502 / 676
502・行動開始(ファリスside)
しおりを挟む
数日の足止めを強いられていたファリスは我慢の限界を迎えていた。これ以上こんなところでじっとしていられるか。何の為にわざわざここまで来たんだと声を大にして言いたくなる気持ちを抑えるのも無理だった。
それでもなんとかルォーグにそれを知らせるだけの自制心があった為、今割り当てられた作戦室で話し合っていた。
「わたし達はね、ここで適当に過ごす為に来たわけじゃない。そうでしょう?」
いつにも増して強い剣幕で訴えかけるファリスにルォーグは若干気圧されていた。それもそうだ。本気になれば彼が彼女を止める事は出来ない。ルォーグ自身が一番実力差を理解できていたのだから。
「しかし、現地国の上層部に逆らうのはあまり得策では――」
「なら今敗走してるっていう王子の命は? どうでもいいっていうの?」
詰め寄るファリスの言葉にルォーグは喉に何か詰まったような顔をして押し黙る。どうでも良いわけがない。それは彼もよくわかっている事だった。
「確かにここでえっと――」
「シャニル様です」
「そう、それの言う事を聞いてここにずっといたら王子は死ぬかもしれないんだよ? もしそうなったら、間違いなくティリアースとシルケットの問題になると思うんだけど」
いくらシャニルが言ったからといっても王子を見殺しにする選択をしたことには変わらない。底意地の悪い連中からそこを突かれるのは当然の事だった。多少理不尽でもごり押す。それが彼らという生き物だ。
「しかし、ここで現場の判断を誤れば間違いなく批判の的になるかと」
「そう。だから私一人だけで行けばいいでしょう。もう面倒だし」
(やっぱり私は軍を率いるよりも一人でがんがん進んで倒した方が性に合ってるんだよね。ティアちゃんもそういうのわかってるだろうし……面倒くさいから動いてもいいと思う)
最初から単独行動が得意なファリスにとって、彼らと行動を共にする事自体が難しい。大体一人か二人と行動するくらいが丁度良いくらいまである彼女にとって、軍というのはどうにも行動を遅く感じてしまうのだ。
「……わかりました」
しばらくの間根競べをした結果。ルォーグの方から折れてしまった。最初からファリスが制御不能な事を理解していたという事もあるが、それ以上にこのままここでくすぶっているよりもずっとマシだと判断したからだろう。
ルォーグの了承の言葉を引き出したファリスは、やや満足気な表情を浮かべていた。
「ただし、一つだけ」
「……なに?」
「くれぐれも無茶はしないでください。貴女の帰りを待っている方がいらっしゃるのです。ベルン王子も大切ですが、エールティア様にとってはファリス様も同じように大切なのだと。それだけは覚えておいてください」
真剣な表情で無茶をするなと言うルォーグに対し、ファリスは頷いて答える。
「当たり前じゃない。わたしだってまだ死にたくないもの」
軽い口調で答えたファリスは、そのまま作戦室から出て駐屯基地を離れる。すぐ近くにルドールに滞在している兵士達がいる以上、あまり人目に付きすぎると行動を起こすことが出来なかったからだ。
なるべく城壁に沿うように町を歩き、周囲の様子を探る。
「【シックスセンシズ】」
自らの感覚を研ぎ澄ませる魔導を発動させ、周囲の存在に対し鋭敏に反応できるように強化する。
ファリスはエールティアのように地図を呼び出す魔導を扱えないし、上手くイメージする事は出来ない。だが、相手の敵意を察知する事――『感覚』を強化する事くらいならば、戦闘の役にも立つからとイメージしやすかったのだ。
自らの後を付けている者や視線を向けている者を慎重にあぶり出し、細かい路地に入ったり適当な場所を走ったりと尾行相手が嫌うような移動を繰り返してなんとか数人程いた監視者を撒くことに成功した。それでも彼女が城壁近くをうろついていると知ればすぐさま戻ってくるだろう。その前に動くために高い壁と高いところに屋根がある建物に目星を付ける。
「……よし」
自分の納得の出来る場所を見つけたファリスは、気合を入れるように一言呟いた。
「【ハイジャンプ】」
自らが大きく跳躍するイメージで発動した魔導によって、壁に向かって跳んだファリスは、壁に足が触れると同時に再び【ハイジャンプ】を唱えて壁を蹴って更に高く、建物に向けて跳躍する。そして建物から同じ魔導を駆使して壁へ。そうして次々と足場を使って城壁を超える。
「【フロート】」
地面に落下する前に魔法として存在する【フロート】の効果をより高める為、イメージして魔導として発動させる。急速に落ちていたファリスは、魔導が発動すると同時に身体への負荷が緩やかになっていく事を感じ、最終的に地面から少し浮いた状態になる。元々は水たまりや底なし沼などの上を通る程度の魔法でしかなかったが、上手く緩衝材的な役割を果たしたようだった。
こうして、ファリスは上手く監視者を撒いて外に出る事に成功した。全てはエールティアの為に。それ以外の理由は必要なかった。
それでもなんとかルォーグにそれを知らせるだけの自制心があった為、今割り当てられた作戦室で話し合っていた。
「わたし達はね、ここで適当に過ごす為に来たわけじゃない。そうでしょう?」
いつにも増して強い剣幕で訴えかけるファリスにルォーグは若干気圧されていた。それもそうだ。本気になれば彼が彼女を止める事は出来ない。ルォーグ自身が一番実力差を理解できていたのだから。
「しかし、現地国の上層部に逆らうのはあまり得策では――」
「なら今敗走してるっていう王子の命は? どうでもいいっていうの?」
詰め寄るファリスの言葉にルォーグは喉に何か詰まったような顔をして押し黙る。どうでも良いわけがない。それは彼もよくわかっている事だった。
「確かにここでえっと――」
「シャニル様です」
「そう、それの言う事を聞いてここにずっといたら王子は死ぬかもしれないんだよ? もしそうなったら、間違いなくティリアースとシルケットの問題になると思うんだけど」
いくらシャニルが言ったからといっても王子を見殺しにする選択をしたことには変わらない。底意地の悪い連中からそこを突かれるのは当然の事だった。多少理不尽でもごり押す。それが彼らという生き物だ。
「しかし、ここで現場の判断を誤れば間違いなく批判の的になるかと」
「そう。だから私一人だけで行けばいいでしょう。もう面倒だし」
(やっぱり私は軍を率いるよりも一人でがんがん進んで倒した方が性に合ってるんだよね。ティアちゃんもそういうのわかってるだろうし……面倒くさいから動いてもいいと思う)
最初から単独行動が得意なファリスにとって、彼らと行動を共にする事自体が難しい。大体一人か二人と行動するくらいが丁度良いくらいまである彼女にとって、軍というのはどうにも行動を遅く感じてしまうのだ。
「……わかりました」
しばらくの間根競べをした結果。ルォーグの方から折れてしまった。最初からファリスが制御不能な事を理解していたという事もあるが、それ以上にこのままここでくすぶっているよりもずっとマシだと判断したからだろう。
ルォーグの了承の言葉を引き出したファリスは、やや満足気な表情を浮かべていた。
「ただし、一つだけ」
「……なに?」
「くれぐれも無茶はしないでください。貴女の帰りを待っている方がいらっしゃるのです。ベルン王子も大切ですが、エールティア様にとってはファリス様も同じように大切なのだと。それだけは覚えておいてください」
真剣な表情で無茶をするなと言うルォーグに対し、ファリスは頷いて答える。
「当たり前じゃない。わたしだってまだ死にたくないもの」
軽い口調で答えたファリスは、そのまま作戦室から出て駐屯基地を離れる。すぐ近くにルドールに滞在している兵士達がいる以上、あまり人目に付きすぎると行動を起こすことが出来なかったからだ。
なるべく城壁に沿うように町を歩き、周囲の様子を探る。
「【シックスセンシズ】」
自らの感覚を研ぎ澄ませる魔導を発動させ、周囲の存在に対し鋭敏に反応できるように強化する。
ファリスはエールティアのように地図を呼び出す魔導を扱えないし、上手くイメージする事は出来ない。だが、相手の敵意を察知する事――『感覚』を強化する事くらいならば、戦闘の役にも立つからとイメージしやすかったのだ。
自らの後を付けている者や視線を向けている者を慎重にあぶり出し、細かい路地に入ったり適当な場所を走ったりと尾行相手が嫌うような移動を繰り返してなんとか数人程いた監視者を撒くことに成功した。それでも彼女が城壁近くをうろついていると知ればすぐさま戻ってくるだろう。その前に動くために高い壁と高いところに屋根がある建物に目星を付ける。
「……よし」
自分の納得の出来る場所を見つけたファリスは、気合を入れるように一言呟いた。
「【ハイジャンプ】」
自らが大きく跳躍するイメージで発動した魔導によって、壁に向かって跳んだファリスは、壁に足が触れると同時に再び【ハイジャンプ】を唱えて壁を蹴って更に高く、建物に向けて跳躍する。そして建物から同じ魔導を駆使して壁へ。そうして次々と足場を使って城壁を超える。
「【フロート】」
地面に落下する前に魔法として存在する【フロート】の効果をより高める為、イメージして魔導として発動させる。急速に落ちていたファリスは、魔導が発動すると同時に身体への負荷が緩やかになっていく事を感じ、最終的に地面から少し浮いた状態になる。元々は水たまりや底なし沼などの上を通る程度の魔法でしかなかったが、上手く緩衝材的な役割を果たしたようだった。
こうして、ファリスは上手く監視者を撒いて外に出る事に成功した。全てはエールティアの為に。それ以外の理由は必要なかった。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる