君と跳んだ未来の約束

らいむ

文字の大きさ
14 / 17

第14話:二人の涼太

しおりを挟む
佐藤涼太は、2045年の時間管理局のコア部屋で、輝く修復装置の前に立っていた。球体が青白く脈動し、ホログラムスクリーンには「最終確認:タイムラインを固定しますか? 代償:一部の記憶が永久に失われます」と表示されている。美咲が涼太の手を握り、エージェント・クロノのデジタル時計のような瞳が静かに二人を見据える。崩壊率は40%まで下がったが、部屋の空気はそわそわする緊張で張り詰めている。

「涼太…君なら、きっと…!」美咲の声が、希望の光のように響く。

涼太は彼女の手を握り返し、モニターを見つめた。記憶の喪失という代償が怖い。2015年の桜並木、告白の瞬間、美咲の笑顔。それが消えるかもしれない。だが、このままではタイムラインが崩壊する。

「クロノ、これ、ほんとに直るんだな?」

クロノが頷く。「修復装置はあなたの意志で動きます。涼太様の選択が、タイムラインを一つに固定します。ですが、代償は避けられません。準備はできていますか?」

カウントダウンが進む。10、9、8…。

美咲が涼太の肩にそっと触れる。「涼太、私、信じてるよ。どんな未来でも、君と一緒なら、きっとキラキラしてる!」

その笑顔に、涼太の心が決まる。「美咲…ありがとな。よし、やる!」

涼太は「タイムラインを固定する」をタップした。瞬間、修復装置が爆発的な光を放ち、部屋が震える。ホログラムスクリーンに映像が乱れ、2015年のキャンパス、2025年のアパート、2045年の新宿が混ざり合う。崩壊率が急降下する。「30%…20%…」

だが、突然、部屋の隅から低い声が響いた。

「…待て、涼太」

涼太と美咲がハッと振り返る。そこに、男が立っていた。ボロボロのスーツ、疲れた目、だがどこか涼太に似た顔。49歳の佐藤涼太だ。影や気配ではなく、はっきりと姿を現している。

「涼太!? あ、誰!?」美咲が驚き、涼太の腕にしがみつく。

涼太の心臓がバクバクする。「お前…俺だろ? なんでここに!?」

クロノが冷静に言う。「彼は、別のタイムラインのあなたです。修復の過程で、並行する存在が一時的に顕現しました。危険ではありませんが…彼の言葉に注意してください」

49歳の涼太が一歩近づく。声は掠れているが、どこか切実だ。「涼太、修復を進めるな。タイムラインを固定したら、お前の記憶――美咲との時間は、ほとんど消える」

涼太が息を呑む。「ほとんど消える!? クロノ、なんだよ、それ!」

クロノの瞳が光る。「彼の言う通り、代償は大きい可能性があります。タイムラインを一つにするには、複数の可能性を切り捨てる必要があります。あなたと美咲様の2015年の記憶は、大きく変形するかもしれません」

美咲が震える声で言う。「涼太…私、君との思い出、なくしたくないよ。桜並木、告白してくれたこと…全部、大事だよ」

涼太は美咲の手を強く握る。「俺もだ、美咲。絶対、守る」

49歳の涼太が苦笑する。「お前、俺も昔はそう思ってた。美咲を守りたくて、過去を変えた。でも…結局、こうなった」

彼が指したスーツは、2045年の光沢ある服とは違い、くたびれている。まるで、希望を失った未来の証だ。

「クロノ! 何か方法はないのか? 記憶を残して、タイムラインを直す方法は!」

クロノがホログラムスクリーンを操作。「可能性は一つあります。修復装置に、あなたと美咲様の『絆』を接続してください。それが、記憶の喪失を最小限に抑える鍵です」

「絆?」美咲が目を丸くする。「それ、なんかロマンチック! 涼太、どうやるの?」

クロノが球体に手を触れ、二人にデバイスを渡す。「このデバイスに、あなた方の最も強い記憶を入力してください。2015年の特定の瞬間、感情。それが、タイムラインのアンカーになります」

涼太と美咲が顔を見合わせる。涼太が呟く。「桜並木…あの告白の夜だ」

美咲が頷く。「うん、私もそれ! 涼太が、めっちゃ真剣な顔で言ってくれた夜!」

49歳の涼太が小さく笑う。「…いいな、お前たち。俺も、あの夜を覚えてる」

涼太はデバイスを握り、目を閉じる。美咲の笑顔、桜の花びら、夜風の匂い。心から呼び起こす。美咲もデバイスを握り、同じ記憶を思い浮かべる。

修復装置が再び光り、スクリーンに「崩壊率:10%…5%…」と表示。部屋が震え、49歳の涼太の姿が薄れる。

「涼太…頑張れよ」彼の声が遠ざかる。

クロノが言う。「成功率:95%。アンカー記憶の接続に成功。最終統合フェーズへ」

だが、突然、モニターが点滅し、新たなメッセージ。

「警告:外部干渉を検知。修復を続行? 中断?」

カウントダウンが始まる。10、9、8…。

「外部干渉!? 何だよ、それ!?」涼太が叫ぶ。

美咲が手を握りしめる。「涼太、続けて! 私たちの思い出、絶対守ろう!」

クロノの瞳が鋭く光る。「選択してください。タイムラインは今、決まります」

そわそわする緊張が部屋を包む。涼太の選択が、未来を――美咲との絆を――どう変えるのか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...