奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
5 / 49

魔導書

しおりを挟む
 ──転生から2週間が経過した

 ここのところ俺は剣をふりつづけている。
 ほかに戦うチカラを知らないからだ。

 日に数時間、毎日のように剣をふる。
 すこしずつ新しい体にも慣れてきている。
 奴隷、雑用係だったころにくらべて、日々の生活はおどろくほど″楽″だ。

 苦しい事があるとすれば早起きである。
 俺の親父であるウィリアムは、息子の俺といっしょに朝練をしたがるのだ。

 今まで知らなかったが、彼は息子──俺──が大好きでしかたないらしい。
 いや、母親も妹もたいがい、俺のことを異常なくらい構ってくる子思い、兄思いだが。

「よし、今日も元気出していくか」

 朝練のため早起きする。

「……ん? なんだこれ」

 頬をたたいて気合をいれてると、俺の枕元に一冊の本が置いてあることに気がついた。

「まさか本か? はじめ見たな……」

 金持ち貴族の家にしかない、まぼろしの物品にして人類の叡智が刻まれし物。
 吟遊詩人がたまに街で語っていると、彼らの歌のなかには、よく古代の魔法が書かれた伝説の魔導書とかが出てくるものだった。

 本当に本が存在するとは。
 これは驚きだ。

「おはよう~、ヘンドリック~」

 ラテナがぐっと翼をのばして、止まり木から枕元におりてくる。

「あ、気がついたー? それは私からのプレゼントですよ。こほんこほん、寝起きなので声が……んっん。それは、いわゆる魔導書です」
「これが歌に聞く魔導書なのか」
「そうですよ、凄いでしょう? 残された女神パワーをつかって頑張って探したんですから、大事につかってくださいね」

 最高だ。
 うちのラテナはやっぱり最高だ。

 すこし前に策があるとか言ってから、夜中こそこそ抜け出しているのは知っていたが、これを探すためだったのか。

「ありがとな、ラテナ。大好きだぞ!」

 俺が頭を撫でてあげようとすると、彼女は急に女神形態へフォルムチェンジした。

 何事かと撫でるための手をとめる。
 いきなり変身したのでこわかった。
 
 すると彼女は「や、辞めちゃうんですか?」と向こうから赤髪をくっつけてきた。

 俺は苦笑いしながら、頭を撫でてあげた。

「ふくふくっ、やったあー!」

 ラテナは実に気持ちよさそうに、さらさらな赤髪を差し出してくれた。
 女神になっても、俺の相棒は昔とおなじように、なでなでが大好きらしい。

 さてさて、それじゃ魔術の勉強を始めようじゃないか。


 ──転生から1ヶ月が経過した

 
 7歳である俺の1日のスケジュールは基本的にすべてがフリータイムだ。

 せいぜい、朝ごはん、昼ごはん、夕ごはんの時間と父との剣の稽古の時間が決まっているくらいで、他にやる事はたいしてない。

 ──朝早い時間

 俺はラテナといっしょに、郵便受けを確認しにいく。

 ウィリアムが当主の浮雲家はとても裕福なので、週にいっかい″新聞″が届く。
 
 これは世の中の出来事を把握するのに、とても役立つ貴族のツールだ。

 兵舎にいた頃は上級騎士以上しか読ませてもらえなかったので、雑用係の俺にとってはずっと読みたかった物のひとつだ。

 郵便受けで立ち読みする。
 大見出しにはなにやら隣国との情勢がかかれていた。

「アルカマジ魔術王国と通常通商条約締結?    アルカマジと、か」

 俺はラテナのほうを見る。

「ようやくと言ったところですね。騎士王国と魔術王国は数年前まで、小競り合いが続いていましたから、これで平和になるといいです」
「通商が通常化ってことは、むこうの魔術がはいってくるのか?」
「そうでしょうね。まあ、魔術師は″世代を重ねる必要がある″ので、アライアンス産の魔術師がすぐに出てくるとは思いませんが。魔導具や魔導書のたぐいは今までより手に入れやすくなるかもしれないですね」
「ふーん」

 世の中、変わっていくんだな。
 アライアンス騎士王国は圧倒的な武力で侵略を繰りかえしてきたが、ついに話し合いをする時代が来たということだろうか。

「まあこれくらいかな」
「不死鳥騎士団のことは載ってなかったですね」
「ああ。期待してはなかったけど、残念だ」

 俺の死など公にはされない。
 わかってはいてもやるせない。
 
「……今はただ頑張ろう」

 俺は新聞を折りたたんで、屋敷のなかへもどった。


 ─────────────
          ──────────

 日々行っなている庭での父との訓練。
 木剣同士が激しく打ち鳴らされた,

「てぃやあ!」
「ストップ。──よし、ヘンリー、今日はこれくらいにしておこう」

 本日の剣の稽古がようやく終わった。
 実践形式の乱取り稽古をしたわけだが、さすがにウィリアムは強すぎる。
 
 子どもの体ではいろいろ無理があるのはわかっているが、もし俺が前世の身体でやっても瞬殺されていることだろう。

 上級騎士の実力をわからせられた気分だ。

「はあ、はあ、腕が動かない…。アイガスターは、もっと強いのか? ウィリアムと同等くらいだとは信じたいな……ふぅ」

 接近戦は絶望的かもしれない。

 俺は息を整えて深呼吸をする。
 ウィリアムはタオルで額の汗をぬぐって話しかけてきた。

「大したもんだな。蘇ってからのお前めちゃくちゃ強くなってて驚いたぞ。大人のフィジカルで来られたらヒヤッとする場面もたくさんあった。秘密の特訓でもしてるのか?」
「はは……そうですかね。父さんの指導がいいだけですよ。今日も1日ありがとうございました」

 木剣を訓練用武器ラックへしまって、俺は足早に屋敷のなかへともどった。
 帰り際ウィリアムは「やはり、うちの子は天才か……」と、ぶつくさとつぶやいた。


 ──しばらく後

 
 稽古がおわり部屋にもどって来た。

 自室ベッド下から魔導書とエーテル語の教本をひっぱりだして言葉の勉強をはじめた。

 エーテル語は貴族たちが書類のやり取りで使っている″文字″のことで、紙に記録されている情報はこれがないと解読できない。

 この2週間まじめにエーテル語の勉強に取り組んできたおかげで、ようやくひとつ目の魔術の詠唱と、その符号的魔術式について理解できそうなところまでやってきている。

 さあ。
 記念すべき第一の魔術を習得しよう。

「《ホット》──物をあたたかくする魔術」

 理解した魔術は、いかにも初級らしいかわいらしいものだった。
 
 最初はこんなものだろう。
 いずれはおとぎ話の魔法使いみたいに、火炎の球とか飛ばしてみたいが、まだ我慢だ。

「不死鳥、炎熱……よし、いける」

 俺は読めるようになった詠唱を練習したあとに、唱えてみることにした。

 対象はキッチンからもってきたコップだ。
 両手でつつみこんで唱える。

「不死鳥の魂よ、
  炎熱の力を与えたまへ──《ホット》」

 体のなかから力が抜けていくような気がした。兵舎での訓練あとの虚脱感に似ている。
 激しい訓練をしたあとは決まって、泥のうえでも眠りたくなるものだった。

 これが魔力をつかった感覚か。

「むむ、すこしぬくいな」
「お兄ちゃーん、あそぼー!」

 ちょうどいいところに俺の妹のセレーナが部屋へ入ってきた。

 父親と同じオレンジ色の瞳。
 母親によくにた艶やかな黒髪。
 短髪短パン半袖と元気そうな格好の、俺の自慢の妹であり、浮雲家の長女である。

 せっかくなので、彼女に俺の魔術を確かめてもらうことにする。

「このコップ持ってみて、レナ」
「わあ、ぬくぬくしてて温かーい!」
「やっぱりそう思うか?」
「お日様にあててたからあったかいのー?」

 セレーナはベッドに腰掛ける俺のよこにピタッと体をよせてすわった。

 頭を撫でてあげると嬉しそうに破顔する。
 なんなんだろう、この可愛い生物は。
 うちのラテナと良い勝負をする。

「実は兄ちゃんの魔術なんだ、これ」
「えー!? お兄ちゃんって魔術がつかえたのー?!」
「たくさん勉強したからな」

 俺はそう言って、セレーナの持つコップをちいさな手のひらのうえから包んで、もう一度同じ《ホット》の魔術をつかった。

 じんわり温かさが生まれて、ポカポカとコップが温まる。

「えぇえ! お兄ちゃんすごいっ! どうやったのー!?」

 セレーナは大興奮で「教えて教えて!」と俺の服をひっぱってくる。

 魔導書を手に持ち「全部書いてあるよ」と教えてあげた。
 すると今度は「お兄ちゃん、字が読めるのー?!」とさらにびっくりされてしまった。

 何言っても全力で驚いてくれるのは、なんとも嬉しいものだ。

「レナも6歳だもんな。勉強すれば絶対に文字が読めるようになると思うよ」
「わたしも魔術つかえるかなー?」
「俺に出来たんだ。絶対できるさ」

 俺の言葉にセレーナは大喜びだった。
 嬉しそうな妹の顔を見ていると、それだけでこっちまで幸せな気持ちになれる。

「それじゃ、いっしょに勉強するか。学びの事ならウィリアム様も許してくれるだろう」

 この日より、俺はセレーナとともに、順風満帆な兄妹の時間を過ごしはじめた。

 














しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

処理中です...