超転生者:最強魔術師目指して勉強はじめたけど……どこかで予定が狂った件について

ファンタスティック小説家

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第四章 巡り会う傑物達

第74話 彼女の名前はカティヤさん

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 起爆音による耳鳴り。
 耳の奥の脳がつんのめるような不快な麻痺が残り続ける中、突然俺の名前が呼ばれた。

 麻痺した耳に手を当てて気遣いながら視線を泳がす。
 そして見つけた、声の発声者ーー彼女を。

「ぁ、君は!」
「レトレシア子犬1年柴犬1回生、カティヤ・ローレ・ドートリヒト。勝負!」
「は!? ぇ、ちょ!」

 突然な展開に脳が追いつかない。困惑が過ぎるぞ、おい。

 とりあえず目の前の少女が杖を中杖を構えて、審判に古銅貨を投げ渡しているのはわかった。

「あれ、これ、始めていいのかな?」

 審判も困惑気味だ。当然だろ。

「ぇ、いや、でも俺がまだ名乗ってーー」

「構えないなら、後3秒であなたを殺すから」
「いやいや! 無茶苦茶な!? 俺、君の親でも殺したかな!?」
「1!」

 少女が秒読みを始める。
 待ってくれ。
 えーとカティヤさん?

「2!」

 目の前で今まさに魔法を撃ち出そうとしている美しい少女は、オズワールの店や決闘場で学用品を買った時に出会ったあの女の子だ。

 艶のある藍色の短髪で、毛先だけ金銀色をしており、それは気高き秘密を宿すごとき自然の色合いだ。
 月のような鋭い瞳は金色に輝き、それだけで至高の宝石を連想させる。あぁ美しい。
 どことなく色気を放つ褐色肌は野性味を感じさせずに、人が容易に触れてはいけない神秘性を纏っている。

 なんて可愛いんだ。
 あぁ、そうか、この人はカティヤさんっていうのかぁ~。

 まさかこんな所で再開できるなんて夢みたいーー。

「3!」

 あ、やべ。感動してる場合じゃなかった。

「子犬1年柴犬1回生! アーカム・アルドーー」
「≪魔弾≫」

 ーースパンッスパンッ

 メリハリのある等間隔の破裂音。
 気づいた時には魔法はすぐそこだ。

「ッ!」

魔撃まげき

 ホルダーからラビッテの杖を素早く抜き放ち、飛来する2発の魔法にジャストミートさせる。

 ーーほわっほわっ

 レジスト成功。

「ふぅ」
「チッ!」

 間一髪≪魔撃まげき≫による直前レジストを成功させて、眼前でカティヤさんの放った魔法「現象」を霧散させる。

「なっ! 魔撃!?」
「おぉ! 魔撃だ!」
「すげぇ戦いだぞ!
「カティヤちゃんこっち見てぇー!」
「直前レジストカッケェ!」
「アルドレアの野郎どこまでもロマンチストだぜ!」
「あれは本物だな」
「あぁダメ腰砕けちゃう……!」
「アーカム様ぁあ!」

「ハッ!」

 ーースパンッスパンッスパンッ

「ッア!」

魔撃まげき≫!≪魔撃まげき≫!≪魔撃まげき≫!

 ーーほわっほわっほわっ

 カティヤさんから放たれる魔法を完璧に捉えて丁寧にレジストしていく。

 まだこれくらいの連射力なら対応できるか。
 というか魔法の感覚が俺の≪喪神そうしん≫と似てるのでレジストしやすいぞ、これ。

 ーースパンッ

 ーーほわっ

 ーースパンッスパンッ

 ーーほわっほわっ

 ーースパンッスパンッスパンッ

 ーーほわっほわっほわっ

「あ゛ー! もう! あんたいい加減にしなさい! レジストばっかして!」
「ぇ、あーご、ごめん」
「もう!」

 決闘中にもかかわらずカティヤさんは地団駄を踏んでご機嫌斜めになってしまった。

 しまった、あまりにも完璧にレジストしすぎたか?

 なぜか決闘を申し込んできてくれたカティヤさんに嫌われないように、反撃せず受けだけに集中していたのだがそれが裏目に出てしまったかもしれない。
 過剰な接待プレイは逆効果。

 なぜか元から俺は嫌われてるんだ。
 これ以上点数を下げたくはない!

「あぁ、もうわかったわよ、あんたのこと認めてあげる」

 おや、認める。これは褒められてるのか?

「ぁ、はは、ありがと、カティヤさん!」
「確かに、あんたは少しは出来る」
「……カティヤさん?」

 お互いに杖を構えたまま臨戦態勢だというのになんとも場違いな呑気な会話をしてしまう。

 だが、俺にとってはこんな会話だけでも結構嬉しかったりする。

 カティヤさんと決闘しちゃってるんだぜ、俺。
 多分、今の俺、好きな人となら何をしていても楽しくなっちゃう症状が出ちゃってるな。

 ニコニコして対面するカティヤのことを眺めて愛でる。

「はっ! ニヤニヤしてつくづくキモい奴」
「はぅあっ!?」

 ーーグサリ

 眼前で凛々しくたたずむ褐色少女の一言に心臓を抉られた。あまりにも痛すぎる。
 なんかグサッていう音まで鮮明に聞こえた気がするし。

 キモい奴……キモい奴……キモい奴……。

「うぅ」

 その言葉はあまりにも深く俺の心を痛めつけた。
 あぁ、なんてことだ。
 カティヤさんにきもがられてしまうなんて。

 もう、もうおしまいだ、生きていけない。
 カティヤさんにキモがられたこの先俺はどうすればいいんだ……。

 少女の言葉の威力によって、暗闇の底へ落ちそうになった俺はある記憶を思い出していた。

 そう、あれはサティママのミネルガさんが言っていた言葉だ。
 サティが欲しかったら決闘で負かせてみろ、的なことを言っていたのを思い出した。

 そして先程シュガーレスを倒した時の女子たちの反応。
 これらの記憶が意味するところはつまりこういうことだ。

 この世界では決闘が強いとモテる。
 そうか、なるほど、ようやくわかった。
 まだ、俺にも道は残されている!
 神は俺を見捨てなかったのだ!

 よし、そうと決まればこのカティヤさんとの決闘は何が何でも勝ってみせる。
 先程まで攻撃魔法を使わない接待プレイをしていたが、もうそんなものはやめだ。
 俺はカティヤさんを倒して、彼女中の俺の点数を上げてみせるんだ。

 と、ここまで約1秒で思考を終える。

「もう手加減しないぜ? 俺は本気でいく」
「なに? 手加減してたの? 舐めてんじゃないわ」

 カティヤさんが不機嫌な顔で中杖を素早く振り、返しを加え連続で杖を振る。

 無詠唱魔法だ。
 だが先程のやりとりでもうその魔法の速さには慣れた。

 悪いがそれは効かないぜ。

「ッ!」
「ハッ!」
喪神そうしん≫!

 ーースパンッハグルッ

 褐色少女の攻撃魔法の瞬間を狙って≪喪神そうしん≫を1発挟んでおく。

 完璧なカウンター魔法。
 俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 あとは俺がカティヤさんの魔法を全部レジストすれ良いだけ。
 そう思い、俺は≪喪神そうしん≫を放った杖を戻しレジストの準備に入りーー。

 ーースパパパパンッ
「っ!?」

 意味がわからない破裂音の連鎖。
 なんだこれ。
 カティヤさんの杖から訳のわからない早さで魔法が連射されてんだけど。

 待って、お願い、は、な、なんで? 
 ちょ、いくらなんでと早過ぎるだろ!?

「うあぁぁ!」

魔撃まげき≫≪魔撃まげき≫≪ーー、

 魔法の暴風の前にレジストがついていけない。
 レジストが間に合わなくなれば、当然の結末が訪れることになる。

 ーースパンッ

「ぐほぉあ!」

 カティヤさんの魔法に胸部を撃ちぬかれ後方、魔法陣の外へ勢いよく吹き飛ばされる。

「ぁぁ、ぁ」
「≪魔撃まげき≫!」

 ーーほわっ

 絶世の美少女はこちらの≪喪神そうしん≫を≪魔撃まげき≫でレジストしているのが、薄れいく意識の中、吹き飛びながら確認できた。

 カティヤさん、もそれ……使え、んか……。

 遠く離れた少女へ視線を向ける。
 彼女の勝ち誇った笑顔がよく見えた。

「あたしの勝ち」
「ぁ、ぁ……ぅ……」

 俺は完全に意識を失った、

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