Sランクパーティを追放された雑用係、実は世界最強の【剣豪】だったのを思い出したから異世界無双する

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
12 / 14

理想都市アルカディア

しおりを挟む

 
 サムスは振りかえる。

 そこには気の強そうな顔の老婆がたっていた。

「もしかして、この村の出身者かい?」
「……そうだ…そうなんだ。あんた、皆がどこへ行ったか、知らないか?」

 サムスは震える唇をおさえてたずねる。

 答えを聞くのは恐ろしい。
 だが、俺は聞かなくてはならない。

 サムスは悲劇にみがまえる。

「……。この村の人間はみーんな、死んじまったよ」

 老婆は無慈悲につげた。

 サムスは目を見張り「そうか…」と、抜け殻のような声をもらした。

 サムスはまた記憶への手がかりを失ってしまった。

 自分がガーディアンなのはわかる。
 自分が裏切り者を制した事も思い出した。

 しかし、まだまだ自分を構成するに必要なサムスという人間の歴史が足らなすぎる。

 サムスは自分を真に知る人間がないと、

 自分を確立できない。

 自己崩壊の恐怖に顔を歪めた。

「……ぅぅ」
「わふゥ」

 サムスはフラッと瓦礫のうえに腰を下ろした。

「……あんたは、何してんだ?」

 なんとなくたずねた。

「あたしかい? あたしゃ、旦那のお墓参りさね」

 老婆はとぼとぼ歩き、道の角に立てられた、墓石のまえにしゃがみ込んだ。

「3年前、戦争終結間近に、この村は巻き込まれてしまったんさね、戦いに。あたしゃの旦那も、その時、たまたまここにいたんさ」
「……悲しいか?」
「そらね」
「……」

 サムスは黙したまま、墓石に祈りをささげる老婆の背中を見つめる。

(3年前……俺がここで裏切り者グリフィンを討ち取ったのは、戦争終結間近の出来事なのか?)

 サムスは何かひっかかる違和感を感じていた。

 なにか……何かが……。

「さてと。今日のお祈りも終わったし、アルカディアに帰るとするかねぇ」
「…婆さん、あんたアルカディアに住んでるのか?」
「そうさね。む、そうかいそうかい、危険なんじゃないかって思ってるんだね? かっかっか、まあ、あの街は別世界によって築かれたことは間違いないけどね。まっ、住めば都って、やつだよ」

 老婆は快活に笑った。
 サムスはとても笑う気分にはなれなかった。

「ああ、そうだ。若いの。もしこの村の生き残りを探しているのなら、アルカディアに行ってみるといいかもしれない」
「? どうしてだ」
「戦争終結直後だったかねぇ……たしか、チタン村のわずかな生き残りがアルカディアのスラム街にいるとか、いないとか……そんな事を聞いたんさ」

 老婆の言葉にサムスの瞳ぎ輝きを取り戻した。

 そこに行けば、生き残りがいる。

「ここからアルカディアへはどうやって行けばいい?」
「すぐそこさね。半日も歩けばついちまうさ」

 老婆は南の方角を指さした。

「あーそうそう。最近はアルカディア近辺は危険な魔法生物の出現が増えてるっていうねぇ……どうだい、若いの。そんな立派な剣をさげてるんだ。ここはさみしい老人の散歩に付き合ってくれないかい」
「悪いが、護衛なら高くつくぞ。俺はガーディアンだからな」

 サムスは鼻を鳴らして、腕を組み、気取ったようにそう言った。

「ほほ~う、ガーディアンかい。そりゃ凄い。頼りになる散歩仲間じゃないか」
「…おい、待て。俺はまだ護衛するなんて」

 老婆はサムスの話は聞かず「かっかっか」と笑いながら、勝手に歩き出していってしまう。

 話を聞かないBBAであった。

「チッ…今回は特別料金だ」
「わふゥ!」

 サムスはルゥを馬に乗せ、遠ざかる老婆の背中を追いかけた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 陽気な老婆とともにサムスは明るい森のなかを歩いていた。

「立派な馬だねぇ、飼い主に愛情を注がれてるのがわかる」
「ブルルゥン」

 老婆は見事な毛並みを愛でて「あの子が喜びそうだ」と意味ありげに微笑んだ。

 サムスは咳払いをして、担保として奪った馬から話題をずらす。

「アルカディアは安全なのか。まだ戦争が終わって3年しか経ってないだろう」
「スラム街は比較的安全さね。あそこじゃ、別世界人だとか、異世界人だとか、言ってる暇なんてないからね。みんな協力して生きること……あ、でも、スラム街の方が安全だなんて、おかしなことだねぇ、かっかっか」

 老婆は楽しそうに笑った。

 ──しばらく歩くと、森をぬけた。

 森の先には、凄まじい光景が広がっていた。

 サムスは思わずポカンと口をあけてしまう。

 広大な森の世界の真ん中は、どうやったのか切り開かれて、莫大なスペースが作られている。

 そこには、天をつらぬく高さの超高層ビルがいくつも並んで、見たこともない金属の都市を成していた。

 超高層ビル同士のあいだには、陸橋がかけられ、空中に築かれた別世界の科学都市の異様が見てとれる。

 高層ビル、陸橋、地上をいくつもの飛行物体が飛び交っている様には、脱力するほかない。

 そのすべて別世界のチカラ。

 サムスは遥かな″差″を感じていた。

「これが別世界の科学とでも……?」
「かっかっか、見慣れりゃそういうもんかと落ち着くが、確かにあたしゃも初めて見たときはおったまげたさ」
「こんな奴らと戦争して、俺たちはまだ世界を守れているのか……」
「確かに、誇らしいさね。ぜーんぶ、あんた達みたいなのが命がけで頑張ってくれたからさ」

 老婆はかるい拳でサムスの胸をたたき「ありがとさん、ガーディアン♪」と笑顔で言った。

 サムスは悶々とした気持ちになっていた。

 何かが、しっくり来なかった。

 サムスは迷いを振り払うように頭をぶんぶん振り、アルカディアについて聞く。

 超高層ビル群の中で、一番高いモノのそのさらに上空に、地上とは柱一本つながってない要塞が飛んでいるのだ。

(あれも科学のチカラで飛ばしていると?)

「ありゃゴーグルの本社だね」
「ゴーグル?」
「そうさね。あの塊自体は『オリュンポス』って呼ばれてるさ。あたしゃたちはひと口に″別世界″って呼んでるが、実質的に別世界とは、ゴーグルのことさ。おおきな、おおきな、それこそ世界ひとつ支配するような巨大企業だよ」

 サムスは思う。

 ひとつの会社が、世界を支配するなんて。
 そんなの可能なのだろうか。

「でも、要塞を天空に浮かべられるんだよな……」

 サムスは何となく納得した。

「ん?」

 続いてサムスは、アルカディアの周辺にある都市から逸脱した場所に、ポツポツとある『金属の巨塔』を指さした。

「ありゃ″マナハウス″って呼ばれてるさね。なんでも、あそこで作ったエネルギーを使って別世界の科学は稼働してるんだとさ。詳しいことは、老骨にはわからんけどねぇ」

 老婆は疲れたようにそう言うと「さあ、そろそろ行くよ。待ち人がいるんだろう?」と言った。

「若いの」
「なんだ」
「『ようこそ、理想都市アルカディアへ』』
「……?」
「市長の言葉さ。一度言ってみたかっただよ、かっかっか」

 老婆は満足した顔で歩きだす。

 サムスは文字通り、まったくの″別世界″に驚愕し、震えながら、老婆につづき、アルカディアの『下層』スラム街へと入っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『農業スキルはいらない』と追放されたが、魔境の開拓ライフが勝手に世界配信されていた件。聖女や竜が集まり、元仲間は完全に詰みました

たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ。魔王討伐に『農業』スキルなんて役に立たないからな」 幼馴染の勇者からそう告げられ、俺、アレンはパーティを追放された。 あてがわれたのは、人が住めないと言われるS級危険地帯『死の荒野』。 しかし、彼らは知らなかった。俺の農業スキルが、レベルアップによって神の領域(ギフト)に達していたことを。 俺が耕せば荒野は豊潤な大地に変わり、植えた野菜はステータスを爆上げする神話級の食材になり、手にしたクワは聖剣すら凌駕する最強武器になる! 「ここなら誰にも邪魔されず、最高の野菜が作れそうだ」 俺は荒野で拾ったフェンリル(美少女化)や、野菜の匂いにつられた聖女様、逃げてきたエルフの姫君たちと、にぎやかで楽しいスローライフを送ることにした。 その一方で、俺の生活が、荒野に落ちていた古代のアーティファクトによって、勝手に世界中に『生配信』されていることには全く気づいていなかった。 「え、この野菜食べただけで瀕死の重傷が治った!?」 「主様、強すぎます! ドラゴンを大根で叩き落とすなんて!」 『コメント:なんだこの配信……神か?』 『コメント:勇者パーティが苦戦してるダンジョン、この人の家の庭じゃね?』 これは、無自覚に最強の農園を作り上げた男が、世界中から崇拝され、一方で彼を追放した勇者パーティが没落していく様子を、リスナーと共にほのぼのと見守る物語。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。 しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。 リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。 一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。 これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。

処理中です...