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第一章 再誕者の産声
第3話 息子は天才
しおりを挟むしばらく経ったある日。
「ねぇパパ! やっぱりアークは天才よ!」
「はぁ……まったく、ママは親バカなんだから。最近それしか言ってなくないか?」
父親は呆れた風に首を振る。
「だって、昨日なんてこの教科書を読んでたのよ! まだ1歳にもなってないのに文字を読めるなんて天才に決まってるわよ!」
いや、母さん、別に読めていたわけじゃ無いんだ。
というかそんな簡単に読めたら苦労はないって。
俺は異世界転生はしたみたいなのだが、数多あるライトノベルに登場するなぜか現地の言葉・文字が理解できてしまう「自動翻訳機能」はついてこなかった。
よって、まこと面倒なことに自分自身で言語を勉強しなければいけない。英語は通年で評価5だったが流石に別世界の言語となるとわけが違ってくる。
そのため今日は文字を教えてもらうために、本を持って両親の元までやってきたというわけだ。
ちなみに俺がなんの本を見ていたかというと、魔法陣が厚革の表紙に描かれた、およそ魔術・魔法について書かれている本と思われるものだ。
俺は前々から魔法を使ってみたかったのだ。
魔法、古今東西あらゆるファンタジー物語に出てくる、見る者を魅了する神秘の技。
当然のごとく、その魅力される者の中には、精神年齢18歳である俺も含まれていたという事になる。
俺は異世界でバリー・ボッキィーになるんや!
異世界に魔法があるとわかったあの日にそう誓ったのさ。
俺はかつての誓いを思い出しながらひとつ深呼吸して肩を回した。
手に魔法の本を持ちながら、前々から企画していたサプライズをここで仕掛けてみることにしたのだ。
名付けて「喋ってアー君、天才確定作戦」ーー。
「おかあ、さん、もびを、おしへてくたさい」
「ッ!」
「っ!」
実は今日という日まで、俺は両親の真似をしてしゃべる練習をし続けていたりした。
親の前では「あー、うー」などバカな赤子もとい、普通の赤ちゃんを演じていたが、影でこっそりと「5連釘パ〇チッ!!」と必殺技と発音と共にスピーキングの練習していたのである。
全てはこの瞬間のためさ。
幼稚なことだが俺は人を驚かせるのが好きなんだ。
「喋ったぁあッ!」
「なニィィ! 昨日までは『あー、あう』ってアホ面だったのに! すげぇ凶悪な笑み浮かべてるぅう!」
おい親父、お前後で裏こい。
アホ面ってなんやねん。
「やっぱりアークは天才だったんだわぁ! アークは、アークは天才よ、ひっく」
「あぁほんとに天才かもしれないッ!」
なかなかの驚きよう、悪くない。
「おかーさん、おとーさん」
「どうしようアディ! アディ!」
「わからないよ! どうしよう! とりあえずこのアークを一旦黙らせよう!」
「ぁ、あれ?」
親父が物騒なことを言い始めた。
ちょっと、やりすぎてしまったかもしれない。
「おかあ、さん、よみかき、おしへて?」
「う、うぅ~、いいわよ! ママがなんでも教えてあげるわ!」
「ば、ばば、パパ! パパは? アーク、パパには何をしてほしいんだい?」
親父が揉み手をしながらすり寄ってきた。
「おとう、さん、はそこにすわってるだけでいい」
「あれ!? なんかママと対応が違う!?」
「あらあら、アー君はママに教えてほしいのね♡」
「え、ど、ど、ど、どうしてアー君、パパにも、パパにも、なにかしてほしいんじゃないか? ん? どうなんだい?」
ちょっと可哀想になってきたのでフォローを入れておくか。
まったく仕方のない人だぜ。
「ばぱ、だっこしてー」
「いいよぉ~! 超いいよぉ~!」
普段寡黙を演じていた父親像が音を立てて壊れていく。
ちょっとだけ後悔だ。
こうして俺は家で母エヴァリーンと、父アディフランツに言葉の勉強を教えてもらうことになった。
ー
本当に子供の脳というのは素晴らしい。
この世界に来てから何回思ったことだろう。
俺がもじゃ頭の脳科学者だったら今頃、脳の素晴らしさに感動して、昇天してしまっているところだ。
両親に勉強を教わり始めてまだ何ヶ月もたっていないのに、俺はすでにエーデル語をほぼ習得していた。
スポンジように物事を吸収していくという表現があるが、その例えをしたやつは天才に違いない。
して、エーデル語とは?
それはこの世界の人間の国では訛りや方言的なものはあっても、一貫して話されている公用語的な言語。
俗に人間語と呼ばれているものらしい。
母エヴァは家にいる間は、ほとんどつきっきりでこのエーデル語の勉強に付き合ってくれた。
父、アディはどこか外で働いていて、とても忙しそうにしていたので勉強は主にエヴァが見てくれた。
俺は毎日せっせと言葉を覚えていった。
とても実りのある時間であった。
だが、そんな充実した日々を送る俺だったがいくつか不満があった。
1つは、絶対に家の外には出てはいけないとエヴァに言われたこと。庭には出てもいいが、町は出歩いてはいけないと言われた。
俺たち一家が住むアルドレア邸があるのは、ローレシア魔法王国と呼ばれる国の辺境、クルクマという町らしい。
規模は小さいと聞いているが、実際はどんなもんなのか自分の目で見ていないのでわからない。
猫が迷子になっても翌日には帰ってくるような平和な町とも聞いているが、それでも1歳にもならない息子を出歩かせたくないと思う親心は当然か。
不満の2つ目は、両親が魔法を教えてくれないことだ。これもまた、1歳に満たない幼子が魔法を行使するのは流石に危険と言うのが理由だった。
まぁこれも理性での理解はできる。
まだ1歳になるかどうかと言う子供に火遊びを教えたくはないということだ。
これに関しては徹底的で、両親は家にある魔術関連の本を全部どこかへ隠してしまったようなのだ。
俺が最初に見つけた「火属性式魔術 入門編」という本も見当たらなかった。
エヴァに聞いても教えてもらえなかった。
なので、俺は家にある別の「危険生物図鑑」を読んで過ごすことにした。
魔術の勉強が出来ないから、他のことを勉強するとはなんとも勤勉な性格になったと自身で感心してしまう。
勉強は嫌いだったと思っていてが、転生のせいで、性格でも変わったとかだろうか?
まぁ良い変化なので気にしないで、勉強をすることにしよう。言語力向上のためにも文字をたくさん読んだほうがいいだろうし。
ー
本を読みまくる日々を送っていたある日。
「それじゃ、気をつけてね。愛してる」
「俺も愛してるよ」
「知ってるわ。いってらっしゃい」
朝の肌寒さを忘れさせるようなホットな会話が聞こえてきた。どうやら我が父アディフランツが遠出をするようだ。
「アーク、しばらく会えないけど、お母さんの言うこと聞いて良い子にしてるんだぞ?」
「はい、わかりました。お父さんはどこにいくんです?」
「ちょっと王都までな。お土産買ってくるからな」
「それは楽しみです! 行ってらっしゃいませ!」
「あぁ行ってくるよ。じゃママ、アーカムをよろしくな」
「うん! 早く帰ってきてね」
王都まで出張か。お土産を買ってきてくれるらしいから、楽しみに待ってるとしよう。
ー
今日も、俺は巨大柴犬ことシヴァに寄りかかり、この世界の知識の収集に明け暮れていた。
「危険生物図鑑」には様々な生物の情報が大雑把に載っていた。
「ふむふむ、ほうほう」
ペラペラとページをめくっていく。
両親からは、こうしてページを「ペラペラ」しているだけでも結構褒められるのだが、実際に読んでみると、見た目ほど勉強してる気にはならない。
なんだかRPGの設定資料集みたいなのだ、この家の本。まぁこれで「偉いぞっ! すごいっ!」と褒められるんだから別に嫌な気分にはならないが。
両親から見たらきっと俺はすごい真面目な子に見えてるだろうな。さながら今の俺は勤勉なる知識の探求者か……いやーー。
「知の深淵を歩む者、と言ったところかな? ぁ……ウッ!」
慌ててあたりを見回し、影からエヴァが見てないか警戒する。
危ない、危ない。
またしても同じミスを繰り返すところだった。
どうやら、今回は影の監視者はいなかったらしい。
以前に厨二現場を母親エヴァリーンに目撃され、さんざんからかわれたのを忘れていたよ。
「わふっ、わふっ!」
「おうおう、そうか、そうか」
最近はどうもこじらせた独り言が多くなってしまっている。
とっくにそういうのは卒業できたと思っていたのだが、まだ残っていたらしい。
俺も中身だけならもう20歳になるかどうかという年齢のはずなので、そろそろ症状を抑えていかなければな。
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よし、これからは気をつけて行こうじゃないか。
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