君と跳んだ未来の約束

らいむ

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第8話:タイムラインの裂け目

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佐藤涼太は、2015年の大学寮の部屋で、透明なカードデバイスを握りしめていた。ホログラムの光が部屋を照らし、「タイムラインに微細な変動が発生。確認しますか?」のメッセージに「はい」をタップした瞬間、目の前に映像が広がった。桜の花びらが舞う静かな部屋に、2045年の断片が映し出される。


映像は、2045年の新宿。だが、以前見た高層ビル街のマンションではない。雑然としたオフィスだ。デスクには透明なタブレットが山積みで、壁には「データキュレーター協会」のロゴ。49歳の佐藤涼太が、疲れた顔でタブレットを操作している。美咲の姿はない。結婚指輪もない。

「…また、独身の俺か?」

映像の中の涼太が、ふと手を止めて呟く。

「美咲…あの時、もっと話せばよかった…」

その言葉に、涼太の胸が締め付けられる。美咲との幸せな未来は? 告白して、付き合い始めたのに、なぜまた孤独な未来が?

映像が揺れ、別のシーンに切り替わる。今度はカフェだ。49歳の涼太と美咲が、向かい合って座っている。美咲は落ち着いた雰囲気の女性になり、微笑んでいる。だが、どこかよそよそしい。涼太が話しかける。

「美咲、最近、忙しい? なんか、昔みたいに話せなくなったな」

美咲が目を伏せる。「うん、ごめんね、涼太。仕事も、家庭も…いろいろあって」

「家庭?」映像の涼太が眉をひそめる。「お前、結婚したんだっけ?」

美咲が小さく頷く。「うん…涼太とは、友達のままでよかったよね」

映像がノイズで乱れ、途切れた。デバイスから低い警告音が響き、ホログラムが消える。

「待て、なんだよ! 美咲が…他の誰かと結婚!?」

涼太はデバイスを握り潰しそうになる。過去を確定したはずなのに、なぜ美咲との未来が消えた? いや、さっきの映像は、結婚した未来と孤独な未来の両方があった。タイムラインが不安定って、そういうことか? 過去の変更が、複数の未来を生んでる?

頭が混乱する中、窓の外でまたあの幻覚が見えた。スーツ姿の29歳の自分。疲れた目で、じっとこちらを見つめている。

「お前…何を言いたいんだよ!」

涼太が叫ぶと、幻覚が口を開いた。声はないのに、言葉が頭に直接響く。

「選択には代償がある。全てを変えようとすると、全てを失う」

幻覚が消え、部屋が静寂に包まれる。涼太は息を荒くしながら、デバイスを見つめた。代償? 全てを失う? そんなの、受け入れられるか!

その時、寮のドアが乱暴にノックされた。

「涼太! いるんだろ、開けろ!」

亮平の声だ。急いでドアを開けると、亮平が焦った顔で立っていた。

「涼太、お前、大丈夫か? 美咲が…なんか、急にサークル辞めるって言い出したぞ!」

「は!? 辞める? なんで!?」

亮平が肩をすくめる。「わかんねえけど、さっき話してたら、『涼太と一緒にいると、なんか変な感じがする』って。告白してから、急にお前が変わったって思ってるみたいだ」

涼太の心臓が冷たくなる。美咲の不安げな目、昨夜のあの距離感。過去を再修正したせいで、美咲の心が離れ始めてる?

「亮平、どこだ? 美咲、今どこにいる!?」

「駅前のカフェにいるって。ほら、行って話してこいよ!」

涼太はデバイスをポケットに突っ込み、部屋を飛び出した。桜並木を駆け抜け、駅前のカフェへ向かう。息が切れる中、頭では映像の美咲の言葉が響く。「涼太とは、友達のままでよかったよね」。そんな未来、絶対嫌だ!

カフェに着くと、美咲は窓際の席でコーヒーを飲んでいた。涼太を見るなり、目を逸らす。

「美咲、話したい。亮平から聞いた。サークル辞めるって…本当か?」

美咲は小さく頷く。「うん…ごめん、涼太。なんか、最近、頭整理したくて。涼太と付き合って、嬉しいんだけど…なんか、違和感が拭えないの」

「違和感? 俺、何かしたか?」

「わかんない。涼太が…まるで、別の誰かみたいな時がある。急に真剣になったり、独り言言ったり」

涼太は言葉に詰まる。タイムリープのせいだ。

美咲の言葉を遮るように、ポケットのデバイスが突然光った。モニターが現れ、青い光がカフェを照らす。

「警告:タイムラインの崩壊が進行中。直ちに選択してください。過去を再修正する? 未来にジャンプする?」

カウントダウンが始まる。10、9、8…。

「こんな時に…!」

美咲が驚いた顔で振り返る。「涼太? 何?」

涼太の心は乱れる。美咲の離れゆく心、崩れるタイムライン。選択は、運命をどう変えるのか――。
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