悩まされている。逆をいえば、猫人族ならその鉄の亀みたいな兵器を倒すことも可能なはずで、鬼人族ならクーティノスに対して有利働くことが出来るだろう。つまり、互いに救援を送り合えば何とかなる状況のはずだ。
「ならばこうしましょう。鬼人族が苦戦している相手は魔導によって対処できる。つまり猫人族も十分に戦力になりうる。対して猫人族が苦戦している敵は鬼人族なら打ち倒せるでしょう。私も出来る限りはするけれど、多くの戦力を割くことは難しいでしょう。それなら互いに援軍を送り合って不利を覆えすこともたやすいはず。それでいい?」
私の条件に唖然とするように二人は互いに目を合わせていた。それもそうだろう。戦況を覆らせられる戦友がすぐ側にいたなんて思いもしなかったからだろう。こちらも欠けた戦力分を補う程度には援軍を送ってもらえるように働きかける。それがどこまで作用するかはわからない。それでも少なくとも無下にはされないだろう。私の功績を考えれば、多少は考慮してもらってもおかしくないしね。
「……こちらとしてはそれで我が祖国が救われるのであれば願ってもない事です」
「あたしもですにゃ。至急に本国に連絡して、上層部に報告し、判断を仰ぎますにゃ」
二人とも地面にめりこむんじゃないかってくらい下がっている頭を上げて欲しいけど、それはちょっと無理か。彼らにとっては自分達の国の危機なんだしね。
「よろしいのですか? 気軽に引き受けてしまって――」
心配そうな表情を浮かべているジュールの気持ちもよくわかる。確約できない事を約束して気苦労を背負う必要はない――そんな感じだ。
「大丈夫。二国とも友好的な関係を築いているから、多少は戦力を割いてくれるはず」
聖黒族というのは絶対強者でなければならない。彼らの要請に答えた結果、兵士が足りなくて落ちるような柔な国ではないという事だ。
「女王陛下なら必ず要請には答えてくれるでしょう。だから私達は今からお父様と女王陛下宛ての手紙を書くだけでいいって事」
別に私が直接行くわけじゃない。出来ればお願いしますっておねだりするというか……お願いするだけだ。それ以上の事を催促されてもそれは期待通りに応えられない。それも向こうはわかっているはずだ。
それにしても――
「せっかくの休日だけど……仕方ないか」
ようやく帰ってきたからゆっくりしたかったけれど、そんな風には言ってられない。友好国のピンチにのんびり羽を伸ばすなんて中々出来ないものだ。
「ティアちゃん、町に行くなら一緒に行くよ!」
多分私と一緒に行動したいのであろうファリスは嬉しそうに提案してきた。多分、手紙を書いたら出す為に町に行くと想像しているのだろう。彼女には残念ながら少し違う。
「今回は時間が掛かるからここで待っていてくれる?」
「え、ザインドに行くんじゃないの?」
「いいえ。目指すのはここに近い隣の領地の町よ」
ここは私達の敵である可能性が高いルーセイド領で迂闊な事はしたくない。幸い、身体強化の魔導を使って休まず走れば……休息も合わせれば二日くらいで十分だ。ここが他の領地の近くにあって良かった。そうじゃなかったらもう少し掛かっただろうしね。
「近い方が早く着くんじゃないの?」
「私からの女王様宛の手紙なんてルーセイド伯爵に検閲されてもおかしくないでしょう。出来れば他の領地で出したいの」
もちろんそれも絶対じゃない。だけどここで出すよりは可能性が下がる――はずだ。
そうとでも考えないと自分で直接持っていった方が確実だって結論に行きついてしまう。なんでも自分一人でやって失敗したら元も子もないし、あまりここを離れたくはない。使者の二人の話を聞いた後だと、一刻も早くこの拠点を攻略したい気持ちが強くなっているからだ。
クーティノスが存在する以上、鬼人族が戦っている兵器にも出くわす可能性が非常に高い。敵の本気度を考えたら聖黒族を制圧する事の方が重要だと思うからね。
手紙の内容を考えて、隣の領地まで全速力で走る為に動きやすい服に着替えて、そこから少し休んだ後引き返して――。
なんで後から後から色んな事が湧いてくるんだろう? もう少しダークエルフ族が大人しくしてくれてたら、私ものんびりする事が出来るんだけど……それは無理な話でしかない。今はひたすら戦うしかないのだろう。
……ああ、昔が恋しい。
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