Sランクパーティを追放された雑用係、実は世界最強の【剣豪】だったのを思い出したから異世界無双する

ファンタスティック小説家

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旅は道連れ

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 のどかな太陽が心地よい4月。

 街道の外れを行く影がある。

「わふゥ」
「二人きりだな」

 サムスとルゥだ。

 彼らがこれから向かうチタン村は、南へ3日間歩かないと着かない。

「わふゥ」
「のんびり行こう」

 サムスは口ではこう言ってるが、実際は早くチタン村に行きたくて仕方がない。

 だが、サムスにはお金がなかった。
 本当なら馬でも買っていきたいところだが、そんなお金はない。

 また、チタン村へ向かう馬車を探してもひとつも見つけられないと来た。

 ともすれば、歩くしかない。

 サムスは打算的に道をいく馬車の一台でも、道中で捕まえられるだろうと考えていた。

 が、なかなか都合の良い馬車は捕まえられなかった。

 無計画な旅の1日目はこうして、ただひたすらに歩き、地道な進捗でおわった。

 ──夜

 サムスはひとりでテントの準備をし、焚き火を焚く。

 そうして気がついた。

「ひとりは無謀だったか……」

 サムスはあたりを見渡して、まっくらな世界から魔物が飛び出してこないか警戒する。

 幸いにもまだ街道近くの草原なので、まだ魔物が襲ってくるような気配はない。

「やれやれ」

 サムスはため息をついた。

「わふゥ」
「お前では、番犬にならないしな……ん?」

 サムスが自分の無計画さを嘆いて、ルゥを撫でくりまわしていると、車輪の音が聞こえてきた。

 どうやら馬車が来たようだ。

「あのー!すみませんそこの方!」

 サムスは腰の刀に手を添えながら止まった馬車に近づく。夜盗なら即座に斬り捨てる。

「なんだ」

 サムスは険しい顔で問う。

 カーボンシティ方面からやってきた、その馬車には4人の冒険者が徒歩で付いていた。

 状況から察すると、冒険者に護衛されている馬車と、その御者らしい。

 青い瞳の爽やかな青年が一歩進み出てくる。

「少しでも距離を稼ごうと強行しようとしたら、こんな遅くなっちゃいまして、よかったら、夜営に混ぜてもらっでいいですか?」

 青年は謙虚に頭をさげた。

 サムスは第一印象として、彼らが『クロガネ隊』のような冒険者ではない事と判断した。

 サムスは馬車のほうへ顔をむける。

 馬車の近くでは、心配そうな少女たちが、サムスと青年の交渉を見守っていた。

「構わない」

 サムスは快諾して、彼らを受けいれた。

「やった、ありがとうございます! ──お前たち夜営地を共有してくれるってさ」

「やったね、さすがはアンガスくーん♪」
「はあ……ケチな人だったらどうしようかと思ったぁ~…」
「我らの目に狂いはなかったな。さあ、依頼人、馬車をあちらに止めましょうかな」

 青年の仲間たちは安心した様子だ。

「遅れまして自己紹介を、俺の名前はアンガスです。『闇夜やみよからす』のパーティリーダーやってます」

 爽やかな青年は一足先に、サムスへ自己紹介した。

 サムスは『闇夜の鴉』という名前に聞き覚えがあった。

(オーガ級冒険者パーティ。カーボンシティでも5番目か6番目に優秀だとか言う上位パーティだな)

「サムスだ」

 サムスは青年よりはやく左手をだして、握手をかわした。

「あの、ひとりですか……?」

「……まあな」

「ッ、もしかして……その、お仲間がやられた、とか」

「いや…違う。ちょっと先を急ぎ過ぎてて…」

 サムスは歯切れ悪く言葉をつなぐ。

 青年は何か察したように「そ、そういう事もありますよね!」と愉快に笑い飛ばした。

(無能だと思われたな……)

 サムスは本来、非常に優秀な冒険者だ。

 ひとりで『クロガネ隊』の全雑務から、戦闘アドバイスまでこなしていた事から、そのことは明らかである。

 これは無能と言われ続け、やっけになって能力を磨いた結果だ。

 ゆえに、サムスはこうした普通ならしないミスで無能の烙印を押されるのが耐えがたかった。

「コソコソ(ちょっと抜けてる人だけど…良い人そうだ…)」
「コソコソ(あの人、なんか凄い悔しそうな顔してない?)」

 サムスは焚き火の世話をしながら、聞こえてくるそんな会話にため息をもらした。


 ──しばらく後

「よし、もう少し煮込めば完成だ」

 アンガスは焚き火でシチューを作りながら言った。

 彼がそうしてる間に『闇夜の鴉』のメンバーが順番に自己紹介をサムスへしていった。

「あたしはピジョット。魔術師として後方火力支援を担当してるよ。ちなみに最年少の美少女魔術師で売ってるよ! よろしくぅ!」
 
 赤いカチューシャをした快活な少女はそういって、サムスへ愛らしくウィンクした。

「わたしはセーラです…。弓矢で…いろいろします。短い間ですが、よろしくですぅ…」

 金色の髪が美しいエルフの少女は、恥ずかしそうにそう言った。

「我の名はバッグズ。筋肉だ」

 身長195cmは下らない巨漢はそう言って微笑む。

「僕はリットンです。スケジュール管理をあやまって、急遽アイアン村に行かないといけなくなっちゃって、こんな無茶な依頼しちゃったんです…」

 馬車の持ち主の、茶髪の青年は反省して言った。

 サムスはそれぞれの自己紹介を聞き終え、頭のなかにメモを記した。自信、謙遜、筋肉、反省……。

「アイアン村はこの道をまっすぐ行く。つまり──」

(途中までは道順は同じだ)

 サムスはこれは渡りに船という奴ではないか、と思い提案をすることにした。

「わふゥ」
「どうだろう。俺を雇う気はないか?」

「雇う、ですか?」

 リットンは聞きかえす。
 
「ああ。護衛が欲しいならチカラになる。俺はこれでもガーディアンなんだ。役に立てるぞ」

 サムスは気取ったふうに、すかした笑顔でそう言った。

 すると、皆の視線が一気にかわった。

「ガーディアン……っ、嘘、え、凄い」

 少女たちは手を取り合い、感動に打ち震えている。

「それは、凄いですね。腕も相当なモノでしょう」

 リットンは感心したようにうなずくと「でも、今は、待ち合わせがあまりなくて…」と財布の紐を緩めて見せた。

 サムスは鈍い銀貨のひかりが、少しだけあるのを確認して、これ以上護衛を雇う金がリットンにはない事を確認した。

「それじゃ、昼間は同行だけ。夜営はこっちも助かるから、無償で見張り番もすると言うのでどうだ」

 サムスは提案を変えてみた。

「えーと、昼間は護衛していただけないと?」

 リットンは恐る恐るたずねる。

「ああ。だからな。労働力の安売りはしない」

 サムスは毅然とした態度で言った。

 リットンはガーディアンの機嫌をそこねたと思い「すみません!」とすぐに謝った。

「そうですよね……えー、『闇夜の鴉』の皆さんはこれでも良いですか?」

 リットンがアンガスたちへ確認を取る。
 
「俺は構わないですよ。ガーディアンと旅できるだけでも凄い経験だ。みんなは?」

 アンガスはシチューを器に注いで、機嫌良く皆へ配りながら同意をあつめた。

 『闇夜の鴉』、そしてリットンはサムスの同行を快諾してくれた。

 赤いカチューシャの少女ピジョットが喋る。

「この先はぐんぐん″別世界領域″に近づくしね。あの伝説の英雄エイデン・クラフトが死守した別世界との境界線──だとしたら、仲間は多いに越したことがないよね! ふふ、それにガーディアンの旅仲間になるなんて、ほんとうに凄いことだし!」
「ゴクリ、理想都市アルカディアじゃ、ドラゴンを食べるって聞くし……ガーディアンがいれば安心…」

「護衛はしない」

 サムスが口を挟む。

「それでも、安心だよねぇ~…」

 セーラは怯えた様子ながら、はにかんでサムスへ笑いかけた。

 サムスは気恥ずかしくなり、視線を逃して別のことを考える。

(ふむ。たしかにこの先は、3年前に戦争が終結したばかりの別世界の首都アルカディアに近くなるな……ん、となると)

 サムスは思う。
 いずれ自分はアルカディアへ赴かないといけないのだろうと。

 サムスは片マントの下のサイボーグの義手をそっと撫でた。

「実は、それほど危険でもないですよ? 戦争が終わってからは不気味なほど別世界の人間たちは、こっちに出てきませんからね」

 リットンは肩をすくめて言った。

 彼の話によると、リットンはこの数ヶ月は、別世界領域に近いアイアン村とカーボンシティを往復して、薬草を運んでいるらしく、別世界の近況については詳しいとのことだった。

「でも、理想都市アルカディアじゃ、まだ俺たち側のレジスタンス『解放者達』がテロやらなんやら、仕掛けてるって聞きますけどね」

 アンガスはリットンに問いかける。

「解放者達?」

 サムスは聞き慣れない言葉に首をかしげた。

「戦争が終わっても、別世界を排他しようとしてる過激派の連中ですよ。アルカディア都市内に住みながら、いろいろ暴れまわってるらしくて……そのせいで戦争がまた起こるんじゃないかって、俺たち側からも懸念してる奴多いんですよ」

 アンガスは疲れたように言った。
 どうやら彼も『解放者達』の運動には、あまり賛成的ではないようだ。

「でもでも、別世界の奴らがやって来たことを考えれば、あたしたちが止めちゃいけないって気もするよねー」

「まこと、筋肉であるな」

「うん…」

 それぞれ言葉を述べるパーティとは違い、サムスは静かに耳をかたむけていた。

「サムスさんはどう思いますか?」

「…何がだ?」

「『解放者達』のレジスタンス活動ですよ。俺たちは味方してやらないといけないのに、戦争が怖くなって、おおやけには声あげて応援なんて出来なくて……って、また俺のスタンス語るところだった、と。だから、サムスさん的にはどう思います?」

 アンガスは興味深げにサムスにたずねる。

 話の種に聞いているだけだ。
 サムスにはその事はわかっていたが、正直、そんなに関心のある話ではなかった。

「俺には関係ないことだ。何も思うことはない」
「ぇ……ガーディアンなのに、なんにも思うところはないんですか?」
「ガーディアンだからって、皆が皆、終結後も別世界を意識してるわけじゃない」
「そうですか…」

 アンガスは納得言ってなさげにシチューをつつく。
 
 サムスは気まずくなり「先に寝かせてもらう」と告げると、一足先にテントの中へもぐった。

 サムスは嫌だった。

 ガーディアンなのをつい最近思い出したなんてことを知られるのが。
 6年前、故郷を飛び出し、戦争を戦って来たはずなのに、その頃の記憶がまったく思い出せていないことが。
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