超転生者:最強魔術師目指して勉強はじめたけど……どこかで予定が狂った件について

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
57 / 78
第三章 路地裏のお姫様

第56話 屋根上の出会い

しおりを挟む
 
 昼飯時。

 1週間も住んでいれば周辺の地理を把握できるもので、俺はレストランへの最短ルートをいくべく建物の屋根を駆けていた。

 やはり地上のゴタゴタした大通りを馬車に気をつけながら歩くより、屋根を走ったほうがずっと速く移動できる。

「ふんふふん、ふーん」

 オズワールに杖をかっこよく加工してもらったり、お金をたくさんもらえたりしたので、今はすこぶる気分がいい。

「さてっと、到着ーっと」

 レストランの屋上、ではなく屋根上に到着した。

「ん?」

 俺は困惑して訝しんだ。
 たしかに目的の屋根上には到着したのだが、なぜか地上から7メートルのそこには先客がいたのだ。

 全体的に黒を基調とした格好で丸メガネをかけたオールバックの渋いおっさん。
 瞳は青く、髪は銀色、年齢は30代前後、アディと同じくらいの年齢に見える。
 いや、髪のせいで実年齢より年をとって見えてるかもしれないな。

 油断なく銀髪のおっさんを観察する。

 雰囲気や立ち姿、こんな場所に佇んでいる男がただのおっさんなわけがない。

 警戒は必須だ。

「……」

 なぜ黙ったままなんだ。

 男はこちらを値踏みするような視線で、頭のてっぺんから指の先まで舐め回すように観察してくる。

 しかし、観察しているのは何もおっさんだけじゃないのさ。

 俺だって相手の分析くらいできるんだ。
 この男の着ているレザーコート、相当分厚い。

 防具としての機能を期待して作られたものだ。
 だがそれでいて、コートのたゆみ方から見て重量自体は大したことがないだろう。
 機動力を殺してまで防御力を高める目的の装備ではないと見た。

 男の腰には剣が2本差してある。
 長剣と短剣だ。

 杖も持っているな。

 リュックなどのかさばる物は持ち歩いていない。

 非常に身軽。

 腰の革製の水筒から微妙に魔力を感じる。

 きっとポーションだ。
 明らかにプロ、まるで師匠みたいだ。
 このおっさんの装備、いつでも戦えますって感じでおる。

「……」

 流石にそろそろ喋ってくれてもいいんじゃないですかね?

 俺の分析出来ることもう無いんですけど。
 あとは、靴がピカピカに磨いてあるとか、微妙に口角が上がってるとか……ん? 笑ってるのか?

「ぁ、あの」

 とりあえず話さないことには始まらない。

 なんとなくこの人が何者なのか予想はついてしまうが、いきなりそれを口に出すともしかしたら不機嫌になるかもしれない。

 それにもしかしたら俺のことを怒りに来たのかもしれないのだ。慎重になるべきだろう。

「どちら様でしょうか。こんな高所じゃ、春が近づいて来てるとはいえ寒いでしょう?」
「……ふっ」

 あ、笑った。
 案外ユーモアの通じる人物なのかもしれない。
 これは怒られなくて済むかな?

「そうですね。こんな珍しい場所で出会ったのも何かのご縁ですね。挨拶をさせてください。僕のアーカム・アルドレアと言う者です。そちらは?」

 明らかに、場にそぐわない自己紹介をして相手をゆすってみる。
 もしかしたら怒られるかもしれないので、その時のためにも気を引き締めておく。

「ふぅん。8歳と聞いていたが随分とガタイがいい。圧の密度、技の練度、たしかに天才だな。とても将来が楽しみだ」

 男はニヤリとすかした笑みを浮かべてゆっくりと近づいて来た。

「私はアヴォン・グッドマン。かつての狩人、テニール・レザージャックの弟子だった者だ。これから度々会うことになる。アーカム・アルドレア、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします、アヴォンさん」

 男、アヴォン・グッドマンと固い握手を交わす。
 予想通りの人物だった。

 アヴォン・グッドマン、王都で俺の修行を手伝ってくれると師匠に聞かされていた現役の狩人だ。

 てっきり俺から会いに行かなかったので怒られると思っていたのだが、なんか友好的なのでこのまま行こう。

 わざわざ話を悪い方向へ持っていくことはない。

「ふぅん、最初にいくつか説明しておくことがある。よく聞いておけ」

 アヴォンは指を立てて話し始める。

「まずその1。私は忙しい。よってお前につきっきりで修行を施すことはできない」
「はい」
「その2。数ヶ月に1度、お前と手合わせして、技術的改善点を指摘していく。もし2回目以降の手合わせで成長が見られないようだったら、
 お前を狩人候補者から降ろすことになっている。もし脱落したのならそこで『狩人の試練』はおしまいだ」
「ぇ、は、はい……」

 まじかよ。
 狩人の試練って脱落制度あったの?

 それともアヴォンがスパルタ系なだけ?
 冗談きついぜ。

 師匠はそんなこと言ってなかったのに。
 アヴォン嫌だ、師匠が良いよ!

「その3。不定期で私がお前を襲う。手合わせとは別にだ。さっきも言った通り私は忙しいから、移動途中にお前を見かけたらちょっかいをかける程度に襲うつもりだ。
 各手合わせの間に私の強襲が5回成功したら、お前を狩人候補者から降ろす。これは私の判断でだ」
「……はい」

 なんか、どんどんハードになってくんだけど。

 師匠のところにいれば勝手に狩人になれると思ってたのに、担当者が変わった瞬間から難易度爆上がりじゃねーか。

 どういうことだ、狩人協会にクレーム入れるぞ。

「うぅ、ちょっと厳しくないですかね?」
「安心しろ。もちろん襲うといっても変な意味じゃないし、ベリーベリー手加減するつもりだ。
 お前が師匠の言う通りの人物ならまず狩人候補者から降ろされることはない。今まで通り精進するんだ」
「……はい、頑張ります」

 うーん、なんか複雑な気持ちだ。

 この人なりのジョークを言ってるつもりなんだろうけど、いまいち笑っていいのかわからない空気だし、そもそも喋り方堅いなぁ。

 まぁでも今まで通り頑張ればいいって言ってるんだから、あんま気負いすぎずに行った方がいいかな。

「とりあえずは、以上の3つの点だけ押さえておいてくれ。あぁあと当たり前のことだが、アヴォン・グッドマンが狩人である、
 という情報は口外してはいけないぞ? 別に私だけではない。狩人になる者なら必ず護らなければいけないおきてだ」
「はい、そこらへんのことは師匠から教えてもらっているので大丈夫です」
「そうか。ならいい」

 アヴォンは俺の顔を見てニコニコと楽しそうに笑っている。

 さっきからなんなんだろうか?
 もしかして小さい男の子が好みとかじゃないよな?
 頼むよ、アヴォン。

「うーん、やっぱりいいなお前。うん」
「ぇ、ぁぁ、えーと、ありがとうございます……?」

 アヴォンは青い瞳で俺の目をしっかりと捉えてくる。

 アヴォンには何が見えているんだろうか。

 将来が楽しみとか言ってくれてたから、もしかしたら俺の将来の顔がこの人に見えているのか?

 ……いいや、まさかな。

「よし。それじゃ、さっそく第1回の手合わせを始めよう。今日を逃したら、しばらく私はこの街を離れる。手早く済ませよう」
「え、ここでやるんですか!?」
「やるわけないだろう。何を言っている」
「で、ですよね。冗談ですとも」

 漫画などでのおなじみの「ここでやるんですか!?」をすげなく否定されてしまった。
 ダメだ、アヴォンはまるでわかっていない。

「南第2区、グレナー区の遺跡街のある場所を修練場をとする。これを持て」

 アヴォンはポケットから何かをとりだした。
 指弾いて投げ渡してくる。

「指輪ですか」

 アヴォンが渡してきたのは真っ黒な金属製の指輪だった。
 青い文字で何かの記号が指輪の内周にも外周にも刻まれている。

 魔術言語に見えなくもないが、微妙に違う気がする。

「その指輪は修練場へ入るための鍵だ。修行するなら別にどこでもいいんだが、手合わせしているところは極力誰にも見られたくはない」
「そういうことですか」

 黒い指輪をさっそく右手中指にはめる。

 ちょっと冗談をかまして左手薬指につけてもよかったが、アヴォンがガチでそっちの人だったら取り返しがつかないのでやめておく。

「付けた感じはただの指輪ですね」
「あぁ。鍵としての効果以外はなにもない」

 狩人の秘密の道具だったら、何かあるんじゃないかと期待したが、本当にただの鍵のようだ。

 指輪自体かっこいいし、指輪が鍵であること自体もかっこいいのでよしとしよう。

「よし、それじゃ2時間後にここに戻って来い。私は昼飯を食べる」

「はい、了解です! 先生!」

「あぁそうだな。先生がだろう」

 狩人であるアヴォンのことを名前で呼びまくってると、いつか怒られる気がするので呼び名に先生を選択したが適切だったらしい。

 アヴォンも口元をニヤリと歪めて、先生呼びを気に入ってくれたようだ。

 もしかしたらアヴォンにとって俺が始めての弟子になるのかもしれない。

 新米教師が生徒にはじめて「先生!」と呼ばれたときの感動を味わってくれてるんだろうか。

 そう考えるとこの渋いおっさんもなんだか可愛く見えてくるな。

「また後で会おう。解散」
「はい!」

 アヴォンの言葉を最後にその場は解散となった。

 彼は昼飯を食べるって言っていたし、俺もおなかが空いているのでお昼をとろう。

 本来そのためにこのレストラン「アンパンファミリ」まで来たのだ。

 俺のような男が1人ではいるには少々抵抗があるレストランだが、料理は絶品だ。

 屋上から飛び降り「アンパンファミリ」の入り口前に直行する。

「ん?」

 しかし、妙な違和感を覚えた。

 今、一緒に誰か降りてきたようなーー、

「……」
「……」

 となりに立っていた男はこちらを気まずそうな顔で見つめていた。
 俺も気まずい。

「お前もここか」

「はい、なんかすみません……」

 となりに立っていたのは数秒前まで屋根の上にいたアヴォンだった。

「一緒に食べるか?」
「そうですね……」

 そうして俺は家族向けレストラン「アンパンファミリ」の中へ、狩人とともに入店した。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...